著者
菊池 優子 四井 資隆 清水谷 公成 古跡 養之眞 嘉藤 幹夫 大東 道治
出版者
The Japanese Society of Pediatric Dentistry
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.187-191, 1995-03-25
参考文献数
6
被引用文献数
2

小児の頭部外傷は救急病院を受診したのちに歯科系病院を経由するのが一般的である. しかしながら,救急病院においては顎口腔領域の異常を訴えても,後頭前頭位撮影や側方向撮影などの単純撮影のみの診査に留まることが多い. 特に小児の場合には未萌出歯,永久歯胚が顎骨内に混在しているため顎骨骨折の有無についての判断は極めて困難である.<BR>そこで,今回われわれは1989年から1993年までに,大阪歯科大学附属病院歯科放射線科を受診した12歳以下の顎骨骨折48例のうち下顎骨骨折26例を対象として,臨床所見を集計し,その特徴を探ると共に診断を行う場合の注意点について検討したところ以下の結果を得た.<BR>1.小児の下顎骨骨折26例の年齢性別分布には特徴はみられなかった.<BR>2. 歯の外傷を伴う下顎骨骨折は26例中3例であった.<BR>3.部位では下顎骨頸部骨折(骨折線44本中24本,54.5%)が多く認められた.<BR>4.他施設にて骨折なしと診断された4例に下顎骨骨折を認めた.
著者
進賀 知加子 下野 勉 仲井 雪絵 紀 瑩 守谷 恭子 瀧村 美穂枝 加持 真理 竹本 弘枝 森 裕佳子 山中 香織
出版者
The Japanese Society of Pediatric Dentistry
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.584-592, 2007

妊婦の口腔内ミュータンスレンサ球菌群(MS)の菌数レベル,喫煙習慣,食事習慣に関する実態調査を目的として,産婦人科医院を受診した妊娠3-6か月目の妊婦400名(平均年齢29 .2±4.2歳,19-43歳)を対象にデントカルトSMを用いた唾液検体中のMS菌数レベルの測定,食事調査および喫煙習慣に関する質問調査を行ったところ,以下の結果を得た。<BR>1.各SMスコアの割合は,8.5%(SM=0),35.3%(SM=1),38.0%(SM=2),18 .3%(SM=3)であった。MS菌数レベルがハイリスク(SMスコア>2)を示した者は半数以上(56 .3%)であったにも拘らず,歯科医院を受診中の者は1割未満であった(7.8%)。その中で受療目的が「予防」であった者の割合は29.0%であった。歯科医療者と妊婦に対し,妊娠期の口腔衛生管理の重要性について認識を広めるための社会的啓蒙活動や教育が必要である。<BR>2.喫煙習慣の既往がある妊婦はMS菌数レベルがハイリスクになる傾向を認めた(10 .7%vs.6.3%;P=0.08)。<BR>3.「シリアル(無糖)」「アイスクリームまたはシャーベット」「ドーナツまたはマフィン類」「クッキー」「チョコレート」「あんパンまたはジャムパン」「まんじゅう」「ようかん」の8項目の食品においてハイリスク群はローリスク群より有意に摂取頻度が高かった。
著者
白井 裕子 荒井 清司
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.689-695, 2010-12-25 (Released:2015-03-13)
参考文献数
26

乳歯用既製金属冠は,歯冠崩壊の大きい乳臼歯や歯髄処置を施した乳臼歯や保隙装置の支台歯などに使用されている。またフッ化物の小児への局所応用は頻繁に行われており,齲蝕治療経験児においてもフッ化物の応用が積極的に行われている。乳歯用既製金属冠の装着後のフッ化物応用を想定して,in vitro におけるフッ化物の乳歯用既製金属冠への影響を調べたところ以下の知見を得た。フッ化物により乳歯用既製金属冠からニッケルイオンの溶出を認めることが明らかとなった。特に,ニッケル含有量が多い乳歯用既製金属冠からは,ニッケル含有量が少ない乳歯用既製金属冠より多くニッケルイオンの溶出を認めた。ニッケルイオンの溶出量ならびに乳歯用既製金属冠の金属表面の走査型電子顕微鏡観察から,腐食にはフッ化物の酸性度が関与することが明らかとなり,ニッケル含有量が多い乳歯用既製金属冠は,ニッケル含有量が少ない乳歯用既製金属冠より金属表面の腐食が強かった。
著者
田村 博宣 高木 愼 矢部 孝 樋口 満 柳田 可奈子 中川 豪晴
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.520-525, 2010-09-25 (Released:2015-03-12)
参考文献数
15
被引用文献数
1

