著者
岸 岳宏 塩野 康裕 佐伯 桂 谷口 礼 森川 和政 牧 憲司
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.458-466, 2017-11-25 (Released:2018-11-25)
参考文献数
34

咬合誘導や矯正治療の領域において,口腔周囲の軟組織の客観的な評価方法については一般的な手法として普及している評価方法は確立されていない。そこで我々は客観的評価の確立や臨床病態把握への応用を目的として,正常咬合児と上顎前突児の口唇閉鎖力について多方位的に測定を行った。あわせて舌圧にも着目し比較検討を行った。また,齲蝕の罹患状況とアンケート調査による患児の日常的な口唇閉鎖習慣状況についても評価を行った。調査の対象は九州歯科大学付属病院を受診した8 歳から11 歳までの小児期の患者から正常咬合者15 名,上顎前突者15 名とした。多方位口唇閉鎖測定装置の結果から,正常咬合児の方が総合的な口唇閉鎖力が上顎前突児に比較して有意に大きいことが分かった。両群間に多方位的な口唇閉鎖力の有意な差は認められなかった。舌圧の測定からも両群間に有意な差は認められなかった。舌圧と口唇閉鎖総合力の相関についても相関関係を認められなかった。齲蝕の罹患状況については正常咬合児と上顎前突児に有意差を認めなかった。総合口唇閉鎖力と齲蝕の罹患状況の相関関係は正常咬合児が相関関係を認めなかったのに対して,上顎前突児では負の相関関係が認められた。質問紙調査による口唇閉鎖習慣の評価では,上顎前突児は日常的に口が開きやすいことが分かり,アレルギー体質と上顎前突の関連は認められなかった。以上の結果から,上顎前突児の口唇閉鎖力は上口唇と下口唇の多方位的な口唇閉鎖力の不釣合いよりも,口唇全体の総合的な口唇閉鎖力の脆弱さにより関連していることが今回の研究より示唆された。また,上顎前突児は口唇閉鎖力の脆弱さが齲蝕の罹患原因の一つになっていることが示唆された。質問紙調査では上顎前突児が必ずしも鼻閉による口唇閉鎖不全を伴わない事が示唆された。
著者
佐野 哲文
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.419-426, 2017-11-25 (Released:2018-11-25)
参考文献数
21
被引用文献数
1

埋伏過剰歯は上顎前歯部に好発し,歯列不正などの一因となりうる。しかし,埋伏過剰歯が隣在歯の位置にどのような影響を及ぼすかについての検討は不十分である。そこで,cone­beam computed tomography (CBCT)画像をもとに埋伏過剰歯と上顎中切歯の位置関係について統計学的に検討した。 平成25 年10 月から1 年1 か月の間に,上顎前歯部埋伏過剰歯と診断された5~8 歳の小児34 名の34 歯を用いた。 評価項目として,埋伏過剰歯の歯軸方向,垂直的位置,中切歯歯軸傾斜角度,埋伏過剰歯と中切歯間および埋伏過剰歯と口蓋部骨表面間の距離を検討した。 埋伏過剰歯の垂直的位置は,上顎歯槽骨頂から鼻腔底下縁最上方点と最下方点を結ぶ直線(鼻腔底下縁線)までの距離を3 等分し,鼻腔底下縁線から上,中,下位の範囲1/3 をそれぞれPosition 1, 2, 3 とした。 また埋伏過剰歯に近い上顎中切歯を患側中切歯,反対側を健側中切歯とした。矢状面断における鼻腔底下縁線を基準線とし,患側または健側中切歯の歯軸となす角度を各々患側・健側中切歯歯軸傾斜角度とした。 埋伏過剰歯は,逆生と順生が各々24 例と10 例であった。患側中切歯歯軸角度と健側のそれとの間には,有意な差があった。患側と健側の中切歯歯軸傾斜角度の差は各Position 間では有意な差はなかった。 埋伏過剰歯と中切歯間の距離は,埋伏過剰歯がPosition 2 に存在する例と比較してPosition 3 に存在する例で有意に大きかった。また埋伏過剰歯と口蓋部骨表面間の距離は,埋伏過剰歯がPosition 1 に存在する例はPosition 3 に存在する例より有意に大きかった。
著者
鈴木 冴沙 髙原 梢 酒井 暢世 鈴木 伸江 稲永 詠子 菊池 元宏 朝田 芳信
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.444-450, 2019-11-25 (Released:2020-01-31)
参考文献数
24

