著者
浜田 真理
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.39, no.Supplement1, pp.125-128, 2005 (Released:2010-08-25)
参考文献数
5

空間が文学の中でどのように描かれるかということについて、村上春樹 (1949~) の初期の短編小説「パン屋再襲撃」 (1986) を示例として、図学的な観点から考察する。空間は、図や絵画のように視覚的なるもので示される場合が多いが、言語を使用して実体のないイメージの世界としてあらわしたものもある。言葉だけであらわされた空間や形は、それを読む者に、視覚で限定された図的表現よりも、読み手のイメージによって視点を固定したものではない自由度のある空間や形を思い起こさせる。また、言語表現により、現実にはあり得ない世界を描くことができる。さらに同時に別世界の物語をパラレルな形で表現することも可能で、異なる空間を現実の空間に入れ込むこともできる。そのように言語による空間表現は現実空間はもちろんのこと、存在しない空間やイメージの空間を自由に創り出し、想像の空間を示すことができる。本研究では、それらが実際に空間について書かれた文章を、象限の考え方に当てはめて考察していくことにより、言語的世界で構築された空間を解明していく。
著者
今間 俊博
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Supplement2, pp.39-42, 2007 (Released:2010-08-25)
参考文献数
3

日本のアニメーションには, 米国アニメーションには無い「止め絵の美」が存在する.しかしMocapを利用したCGライブアニメーション制作は, アニメーション制作効率は高いが美しい止め絵を作るのが難しいという問題を内在している.また3DCGで制作したキャラクタには, 不気味の谷の問題があり, リアリティを追求し難いという問題がある.「FF THE MOVIE」「APPLE SEED」「VEXILLE」といった, 日本において制作された劇場公開アニメーション作品を通じて, 米国主導のCG技術開発とは違った, 映像表現技術の動向について過去の取り組みのまとめと今後の考察を行なった.

1 0 0 0 OA 清家正の思想

著者
森 貞彦
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.45-50, 1997 (Released:2010-08-25)
参考文献数
15
著者
山島 一浩
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Supplement2, pp.101-104, 2007 (Released:2010-08-25)
参考文献数
10

Web上で利用者がインタラクティブに空間イメージ編集を支援するシステムについて述べる.まず空間イメージを記述する書式として, 1996年に開発された3DMLを取り上げ, その記述構造を再考した.次に編集対象と3DML書式の要素との対応付けを行い, 編集支援システムに組み込んだ.編集支援システムは, Tomcat (Webサーバ) 上で稼働する.空間イメージの書式は, 利用者の編集過程で動的に生成される.開発は, Web2.0を指向し, JSP (Java Server Pages) と, Ajax技術により, サーバ側とクライアント側の処理を分担するようにした.編集対象の空間イメージは, 室内とした.壁, 床, 天井の配置とそのテクスチャ, 照明を編集対象とした.本稿では, 和室の制作過程を例示し, 利用者に文化的な知識背景を反映させた設計支援策の可能性について述べる.
著者
鈴木 広隆
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.73-76, 2007

昼光照明は、エネルギー削減や健康性などの観点から、住宅にも積極的に導入が進められるべきものである。頂側窓による採光は、建て詰まった地区における採光経路の問題を解決可能であるが、視点に近い高さにハイライトが発生するため、グレアとなったり、相対的に他の部分が暗くなってしまうなどの問題がある。本研究は、頂側窓により採光が十分に確保された住宅の内部に、カテナリー曲線に沿ってスクリーンとなる布を配置し、これにより昼光の変動による趣きを確保しつつ、住宅内部の各部分に一定量の昼光を導くことを試みるものである。
著者
今間 俊博 斉藤 貴志 井草 拓
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Supplement1, pp.199-202, 2007 (Released:2010-08-25)
参考文献数
3

人間の視感覚には, 「メンタルモーション」のように非線形の要素が存在し, そのためアニメーション映像の制作においては, 物体のパースペクティブや動作のタイミング, 加速度といったアニメーションを構成する各要素が意図的に誇張・変形される場合がある.これらの誇張・変形量については, 感覚的に理解させる事は出来ても, これまで論理的, 数値的に履修させる事は難しかった.本手法では, 既存の2次元アニメーション作品からアニメーションの動きデータを抽出し, その抽出データを用いて3次元アニメーションで同様なシーンを構成し, その比較を行っている.この手法によって, アニメーションの持つ独特な「動きの質感」を理解させるための教育的な試みを紹介する.
著者
佐久田 博司 大吉 大輔 河原 宏俊 矢吹 太朗
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.40, no.Supplement1, pp.5-8, 2006 (Released:2010-08-25)
参考文献数
10

