著者
村山 盛一 大村 武 ・宮里 清松
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.287-290, 1974-12-31
被引用文献数
4

栽培条件によってヘテロシスの発現がどのように変化するかを検討するために,筆者らが従来調査した交配組合せの中から組合せ能力の高いものと低いもの11組合せを選び,実用品種の経済的栽培条件の範囲に含まれる標肥普通植区・標肥密植区・多肥普通植区および多肥密植区の4条件で試験し,つぎのような結果をえた。 1)一般に組合せ能力の高い組合せはどの栽培条件でも高いヘテロシスを示し,組合せ能力の低い組合せはどの栽培条件でも低かった(表1)。 2)各形質のヘテロシスについて栽培条件間の相関係数を求めたところ,千粒重以外の形質については相関は極めて高く,ほとんどが1%水準で有意であった(表2)。 3)平均収量について有意性の検定を行たうと,鈴成×Zenith CI 7787は現品種および対照品種を通じて最高収量を示したベニセンゴクよりも3579/m^2(42%)の増収を示し,統計的に有意であった。愛国×Zenith CI 7787および農林22号×荒木も有意ではないがベニセンゴクよりもかなりの増収を示した(表3)。 以上の結果から,もしF_1種子を容易に大量に採種できる方法が開発されれば,イネの実際栽培におけるF_1雑種利用の可能性が考えられる。
著者
横尾 政雄 菊池 文雄
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.641-648, 1992-09-01
被引用文献数
1

Upland rice has been left without intensive studies on the inheritance of agronomic traits unlike lowland rice and there were very few reports on the genetic analysis of heading time. Since the Lm locus having multiple alleles controls primarily the varietal earliness and lateness of lowland rice (YOKOO et al. 1980), this report examined the role of the Lm locus in heading time of six native upland rice varieties. Under the natural day-1ength, the lowland rice tester lines ER with the early-heading gene Lm^e and LR with the late-heading allele Lm^u headed 84 a:nd 105 days after sowing, respectively. Four upland rice varieties. Kurumi-wase, Hideri-shirazu, Kyushu and Wase-dango-mochi, headed at almost the same time as ER. Kuroka-mochi headed intermediately between ER and LR, and Kirishima did two days later than LR.
著者
Cruz Normita de la KUMAR Ish KAUSHIK Rajendra P. KHUSH Gurdev S.
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.299-306, 1989-09-01
被引用文献数
2

米のアミロース含量,湖北温度およびゲルコンシステンシーに及ぼす登熟気温の効果を明らかにするために,5段階のアミロース含量(糠,極低,低,中および高)を代表する31品種を,IRRIのファイトトロン内4つの温度条件(21/25,29/21,33/25および37/29℃)下で生育させた.食味に関するこれら3要素の豊熟気温に対する安定性について分散分析した結果,品種効果,温度効果および品種と温度との交互作用はいずれも有意であった.また交互作用項では,回帰の品種間差(線型成分)および残差(非線型成分)が共に高い有意性を示したが,線型成分は誤差に対してだけでなく非線型成分に対しても有意であった.これは,登熟気温に対する各要素の反応が,品種によって大きな差のあることを示唆している.一般に,登熟気温の上昇に伴って,アミロース含量は低下した.全ての糯品種およびほとんどの高アミロース品種では,アミロース含量に対する品種と温度との交互作用が認められなかった.一方,アミロース含量極低,低および中の品種は,登熟気温に感応性(回帰係数のみ有意)あるいは不安定(回帰係数と残差共に有意)であった.糊化温度およびゲルコンシスチンシーについても,多くの品種では温度との交互作用が認められなかった.糯品種のIR29およびMalagkit Sungsong ならびに高アミロース品種IR42は,3要素全てについて最も安定していた.本研究の結果から食味および広域適応性の両形質に関する育種戦略を考えると,アミロース含量極低〜中レベルの品種育成については,環境効果による食味諸要素の変動が認められるので,選抜の場が重要な意味を持つことになろう.
著者
斎藤 清
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.385-389, 1969-10-31