含歯性嚢胞は,歯牙交換期に好発する歯原性嚢胞であり,下顎小臼歯,下顎智歯によく発生する。これまで,本嚢胞の研究では臨床統計学的研究や病理組織学的な検討がなされることが多く,含歯性嚢胞内に埋伏する歯牙に関して,萌出後の長期経過および長期予後についての報告はほとんどみあたらない。本症例は初診時において,嚢胞の大きさ,含まれる埋伏歯の深さ,埋伏歯の角度,埋伏歯の近遠心的位置のいずれにおいても深刻な状態であったが,これに対し,速やかに嚢胞を摘出し処置後10 年間の長期経過を見たところ良好な治療結果を得ることができた。これにより,含歯性嚢胞内に存在する埋伏歯は,できるだけ早期に摘出することができれば,嚢胞の大きさ,埋伏歯の深さに関わらず自然萌出が期待できることが示唆された。このことは今後の含歯性嚢胞に対する処置の参考に成りうるものであり,小児歯科臨床にとって意義のある症例であると考えたため報告することとした。
著者
甲原 玄秋 佐藤 研一
出版者
The Japanese Society of Pediatric Dentistry
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.696-701, 1998-09-25
参考文献数
13

千葉県こども病院集中治療室で加療中であった3名の意識障害患児における下唇と舌にみられた自己咬傷の治療を行った。<BR>第1症例は15歳の男児で糖尿病性ケトアシドーシスから昏睡状態になり,反射的にまた不随意運動により下唇を噛んだことから潰瘍を形成していた。即時重合レジンを用い上顎臼歯咬合面で咬合を挙上し,口蓋を覆うスプリントを作製した。作業用模型から装置をとり易くするためリリーフワックスを使用し,装着時に粘膜組織調整材(ハイドロキャスト&reg;)でそのスペースを満たした。装置の前方には小孔をあけ細い鋼線をつけ,誤嚥防止のためそれを口腔外に出した。スプリントは患児の口腔の不随意な筋活動が消失するまで37日間使用した。<BR>第2症例は6歳の水頭症の女児で重度の肺炎に罹患し,経鼻挿管下で治療を受けていた。患児の舌は浮腫のため腫脹し,潰瘍を認めた。バイトブロック様の可撤性装置をレジンで作製し,歯列の片側に装着することで前歯部の開口を得た。6日後には潰瘍は治癒し,浮腫も消失していたため装置を除去した。<BR>第3症例は心嚢切開術を受けた5歳の男児で,舌に浮腫と潰瘍を認めた。この症例でもバイトブロック様の装置を使った。19日後,傷が治癒したため装置を除去した。<BR>意識障害患児の舌,口唇に自傷行動による傷ができた際,その状態を把握し適切な装置を作製,装着することで歯を保存し,咬傷を治癒に導くことができる。
著者
宮新 美智世 松村 木綿子 石川 雅章
出版者
The Japanese Society of Pediatric Dentistry
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.987-994, 1994
被引用文献数
2

歯髄切断法の術式と長期的臨床経過を検討することを目的として,外傷により歯冠破折をきたした幼若永久歯64歯に対して,歯髄切断後長期にわたり臨床的X線学的な経過観察を行った.患児は60名で初診時年齢は平均9歳3か月,経過観察期間は3年から19年まで平均10年1か月であった.その結果,46歯(72%)が経過良好であった一方,術後5年以内に歯髄炎もしくは歯髄壊死が18歯(28%)に認められたが,歯髄生存中は歯根形成の継続が見られた.X線写真上のdentin bridgeは58歯(91%)に,多くは術後1年以内に認められ始めた.うち12歯は歯髄炎または歯髄壊死に陥った症例であった.経過良好例のうち33歯に対しては,糊剤を除去してdentin bridge上における電気歯髄診断,抵抗値測定,糊剤の再貼布を試み,除去した糊剤を光学顕微鏡により観察した.この結果,修復物下には空隙,壊死組織などが観察された.dentin bridgeには穿孔もなく,その電気抵抗値には幅があった.dentin bridge直上での電気歯髄診断への反応値は歯冠上における値よりも小さい傾向があった.糊剤の再貼布後の異常はなかった.以上から,歯髄切断後におけるdentin bridgeの形成は必ずしも良好な予後を確約せず,糊剤を再貼布することや,術後経過を5年以上観察することが望ましいことが示唆された.
著者
吉原 俊博 加我 正行 小口 春久
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.773-777, 1997-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
13

