著者
井上 康昭
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.17-28, 1984-03-01

トウモロコシの一代雑種育種では,一般組合せ能力に対する改良と並行して,特定組合せ能力(SCA)の高い組合せの選定が必要となる。しかし,両親のSCAを適確に予知する方法は現在のところ十分に確立されていない。経験的に,遠縁の組合せ程SCAが高い傾向にあることが知られるため,地理的分布や形態的特性の違いによる分類結果や,育種の系譜を参考にして近縁関係を推定し両親組合せを決定している。SUTOら(1956)は,アジアに分布するフリント種を5つの型に分類した。これにアメリカデント種を加えた6つの型が日本における主た育種材料である。本研究の目的は,これら6つの型の間のSCAについての関係を明らかにし,一代雑種育成における両親決定上の一助にしようとした。 6つの型に属する11の自然受粉品種を選び,それらの間のダイアレル交雑の子実収量を検定した。さらに,ダイアレル分析から得られたSCA効果によって,異なる型の間のSCAについてその相対的大きさを比較した。 その結果,(1)異なる型に属する品種組合せ,特にフリント種とテント種との組合せにおいて収量およびSCA効果が高い傾向にあり,多収一代雑種が得られることが推測された。(2)カリビア型とアメリカデント種との組合せおよびペルシア型と他の型との組合せにおいて高いSCAが認められた。(3)本研究で得られたSCA効果と,従来の分類結果から推定される型の間の近縁関係との間に密接た関係が認められた。そのため,SCA効果に基づいた型の間の近縁関係の推定を試みた。
著者
衣川 堅二郎 谷本 宜隆
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.341-344, 1987-09-01

ラテンアメリカ,ネパール,日本の在来トウモロコシ各35,7および2品種のカルス形成能とカルス生長能を,完熟穀実の胚盤培養によって評価した.培地はMURASHIGE and SKO0G(1962)による組成に1lあたり2,4-D5mg,蔗糖30gおよび寒天8gを加えて用いた,キューバのTuson1とネパールの128A2に高いカルス形成能が,ボリビアのPatillo,コロンビアのPOyaなどに高いカルス生長能がみられた.また,Cateto Sulinoなどではカルス形成能の異たる系統が分離した.どの品種においても植物体は再生しなかった.
著者
桑田 晃
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.27-32, 1964-03-25

木本であるフヨウ(H. mutabilis)(2n=92)と草本であるクサフヨウ(H. moscheutos)(2n=38)との交雑の後代に新しい複二倍体を育成することが出来た。これを「アイフヨウ」(H. muta-moscheutos KUWADA)(2n=130)と命名する。本種の主な特性は次の通りセ'ある。F_1と同様に雑種強勢を示す。茎葉の諸形質は木本のフヨウに薯しく類似する。両親に比し花は大きく,その色は華麗であり,開花期間は著しく長い。花粉稔性高く,花粉粒は両親より大きい。の大きさは両親とほぼ同じである。種子の型はフヨウに類似し,またフヨウと同様に毛茸を有するが,その大きさは長さ,幅,厚さともにフヨウより大きい。種子稔性は両親よりやや劣るが良好である。本種のPMCでは65_<II>が観察され,成熟分裂は特に異常は認められず,根端における染色体数は130であった。
著者
池田 一
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.44-52, 1961-03-25

小麦品種の発芽種子,幼植物,葉身におけるアミラーゼ活力の変異と遺伝について研究し次の結果を得た。1. 発芽種子と幼植物のアミラーゼ活力の間には+0.90,また発芽種子と出穂期における葉身のアミラーゼ活力との間には+0.87の相関係数が認められた。2.この研究の範囲においては,アミラーゼ活力の強い形質は単因子で優性に遺伝した。3. アミラーゼ活力における温度の後作用が認められた。しかしこれは一つの例外を除き1代で消失した。4. 異る土壌型の後作用もまた認められた。そしてこの場合,発芽種子のアミラーゼ活力と同じ土壌に育つた葉身の活力との間の相関係数は+0.74であった。5. 発芽種子のアミラーゼ活力は,主要品種の試料の産地が寒い地方から暖い地方に移動するにつれ,2.41ccから0.35ccの範囲において漸次減少し,その地理的変異は2月の平均気温と密接た関係を示した。以上の結果から,小麦におけるアミラーゼ活力の地理的分布は,温度に対する遺伝的及びそれと同様な傾向をもつ非遺伝的な適応現象であろうと推察した。
著者
平野 寿助 菅 洋
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.107-111, 1963-06-25

