著者
朴 仁根 角田 重三郎
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.404-410, 1983
被引用文献数
2

韓国の日印交配系統3品種(維新,密陽21号,密陽23号),それらの親として使われたインド型2品種(台中在来1号,IR8), 日本型1品種(ユウカラ)の幼苗を昼23゜,夜18℃の温度条件下で28~33日間育てた後,高温処理(昼30゜/夜25℃,3日)および低温処理(昼17゜/夜12℃,3日および7日)し,最上展開葉より数えて第2位の着生展開葉の光合成速度を28±2℃下で測定し,その葉の葉面積および水分合最,乾物重,葉緑素含量,窒素含量,可溶沐糖含量,でんぶん含量を測定した。その結果低温処理により炭水化物が葉中に蓄積し,この蓄積はまず可溶性糖で,ついででんぷんの形でおこり,またその蓄積の程度に品種間差異が認められた。そして,高温3日区と比べ,低温3日で大幅に光合成速度(葉面積当り)が低下した品種ほど,低湿3日で大幅に可溶性糖+でんぷんの含有率(対乾物重)が増加した(r=-0.847,α<0.05)。また,高温3日区と比べて低温7日で大幅に光合成速度が低下した品種ほど,低温7日で大幅にでんぶん含有量が増加した(r=-0.855,α<0.05)。一方,低温処理により葉緑素含量,窒素含量(いずれも葉面積当り)が低下し,その低下の度合に品種間差が認められた。そして,高温3区に比べ,低温7日で大幅に葉緑素食含量,窒素含量が低下した品種ほど,低温7日で大幅に光合成速度が低下した(それぞれr=+0.961,α<0.01, r=+0,822,α<0.05)。水分含量も低湿処理によって減少し,低温7日区における光合成速度と水分含量との間には正相関(r=+0,953,α<0.01)が認められた。供試品種のうち,低温処理による可溶性糖,でんぶんの蓄積,葉緑素含量,窒素含量,水分含量の低下が顕著でなく,低温区でも比較的高い光合成速度を保った品種は日本型のユウカラであり,これらの成分含量の変化と光合成速度の低下の最も顕著であったのはインド型のIR8であった。日印交配系統内でも,品種間差が認められた。 以上の結果は,葉中における可溶性糖,でんぷんの蓄積が,葉緑素含量,窒素含量の低下と共に,稲品種の光合成の低温感受性と関係があることを示唆する。
著者
江川 宜伸 田中 正武
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.50-56, 1984
被引用文献数
14

トウガラシは新世界に起原した栽培植物で,4つの栽培種を含んでいる。C.chinenseは,アマゾン低地で広く栽培されており,同所的に分布しているC,frutescensがその祖先野生型である。C.baccatumは,栽培型と野生型の2つのvarietyから成り,栽培型var.pendulumは,ペルー及びボリビアで主に栽培されており,祖先野生型Var.baccatumは,ボリビア低地から高地にかけて自生している。筆者らは,南米で収集したこれらの種の系統間の類縁関係を明らかにするため種内及び種間雑種を作出し,その染色体対合を観察した。その結果,C.baccatumの種内雑種はすべて12"の正常な染色体対合と高い花粉稔性を示した。又,C.frutescensの種内雑種,及びC.chinenseとC.frutescensとの種間雑種も12"の対合と高い花粉稔性を示した。このことは,この両種の形態的類似性と考え併せて,C.chinenseとC.frutescensは,異なる種ではなく,ひとつの種と考えるべきであることを示唆している。C.baccatumとC.frutescensとの種間雑種では,多価染色体が観察された。又,一価の出現頻度が低く,これらの二種は,共通ゲノムを有すると結論された。この雑種の稔性は,極めて低く,C.baccatumとC.chinense/C.frutescensとの間には,生殖隔離が発達している。 本研究結果と野生型の地理的分布を考えると,これらの種は,元々或る共通の祖先種から一元的に起原し,その後地理的に隔離され,生殖隔離を生じたものと結論される。
著者
山田 利昭 堀野 修 佐本 四郎
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.191-196, 1979
被引用文献数
1