Recently, Ixia is grown on a small scale for cut-flowers in oup country. Twenty-two commercial varieties were used to examine the somatic chromosome numbers, fertility, and other habitual characteristics. Six varieties were diploid (2n=20), 8 triploid (2n=30) and the rest were tetraploid (2n=40). Tetraploids, as well as most of the triploids, had larger flowers and prettier colors, and showed considerably higher fertility than diploids. Some varietal and inter-specific crosses succeeded in the mixed state with diploids, triploids, and tetraploids levels. So, it was assumed that these tetraploids and triploids would be of allopolyploid constitutions.
著者
後藤 虎男
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.114-115, 1971-04-30
著者
野田 昭三
出版者
Japanese Society of Breeding
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.173-176, 1967
被引用文献数
3

キヒラトユリLilium leichtlinii var. leichtlinii(Hook. fil)(一名キバナノオニユリ L. leichtlinii J.D.HOOKER)はコオニユリ L. maximowiczii REGELに非常によく類似しているが、黄色花をつけることで明らかに異なっている。この植物は古くからわが国ではしばしば文献上に記録されているが、現在はほとんど自生をみることができない。しかし欧米では園芸的な価値が認められ、以前から球根がわが国から輸出されていた(清水1949)。今回この貴重な材料を入手し、コオニユリと比較研究する機会をえたので報告する。材料は秋田県仙北郡西木村の佐藤政一氏のもとで栽培・保存されているものの一部を譲りうけたもので、鱗茎を本学の実験圃場に移植した後に観察に供した。またこれと比較するために、同じ地域に自生するコオニユリを使用した。細胞学的観察は前報(NODA 1960)と同一の方法によった。
著者
飯塚 宗夫 セイソ ラボ レミヒオ マドリガル
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.151-158, 1978-06-01
被引用文献数
1

高等植物の花器諸器官は世代交代の上からみて最も重要な機能を持ち,蕚,花弁,葯,花糸,雌蕊,花盤など,それぞれ属・種の特徴ある形態に分化している。これら,花結諸器官は,もちろん,もとをただせば,同一の遺伝質をもった細胞から構成されているはずである。本研究はこのような花器諸器官を置床し,カルス形成,新器官や新個体の分化,分化個体の特性などについて調べ,分化に関する基本的諸知見を得ると共に,急速増殖,変異の誘発など育種面への応用的技術の開発を目的としている。材料には,ハナヤサイ,ミドリハナヤサイ,ハボタン,カンラン,コカブ,ハナダイコン,ミノワセダイコンおよびウォールフラワーなどアブラナ科植物を選んだ。置床はこれら材料の花弁,葯,花糸,雌蕊,花盤(花托)を用いてそれぞれ行ない,カルス形成,分化の様相をみた。この際,まず花粉形成の進みぐあいを目やすとした供試蕾齢と培地上における分化の難易度を見た。その結果,花粉四分子〜1核期の葯を持つ蕾からとった花器の諸器官から得られた成績が最もよかった。したがって他の実験にもこの発育期の蕾を用いた。培地は,MURASHIGE and SK00G(1962)を基本とし,これにIAA,IBA,2,4-D,6-BAR(箪1表),時によりイノシン(10^<-5>M)を添加調整した。カルス形成は,蒲を置床した場合,軽度に見られるに過ぎないが,他器官を用いた場合には容易に行われ,特に花弁と花盤では極めておう盛であった。この場合,培地としては,2,4-D(10^<-5>M)を単独添加したM59,または6-BAR(10^<-5>M)との併用添加によるM.60がよく,ついでM.56,M.61などであった。
著者
中川 元興 渡辺 進二
出版者
Japanese Society of Breeding
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.260-264, 1957