(1)秋播性大麦(ハシリハダカとspontaneum nigrum)の完全春化した種子を,温室室で播種し,一定期問,短日(8時間日長)及び長日(24時間日長)下で育て,その後その逆の条件下に移し先週処理の後作用及び目長転換の出穂に及ぼす影響を調査した。(2)短日→長日の場合前処理される短目の日数が増加するほど,播種後出穂迄日数は増加する。しかし長目に移してから出穂迄の日数は,ハシリハダカでは前処理.短日目数の増加と共に減少しH. spontaneum nigrumではほぼ一定で変らなかった。前者は春化後の短日遅延の少ない早生品種に層し後者は短目遅延の多い晩生品種1に属する。(3)長目→短目の場合,前処理される長目の日数が増加するほど播種後出穂迄目数及び短日に移してから出穂迄日数が減少する。長日前処理の増加に伴う出穂迄日数の減少の度合は,H. spontaneum nigrumでは著しく大きくハシリハダカではあまり大きくたい。しかしこの・両者共一定目数長目処理すると,後は短日下においても連続長目下と同じに出穂する様にたる。このことは,一定期間長日処理されると最終葉数が決定し,後は短目にしてもそれが変更されたいことを示すものであろう。その日数はおおむね20目であった。葉数の面からは,大体6〜8日長日処理すれば,後は短日においても,連続長日下と同じ葉数で出穂Lた。この出穂迄日数と葉数とのずれ(20目と6〜8日)は,前長目処理が短いと葉長持に止葉長が著しく長くだり,そのため展開迄日数が増加するためと思われる。
著者
芦川 孝三郎
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.46-51, 1972-02-29
被引用文献数
2
著者
江川 宜伸 田中 正武
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.445-450, 1984-12-01
被引用文献数
2 4

新世界に起原したトウガラシは,4つの栽培種からたる。それらのうち,C.chinense,C.baccatum 及び,C.pubescens の3種は,主として中南米でのみ栽培されているのに対し,C.annunm var.annunm は,世界中の温帯から熱帯にかけて広く栽培されている。その野生型Var.minimum は,合衆国南部,メキシコ,グァテマラから南米のペルー低地に自生している。筆者らは,C.annunm の両変種間の類縁関係を明らかにするため,京都大学による中央アメリカ及び中央アンデス地域の植物探索によって得られた材料を中心に種内のF_1雑種を作出し,その成熟分裂を観察した。その締果,野生型には,相互転座による染色体構造分化が認められ,供試系統をその染色体構造に基づいてA,B及びCの3群に分類することができた。この3群間にみられる多価染色体に関しては,A-B群間,A-C群問の雑種は4価,B-C群間は,6価を生じた。供試系統の多くは,A群に属し,染色体構造に関しては,A型が最も普遍的な型であり,B及びC型は,A型から染色体構造分化により生じたものと思われる。B型の地理的分布は,メキシコ,ボリビアに,C型のそれは,グァテマラである。野生型に見られる核型の地理的分布による大きな変異(PICKERSGILL 1971)から判断すると,野生型には分布の各地で染色体構造分化が起こっている可能性がある。一方,栽培型に一は,構造変異は認められず,供試系統はすべてA群に分類された.なお,我が国対馬在来種もA群であった。本結果並びに栽培型の核型が均一なこと(PICKERSGILL 1971)を考え併せると,栽培型の起原は比較的新しく野生のA型群から起原したと結論される。
著者
丹羽 勝
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.421-428, 1985-12-01
被引用文献数
1