イネ白菜枯病抵抗性遺伝子源の探索を目的として,日本在来稲34品種に日本産のイネ白菜枯病菌I~V群菌を接種し,抵抗性検定を行ったところ,新たに15品種の早稲愛国群品種が見いだされた。このことから日本在来稲の中にも,早稲愛国3号以外に,相当数の早稲愛国群品種が存在することがわかった。また,それら15品種のうち,とくにゴマシラズは本群品種を侵すlVおよびV群菌に対して強い量的抵抗性を示す品種であり,今後の本病抵抗性育種素材として有望と考えられた。一方,上記工5品種の玄米性状についてみると,15品種のうち12品種が儒性,3品種が綾性であり・濡性品種が大半を占めた。また,これら品種の水陸稲の別についてみると,13品種が水稲,2品種が陸稲であり,水稲儒性品種の多いのが特徴的であった。
著者
江川 宜伸 田中 正武
出版者
Japanese Society of Breeding
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.50-56, 1984-03-01 (Released:2008-05-16)
参考文献数
12
被引用文献数
8 14

トウガラシは新世界に起原した栽培植物で,4つの栽培種を含んでいる。C.chinenseは,アマゾン低地で広く栽培されており,同所的に分布しているC,frutescensがその祖先野生型である。C.baccatumは,栽培型と野生型の2つのvarietyから成り,栽培型var.pendulumは,ペルー及びボリビアで主に栽培されており,祖先野生型Var.baccatumは,ボリビア低地から高地にかけて自生している。筆者らは,南米で収集したこれらの種の系統間の類縁関係を明らかにするため種内及び種間雑種を作出し,その染色体対合を観察した。その結果,C.baccatumの種内雑種はすべて12"の正常な染色体対合と高い花粉稔性を示した。又,C.frutescensの種内雑種,及びC.chinenseとC.frutescensとの種間雑種も12"の対合と高い花粉稔性を示した。このことは,この両種の形態的類似性と考え併せて,C.chinenseとC.frutescensは,異なる種ではなく,ひとつの種と考えるべきであることを示唆している。C.baccatumとC.frutescensとの種間雑種では,多価染色体が観察された。又,一価の出現頻度が低く,これらの二種は,共通ゲノムを有すると結論された。この雑種の稔性は,極めて低く,C.baccatumとC.chinense/C.frutescensとの間には,生殖隔離が発達している。 本研究結果と野生型の地理的分布を考えると,これらの種は,元々或る共通の祖先種から一元的に起原し,その後地理的に隔離され,生殖隔離を生じたものと結論される。
著者
中井 弘和 桑原 定明 千賀 茂政
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.397-409, 1990

イネ白葉枯病に感受性の水稲品種晴々を原品種とする,白葉枯病菌系II,III,IVに対して量的抵抗性を,また菌系I,Vに対しては質的抵抗性を示す誘発突然変異体(M57)の遺伝分析を行なった.晴々とM57の交面己F<SUB>1</SUB>およびF<SUB>2</SUB>実験の結果から,M57の菌糸II,III,IVに対する量的抵抗性はポリジーンあるいは微動遺伝子によって,また,薗系I,Vに対する質的抵抗性は1対の主働遺伝子により支配されていることが明らかにされた.しかしこの質的抵抗性の遺伝子は対立性検定の結果,黄玉群の品種が持つ抵抗性遺伝子Xa-1,Xa-12とそれぞれ類似しており,M<SUB>1</SUB>植物養成中の花粉コンタミによることが疑われた.菌系I~Vに量的抵抗性を示したF<SUB>2</SUB>個体に由来するF<SUB>3</SUB>系統に対する接種試験において,明らかに菌系I~Vのすべてに抵抗性を示す系統がいくらか選抜された.このことから,Mutagen処理によって菌系II,III,IVのみならず菌系I,Vに対しても量的抵抗性を現す突然変異が誘発されたことが示唆された.また,それら選抜されたF<SUB>3</SUB>系統のほとんどは,M57の矮性の欠点をもたず,したがってイネの白葉枯病抵抗性育種における貴重な交配材料となると考えられた.
著者
浅井 辰夫 中井 弘和
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-5, 1996
被引用文献数
1

イネ品種「晴々」の種子に対するEI及びEMS処理M<SUB>2</SUB>植物集団を播種時期と窒素施用量の異なる条件下で栽培した.M<SUB>2</SUB>植物の出穂日の頻度分布の型は,適用した播種時期と窒素施用量によって変更された.M<SUB>2</SUB>における早生個体の選抜効果は,普通植条件において最も大きく,晩植条件では小さかった.適用した窒素施用量の影響は,それほど明確ではなかった.以上のような実験結果を基礎にして,栽培条件(特に播種時期)によってmutagen処理後代集団(M<SUB>2</SUB>)における出穂期に関する選抜効果が変更される機構について考察した
著者
水島 宇三郎 近藤 晃
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, 1961-12

