著者
土師 誠二
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.26-30, 2020 (Released:2020-03-15)
参考文献数
16
被引用文献数
1
著者
静間 徹 石渡 一夫 田中 千陽 福山 直人
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.1-7, 2013 (Released:2013-04-01)
参考文献数
17

動物モデルを用い,黒酢のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性大腸炎に対する効果を検討した. C57black6マウスを,通常飼料を与えた対照群と黒酢含有飼料を与えた黒酢群(各群 8匹)に分け, 3.5% DSSを 12日間投与して大腸炎動物モデルを作成した. DSS投与後,体重減少,血便の頻度について観察した.さらに 12日後に大腸を摘出し,組織学的所見,大腸組織中ニトロチロシン値,尿中 nitrate and nitrite(NOx)値について検討した.結果は,黒酢群において,体重減少や血便が有意に抑制され,組織学的にも大腸炎の軽減効果を認めた. NOx値は両群間で有意差を認めなかったが,黒酢群でニトロチロシン値が有意に低下した.これらのことから,黒酢による抗大腸炎効果の機序のひとつとして,抗酸化作用が推測された.
著者
射場 敏明
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.1-7, 2017 (Released:2017-06-20)
参考文献数
28

生体侵襲に伴い,さまざまな種類の細胞において,いろいろな細胞死が誘導される.これらの細胞死が,侵襲の緩和やさらなる増幅にかかわっていることが知られるようになったのはごく最近のことである.細胞死形態についても,かつてはアポトーシスとネクローシスというシンプルな対立構図で理解されていたが,最近の研究では未知のものまで含めて多数の細胞死形態が存在していることが明らかにされており,パラダイムシフトが生じている.特に炎症の最前線で機能する好中球については,2004 年にneutrophil extracellular traps(NETs)放出を伴う新たな細胞死形態であるNETosis が報告され,近年注目を集めている.ここでは特に侵襲とそれに対する生体反応に深くかかわっている好中球の細胞死に関する最近の知見をまとめ,併せて生体侵襲や血液凝固との関連を解説する.
著者
渡邉 栄三
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.287-292, 2019-12-15 (Released:2020-01-15)
参考文献数
28

Autophagyは, 細胞の自己成分をlysosomeに運び込み分解する機構であり, 必ずしも細胞死を意味するわけではない. 飢餓応答としての栄養供給という働き以外にも, 不要なオルガネラの分解, 病原微生物の排除, 腫瘍抑制などの役割も確認されており, むしろ生命維持に必須のシステムである. そして敗血症病態下での重要臓器 (肝, 腎, 脾臓の免疫担当細胞など) においては, 発症早期には一過性にautophagyは亢進するものの, その後停滞傾向に向かうことが判明してきており, 臓器保護的な役割を担っている. 一方, 敗血症時の骨格筋では, autophagy過活性が筋萎縮を惹起することも報告され, 臓器やその構成細胞によっては諸刃の剣である. 敗血症とautophagyの関与の解明と, autophagyの生体でのモニタリング手法の確立が, 敗血症時のautophagy動態の制御を企図した栄養管理実現へのポイントである.
著者
荒金 英樹
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.317-323, 2018-12-15 (Released:2019-02-01)
参考文献数
35

がん患者の栄養障害の原因は栄養の摂取不足による飢餓と栄養の利用障害である悪液質があり,前者は適切なアセスメントと栄養補給により改善が期待されるが,後者の悪液質は通常の栄養療法での改善は困難で病状の進行とともに悪化し,いかなる栄養療法も対応困難な不応性悪液質に至る.この悪液質は炎症による複合的な代謝障害であり,骨格筋を優先的に障害することから運動療法の役割は大きく,悪液質またはその前の段階である前悪液質の時期では,がんやがん治療による身体諸症状に対する改善効果が期待されている.こうした介入も運動療法,栄養療法の単独での効果は難しく,リハビリテーション栄養の概念に基づく多職種による複合的な介入が求められる.しかし,病状の進行により不応性悪液質に至った患者でのこれらの介入は患者の症状を悪化させる可能性があり,漫然と継続するのではなく,その目的を明確にし患者・家族の負担と利益のバランスを念頭に置き,適切なケアを選択することを心がけるべきである.
著者
山本 寛 Vo Nguyen Trung 貝田 佐知子 山口 剛 村田 聡 谷 眞至
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.199-204, 2016 (Released:2017-01-17)
参考文献数
18