口腔内に潜伏する単純ヘルペスウイルスの検出を目的として,本学歯学部附属病院小児歯科外来を受診した,口腔内に疱疹性歯肉口内炎および口唇ヘルペスを発症していない健常児241名(年齢0歳2か月~14歳8か月)の唾液を採取して検体とし,PCR法を用いてHSVの検出を行い,以下の結果を得た。1)検体試料採取時,口腔内に疱疹性歯肉口内炎および口唇ヘルペスを発症していない健常児を対象としたにもかかわらず,被験児唾液中から17.0%の割合でHSVが検出された。2)年齢別のHSV検出率では,0歳および1歳において0%であり,2歳以降においてほぼ一定の検出率であった。3)兄弟姉妹の間の潜伏状況を調べると,兄弟姉妹全員がHSV(+)である群と兄弟姉妹のうち少なくとも1人がHSV(+)である群との間に有意差はなかった。
著者
堤 修郎
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.537-545, 1981-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
26
被引用文献数
2

乳臼歯隣接面齲蝕は,その発見が困難であるばかりでなく,進行が速やかなため小児歯科臨床上重大な諸問題を生じさせる。したがって,乳臼歯隣接面齲蝕の抑制は,小児歯科臨床上重要な課題である。そこで著者は,乳歯齲蝕の進行抑制剤として本邦で臨床的に広く使用されているAg-(NH3)2Fに注目し,本薬剤による乳臼歯隣接面齲蝕の抑制効果を検討した。臨床試験対象者は,左右側乳臼歯隣接面が共に健全なものおよびエナメル質に限局した蝕を有する3歳-5歳の小児58名である。乳臼歯隣接面の一方に,Ag(NH3)2Fをデンタルフロスを用いて3分間,3カ月間隔で塗布し実験側とした。他側は,3カ月間隔のフロッシングのみとし,対照側とした。初診時より6 カ月間隔で視診, 触診および咬翼法によるX 線診を行い, 齲蝕の程度を判定した。18カ月間の観察結果,Ag(NH3)2F塗布側における齲蝕の発生は,対照側より有意に抑制されており,また,エナメル質齲蝕から象牙質齲蝕への進行も有意に抑制されていた。以上の結果から,Ag(NH3)2Fを乳臼歯隣接面へ局所塗布することにより,同部の齲蝕予防とエナメル質齲蝕から象牙質齲蝕への進行拡大を効果的に抑制出来ることが示唆された。
著者
岡崎 好秀 東 知宏 田中 浩二 石黒 延枝 大田原 香織 久米 美佳 宮城 淳 壺内 智郎 下野 勉
出版者
The Japanese Society of Pediatric Dentistry
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.677-683, 1998-09-25
参考文献数
25
被引用文献数
5

655名の小児を対象として,3歳時と小学校1年生時から中学1年生時までの,齲蝕指数の推移について経年的に調査した。<BR>1)3歳時の齲蝕罹患者率は65.6%,1人平均df歯数は3.80歯であった。<BR>2)中学1年生時の齲蝕罹患者率は93.4%,1人平均DF歯数は4.78歯であった。<BR>3)3歳時のdf歯数は,小学校1年生から中学校1年生までのDF歯数と高度の相関が認められた(p<0.001)。<BR>4)3歳時のdf歯数が0歯群と9歯以上群の小学校1年生から中学校1年生までの永久歯齲蝕罹患者率には,有意の差が認められた(p<0.001)。<BR>5)3歳時のdf歯数が多い群ほど,永久歯のDF歯数も高い値を示した(p<0.05)。3歳時の齲蝕は,将来の齲蝕に影響を与えることから,乳幼児期からの齲蝕予防の重要性が示唆された。
著者
齊藤 桂子 氏家 隼人 蒔苗 剛 櫻井 真梨子 松本 弘紀 青木 健史 宮田 泰子 三笠 祐介 藤井 雅 丸谷 由里子 田中 光郎
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.482-487, 2016-11-25 (Released:2017-11-25)
参考文献数
11
被引用文献数
4