救培稲の遠縁品種問雑種での濡綬性の分離につきF_1の花粉と胚乳について調査を行なった。供試品種は日本在来濡品種8,南米産濡品種1,日本在来綾品種6および外国梗品種10の合計25品種,叉供試したF_1は72組合せである。日本在来品種間のF1では,その大部分で正常な分離比がみられる。すたわち花粉での粳:糯は1:1,F_2種子の胚乳では3:1となる。インド産粳品種と日本在来粳品種とのF_1ではF_2種子の胚乳で糯の減少する'場合が多い。またインド以外を原産地とする供試外国品種と日本在来糯品種とのF_1では糯花粉の増加傾向がみられる(表3)。従来,親和性の分類で日本型に分類されてい先中国起源の陸稲粳品種戦捷の関与する雑種での分離比は相手とする粳品種の如何によって興り,日本在来粳品種と同様の行動を・とる場合と,インド産品種や中国産品種と同様の行動をとる場合とがあり,品種分化が放射状のものでなく網目状のものであることを暗示している。叉従来同様の分類で別の群として扱われていたインド産品種相互間に差異がなく,かえって同一群としてあつかわれていたインド以外の外国品種との間に明瞭な差異がみとめられ糯綾性決定のψ遺伝子座の分離混乱の型が,親和性?こ比較して,より地理的分布と密接た関係にあることが示された。配偶子比(花粉での分離比)が胚乳の分離比に一致する場合と,花粉では正常た分離がみられながら,胚乳では糯の減少する場合との両様がみられる。胚乳のみに異常のあらわれる原因を遺伝的原因による糯花粉の受精率の低下と仮定し,受精率を算出してみると粳花粉の受精率を1とすると,3/4,1/2および1/4の3がみとめられる。この受精率低下の原因機構の解明は今後の研究に委ねられる。
著者
野口 弥吉
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.247-254, 1959

従来水稲の幼穂形成は品種の特性として日長感応性と温度感応性の組合せによって決定され,更にそれに栄養その他の条件が加わって出穂の遅速が現われると考えられている。しかし,温度感応性はすべて日長感応性と共に実験され,考え方としては一応纏められているが,実態に関しては未だ推察の域を脱していない。不時出穂の現象は栽培の立場からすれば異常現象と認められるが,植物生理の見地に立てば一種の出穂促進現象である。それは早生種に限って見られ,常に肥料不足が伴うようであり,初夏の急激な温度上昇に由来するとも考えられる。数種の水稲品種,特に早生品種を対称とし,不時出穂現象を鍵として温度感応性を解明しようとしたのが本研究であって,その結果,温度感応性の強い品種の幼穂形成は高温に支配され,一方茎葉等の栄養器官の発育は栄養,特に窒素の存在に左右されることが明かとなった。たお温度に感応する時期は発育の極く初期,発芽期ではないことが実証された。
著者
野口 弥吉 鎌田 悦男
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.33-40, 1959

数品種の水稲について温度並びに栄養状態の変化が播種より山穂までの日数に及ぼす影響を測定した。感温性の高い早生種では高温に遭遇する時期が早いほど出穂が促進され,特に温度感応性の最も高い農林11号は高温の下で約40日で出穂した。また,窒素欠乏の状態では出穂は促進され,燐酸が与えられない場合は逆に出穂の遅延することを知つた。後者は特に低温で著しかった。次に農林11号について第4葉までを順次切断して高温の下で育て,幼植物時代の温度感応が第何葉で始まるかを調べたところ,第4葉または第4葉身を切ると出穂の遅れることが認められ,第4葉以上が高温に感じ,いわゆる花成ホルモンをつくることが明らかとなった。更に同じ品種を暗黒または光線不足,窒素欠乏等栄養生長をとどめるような処理をして高温を作用させたところ,大部分の植物は第5葉または第6葉を止葉として出穂した。特に1個体は葉数4で幼穂の形成がみられた。これらのことは上の事実を再確認すると共に,農林11号の基本栄養生長は第4葉出現期に既に終ることを証明している。この最高感温性品種の基本栄養生長期の決定は今後の水稲感温性の研究に資するところが大きい。
著者
野口 弥吉
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.205-211, 1959

水稲の催芽種子を高温または低温で処理した場合,出穂が早まつたという報告もあるが,それを否定した結果も出ていて,その効果は確認されていない。そこで正確な実験によつてその点を明かにしようとした。、(1)低温処理出穂期を異にする16品種を用い,催芽種子を10日乃至80日間平均温度2~5℃.で低温処理した後,栽培して出穂期並びに出穂までの主稈出葉数を調べたが,何れの場合も全く処理の効果は認められなかつた。なお,養分の関係を考慮した実験でも,低温処理は出穂期を変えることはなかつた。(2)高温処理出穂期の異る6品種の催芽種子を平均27~30℃.の高温に20日,30日,45日間保つた後栽培して出穂期並びに止葉迄の主稈葉数を調べた。高温処理した場合は,むしろその期間だけ出穂期が遅れ,何れも葉数はふえた。従つて,水稲の幼穂形成に対する温度の影響は小麦の場合とことなるもののようである。
著者
野口弥吉
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.101-106, 1960