南米低緯度地方に栽培されるダイズ5品種と,日本の2品種を用いて,異なる日長条件下,または異たる播種日で栽培し,開花迄日数と主茎節数の変化を観察し,低緯度地方品種と日本品種の日長反応性を比較した. 第一複葉展開時から植物を12時間,12時間40分,13時間20分,14時間の各日長で処理したところ,開花迄日数および主茎節数は日長時間とともに指数関数的に増加した.日長時間に対する指数回帰から,12時間日長における開花迄日数および主茎節数(N12),開花迄日数および節数の日長による増加率(IR)を推定したところ,品種間に差が見られた. 開花迄日数,主茎節数とも,IRの最も大きい品種は日本のアキセンゴク,最も小さい品種は低緯度地方のIAC-8であったが,IRには低緯度地方品種と日本品種との間には,一定の傾向が見られなかった.一方,N12に関しては,開花迄日数および主茎節数とも,日本の品種は低緯度地方品種にくらべて,小さい値を示した. 供試品種のうち,低緯度地方品種3,日本品種2の合計5品種を用いて,5月21日から8月9日にかけて,20日間隔の異なる播種日で,植物を自然日長下,6時より18時までは30℃,18時より6時までは25℃の温度条件で育てたところ,開花迄日数および主茎節数は播種日が遅くなるにつれて減少した.出芽から開花迄の期間の日長時間を平均したところ,平均日長もまた播種日が遅くなるにつれて減少した. 開花迄日数,主茎節数とも,平均日長に対して指数回帰を行なったところ,よく適合した、各品種について,平均日長が14時間のときの開花迄日数,および主茎節数の値(N14)と,それぞれの形質のIRを推定した.開花迄日数,主茎節数ともIRには日本品種と低緯度地方品種の間には差が見られず,N14は日本品種のほうが小さかった。
著者
森 宏一 高橋 萬右衛門
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.226-238, 1981-09-01
被引用文献数
1

インド型イネ品種"Karalath","Chamock"および"Dalashaita"を日本型イネの検定用系統およびインド型イネの"Surjamukhi"と交雑し,花青素の基本着色遺伝子に関する遺伝分析を行った。これまでのC一A一P遺伝子体系をそのまま適用した限りでは,上記の交雑F_2集団において,両親の着色型から期待される正常分離を示す場合の外に期待外の着色型あるいは分離比を示す場合があった。そこで遺伝機構を説蔓月するために,CおよびP座に新しい対立遺伝子を仮定した。すなわち"Karalath"からはC脱,PKを,"Charnock"からはCBc,Pcを,そして"Da1ashaita"からはC^<BK>およびP^Kたる対立遺伝子を想定した。これらの対立遺伝子と従来の対立遺伝子との優劣関係は次のとおりである。[numerical formula]なお,分布遺伝子P^KはPよりも〓先への分布能カが劣り,P^CはP^Kよりも更に分布能力が低い。上述の遺候子仮説に基づくなら,本実験で供試したほとんどの組合せについて,そのF_2分離を統一的に説明できる。またF_3検定を行った5交雑組合せの内では3組合せでこの遺伝子仮説が支持された。残りの2組合せではF_3系統比に関し適合度が必ずしも高くはなかったが,F_3系統内での分離そのものは期待される分離であった。
著者
丹羽 勝
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.87-90, 1983-03-01
著者
海妻 矩彦 平 宏和 平 春枝 福井 重郎
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.81-87, 1974-04-30
被引用文献数
2

大豆たんぱく質の含硫アミノ酸含量に関する品種間差異をしらべ,その遺伝的性質を明らかにする目的で,1968年と1969年に岩手大学農学部において栽培された55品種を材料とし,たんぱく質含量(マクロ・ケルダール法,N×6.25)および含硫アミノ酸含量の分析(マイクロバイオアツセイ法)を行なった。得られた主要な結果は次のとおりである。1)品種間にみられた変異の巾は,たんぱく質含量で49.1〜34.8%,メチオニン含量で0.96〜0.67g/16gN,シスチン含量で1.22〜0.62g/16gN,合計の含硫アミノ酸含量で2.15〜1.29g/16gNであり,変異係数は,それぞれ,6.2,7.2,14.2,10.0%であった。含硫アミノ酸含量の品種間差異の大きさは,たんぱく質含量のそれと同程度か,もしくは,それ以上の大きさとみられる。2)遺伝力は,たんぱく質含量,メチオニン含量,シスチン含量および合計の含硫アミノ酸含量に関し,それぞれ,58.8,55.1,66.8,66.6%であり,含硫アミノ酸含量の遺伝力は,たんぱく質含量のそれと同等もしくはそれ以上に高い値を示した。3)小袖振,極早生枝豆,極早生はやぶさ,3号早生大豆,Laredoは含硫アミノ酸含量が高く,交配母本として有用である。また,晩生黒大豆や平豆は含量が低く,育種学的研究の材料として興味深い。
著者
遠藤 徹 井原 正昭
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.340-345, 1985-09-01