著者らは上唇小帯の切除に対する治療方針決定の一助となることを目的に,3 歳から5 歳までの幼稚園児あるいは保育園児448 名を対象に,上唇小帯の形態と付着位置の変化について正常型および異常型(以下Ⅰ型からⅤ型)に分類したところ,以下の結果を得た。1 .上唇小帯の正常型と異常型の出現率は,すべての年齢において正常型は異常型に比べて高値を示したが,増齢的に正常型の割合は減少した。2 .各異常型の出現率は,Ⅰ型がすべての年齢において最も高かった。Ⅱ型はすべての年齢においてⅠ型に次いで高く,増齢的な増減の方向性は認められなかった。Ⅲ型は,増齢的に倍以上に増加した。Ⅳ型は増齢的な増減の方向性は認められなかった。Ⅴ型は5 歳で出現が認められた。3 .正常型と異常型(Ⅰ型,Ⅱ型,高位付着肥厚型)の出現率は,3 歳において正常型が有意に高く,高位付着肥厚型が有意に低く,5 歳において高位付着肥厚型の出現率が有意に高い傾向にあった。 これらより,3 歳では異常型の主体がⅠ型とⅡ型であり,変動しにくい型であるⅣ型とⅤ型ではないことから,上唇小帯異常が認められたとしても経過観察を行うことが適切であると考えられた。5 歳では高位付着肥厚型の出現率が高い傾向にあるため,上唇小帯異常が継続する可能性が考えられることから,永久前歯交換期に認められる正中離開や口唇閉鎖機能に影響を及ぼすことを念頭に置いた対応が求められることが示唆された。
著者
中原 順子
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.458-468, 2007-09-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
39

著者は小児の診療に対する適応性を精神運動機能発達(以下,発達)という側面から調査してきた。今回は3歳児における精神運動機能の発達検査結果と診療に対する適応性との関連を調査する目的で,都内のA歯科医院へ来院した3歳児35名(男児18名,女児17名)を対象に,発達検査と歯科診療に対する適応性総合判定を行い,以下の結果を得た。1.歯科診療に対し適応性が高い小児ほど,発達指数100未満の発達検査領域をもつ割合は低かった。2.発達指数と歯科診療に対する適応性との相関がある領域は「基本的習慣」,「対人関係」,「発語」であった。3.治療に対する適応性総合判定結果から分類した「不適応群」「適応群」「高適応群」,各グループでの発達指数の平均値の差を検討した結果,「移動運動」で「高適応群」は「適応群」より有意に高い値を示し,「対人関係」で「高適応群」は「不適応群」より有意に高い値を示し,「発語」で「適応群」は「不適応群」より有意に高い値を示した。以上の結果から,発達検査をすることは,小児の診療に対する適応性を予測する上で有用な判断資料になると示唆された。
著者
福田 理 栁瀬 博 河合 利方 戸田 久美子 中野 崇
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.1141-1147, 1996-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
20

本研究は,ミダゾラム舌下投与鎮静法の小児歯科臨床への応用の可能性を探るための基礎的検討を行った。すなわち,成人ボランティア8名を対象に,ミダゾラム0.2mg/kg舌下投与後の血中濃度および鎮静度の推移,循環・呼吸系への影響,歩行機能の回復過程,副作用について調査し,以下の結論を得た。ミダゾラム血中濃度は,投与30分後に平均71.7ng/mlと最高濃度を示し,鎮静効果が充分期待できる血中濃度が維持されていた。また,投与25分後から60分後にかけて安定した鎮静効果が認められ,投与150分後には全症例が通常の状態に回復していた。歩行機能の回復過程では,投与60分後には全ての症例にふらつきが観察されたが,時間経過と共に回復傾向を示し,150分後に全ての症例で正常な歩行が可能になっていた。循環系・呼吸系の変化では,ミダゾラム投与後,対照値に比べ血圧および経皮的酸素飽和度の低下が認められたが,全て正常範囲内の変化であり,臨床的に問題となる循環系・呼吸系への影響は認められなかった。さらに,経過を観察した全ての過程において重篤な副作用は認められなかった。
著者
山口 理衣 伊東 理夫 小笠原 榮希 進士 久明 上西 秀則 本川 渉
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.638-642, 1997-09-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
20