15 crosses were used to study on the inheritance of kernel texture in wheat varieties which affects mealy and glassy of kernels and results were shown in table 1 and figure 1. From these results, the inheritance of kernel texture was proved to be influenced by factors in the generation of F<SUB>2</SUB> seed. The method of testing of kernel texture may be described as follows : After harvested, each kernel of parents and F<SUB>2</SUB> Seed was cut off middle part of kernel (cross section) by razer blade on the glass plate, and cross section of kernel was magnifyed by the magnifying glass (2. 5 fold) and selection which was made after a thorough comparison can be classified as follows. Glassy kernel (G) decided to select completely glassy, semi-glassy kernel (g) was selected almost parts (over 80%) of cross section were occupied by glassy, semi-mealy kernel (m) are occupied by mealy over 80% and mealy kernei (M) completely mealy. Segregation ratios was compared with glassy (contained G and g) and mealy (contained M and m). The results of segcrregation ratios to lernel texture of F<SUB>2</SUB> Seed generation, the factor hypothes and factor analysis were applied in this report as mentioned above. Results obtained may be summerized as follows.
著者
中川 元興 渡辺 進二
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.260-264, 1957-03-25

15 crosses were used to study on the inheritance of kernel texture in wheat varieties which affects mealy and glassy of kernels and results were shown in table 1 and figure 1. From these results, the inheritance of kernel texture was proved to be influenced by factors in the generation of F_2 seed. The method of testing of kernel texture may be described as follows : After harvested, each kernel of parents and F_2 Seed was cut off middle part of kernel (cross section) by razer blade on the glass plate, and cross section of kernel was magnifyed by the magnifying glass (2. 5 fold) and selection which was made after a thorough comparison can be classified as follows. Glassy kernel (G) decided to select completely glassy, semi-glassy kernel (g) was selected almost parts (over 80%) of cross section were occupied by glassy, semi-mealy kernel (m) are occupied by mealy over 80% and mealy kernei (M) completely mealy. Segregation ratios was compared with glassy (contained G and g) and mealy (contained M and m). The results of segcrregation ratios to lernel texture of F_2 Seed generation, the factor hypothes and factor analysis were applied in this report as mentioned above. Results obtained may be summerized as follows.
著者
江口 恭三 前原 為矩
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.39-48, 1979-03-01

近年沖縄県下で古い在来種タバコの子孫と思われる12の自生タバコの種子が蒐集されたが,これらの蒐集系統について,形態特性ならびに主要病害に対する抵抗性を調査するとともに育種素材としての有用性を検討した。これら蒐集系統の問にはきわめて広範な形態変異がみられ,草丈は95.3cmから171.9cm,葉数は9.8枚から17.3枚,葉型指数は0.471から0.764まであり,葉型には有柄と無柄,花色にはピンク,白,ピンクと白の絞りの3種類があった。病害抵抗性については,いずれも黒板病とうどんこ病にはある程度の低抗性を示したが,立枯病にはほとんどが罹病性で,疫病には高度抵抗性から罹病性まで広範な変真が認められた。従来わが国の在来種の中には疫病に対して高度な低抗性を示す品種はみつけられておらず,本試験で高度な低抗性を示した系統は育種素材として有用であると推察された。
著者
鵜飼 保雄
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.107-109, 1989-03-01
被引用文献数
6
著者
町田 暢 御子柴 公人 山口 和重
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.307-313, 1961-12-25

大麦の凍霜害低抗性の品種間差異を明らかにしようとして,耐寒性の強いコウゲンムギと弱いみすず大麦を供試し,その生育各期に一5℃の低温定温器で6時間処理して,低温障害の差異を調査した。(1)低温による障害は著しく,生育を遅延させた。また,収量に影響甚しい時期は伸長期から穂孕期であった。(2)茎葉に及ぼす障害の程度は耐寒性の強いコウゲンムギに甚しく,弱いみすず大麦は軽微であった。(3)幼穂の凍死は幼穂長と関係し,幼穂長が6mm以上になると凍死するもの多く,5mm以下では少たかった。これはまた,桿長と密接に関係し,桿長が長く,幼穂が地表に現われやすくたるほど凍死率は高くたった。しかし,幼穂そのものの凍霜害低抗性の品種間差異は認めることができたかった。(4)凍霜害による幼穂の生死の判別にはLUYET氏溶液による染色が有効であることが明らかにされ,それによれば,幼穂の凍死には,(i)幼穂そのものが凍死する場合(ii)幼穂に続く幼桿数節が凍死し,二次的に幼穂も枯死する場合(iii)両者が凍死する場合以上の三段階のあることが判明した。
著者
吉田 智彦
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.50-57, 1980-03-01