ゲルを用いるアイソザイム検出に際し,緑葉に対して用いる抽出剤の組成としての緩衝液(0.5M トリスー酢酸 PH7.5),中性洗剤(10% トリトン X-100),塩(0.5M 食塩),酸化防止剤(0.2M アスコルビン酸)およびフェノール吸収剤(ポリビニールポリピロリドン)について,その単独および複合効果を調査した.用いた材料はシダ植物(イノモトソウ)裸子植物(ソテツ,イチョウ,クロマツ,コウヤマキ,ヒノキ,イヌマキ,カヤ),双子葉植物(ツクバネガシ,ヤブニッケイ,ヒメカンアオイ,ツバキ,オオシマザクラ,フジ,マサキ,アオキ,キョウチクトウ)および単子葉植物(ミヤマエンレイソウ, ニホソイネ, ケンチャヤシ)の生葉100mgで,ザイモグラムとして検出した酵素種はパーオキシターゼとリンゴ酸脱水率酵素である. パーオキシターゼの場合,6種の抽出剤に対して少なくとも4群に分類できる.第1群はコウヤマキなどどの抽出剤でも同じようたザイモグラムが得られるもの,第2群は抽出剤成分の種類の増加につれてアイソザイムバンド数が増加するもの,第3群は逆にバンド数が減少するもの,第4群はアオキで6種の抽出剤のいずれを用いても抽出が極めて困難なものなどである.リンゴ酸脱水素酵素の場合は6群に分類できる.第1群はカヤとイネの2種である.第2群はイチョウ1種だが緩衝液を含む抽出剤を用いれば同じようなザイモグラムが得られる.第3群はクロマツなどで中性洗剤を含む緩衝液の抽出剤では同じようたザイモグラムが得られる.第4群は中性洗剤と酸化防止剤を含む緩衝液の抽出剤で同じようなザイモグラムが得られる.第5群は抽出剤の成分数の増加に応じて一般にバンドが増加するもの,第6群はパーオキシターゼの場合と同じくアオキで,用いた抽出剤の組成ではほとんど抽出困難な場合である. 以上の結果から,生体内におけるアイソザイムの存在様式ないし保持機構は植物種ごとに多かれ少なかれ異なり,例えば水でほとんど全部を抽出し得る場合から上記のすべての薬剤を投入しても抽出困難な場合まである.すなわち,アイソザイムにおける分化と同様,その保持機構もまた分化していると推論できる.
著者
池橋 宏
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.367-377, 1977-12-01

集団育種法の利点として,固定が進んでからの選抜の容易さや劣性遺伝子に支配されている形質が後期世代では高率でとらえられることなどが挙げられている。また初期世代のうちに可能な組換えが進行した後で,それを選抜に利用できることも集団育種法の利点と言える。しかしこの点の量的な評価は必ずしも容易ではない。この問題を選抜の具体的な場合に即して次のように設定することができよう。すたわち望ましくたい形質間相関が存在する場合に,無選抜で世代を進めると組換えの進行により形質間相関はどの程度に弱まるか。あるいは有望組換え個体の数は世代と共にどう変化するか。このような問題は常に育種家の関心事である。しかし関係する要因は多く,個々の実験から一般性のある答を得るのは容易でない。シミュレーションはこれらの問題を扱うのに適しており,その過程と結論は作物を栽培して行う実験の指針となるだろう。この論文ではまず組換え値と遺伝相関廉数の関係を通常の最的遺伝子の相加的モデルを基礎に検討し,両者の関数的関係を指摘Lた。次にこれを利用して多数の連鎖した遺伝子の確率的行動をもとにした,一種の2次元の準連続分布を構成し,与えられた組換え値ごとに,世代の進行にともなう遺伝相関係数の変化を求めた。その結果,遺伝相関係数は,大きな確率的変動をともなうため,組換えの進行の尺度としては不適当であるとみられた。一方高頻度の組換えから生ずる個体の数を,組換えの進行の尺度としてとらえると,この数はF_2では極めて少いが,F_4位までに急増することがみられ,とくに連鎖のある場合にこの傾向が顕著であった。これらの結果にもとづいて,F_2での遺伝相関係数が0.3程度となる模型集団について,F_2,F_3もしくはF_4で選抜を開始する選抜実験を試みた。その結果,遺伝的進歩,相関反応および有望組換え個体の数といった指標において,一般的にF_4で選抜を開始した方が有利であると結論された。しかしその有利さは,機会的変動や環境変動などの働きで,必ずしも顕著でないことが推察された。
著者
山口 裕文 中尾 佐助
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.32-45, 1975-02-28
被引用文献数
2