本学歯科医療センター小児歯科外来では,歯科治療の際に特別な対応が必要な心身障害児や不協力児に対して,その患者の治療に対する協力状態により全身麻酔下での歯科治療を選択している。平成21 年1 月から平成27 年12 月までの7 年間に当科を受診し,全身麻酔下での歯科治療を行った症例を対象として実態調査を行い,平成元年の当科の調査結果と比較検討した。1 .症例数と年齢分布:82 名(男性53 名,女性29 名)の患者を対象に,のべ87 回行われた。処置平均年齢は12 歳5 か月であり,過去の報告と同程度であった。2 .患者の内訳:対象患者の51%が障害児・障害者であり,その多くは精神遅滞であり,過去の報告と同様であった。3 .処置内容と処置歯数:1 症例当たりの平均処置歯数は乳歯10.5 歯,永久歯7.6 歯であり,コンポジットレジン充填が乳歯6.8 歯,永久歯5.6 歯で最も多く,過去の報告と同様の傾向を認めた。4 .処置時間:平均処置時間は2 時間13 分であり,過去の報告より処置時間は短縮していた。5 .本県のような面積の広い地域においては,とくに地域の開業医と大学の連携が重要であると考えられた。
著者
森主 宜延 岸本 匡史 宮川 尚之 小椋 正
出版者
The Japanese Society of Pediatric Dentistry
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.604-612, 1998-09-25
参考文献数
27
被引用文献数
2

本研究は,チンキャップ適用の実態と頭蓋顔面硬組織の変化から,チンキャップ適用の妥当性について再検討することを目的とした。対象は,チンキャップ適用者51名であり検討資料は装着後6か月間隔で記録された外来カルテ,歯列模型,側貌頭部エックス線規格写真計測による。結果として,チンキャップの平均撤去年齢が11歳であり,平均使用期間は3年6か月であった。使用目的は下顎の過成長の抑制であり,撤去時の主な理由は被蓋の改善と骨格型要因に不安が解消されたことにあった。また,使用開始時下顎骨の過成長と診断された症例において,被蓋の改善による下顎の過成長の解消と考えられた症例が認められた。使用効果は,使用開始時,∠SNBが正常咬合者と比較し大きく,チンチャップ撤去時並びに撤去1年後も同じく有意に大きな値を示した。しかし,撤去時,∠SNAと∠ANBが有意に増加し改善の傾向もみられた。使用開始時から撤去1年後までの定性的変化から,使用開始時から撤去時の装置使用による計測項目の変化の方向と,撤去時から撤去1年後の計測項目の変化の方向が逆となり後戻り傾向が認められた。結論として,適用理由となる不正要因の診断に注意を要し,撤去理由との矛盾も指摘された。下顎骨成長の絶対的抑制は,形態計測値の変化と思春期開始時に撤去されていることから効果が得られたとはいいがたい。さらに,撤去時,下顎骨の成長と前歯部歯軸で後戻り傾向が認められ,チンキャップ適用への再検討の必要性が示された。
著者
秋澤 より子 原 徳寿 永井 正規
出版者
The Japanese Society of Pediatric Dentistry
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.323-331, 1987
被引用文献数
4

的確な齲蝕予防法を検討する目的で,保健所で行われた健康診査から,1歳6カ月と3歳時の資料(451人分)を用いて,菓子類,飲物の摂取と歯磨き実施とが3歳時の乳歯齲蝕にどのようにかかわっているかを観察し,以下の結果を得た。<BR>1)3歳時に菓子パン,ビスケット,アイスクリーム,ケーキ類,市販のジュース,チョコレート,乳酸飲料,炭酸飲料,スナック菓子,あめなどの菓子,飲物類を摂取するものは齲歯有病率が高い。<BR>2)1歳6カ月時の菓子類摂取では,あめの摂取が最も強く齲歯発生と関係していた。<BR>3)1歳6カ月と3歳の両時点の菓子摂取では,いずれかの時点であめ,チョコレート,ケーキを摂取していたものの齲歯有病率が高かった。<BR>4)歯磨きの実施時刻別に,歯磨き実施と齲歯発生との関係を注意深く観察したが,両者に明らかな関係はみられなかった。<BR>5)因子分析により歯磨き,菓子類,飲物の摂取と齲歯発生との係わりを総合的観察した結果,菓子類の摂取と齲歯発生とは明らかな相関がみられた。しかし,歯磨きと齲歯発生との関係を明らかにすることはできなかった。
著者
柳沢 幸江 田村 厚子 寺元 芳子 赤坂 守人
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.74-84, 1989-03-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
32
被引用文献数
10