高度肥満症に対する減量手術は,2型糖尿病(T2DM)をはじめとするメタボリックシンドロームを改善する効果があり,肥満T2DMのみならず,非肥満糖尿病患者に対してもT2DMを手術で治す,いわゆるメタボリックサージェリーが注目されている.しかし,手術によりT2DMが改善するメカニズムは明らかにされていない.基礎的・臨床的検討から,手術により過剰分泌するインクレチンをはじめとする消化管ホルモンがT2DM改善のキープレーヤーであることが考えられている.特に,消化管の部位により分泌される消化管ホルモンが異なることが重要であると考えられる.【方法】今回われわれは,ラットの胃・十二指腸・空腸・回腸の異なる4カ所の消化管に栄養チューブを留置したモデルを作成した(各n=10).チューブ留置1週間後に,意識下ラットに栄養チューブより50%ブドウ糖をゆっくりと注入し,ブドウ糖負荷後0,10,30,60,120,180分に大腿静脈カテーテルから採血し,血糖・インスリン・GLP-1を測定した.インスリン感受性はMatsuda indexを用いて評価した.【成績】回腸からのブドウ糖注入では,他の部位に比較し,ブドウ糖負荷後の血糖は低値を示した.ブドウ糖負荷後の血中インスリン・GLP-1は,胃・回腸からの注入に比べ十二指腸・空腸からの注入で高値を示した.インスリン感受性は,十二指腸・空腸からの注入に比べ回腸からの注入で高値を示した.【結論】ブドウ糖負荷後の血糖・インスリン・GLP-1値は,ブドウ糖を注入する消化管の部位により異なった反応を示した.十二指腸・空腸をバイパスし,回腸に直接ブドウ糖を負荷することにより,インスリン感受性が高まり血糖上昇は抑えられた.
著者
松井 亮太
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.118-123, 2022-08-15 (Released:2022-09-15)
参考文献数
30

2018年にGlobal leadership initiative on malnutrition (GLIM) criteriaが世界のコンセンサスを得た低栄養診断基準として発表され, 近年がん患者のアウトカムとの関連が報告されている. 系統的な検索を行うと, がん患者のアウトカム予測として12文献がヒットし, そのうち長期予後の検討が10文献と多く, 術後合併症の検討は6文献だった. 多くの文献でGLIM基準低栄養は術後合併症のリスク因子であり, 長期予後の独立した予後不良因子だった. 7文献は低栄養重症度別にmoderate低栄養とsevere低栄養に分けてアウトカムを比較しており, 低栄養が重症になるほどアウトカムが悪くなった. 一方で握力測定や歩行速度など身体機能を含めたmodified criteriaを用いた文献も多く, 身体機能評価を併用することで術後合併症と長期予後の予測精度が向上した. 現行のGLIM基準低栄養は術後合併症, 長期予後を含めたアウトカム予測に優れているが, 今後の診断基準改訂ではサルコペニア診断基準との整合性も含めて検討すべきかもしれない. GLIM基準低栄養は栄養介入すべき対象であり, 低栄養患者への栄養介入で術後合併症や長期予後を改善させられるのか, エビデンスの蓄積が期待される.
著者
西 正暁 島田 光生 森根 裕二 吉川 幸造 徳永 卓哉 中尾 寿宏 柏原 秀也 高須 千絵 良元 俊昭 和田 佑馬
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.59-61, 2022-04-15 (Released:2022-05-15)
参考文献数
10

近年では漢方の分子生物学的な作用機序の解明が進み, 臨床においても質の高いランダム化比較試験により漢方の有用性が明らかになってきた. 現在では大建中湯を含む多くの漢方製剤が広く臨床の現場で用いられている. 大建中湯は乾姜, 人参, 山椒の3つの生薬に膠飴を加えた漢方で, 外科領域においては癒着性イレウスや麻痺性イレウス, 過敏性腸症候群, クローン病などを適応とし, 消化管運動促進作用, 腸管血流増加作用,抗炎症作用などが報告されている. 近年では, 食道・胃・大腸・肝臓・膵臓・肝移植外科それぞれの領域でランダム化試験が実施され, 大建中湯の周術期管理における有効性が証明されている. また分子生物学的なメカニズムについても解明がすすみ, 現在, 大建中湯は消化管外科・肝胆膵外科の分野を問わず消化器外科全般における周術期管理のkey drugとして位置付けられている. 本稿では消化器外科領域における大建中湯による周術期管理のサポートについて概説する.
著者
河合 佑亮
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.67-72, 2023-04-15 (Released:2023-05-15)
参考文献数
17

ICUは重症患者診療の最後の砦であり, あらゆる医療機能において最も洗練されたチーム医療を切れ目なく提供していく必要がある. 国では, より安全で質の高い医療提供と医師の働き方改革推進が求められる中, 多職種連携に係る議論を進め, 診療報酬上の評価も大きく拡充している. 多職種連携による医療提供を推進するためには, 医療制度上の基準, 各専門職の業務範囲や役割などについて理解することが不可欠である. 重症患者の救命はもとより, 救命の先にある患者と家族の生活の質向上に向けて, 各医療機関の多職種医療提供体制に合わせ, それぞれの職種の専門性を活かしてPICS対策にとりくむことが重要である.
著者
住田 亙 渡辺 芳夫 高須 英見
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.93-98, 2013 (Released:2014-03-03)
参考文献数
6

