著者
斎藤 清二
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.7, pp.1463-1468, 2019-07-10 (Released:2020-07-10)
参考文献数
9
被引用文献数
2

Narrative based medicine(NBM)は,1998年に英国のGreenhalgh T,Hurwitz Bらによって提唱された医学/医療の概念であり,evidence based medicine(EBM)を補完する概念として一定の関心を集めてきた.本邦では,EBMとNBMは「患者中心の医療を実現するための車の両輪」と理解されている.近年,医療構造の急激な変化に伴い,改めてNBMの重要性が注目されている.また,2000年にCharon Aによって米国で開始された医学教育のムーブメントであるnarrative medicine(NM)は,医療者に必要な物語能力を涵養する教育法として,本邦の医学教育にも取り入れられつつある.本稿では,医療におけるナラティブ・アプローチとしてのNBMとNMの歴史・変遷を概観すると共に,現代の医療,特に地域包括医療,多職種連携ならびに医療人教育等の分野における最新の動向を加えて紹介したい.
著者
斎藤 清二 北 啓一朗 桜井 孝規
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.587-590, 1991-10-01 (Released:2017-08-01)
被引用文献数
1

A long-term course of physical and psychological treatment on a patient with laxative abuse was described in this report. A 52-year-old woman was referred to our hospital because of chronic diarrhes, hypokaremia, and general weakness with unexplained cause. Laboratory data showed hypokaremia and high value of plasma renin, angiotensin and aldosterone, which indicated pseudo-Bartter syndrome. Multiple diagnostic procedures on digestive organs including endoscopy and barium study revealed no organic abnormalities. A room search showed a package of laxative tablets (containing bisacody1), and the diagnosis of surreptitious laxative abuse was confirmed. Guide lines of management for this patient were introduced as follows; (1) The target of treatment should not be diarrhea but constipation and abdominal distention. (2) Confrontation regarding laxative use should be avoided until good physician-patient relationship would develope. (3) Psychotherapy would be introduced in a regular shedule. The patient could stop laxative use during the first admission. After laxative withdrawal, severe constipation and idiopathic edema developed. Supportive treatment fron both physical and psychological aspect was continued throughout several admissions and at the outpatient clinic. The patient has been free of laxative and diuretics ato the time 5 years after initial admission. Diagnosis and treatment of laxative abuse are usually difficult because patients often deny their laxative use. Another difficulty is to manage water retention and constipation after withdrawal of laxative. Long-term energetic support from both somatic and mental aspect seem to be essential help the patient give up laxative abuse.
著者
斎藤 清二
出版者
富山大学保健管理センター
雑誌
季刊ほけかん (ISSN:13464191)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.3-7, 2013-03

『神様のカルテ』は,医療における物語の展開を描き出すだけではなく,物語の主人公に共感し物語的現実を共に体験する読者を,そしておそらくは作者自身をも,変容させていく優れた媒介となる文学作品であるように思われる。
著者
斎藤 清二
出版者
富山大学保健管理センター
雑誌
季刊ほけかん (ISSN:13464191)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.4-8, 2012-09

苦しみに満ちた世界に対するコーピングとして「萌えを探求すること」は,比較的害の少ない,安全な方法であると言えるだろう。
著者
斎藤 清二
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1014-1021, 2012-11-01

医療プロフェッショナリズムの教育には,全人的医療を志向する心身医学が貢献できる可能性は大きい.しかしこれまで,共感性,利他性,自省性などの医師に必要とされる美徳をどのように教育するかについての理論的,方法論的な議論は不十分であった.近年主張されている,物語に基づくプロフェッショナリズムの教育は,医療における中核的な矛盾に直接アプローチできる有力な教育法である.物語に基づくプロフェッショナリズムにおける最重要概念は,苦境にある他者の物語を認識し,吸収し,解釈し,それに動かされて行動することのできる能力(物語能力)である.この能力を高めるための教育法を確立するためには,物語技能,物語的訓練などの概念を整理する必要がある.本稿では,米国において実施されている物語的訓練法としてのパラレル・チャート,および本邦で実施されている「複数の視点からの物語作成実習」「Webシステムを利用した反省的記述と物語共有を通じての経験的学習」の実際について紹介した.
著者
山田 洋子 岡本 祐子 斎藤 清二 筒井 真優美 戸田 有一 伊藤 哲司 戈木クレイグヒル 滋子 杉浦 淳吉 河原 紀子 藤野 友紀 松嶋 秀明 川島 大輔 家島 明彦 矢守 克也 北 啓一朗 江本 リナ 山田 千積 安田 裕子 三戸 由恵
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

質的研究とナラティヴ(語り・物語)アプローチによって、ウィーン、ロンドン、ハノイ、シカゴ、海外4都市の大学において、多文化横断ナラティヴ・フィールドワークを行った。心理学、医学、看護学による国際的・学際的コラボレーション・プロジェクトを組織し、多文化横断ナラティヴ理論および多声教育法と臨床支援法を開発した。成果をウェッブサイトHPで公開するとともに、著書『多文化横断ナラティヴ:臨床支援と多声教育』(やまだようこ編、280頁、編集工房レィヴン)を刊行した。
著者
斎藤 清二 北 啓一朗 桜井 孝規
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.587-590, 1991-10-01
被引用文献数
1