栽培植物の近縁野生種や同伴雑草(companion weeds)は作物の進化に重要な役割を果している(HARLAN1965)。雑草系統には品種改良の遺伝子源として重要なものが含まれる。燕麦の育種の基礎的研究として,日本の雑草燕麦をMALZEW(1930)のsystemに従がって分類地理学的に検討した。また,雑草燕麦の適応と日本への渡来について考察を加えた。 1970〜1971年の筆者の蒐集標本と京都大学,東京大学,国立科学博物館所蔵の措葉標本について調査したところ,3種(11亜種);Avena strigosa Schreb. subsp.barbata Thell., A. fatua L. sens. ampl., A. sterilis L.が雑草と認められた。A.fatua L.は7亜種:subsp. septentrionalis, subsp. nodipilosa, subsp. macrantha, subsp. cultiformis, subsp. praegravis から成り,最も多様であった。その内容は25変種,6亜変種,1品種で,このうち3変種(var. pilosiformis, var. hyugaensis,var. nipponica), 4亜変種,(subvar.pumila,subvar. Zine, Subvar. maniformis, subvar. pseudonana),1品種(forma subcontracta)を新分類群として記載した。
著者
Hsan Sai Aung 重永 昌二
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-12, 1990-03-01

本研究はライコムギに出現する分枝穂の型と出現頻度が,遺伝的背景や播種時期の違いによりどのように影響されるかを明らかにしようとしたものである.八倍体ライコムギ!系統と六倍体ライコムギ11品種・系統(Table1)を,5回の異なる播種期により栽培し,その結果出現した分枝穂の種類と頻度を調査した(Table2).分枝穂の種類は,穂軸分枝による分枝穂と小穂軸異常による分枝小穂に大別され,前者にはHay-fork形分枝穂,Y-fork形分枝穂,および止葉節分枝穂が見られた(Fig.1).また後者では出現部位を穂の基部,中央部,および先端部に分けて記録したが,基部に出現する分枝小穂の頻度が高く(Table2う,バナナ形双生小穂,対面双生小穂,密生分枝小穂,輪生小穂,角穂分枝小穂等の分枝小穂が出現した(Fig.1).分枝穂の多くは正常穂よつも一穏当たり小穂数および小花数が優り,着粒数が優っていたものは4品種・系統,劣っていたものは3品種であった(Table3).分枝穂の播種期別出現頻度は9月10日播種の場合が最も高く,2月13日および10月13日播種がこれに次ぎ,11月23日,12月24日播種の場合は低かった(Table2).9月播種の場合は幼穂形成期の日平均気温が約5℃の低温になること,2月および10月播種の場合もほぼ同程度の低温に幼穂形成期が遭遇すること(Fig.2)が分枝穂出現頻度を高くする原因の一つと考えられる.分枝穂の出現頻度は品種や系統により異なり,八倍体系統は六倍体系統よりもその頻度が高かった.また六倍体の4品種にはどの播種期の場合も分枝穂が出現しなかった.これらのことから,ライコムギには幼穂形成期の低温に遭遇することによって分枝穂を形成し易い遺伝的背景をもつものと,それをもたないものとが存在するように考えられた.しかし染色体構成や細胞質の違いと分枝穂の型および出現頻度との間には明瞭な関係は見いだせなかった.
著者
赤藤 克己 山県 弘忠 森 重之
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.82-87, 1964-07-05

1.1957年キバナコスモスの種子に5kr,10krおよび20krのX線照射を行ない,20kr区の後代より大輪型,矢車型および八重咲型など実用的価値が高いと考えられる二,三の変異体を育成しえた。
著者
島田 多喜子 大谷 基泰
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.212-222, 1988-06-01