オオムギの早生品種を晩夏に播種し12月〜1月に子実を収穫する豆まき栽培法により品種比較を試みた。無かん水条件下では品種内の出穂や成熟が乱れ,子実収量も低かった。かん水条件下では子実重が22.6〜39.5(kg/a)であった。西海皮24号(二条種)はどの環境下でも穂数が多く多収であった。羽系S104(六条種)はほぼ1個体1本の穂のみで穂揃い良く,早生で播種後約3か月で収穫できた。CIMMYT育成の系統は早生で本栽培に適するものが多かった。今後さらに多収を得るためには,成熟の穂揃いは悪いが分けつの多いもの,たらびに穂摘いを良くし成熟までの日数を短縮するためには分けつの少ない1穂小花数の多いもの,の両タイプの品種を選抜していく必要のあることが明らかにたった。
著者
江口 恭三 岡 克
出版者
Japanese Society of Breeding
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.45-50, 1966

栽培品種ヒックス・ブロードリーフから葉数の4~5枚多い低度多葉型個体を選抜し,育成固定をはかったが,固定系統が得られなかったので,その遺伝的原因を研究し,つぎのことを明らかにした。1)低度多葉型個体の自殖次代または通常品種との交雑次代において,普通型個体と多葉型個体とがそれぞれ1:2または1:1の割合に単性遺伝の分離を示した。2)多葉型個体は普通品種より高度の短日性を示す劣性遺伝子をもつヘテロ型であり,劣性ホモ個体は出現しなかった。3)劣性ホモ個体は接合体致死作用により不稔種子と在り枯死しているものと考えられた。4)接合体致死作用は劣性の短日性遺伝子がホモの場合にのみ認められ,両者はきわめて密接な関連をもっていた。
著者
平井 正志 小崎 格 梶浦 一郎
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.138-146, 1986-06-01
被引用文献数
3

カラタチはカンキツ類の台木として広く利用されているが,今までほとんど系統選抜されることなく用いられてきた.またカラタチは多胚性であり,通常珠心胚によって無性生殖するとされており,無性胚によって得られる遺伝的に均一な実生は台木としての優れた性質のひとつである.しかし,古くからその実生の中に生育の不均一なものがある程度存在することが知られており,その一部,葉の大きいものは4倍体実生であるとされている.しかしその他のものについては原因が解明されていない.本研究ではアイソザイム分析により,カラタチ実生中の交雑実生を識別し,また既存のいくつかの系統について,由来を検討した. カラタチのグルタミン酸オキザロ酢酸アミノ転移酵素(GOT)のアイソザイムをアクリルアミドスラブゲル電気泳動で調べた.ほとんどのカラタチ個体はGot-1およびGot-2の遺伝子座についてそれぞれ3本のバンドを示し,それぞれMPとSMの遺伝子型を示した.しかしその実生の一部ではGot-1,またはGot-2のいずれか一方または両方がホモにたっていた.これらの実生はカラタチ間の交雑により生じた個体であると考えられた.当支場に栽植されている,遺伝子型MP,SMの樹より採取された種子から生じた8ケ月の実生で調査すると,これらアイソザイムで識別できる交雑された実生の平均樹高は19.3cmであったが,その他の実生のそれは23.8cmであった.GOTアイソザイムで識別できたい交雑実生を考慮すると全実生中の交雑実生の割合は19.9%にのぼると推定された.また,苗木商から購入した8ケ月の実生についてもほぼ同様にカラタチ同士の交雑した実生が見いだされた.しかし一方,農家に植栽されている成木のカラタチを調査ではこのようた交雑実生が発見できなかった.以上の結果より普通に見られるGOT遺伝子型がMP,SMのカラタチはその他の遺伝子組み合わせより強勢た組み合わせを持っていて,自然のあるいは人為的た選択により残ってきたと考えられる,交雑実生の一部は他のカラタチよりも早く,3年目の春に開花した.これまで知られている形態的に特異な系統のうち,大花系のWebber-Fawcett,PomeroyおよびU.S.D.A.ならびに小葉系Bだとの系統はこのようた交雑に由来するものと推定された.花粉の形態においても交雑実生のものは無性胚由来のものと比べて若干の差がみられた・
著者
平井 正志 小崎 格 梶浦 一郎
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.377-389, 1986-12-01
被引用文献数
2