中高年齢の図形認知能力に関する調査は, 被験者の職業や環境による個体差が大きく, 統計的な考察のためには, 同一クラスに属する大学生などの群よりも多くの被験者が必要で, 個別の条件吟味が必要になると思われる.本研究は, 特に理工系の職業で同一部門に勤務している男女のエンジニアを対象に, MCTを実施し, 年齢別の考察を行った.勤務先などで実施するに当たっては, 通常の紙筆の試験が難しいため, モニタ上で行う試験を改良し, データベースを利用するなどによって, 試験環境の制約を極力除くこととした.また, 従来の紙筆によるMCT試験結果と比較するために, 大学生の男女による図学学習の前後の得点比較を行い, 本実験システムによる結果の妥当性を検証した.
著者
早坂 洋史 森田 克己 松岡 龍介
出版者
JAPAN SOCIETY FOR GRAPHIC SCIENCE
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.57-58, 2001

図形認識力における男女差は、よく知られているにも拘わらず、その理由は必ずしも明白ではなかったように思われる。A.Peaseらは、彼らの著書『話を聞かない男、地図が読めない女』の中で、人は性によって異なった構造の脳、いわゆる男脳と女脳を有しているとし、その構造の違いにより種々のシチュエーションでの行動パターンが異なっているとしている。例えば、一般的に女性は男性に比べ地図を読むのが苦手だったり、方向音痴だったりするのは、この脳の構造の違いによるものとしている。もしこれが本当ならば、特に図形を取り扱う図形科学系の授業でも、この男脳・女脳を考慮しての教授法の展開が必要となってくると考えられる。本報告では、A.Peaseらが提案している、男脳・女脳テストを紹介すると共に、男脳・女脳テストを著者らが所属する大学で実施した結果につき述べる。男脳・女脳テストの被験者数は、三つの大学で合計257名 (男109名、女148名) であった。テスト結果の点数により、男脳・女脳の分布図を作成した結果、男脳・女脳のオーバーラップ域 (150~180点) に約1/3の学生が含まれること、この範囲を男脳側に20点広げ、130~180点とすると、約半数が含まれること、男性のみの傾向としては、男脳側の130点と90点にピークを有すること、女性のみの傾向として、オーバーラップ上限値の180点と男脳域の100点の両方に二つのピークを有することなどがわかった。また、北海道大学社会工学系の学生 (男35名、女10名) の傾向と上述の全体傾向との比較の結果、約8割弱は男性であるにも拘わらず、オーバーラップ上限の180点にピークを有し、80~230点までの広範な学生層であることなどが明らかになった。今後の課題としては、男脳・女脳テスト結果と図形科学の成績や切断面実形視テスト (MCT) の点数などとの関連性、専攻の違いによる男脳・女脳テスト結果の違いや傾向、などについての詳細な検討は、今後の課題である。
著者
蛭子井 博孝
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.3-8, 1995 (Released:2010-08-25)
参考文献数
8

Descartes' oval is defined as mr1 + nr2 = kc by using bipolar coordinates. Where, if m=n, it is ellipse. According to this definition and a number of the properties, it can be said that the Descartes' oval is essential extension of ellipse.This time, the minor axis of oval that has the similar properties to those of the minor axis of ellipse is found. This minor axis is the segment connecting the middle point 0 of the major axis (the axis of symmetry) of oval and the point Np on the oval, which is at the shortest distance from the point 0. The length of this minor axis is expressed by α√1-eLeR, where α is a half of the length of the major axis, and eL and eR are left and right eccentricities, respectively. As for this minor axis, its proof and a number of the properties are discussed.Next, the method of defining ovaloid which is convex, closed curved surface in space by extending the oval on plane is found, therefore, it is reported. This ovaloid has, as the contours of the orthographic projection from three directions, circle, Descartes' oval and a fourth order curve like ellipse. Further, the parametric expression of this ovaloid is derived. In this way, the new properties of oval are able to be added, therefore, it is reported.
著者
ヘイムダール リセロッテ 兼松 祥央 鶴田 直也 茂木 龍太 三上 浩司 近藤 邦雄
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, 2019

ホラー作品において,恐怖の対象となるキャラクターなどをあえてはっきり映さない演出がおこなわれることがある.これは恐怖の対象がはっきりと見える場合と比べ,視聴者に対してより強い恐怖感を与えることができる.また,この「恐怖の対象を隠す演出」をおこなった場合でも,ストーリー上のある時点で恐怖の対象を登場させることで,視聴者の恐怖感をより高めることができる.その際に重要なのは,カメラワークをはじめとする登場のさせ方に関する演出や,登場させるタイミングである.そこで,本研究では視聴者が知覚する恐怖のレベルの影響を明らかにすることを目的とした.そのため,既存作品を用いてホラー作品における恐怖を演出するためのタイミングやカメラワークを分析した.
著者
金子 颯介 辻合 秀一
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2-3, pp.11-21, 2014 (Released:2015-09-01)
参考文献数
3