日本のコムギ28品種(系統)を含む合計32品種(系統)について葯培養におけるポテト培地の検討をおこない、花粉からの胚状体形成に対する培地の効果、品種間差異、前処理の効果を調査した。一核期の中期から後期の未熟花粉をもつ穂を5℃で7日間処理した後、葯をポテト培地(Potato-2)に置床した。培養1か月で花粉から胚状体が形成され、その頻度は品種によって差があった。農林61号が最も高い胚状体形成率を示し、置床葯当り胚状体を形成した葯は17.1%であった。欧柔、農林12号、ナンブコムギ、Chinese Spring、フクホコムギでも比較的高く、それぞれ、10.9%、6.7%、6.5%、5.1%、5.O%であった。チホクコムギ、エビスコムギ、キタカミコムギでは殆んど胚状体の形成はみられなかった。0から11日間の低温処理後、葯培養した実験では、胚状体形成への低温処理の効果は不安定であった。数品種の葯をポテト培地上で培養した三年間にわたる三回のくりかえし実験の結果から、ポテト培地の有効性は安定であることが分かった。また皮を除いた塊茎をポテト培地の抽出用に用いるより、皮をつけた塊茎を用いる方が、胚状体形成への効果が安定しているようであった。ポテト抽出液の代りに市販のポテトデキストロース寒天培地を19.5g/l添加した培地も有効であった。
著者
秋田 重男 池本 節雄 楠原 操 小林 仁 小野 光幸
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.351-354, 1968-12-31

Selection process and main characters of two strains selected for direct planting were described. Chugoku 18 and Chugoku 25, which are different in root type, root size and growth habit, would provide new point of view in the direct planting cultivation of sweet potato.
著者
明石 良 足立 泰二
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.85-93, 1991-03-01
被引用文献数
1 15

一般にアポミクシス草種と言われているギニアグラス(Panicum maximum Jacq.)は,系統及びその遺伝子型によってアポミクシ又の程度を異にする.本報ではギニアグラスの未熟胚カルスから,高頻度に体細胞不定月三(SE)を形成した結果を示す.また,供試した品種および系統間に差異が認められ,アポミクシスとの関連についても検討を加えた.本実験で用いたギニアグラスは,農業生物資源研究所植物分類評価研究チーム囲場(宮崎市霧島)で保存中のもので,3保存品種及び9系統の計12genotypeを使用した(Table 1).滅菌した豊熟巾の種子から,O.5〜1.0mmの未熟胚を摘出し1Omg・1^-1,4-D,10%CW,O.8%Agarを添加したMS培地により25℃暗黒条件下で培養した(Fig 2).培養30〜40日後,カルスの上部に形成されたSEは解剖顕微鏡下で切り離し,さらにMS培地(1mg・1^-12,4-D,5%CW,0.2%Gelrite)で継代培養を行なった.またSEの発育促進のために1.0mg・1^-1Kinetinと1,Omg・1^-1GA3及び5%CW添加のMS培地に置床した(Fig.3).カルスは,培養後3〜5日目頃,胚の中央部分から形成され,その多くは透明なやわらかいカルスであった.しかし,その後,培養15日目頃には摘出胚の胚盤または中央部に相当する部分から白色でコンパクトなカルスが出現し始め,40日目には,カルスの.上部一面に形成された.さらに培養を重ねるにつれて,それらは突起状の不定胚構造を呈した(Fig 1).品種Petrie及ぴGattonでは,SEの形成卒が他の未熟胚よりも高かったのに対し,S67及びN68/96-8-o 1Oでは低く,N68/84-1-o 8では全く得られなかった(Table1).これらのSEを個別に分離して上述の発芽促進培地に置床したところ,Petrie,Gatton及びNatsuyutakaの3品種からは高頻度で植物体を誘導することができ,SEの形成卒と植物体再分化との間には品種及び系統間で顕著な差が認められた.そこでSE形成卒とアポミクシス程度との関係について調査を行なった(Fig.4).これによると本実験で供試したギニアグラスはSEの形成卒とアポミクシス程度によって3つのグループに分けることができ,その中でもPetrie及びGattonはSE形成卒が高く,さらにはアポミクシスの程度も商い値を示していることが判明した.