【背景】電解質異常のため経静脈的な補充(DIV)が必要な腸管機能不全(IF)の症例で,低カリウム(K)血症の原因がナトリウム(Na)とマグネシウム(Mg)の欠乏と推測された症例を報告する.【症例】症例1 は20 歳女性.トライツ靭帯から70cm の空腸が経肛門にプルスルーされている.症例2 は10 歳男児.残存小腸は50cm で,回盲弁は無く上行結腸より肛門側が残存.ともに経口でカロリーは摂取できるが,低K 血症のためDIV に依存していた.尿中Na 排泄の抑制からNa 欠乏を疑い,Na を補給した.また低Mg 血症を認め,Mg を補給した.低K 血症は改善し,症例1 はDIV での電解質投与量を漸減中で,症例2 はDIVから離脱できた.【考察】報告症例の低K 血症の原因はNa とMg の欠乏であった.電解質異常でDIV 依存となっているIF には,検査上低下している電解質の補給では改善されない症例もあり,注意が必要である.
著者
芦田 欣也 中村 健太郎
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.22-26, 2023-02-15 (Released:2023-03-15)
参考文献数
12

牛乳由来のホエイタンパク質は消化吸収が早く,分岐鎖アミノ酸などの必須アミノ酸を豊富に含むことから栄養学的に優れたタンパク質源である.近年,われわれはホエイタンパク質およびその加水分解ペプチドが抗炎症効果を有することを見い出した.そこでこのホエイタンパク質の栄養学的優位性と生体調節作用に着目し,ホエイペプチド配合流動食MHN‐02を開発し,その有用性をさまざまな病態モデルにより評価してきた.その中で,MHN‐02はインドメタシン誘発ラット小腸障害モデルにおいて,腸間膜リンパ節および肝臓へのバクテリアルトランスロケーションを抑制することを明らかにし,その効果はMHN‐02の小腸粘膜の保護作用が関連することを組織学的解析から示した.さらにこのような腸管保護作用を有するMHN‐02は抗がん剤5‐フルオロウラシルの副作用である下痢の発生を遅延させ,体重を維持することも明らかにした.以上のことからホエイペプチドを配合したMHN‐02は優れた栄養組成と腸管機能の維持を通して,各種病態において治療に伴う副作用を軽減し,栄養状態を維持することによって,治療効果の向上に貢献することが期待できる.
著者
井上 善文
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.303-308, 2017 (Released:2018-05-22)
参考文献数
29
被引用文献数
1 1
著者
今浦 将治
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.179-184, 2021 (Released:2021-11-15)
参考文献数
37

医療技術の進歩は手術の低侵襲化を実現し, 高侵襲手術が困難な患者に対しても手術を可能にした. これにより, 高齢患者の手術件数は増加している. 一方で, 高齢患者は, 加齢に伴う臓器機能の低下, 併存疾患の存在, 栄養不良などから術後に予期せぬ合併症を発症することがある. そのため, 術前の呼吸機能訓練や栄養療法など, 手術に向けた準備が重要となる.まさに,本特集のテーマである「術前環境の適正化」が求められる. 薬はどうか.高齢患者に限らず,さまざまな疾患を合併している患者は,服用している薬剤数も多くなり,周術期の適切な薬剤管理が求められる.抗血栓薬の術前休薬は,代表例である.これは手術を安全に行うために重要だが,不用意な休薬は血栓塞栓症を発症させるリスクを高めてしまう. β遮断薬の急な中断は反跳性高血圧, 虚血症状, 不整脈などの中断症状を引き起こすことがあり, 継続が望ましい. 術前に薬を休止するのか, 継続するのかは患者側と手術側のリスク・ベネフィットを考慮した判断が求められる.

2 0 0 0 OA ストレス係数

著者
寺島 秀夫
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.177-184, 2019 (Released:2019-09-15)
参考文献数
30

2 0 0 0 OA 膵炎

著者
真弓 俊彦 新里 到 眞田 彩華 鍋島 貴行 宮里 和明 石川 成人 大石 基 遠藤 武尊 中園 和利 弓指 恵一 山中 芳亮 大坪 広樹 古屋 智規
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.349-356, 2016 (Released:2017-04-12)
参考文献数
24

重症急性膵炎では,多数のRCT やそれらのメタ解析で,発症72 時間以内の早期の経腸栄養が死亡率や合併症を有意に減少させることが示されている. しかし,実臨床では経腸栄養が早期に開始されていることは少なく,特に診断後48 時間以内に開始される例は非常に少ない.膵酵素の高値,腹痛,蠕動音消失,多量の胃液排出は,経口摂取の中止基準にはなっても,経腸栄養の中止基準にはならず,これらが認められていても経腸栄養を開始できる.重症急性膵炎でも早期から経腸栄養を開始することが肝要である. 従来,経空腸的な経腸栄養が施行されてきたが,メタ解析により,経空腸栄養ではなく,経胃栄養も可能かもしれないことが示唆されている.また,免疫調整栄養,プロバイオティクス,シンバイオティクスの有用性はまだ定かではない.