小児歯科臨床における強電解酸性水のより有効利用を調べるため,実験的感染腐敗根管を用いて,強電解酸性水による洗浄,消毒効果を調べた。また,歯ブラシの消毒効果についても検討し,以下の成績を得た。1.根管消毒効果は強酸性水の使用量に比例して効果が高まる。2.根管拡大後,残留するスメア層は除去した方がより効果的である。3.強酸性水は歯垢細菌中の特にグラム陰性菌に対しては強い殺菌効果を示す。4.使用後の歯ブラシを流水にて軽く洗った後に強酸性水に短時間(1分間)浸漬することで有効な消毒効果が得られた。以上のことにより,金属以外の歯科用小器具の簡便な消毒にも応用可能と考えられた。
著者
中村 由紀
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.505-510, 2010-09-25 (Released:2015-03-12)
参考文献数
34

レプチンは脂肪細胞から分泌される飽食因子であり,主に視床下部に存在するレプチン受容体(ObR)を介して摂食抑制やエネルギー消費亢進に関与し,最終的に体重減少を誘導する肥満抑制ホルモンとして知られている。著者らはこれまでにマウスとヒトを用いた研究から,この肥満抑制ホルモン・レプチンが末梢の甘味受容細胞に作用して,甘味感受性を抑制することを明らかにしてきた。また,甘味受容体は味細胞のみならず腸管や膵臓にも発現していることも明らかになってきている。これらのことから,レプチンは,食欲中枢のみならず,末梢の味覚器(腸管・膵臓)にも作用し甘味感受性を調節することにより,体内エネルギーバランスの維持に寄与している可能性が示唆された。本稿では,レプチンによる味覚感受性の調節システムについてこれまでの著者らの研究を中心に,肥満・糖尿病との関連について考察する。
著者
杉江 豊文 山本 弘敏 夏野 伸一 加我 正行 及川 清
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.773-778, 1987-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
31

小児歯科臨床で広く用いられている既製乳歯金属冠およびディスタルシューの組成金属であるNi,Co,Crの各イオンについて,その毒性を細胞培養法によって検討した.種々の濃度に調整した金属イオンを含んだ培養液中のヒト歯肉由来線維芽細胞の増殖および形態の変化を観察することにより次のようなことが明らかにされた。1)Ni,Co,Crの各イオンは,その濃度を増すにつれ,ヒト歯肉由来の線維芽細胞の増殖を抑制し,細胞の形熊に影響を与えてやがて細胞死が生じる。2)Ni,Co,Crの各イオンが線維芽細胞に障害を与える臨界濃度は,Niイオンについては12.5μg/mlと25.0μg/mlの間の値であり,Coイオンについては6.25μg/mlの前後の値, Cr イオンについては0.1μg/ml と0.5 μg/ml の間の値であると推定できた。従って各金属イオンの毒性の強さはCr>Co>Ni となる。
著者
棚瀬 精三 棚瀬 康介
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.304-312, 2012-09-25 (Released:2015-03-19)
参考文献数
23