様々な咀嚼機能を持った個々の人間にとって,より好ましい食物物性の在り方を探るために,物性と嚼咀の相互関係を捉えてきた。本研究は咀嚼筋活動量による食物分類を作ることを目的に,まずテクスチュロメーターにより測定した食物物性から咀嚼筋活動量を推定する方法を検討した。咀嚼筋活動量は筋電図による咀嚼筋の活動量から求めた。被検者は正常咬合者である成人男女各10名ずつで,咀嚼開始から嚥下開始までの咀嚼筋活動量を左右の閉口筋3筋について計測した。回帰分析を用いて食物物性値と咀嚼筋活動量の対応性を分析し,その結果をもとに咀嚼筋活動量による食物分類を行った。得られた結果を以下に示す。1)3種のテクスチャーパラメーター即ちかたさ・凝集性・ひずみを用いることによって,高い精度で咀嚼筋活動量を推定することができた。2)テクスチャー測定値を用いた推定方法から,食物物性が既知である144種の食物の咀嚼筋活動量を明らかにした。3)食物を咀嚼筋活動量のレベルにより10ランクに分類することができた。また,「物性による食物分類」に咀嚼筋活動量の尺度を加えることができた。
著者
齊藤 正人
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.208-214, 2011-09-25 (Released:2015-03-14)
参考文献数
33

Minimal Intervention の概念が提唱されて以来,乳歯および幼若永久歯においても,その概念に沿った齲蝕治療が求められている。単に齲蝕の切削を小さくするのではなく,口腔内細菌叢を変容し,患者の口腔清掃指導や食事指導に介入して,早期齲蝕を削ることなく再石灰化させていくことがMinimal Intervention の概念であり,小児歯科における齲蝕に対するアプローチと合致する。正確な診断を行い,やむを得ず切削治療を行う場合には可能な限り健全歯質を保存し,接着修復を行わなければならない。本稿ではMinimal Intervention の概念に基づく,乳歯・幼若永久歯における歯冠修復,とくにコンポジットレジン修復について概説した。
著者
細矢 由美子
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.651-665, 1985-09-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
39

38%フッ化ジアンミン銀(サホライド)塗布後の乳歯に対する酸処理効果とレジンの浸入について観察する事を目的に研究を行った。資料としては,口腔内で齲蝕症第2度の乳歯にサホライドを塗布した33例と,抜去もしくは自然脱落した齲蝕症第2度の乳歯に口腔外でサホライドを塗布した24例を用いた。エッチング材,ボンディング材並びに修復用レジンは,Clearfil Bonding System-Fを用いた。軟化象牙質を除去し,エッチングを行ったサホライド塗布後の乳歯象牙質面では,エッチング後においても多くの象牙細管が閉鎖されており,サホライドが塗布されていない場合の齪蝕下乳歯象牙質面には認められなかった,立方体,平行六面体の集合,線維状並びに不定形の構造物などが観察された。口腔内もしくは口腔外でサホライドを塗布した乳歯29例について,象牙細管内へのレジンの浸入状態を観察した結果,塗布後の経過日数と浸入レジンの長さの間には,統計学的に有意な差は認められなかった。サホライド塗布後の齲蝕下乳歯象牙質は,酸処理効果もレジンの浸入状態も健全乳歯象牙質の場合より明らかに劣っており,さらにサホライドが塗布されていない齲蝕下乳歯象牙質よりも劣る傾向が観察された。
著者
假谷 直之 松村 誠士 Omar M M Rodis 紀 瑩 杜 小沛 志野 綾子 下野 勉
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.379-384, 2006-06-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
15