感温性品種農林11号,胆振早生及び感光性品種農林18号,瑞豊を播種後30℃、,20℃の恒温及び一定期間を基準として交互に30℃.,20℃.の変温に保つて温度の出穂(花芽形成)に対する影響を調べた。その絨果,感温性品種は30℃,区では出穂までに40日,20℃.区では約80日を要し,30℃.→20℃.,20℃.→30℃、,の変温区ではその中間に出穂したが,生育時期に関係なく高温に置かれる期間の長いほど,また低温に保たれる期間の短いほど早く出穂した。従つて高温は出穂を促進する効果のあることが確実となつた。しかし,7月1日及び同8日までの低温処理区の出穂は同時であつた。農林18号は播種後30℃.区では81日,20℃.区では126日で出穂秘し,瑞豊はそれぞれ80日,117日後に開花した。感光性品種の場合も変温区の出穂はそれらの中間となつたが,何れも9月終りまでは出穂が見られず,日長の影響を強く受けることが照明された。一方、品種の如何にかかわらず出葉速度を早める傾向のあることが認められ,出穂に対する温度の影響を詳細に知るためには,その前提として出葉速度と温度の関係を更に究めることが必要であると考えられた。
著者
丹羽 勝 鳥越 則昭 橋本 吉史 古舘 宏
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.p343-348, 1975-12

(1)開花期の異なるダイズ品種相互の間で接木を行ない,穂木の開花日を調査した。播種後約1ケ月を経過した植物を台木とし,播種後約1週間の幼植物を割り接ぎした。穂木の葉は子葉以外はすべて取り去った。 (2)十勝長葉,シソメジロ,中鉄砲,ダルママサリ,Jackson,アキセソゴクの6品種相互の間で36組合わせの接木を行ない,自然日長下で育てた。穂木の開花日は台木に用いた品種によって異なり,台木品種の対照植物の開花日との間に高い正の相関が見られた。穂木に用いた品種による開花日の差は有意であったが,台木品種による差にくらべると小さく,対照植物の開花日との間には有意な相関が見られなかった。しかし,もっとも早生の十勝長葉はどの品種に接がれた場合も,他の品種より早く開花Lた。 (3)穂木の開花日についての分散分析によれば,穂木品種と台木品種の効果の間には交交作用がなく,これら2つの要因が相加的に穂木の開花日に影響を与えていることが示唆された。 (4) 十勝長葉,シソメジロ,白大豆,アキセソゴクの4品種を台木とし,シンメジロ,アキセソゴクの2品種を穂木とした8組合わせの接木を行ない,植物を12時間,14時間,16時間の日長で15回処理し,穂木の開花日を調べた。一般に,穂木の開花日は台木の対照植物の開花日と並行関係にあった。穂木に用いた品種による開花日の差は有意ではあったが,台木品種,日長による差にくらべると小さかった。分散分析の結果によれば,日長,台木品種,穂木品種の間には有意な交互作用が見られ,自然日長下での花成反応とのちがいが示唆された。 (5)要約すると,本実験に用いたダイズ品種の間の開花日の差は,主として葉における花成刺激形成の差によってもたらされ,花成刺激に対する生長点の反応の品種間差は,開花日の品種間差を決定する程大きくはないことが明らかにされた。
著者
森田 潔
出版者
Japanese Society of Breeding
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.130-132, 1963-06-25 (Released:2008-05-16)
参考文献数
31

朝鮮に栽培されている作物名としての莞草(ワングル)に含まれる種は,C.IwasakiiM、と,C.glomeratusL.との2種にして,大多数の品種がC.IwasakiiM.に属し,極少数の品種がC.glomeratusに属することが明らかになった。
著者
森田 潔
出版者
Japanese Society of Breeding
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.299-303, 1968-10-31 (Released:2008-05-16)
参考文献数
14

Yield tests were made for fresh and air-dried stems, leaves and heads in 385 varieties of "Wangul" which contalns two specres Cyperus Iwasakii M. and C. glomeratus L. collected from all the parts in Korea. Then the examination was carried out to know how much the air-dried fiber and pith could be produced from the green stems of several varieties. As the result, the yielding differences between the two species and among the varieties in them were shown clearly.
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.213-218, 1994