上顎永久中切歯の萌出位置の異常を主訴に来院し,矯正力を作用させても,全く歯の移動が認められなかった2 症例を経験した。そこで,2 症例とも骨性癒着歯と判断し,癒着部位を分離することを目的に歯を亜脱臼させ,直に牽引移動を行った。亜脱臼は歯が垂直方向に約1mm可動する程度に行った。1 例は1 回の亜脱臼のみで,もう1 例は2 回の亜脱臼を行った。2 例とも歯の移動量は亜脱臼時の可動量をわずかに超えたが,再癒着がみられた。萌出量の不足分はレジン全部被覆冠修復で補った。亜脱臼を2 回行った症例は,牽引治療後6 か月時に根尖性周囲組織炎を来し,根管治療を行うも歯根の外部吸収が進行し,2 年9 か月後には保存不可能のため抜歯に至った。亜脱臼を1 回のみ行った症例は,2 年8 か月経過時,歯根の骨置換性外部吸収がみられるものの疼痛などの炎症症状は認められなかった。骨性癒着歯に対する亜脱臼後の移動治療は,順調に行えるという報告もあるが,本症例のように亜脱臼させても十分な移動は期待できないこと,あるいは骨置換性外部吸収が進み,脱落の可能性もあることも考慮に入れてインフォームド・コンセントを行うことが重要であると思われた。さらに,2 例とも永久歯に直接的な外傷の既往はないが,先行乳歯の外傷や抜歯の既往があり,永久前歯の骨性癒着には,乳歯の外傷や抜歯という外力が永久歯胚の歯根および周囲組織を損傷し,誘因となることの可能性が示唆された。
著者
柴崎 貞二
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.415-426, 1989-06-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
27

高校生16名(男子7名,女子9名)における食事調査を行い,栄養・食習慣と歯肉炎の程度,歯石沈着状態および歯垢付着状態との間の関連性について検討し,以下の如き結果を得た。1)栄養素等の摂取状態についてみると,カルシウム,鉄,野菜の摂取不足が男女ともに共通しており, 男子においてはさらにビタミンA , ビタミンB 2 も不足していた。2)食習慣のひとつとして食事の規則性についてみると,男子は女子に比べて食事回数,間食回数,食事の時間帯に不良傾向が認められた。3)歯肉炎の程度,歯石沈着状態および歯垢付着状態は,女子に比べて男子において不良てあった。これらの一因として男子における栄養・食習慣の不良傾向が示唆された。4)食生活状態を栄養・食習慣の良否から良好群,不良群,境界群の3群に分けて検討した結果,良好群の歯肉炎の程度と歯石沈着状態は,不良群に比較して有意差をもって軽度であった。5)歯肉炎の重症度とビタミンB2,淡色野菜および脂肪の充足率との間には,有意な負の相関関係が認められた。
著者
仲 周平
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.367-372, 2015-06-25 (Released:2016-10-31)
参考文献数
23

近年,アルコール非摂取者において生じる過剰栄養摂取に起因する肝障害が注目を集めている。これらは非アルコール性脂肪肝と総称され,肝臓の炎症性変化や線維化の進行した病態は非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis ; NASH)と称されている。実際にNASH 患者から採取した唾液を分析すると,主要な歯周病原性細菌のうちPorphyromonas gingivalis が高頻度で検出されることが明らかになった。そこで,高脂肪食を摂取させるNASH モデルマウスを用いて,P. gingivalis のうち歯周病原性の強いOMZ314株を頸静脈より投与した。すると,通常48 週間程度経過して認められる脂肪肝炎の症状が,8 週程度の短期間で生じることが示された。さらに,齲蝕の主要な病原性細菌であるStreptococcus mutans のうち血液分離されたTW871 株を頸静脈に投与したところ,8 週後にはNASH 特有の所見を呈した。その後の様々な解析から,TW871 株を投与することで,酸化ストレスに関連するサイトカインであるメタロチオネインの過剰産生を引き起こすことが分かった。また,炎症性サイトカインであるインターフェロン・ガンマや各種ケモカインの発現上昇を引き起こすことも確認され,口腔細菌によるNASH 悪化メカニズムの一端が明らかになった。
著者
三浦 梢 大谷 聡子 鈴木 淳司 海原 康孝 光畑 智恵子 小西 有希子 河村 誠 香西 克之
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.11-19, 2011-03-25
参考文献数
17