今回,我々は新しく発売されたミュータンス菌測定キット,オーラルテスターミュータンスのS. mutans検出能力を臨床評価する目的で研究を行った。被検児は岡山県内にあるN保育園児(4,5歳児)52名。オーラルテスターミュータンスとカリオスタットはマニュアルに従い処理,判定した。PCR法は,QIAGENのマニュアルに従いDNAを調製してPCR後,電気泳動にてバンドを確認した。対象をS. mutansとした場合,オーラルテスターミュータンスの値をHigh,Low二群に分けた分析で,High-Low間ではP<0.001,カリオスタット値の同様な分析では,High-Low間においてP<0,01でBand検出の有無との問に関連性を認めた。対象をS. sobrinusとした場合,オーラルテスターミュータンスの値をHigh,Low二群に分けた分析で,High-Low間においてはBand検出の有無との間に関連性を認めなかった。カリオスタット値の同様な分析においても,High-Low間でBand検出の有無との問に関連性を認めなかった。今回の研究で,S. mutansに特異的といわれている領域を増幅したPCR法によるバンド検出率と関連することが確認された。オーラルテスターミュータンスは,齲蝕原因菌のうち特にS. mutansの検査として有用と考えられる。
著者
髙橋 摩理 大岡 貴史 内海 明美 向井 美惠
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.36-42, 2012-03-25 (Released:2015-03-15)
参考文献数
17
被引用文献数
3

自閉症スペクトラム(以下ASD)児の摂食状況の調査と摂食・嚥下機能の評価を行い,療育場面および家庭における食事の問題に対する効果的な医療的支援方法を検討することを目的に本研究を行った。地域療育センター摂食・嚥下外来を受診したASD 25 名を対象に,主訴,摂食・嚥下機能評価,指導内容と経過等の検討を行った。主訴は偏食,丸飲み,溜め込みが多く,年齢により差がみられた。低年齢では口腔機能の未熟さや食具操作の未熟さが食べ方の問題として表出し,高年齢ではASD のこだわりなどの特性が偏食として問題になったものと思われる。一方,主訴と摂食・嚥下機能の問題が一致しないケースもみられ,保護者が小児の摂食・嚥下機能を正しく理解していない様子も窺われた。また,食べ方が口腔機能に影響を与えている様子が窺われ,ASD の食事の問題に対応するにあたっては,摂食・嚥下機能評価を行い,それに基づき支援方法を検討する必要性が示唆された。指導が継続しているケースは発達レベルが低く,自閉症の特性が強い傾向があり,全体的な発達を促す対応が重要と思われた。
著者
塩田 亜梨紗 翁長 美弥 恩田 智子 唐木 隆史 小平 裕恵 菊池 元宏 朝田 芳信
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.375-381, 2017-06-25 (Released:2018-07-23)
参考文献数
20
被引用文献数
1

下顎における中切歯,側切歯および第一大臼歯の萌出パターンに関して,1980年以前は下顎第一大臼歯が,1980年以降は下顎中切歯が最も早く萌出するとする報告が続き,1980年を境に下顎永久歯の萌出パターンが変化した可能性があることが示唆されていた。そこで,最新の中切歯,側切歯,第一大臼歯の萌出パターンを知ることを目的に,乳歯列期からHell­ man's Dental Age III B期までの患児105名を対象に,永久歯の萌出パターンを縦断調査したところ,以下の結果を得た。1.萌出パターンは,男女間差,左右間差は共に認めらなかったが,上下間に有意差を認めた。2.上顎で最も多かった萌出パターンは【6(第一大臼歯)­1(中切歯)­2(側切歯)】,下顎で最も多かった萌出パターンは【1­6­2】であった。3.上顎は【1­2­6】と【1­6­2】間,下顎は【1­6­2】と【6­1­2】間に有意差を認めなかった。4.下顎中切歯が最初に萌出した群と下顎第一大臼歯が最初に萌出した群間における歯冠近遠心径を比較したところ,上顎側切歯において有意差を認めた。以上のように,少なくとも下顎で最初に萌出する歯種に有意差は認めず,萌出パターンに関しては現時点で変化したと断定するのは時期尚早であることが示唆された。また,歯冠近遠心径と萌出順序の関連性も疑われるが,さらに継続して研究を続ける必要があることが示唆された。