A long-term course of physical and psychological treatment on a patient with laxative abuse was described in this report. A 52-year-old woman was referred to our hospital because of chronic diarrhes, hypokaremia, and general weakness with unexplained cause. Laboratory data showed hypokaremia and high value of plasma renin, angiotensin and aldosterone, which indicated pseudo-Bartter syndrome. Multiple diagnostic procedures on digestive organs including endoscopy and barium study revealed no organic abnormalities. A room search showed a package of laxative tablets (containing bisacody1), and the diagnosis of surreptitious laxative abuse was confirmed. Guide lines of management for this patient were introduced as follows; (1) The target of treatment should not be diarrhea but constipation and abdominal distention. (2) Confrontation regarding laxative use should be avoided until good physician-patient relationship would develope. (3) Psychotherapy would be introduced in a regular shedule. The patient could stop laxative use during the first admission. After laxative withdrawal, severe constipation and idiopathic edema developed. Supportive treatment fron both physical and psychological aspect was continued throughout several admissions and at the outpatient clinic. The patient has been free of laxative and diuretics ato the time 5 years after initial admission. Diagnosis and treatment of laxative abuse are usually difficult because patients often deny their laxative use. Another difficulty is to manage water retention and constipation after withdrawal of laxative. Long-term energetic support from both somatic and mental aspect seem to be essential help the patient give up laxative abuse.
著者
斎藤清太郎著
出版者
冨山房
巻号頁・発行日
1914
著者
斎藤清太郎著
出版者
明治書院
巻号頁・発行日
1941
著者
斎藤清太郎著
出版者
明治書院
巻号頁・発行日
1930
著者
斎藤清太郎著
出版者
明治書院
巻号頁・発行日
1917
著者
斎藤 清二
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.461-467, 2017-08-15

事例がセミナーの中で非公式に紹介されたにせよ,症例検討会の中でいつもの形で発表されたにせよ,どんな場合であっても,臨床科学のデータを発表する方法は私にとっておなじみのものだった。その内容は必然的に新しいもの─報告された症状と観察され測定された所見から組み上げられたパズル─だったが,患者の病気についての記述や,医師による診断と治療についてのそれは,私が専門とするところだった。それは物語,つまり,医師と患者という個別の人間達の行動や動機に関する物語的記述であり,彼らはそれぞれの形で状況に不満を抱いたり,その努力が報いられたり,運命に悩まされたりしている。物語を病院内で見いだすことになるとは,私には思いもよらなかった。医学は科学ではないのか? (Hunter, 1991/斎藤,岸本監訳,2001)
著者
前田 仁一郎 斎藤 清克
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.75-85, 1997-04-24
参考文献数
55
被引用文献数
4

日高火成活動帯では古第三紀の苦鉄質深成岩体が白亜紀後期から古第三紀初期の付加体の中に貫入している。日高山脈には苦鉄質深成岩類・高温型の変成岩類・アナテクサイトからなる日高火成活動帯の地殻断面が露出している。この地殻断面から2つの性質の異なったマントル由来未分化マグマ, Nタイプ中央海嶺玄武岩(N-MORB)質と高Mg安山岩(HMA)質, が見いだされた。N-MORBとHMAの組み合わせは海嶺と海溝の衝突モデルによって説明することができる。すなわちNMORBはクラー太平洋拡大軸にそって上昇するアセノスフェア(レルゾライト質, ε_<Sr>-27. 79, ε_<Nd>-+10. 71)に由来し, HMAは海嶺沈み込みによってもたらされた熱異常によって上盤プレートのくさび状マントル(ハルツバーガイト質, ε_<Sr>=+2.17, ε_<Nd>=+2.84)から発生した。マントル由来未分化マグマの付加体底部への透入によってグラニュライト相に達する高温型変成作用とアナテクシスが発生し, 珪長質の変成岩類とカルタアルカリ質のマグマが形成された。マントル由来未分化マグマの地殻内での分化作用は付加体構成物の同化作用を伴った。マントル由来マグマとアナテクシスによる地殻由来メルトとの混合もまたカルクアルカナ質の火成岩類をもたらした。すなわち, 以上のようなプロセスの複合によって未成熟大陸地殻が前弧域で形成される。付加体と衝突する海洋底拡大軸の火成作用と変成作用は, 玄武岩組成の海洋地殻が形成される通常の中央海嶺でのそれらとは著しく異なる。これら2つのセッティングの比較から, 大陸地殻の形成にとって厚い堆積岩類が本質的に重要な役割を果たしていることが示される。海嶺の沈み込みは始生代の大陸地殻の成長にとって重要な事件であったであろう。日高火成活動帯で観察されたマントル由来マグマの迸入によって誘発される地殻内マグマプロセスは火成弧深部のそれのアナログである。