近年,小児の歯肉のメラニン色素沈着は受動喫煙が関係しているとの報告が多くある。しかし受動喫煙環境下にない小児の歯肉にもメラニン色素がみられることがあり,これについて検討を行った報告はあまりない。そこで,小児の歯肉のメラニン色素沈着の要因となる可能性のある項目ついて研究した。3~11 歳の日本人小児50 名を対象に,歯肉のメラニン色素沈着を,沈着濃さと沈着範囲の2 項目で判定した。沈着濃さは「ない」「極めて薄い」「薄い」「濃い」の4 段階で,沈着範囲はHedin の分類を参考に「0」色素沈着を認めない,「1」1~2 箇所の独立した沈着を認める,「2」3 箇所以上の独立した沈着を認める,「3」色素沈着が帯状をなし左右で独立している,「4」色素沈着が帯状をなし左右で連続している,の5 段階で評価した。調査項目は口呼吸,上顎前歯部歯肉の腫脹,笑った時の上顎歯肉の露出,皮膚の色,日焼け,頭髪の色,唾液中のコチニン濃度,同居者の喫煙状況(同居者の現在および過去における喫煙,喫煙年数あるいは禁煙後の経過年数,喫煙場所,タバコの銘柄,日平均の喫煙本数,同居者以外からの受動喫煙の可能性),偏食,年齢である。これらの項目とメラニン色素沈着との関係を統計学的に分析した結果,「沈着濃さ」に対し日焼け,喫煙者との同居年数,頭髪の色,口呼吸,年齢が,「沈着範囲」に対し日焼け,喫煙者との同居年数,頭髪の色がそれぞれ正に相関した。
著者
松原 まなみ 仲岡 佳彦 中島 謙二 田村 康夫 吉田 定宏
出版者
小児歯誌
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.201-207, 1996-03-25
参考文献数
16
被引用文献数
2

吸啜時の顎および舌による乳首の圧搾動作の有無と吸引圧の違いによる各種人工乳首使用時の哺乳量の差を明らかにする目的で吸啜ロボットによるシミュレーション実験を行った。その結果,以下の結論を得た。<BR>1)吸引動作による吸引量は乳首によってかなり差があり,さらに圧搾動作が加わると特徴的な差異が認められた。<BR>2)ビーンスターク&reg;は吸引動作のみでは最も吸引量が少なかったが,圧搾動作が加わると吸引量は激増して最高値を示した。他の乳首は圧搾動作の有無による差はほとんどなかった。<BR>3)吸引動作のみ,圧搾動作を伴う場合ともに吸引量の多かったのはビジョン&reg;Mサイズ,ヌーク&reg;S・Mサイズ,チュチュ&reg;,ビジョン&reg;Sサイズの順であった。<BR>4)丸穴乳首は自然流出量が多く,クロスカット乳首では自然流出は認められなかった。
著者
室賀 麗 遠藤 圭子 杉本 久美子
出版者
小児歯誌
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.407-414, 2008

歯科保健医療の専門家が,どの程度児童虐待に関する義務等について認識しているかを明らかにし,その児童虐待防止・早期発見における役割を検討するため,歯科診療所の歯科医師,歯科衛生士と保健所等の歯科衛生士にアンケート調査を行った。<BR>その結果,児童虐待について関心を有する者の割合は,保健関係歯科衛生士100%,歯科医師93.6%,診療所歯科衛生士69.6%であり,診療所歯科衛生士は他群より関心度が低かった。児童虐待に関する情報源について,診療所歯科衛生士では「学生時代の授業」という回答が多く,卒業後知る機会が少なかったと推察された。また,児童虐待の通告義務について知っている者は,保健関係歯科衛生士で81.1%,歯科医師で66.0%,診療所歯科衛生士で44.9%であり,診療所歯科衛生士で認知度が低かった。通告義務に関して,守秘義務違反に問われないことを知っている者は多かったが,立証責任がないことを知っている者は少なかった。<BR>実際に虐待が疑われるケースの経験がある者は,保健関係の歯科衛生士で73.0%であったのに対して,歯科医師で36.2%,診療所歯科衛生士ではわずか4.4%であった。さらに,経験を有する歯科医師のうち76.5%が通告しておらず,通告時に不安を感じることが一要因と推測された。また,虐待防止にむけた子育て支援に取り組んでいる診療所は未だ少なく,意識的取り組みの必要性が示唆された。