カンキツ類のアイソザイムによる遺伝子分析についてはT0RRESらによって行なわれているが,我が国に栽培されている多くのマンダリン類およびナツミカン,ハッサクなどについては未だ十分に分析がされていない.これらのカンキツのグルタミン酸-オキザロ酢酸アミノ転移酵素(GOT)およびリンゴ酸脱水素酵素(MDH)について分析した. 果樹試,興津支場などで保存されているもの105点,交雑あるいは自殖実生31点の計136点のカンキツを分析した.GOTについては粗抽出物を脱塩した後,またMDHについてはBlue Sepharose CL-6Bを用いて酵素を部分精製した後,アクリルアミドスラブゲル電気泳動で分析した.本研究ではGot-1の遺伝子座に関してS,A,M,FおよびP,Go-2の座ではS,M,BおよびA,Mdh-1ではA,T,B,DおよびGの対立遺伝子が識別された.このうち,Got-1のA,Got-2のA,Bは新たに発見されたものであった.
著者
高品 善 今西 茂 江頭 宏昌
出版者
Japanese Society of Breeding
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.33-37, 1997-03-01 (Released:2010-07-21)
参考文献数
18
被引用文献数
1

トマトの野生種 'peruvianum-complex'に属する Lycopersicon peruvianum の5系統, L. peruvianum var. humifusum の2系統,L. chilenseの2系統を花粉親とし,栽培種2品種を種子親とするF1雑種およびF1を花粉親とするB1F1戻し交雑種を胚珠選抜法によって育成した。F1およびB1F1の獲得効率は果実あたり発芽数(GOF)により評価した。F1および1994年と1995年のB1F1についてGOFの栽培品種間の相関係数を求め,さらに,それらを組み合わせた相関係数を求めたところ,正の有意な値となった(r=0,750**,d.f.=11)。年次問においても組み合わせた相関係数は有意な正の高い値となった(r=0,907^*,d.f.=3)。F1とB1F1間の相関係数は,2栽培品種とも正であるが有意ではなく,組み合わせた相関係数も有意にはならなかった(r=0,433,d.f.=3)。しかし,供試した系統の中で1系統がF1とB1F1間で全く異なるGOFを示したので,この系統を除くと,F1とB1F1の間に正の有意な相関係数が得られた(強力大型東光:r=O.754*, d.f.=5;Early Pink:r=O.924*,d.f.=3)。相関係数に関するこれらの結果は,栽培種に対する野生種の交雑不親和性に関して野生種系統間で差があり,さらにB1F1の獲得において野生種の各系統の交雑不親和性がF1の場合と同じように現れることを示している。供試した系統の交雑不親和性を3グループに分けるとおおよそ次のようになった。最も高いグループに L. peruvianum var. humifusumの2系統が入っており,中間のグループの全てはL. peruvianumであった。最も交雑不親和性の低いグループはL. chilenseの2系統であった。一方,F1とB1F1の回帰直線は,Y(B1Fl)=O.1082X (F1)+ 0.3364:強力大型東光, Y=O.1054X + O.0366:Early Pinkとなった。この結果から,予想に反してB1F1の獲得効率がF1よりも小さいことが推察された。