我々が生きる現代はコンピュータ技術が日々進歩している.新しい技術に挑戦することは,新しい発見につながることはもちろん,今まで以上にエンターテイメント性を含む作品を制作することができると考えインタラクティブアートにおいて調査していく中で出会ったvvvvという新しいプログラミングツールについてまとめ,初心者向けのマニュアル作成を目指した.そしてその過程で得た知識を用い,vvvvでオリジナルのプログラムを組んでみる.マニュアル作成とオリジナルプログラムの作成、この2点をメインの研究内容とする.
著者
高 三徳 吉田 貞彦 桜井 俊明 五十嵐 三武郎
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.38, no.Supplement1, pp.129-134, 2004 (Released:2010-08-25)
参考文献数
8

複雑な自由曲線・曲面の高品質化デザインのためには, 形状の滑らかさを定量的に正確に評価する手法が不可欠である.本論文では, 自由曲線・曲面の連続性の理論および実際の滑らかな形状の設計条件を述べ, 3次元CADソフトシステムに取り込まれている曲率分布とハイライトによる滑らかさの評価方法について考察を行った.また, 曲率分析法, 環境マッピング法, ゼブラマッピング法などの評価方法をマウスボディーモデリングへの応用を試みた.これらの方法は対話型設計にチェック機能として有効であるが, 設計のプロセスと連動させ, 評価と修正が自動的に行うことによって, 設計作業時間が大幅に短縮されることが期待される.
著者
太田 英一 南 和一郎
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.29-35, 1987 (Released:2010-08-25)
参考文献数
3
著者
福江 良純
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.42, no.Supplement2, pp.57-62, 2008 (Released:2010-08-25)
参考文献数
4
被引用文献数
1

彫刻とは, 材料の素材が持つ3次元の立体性を本質的な形式とする芸術である.線遠近法が平面に奥行き概念を形成するよりも古くから, 彫刻は立体であり続けている.しかし, 彫刻が3次元であるという自明の事実と, 彫刻を立体として捉えるということは同一ではない.そこには, 奥行き概念を平面上で獲得する絵画空間の逆説性にも似た, 特異な立体認識の仕組みがある.つまり, 立体概念とは, 単なる知覚以上の内容を意味し, その点では, ある面主観的な認識といえる.だが, それは2次元の平面に投影された線の感覚を必要とし, それは技術的な検証が可能である.ただし, 彫刻における線の感覚は, 物性を伴う実体に対する操作を直接導くもので, そこに彫刻の独自性がある.つまり, 彫刻の立体概念には, 時間, 行為といった形状とは別種の要因が密接に関係しているのである.
著者
友枝 明保 小野 隼 杉原 厚吉
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.3-9, 2016 (Released:2017-02-01)
参考文献数
18

クレーター錯視やホロウマスク錯視は,知覚する立体の凹凸が反転して見える錯視として有名である.クレーター錯視では,照明がもたらす陰影によって凹凸が反転すること,ホロウマスク錯視では,凹凸の反転に加えて,観察者の視点位置の変化に伴った立体の回転運動が錯視として観察されることが知られている.「矢印の幻惑」(友枝・杉原,2012)は,計算によって得られたくぼんだ構造を持つ矢印型の新しい錯視立体であり,クレーター錯視やホロウマスク錯視と同様の錯視現象が観察される.さらに,「陰影付き矢印の幻惑」(友枝・小野・杉原,2013)は,適切な陰影を与えることで,平面に描かれた矢印と錯視立体を同一のデザインとして見せることに成功している.本稿では,これらの作品を創作する数理的な方法として,くぼみ構造を持つ矢印型の錯視立体を構成する幾何計算,および,凹凸復元の手がかりとなる各面の陰影を計算する方法について解説する.
著者
牧 博司
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.36, no.Supplement, pp.135-138, 2002 (Released:2010-08-25)
参考文献数
3

教室は密室であってはならないという立場で, 筆者担当の「機械製図II」の科目につき, 機械の分野の図面の採点例を紹介し, 筆者の教育哲学を述べたものである.機械製図の教育がトレーシングや物真似教育である限り, ほとんど同じ作品が提出されるから採点結果に大きな差の付きようがない.すなわち, 学生の到達度の判定が粗くなってしまう.到達度の判定に最適な出題は, 組立図を与えて指定した部品の部品図を描かせることである.あるいは部品図を与えて組立図を描かせることである.本資料は前者の出題につき2001年度の採点例を紹介したもので, 採点基準とその結果を示し, 会員の参考に供するものである.