種苗法第12条4・第1項の規定に基づき登録された品種は農林水産省より告示・通達されている.新しく通達された品種について,種苗課の了解を得てその内容の一部を抜粋して紹介する.なお,農林水産省試験研究機関および指定試験で育成された農林登録品種については本誌上で若干くわしく紹介されているので,ここでは登録番号,作物名:品種名,育成地を記すに止める.記載の順序は登録番号・作物名:品種名,特性の概要,登録者(住所):育成者氏名とし,登録者の住所は公的機関については省略し,その他は各号の初めに現れる場合にのみ記載し,登録者と育成者が一致する場合は登録者のみを記載することとする.六号では平成5年3月17日(第2452号~3511号)及び平成5年3月19日(第3512号~3571号)に登録された品種を紹介する.
著者
江口 恭三 前原 為矩
出版者
Japanese Society of Breeding
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.39-48, 1979

近年沖縄県下で古い在来種タバコの子孫と思われる12の自生タバコの種子が蒐集されたが,これらの蒐集系統について,形態特性ならびに主要病害に対する抵抗性を調査するとともに育種素材としての有用性を検討した。これら蒐集系統の問にはきわめて広範な形態変異がみられ,草丈は95.3cmから171.9cm,葉数は9.8枚から17.3枚,葉型指数は0.471から0.764まであり,葉型には有柄と無柄,花色にはピンク,白,ピンクと白の絞りの3種類があった。病害抵抗性については,いずれも黒板病とうどんこ病にはある程度の低抗性を示したが,立枯病にはほとんどが罹病性で,疫病には高度抵抗性から罹病性まで広範な変真が認められた。従来わが国の在来種の中には疫病に対して高度な低抗性を示す品種はみつけられておらず,本試験で高度な低抗性を示した系統は育種素材として有用であると推察された。
著者
安藤 敏 高橋 千晶 幾見 京子 増田 彩子 清水 俊雄
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.195-201, 1997

アルファルファ雄性不稔系統(CMS)のオルガネラの遺伝情報を栽培品種に導入するため非対称融合法の検討を行い,その結果,安定して雑種カルスを得る方法を確立した。栽培品種のプロトプラストはヨードアセトアミド(IOA)で処理し,CMSのプロトプラストにはX線を照射したのち電気融合法で非対称融合を行った。栽培品種のプロトプラストはアガロース包埋法で培養した場合,6mMのIOAで処理することでほとんど不活化できた。CMSのプロトプラストのコロニー形成を抑えるには900Gy以上のX線照射量が必要で,他の植物と比べ高いことが明らかとなった。融合処理した細胞はアガロース包埋法で培養したが,この時,培養の最初からナース細胞を加えず,アガロースのまわりにKaoの液体培地のみを加えることにより,不定胚を形成するカルス(embryogenic callus:EC)の出現が確認できた。両親の植物体から全DNAを抽出し,ミトコンドリアDNA(mtDNA)をプローブとしてサザンハイブリダイゼーションを行いRFLP(制限酵素断片長多型)を調査した結果,制限酵素XhoIとプローブatpAの組合せで両者を明確に区別できることを見いだした。IOA濃度として3mMと6mM,X線照射量として1350 Gyと2250 Gy,アガロースのまわりに添加する培地としてKP培地とKC培地を選び,それぞれの組み合わせで融合処理と培養を行い,カルス形成,EC形成,植物体の再生およびmtDNAのタイプ毎のカルスの出現割合に及ぼす影響を調べた。その結果,IOAは低濃度(3mM)の方がカルス数,EC数,再生植物体数が多かったが,栽培品種型のエスケープカルスを抑えるためには高濃度(6mM)が必要だった。X線照射量は2250 Gyの方がカルス形成の頻度が高かった。CMSのプロトプラストに2250 Gyという高い量のX線を照射する条件では,核ゲノムだけでなくオルガネラゲノムが破壊されることが懸念されたが,mtDNAの分析からCMS特有のバンドが確認され,この条件が許容されると判断された。細胞質雑種と考えられるカルスの出現割合,及びECや再生植物体数から考えると,IOA 6mMとX線照射量2250 Gyの組み合わせが最もよいと考えられた。MtDNA分析で雑種型と判断されたカルスについてmalate dehydrogenase(MD)のアイソザイム分析を行った結果,CMS特有のバンドをもたず核が栽培品種型であるサイブリッドと考えられるものが得られた。再生植物体についてもmtDNA分析を行ったが,全て栽培品種と同じ型を示し,雄性不稔の形質は導入されていないものと判断された。