著者
淺川 栄一 ウォード ピーター
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.155-170, 2007
被引用文献数
1

マルチコンポーネント反射法地震探査技術は、近年のデータ取得・データ解析技術の進歩により著しく改良されてきた。特に海域における探査の場合は、ジオフォン3成分とハイドロフォン成分の合計4成分のOBC(Ocean Bottom Cable、海底ケーブル)が実用化されてきており、水深1000mを越える海域においてのリザーバーキャラクタリゼーションや資源探査に使われる様になってきている。マルチコンポーネント反射法地震探査技術に伴うPS変換波のデータ処理.や解釈は比較的新しいトピックであるため、世界的にもデータそのものの公表や処理・解析実績や報告が少ない。PS変換波を使った探査としては、従来、1次元解析、VSP解析やOBS(Ocean Bottom Seismometer、海底地震計)データ解析と限られた分野での適用にとどまっていた。最近になって、OBCによる2次元、3次元反射法地震探査が実用化されてきた。PS変換波を使った場合に、岩相のさらに詳しい情報が得られるため、主としてリザーバーの評価に用いられている。また、通常のP波のみでは反射が得られにくい音響インピーダンスのコントラストが小さい場所でも、PS変換波によって明瞭な反射イベントが得られることがある。PS変換波のデータ処理・解釈の情報が不足している現状で、我々が実データを用いて実際のデータ処理例を示すとともにその問題点を検証することは、本技術の今後の発展に非常に意義のあることと考えている。<br> 未だ、日本近海において本格的なマルチコンポーネント反射法地震探査を実施した例はない。そのため、本論文では、1998年にノルウェーのPGS社が取得した2次元の4成分OBCデータを用いることとする。このデータは、石油公団石油開発技術センター(現、(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構)がメタンハイドレート資源探査のための研究用として2002年にPGS社から購入したものであり、その研究の一環でハイドレート賦存層やBSRの物理的特性を決定するためにPS変換波の評価を行っている。このOBCのデータは、北海のノルウェー沖で「ストレッガースライド(Storegga Slide)」と呼ばれる地滑り地域で取得されたものである。通常の2次元海上地震探査と同じ測線で取得されており、2次元海上地震探査ではBSR(Bottom Simulating Reflector)が認められている。本データの処理結果は、Andreassen et. al. (2001)で報告されている。そのなかでは、ハイドレート賦存層やBSRにおいて、PP断面図とPS断面図の著しい違いが認識された。すなわち、BSRはPP断面図では明瞭に見えるにもかかわらず、PS断面図では認識できにくい。この事実は、PS変換波が物理的に他の情報をふくんでいることを示唆している。本論文では、PGS社のデータの再処理を行い、主としてデータ処理技術の問題点を検証し、解決方法の検討をする。<br>
著者
Yoo Hai-Soo Kim Su-Jeong Park Dong-Won
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 = BUTSURI-TANSA Geophysical Exploration (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.104-111, 2005-02-01
参考文献数
5

Dmitri Donskoi号 (1883年進水のロシア巡洋艦) は日露戦争に参戦中の1905年5月29日に韓国Ulleung島 (日本海) の近くで沈んだことが知られている。この船を見つけるために、その沈没位置に関する情報をロシアと日本の海事記録から得た。その船の沈没位置はおおよそ判明し、1999年から2003年まで5年にわたる物理探査が実施された。海底に関する三次元地形学踏査は、マルチ・ビーム音響測深器、海洋磁力計およびサイドスキャン・ソナーを使用して実行した。初期踏査により認識された異常体は、遠隔操作式無人有索探査船 (ROV) の深海カメラおよびミニ潜水艦『パスファインダー』を使用した詳細な調査によって確認された。得られたデータを解釈し、沈没船は海面下400mの急傾斜面に位置していることがわかった。その位置は、Ulleung島のJeodongから約2kmである。船の船体に残された152mmの艦砲、および他の戦闘資材が確認された。さらに、沈没時に燃上した操舵装置および他の機械類の残りが船体の近くで見つかった。調査エリアに分布する火山岩の強い磁性の影響を受け、磁気探査データから船の位置を正確に求めることはできなかった。船体のまわりの急峻な海底地形は、サイドスキャン・ソナー・データ中の反射波の拡散を増加させ、サイドスキャン・ソナーを用いた異常体 (船体) 検出を困難にした。それに対し、多重ビーム音響測深器を用いた探査では、探査船を最大限低速で運航したり、海底地形によりビーム角の調整行ったり等の工夫を行ったため、得られた海底イメージは船体位置の確認に非常に有効であった。
著者
芦谷 公稔 佐藤 新二 岩田 直泰 是永 将宏 中村 洋光
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.387-397, 2007
被引用文献数
13

鉄道における地震災害を軽減するには事前に施設の耐震性を向上させることが基本であるが,一方で,地震発生時は迅速かつ適切に列車運行を制御することにより事故を未然に防ぐことが重要となる。そこで,鉄道総研では新幹線を中心に早期地震検知・警報システム(ユレダス)を開発,実用化してきた。しかし,近年では,リアルタイム地震学の分野の研究開発が進展し,早期地震警報に関する貴重な知見が蓄積されてきた。また,気象庁など公的機関の全国ネットの地震観測網が整備され,その即時情報(緊急地震速報という)を配信する計画が進められている。こうした状況を踏まえ,鉄道総研は気象庁と共同して,緊急地震速報の処理手法やこの情報を活用した鉄道の早期地震警報システムの開発を行ってきた。<br> 本論では,まず,P波初動検知後数秒で震源の位置やマグニチュードを推定するために新たに開発した,B-&Delta;法やテリトリー法,グリッドサーチ法について紹介する。次に,緊急地震速報を活用した地震警報システムの概要を紹介する。このシステムは緊急地震速報を受信すると,線区沿線での地震の影響度合いをM-&Delta;法により推定し,影響があると判断した場合は,列車無線により自動的に走行中の列車に緊急停止の警報を発信するものである。また,最後に,鉄道におけるリアルタイム地震防災の今後の展望について述べる。<br>
著者
筒井 智樹 西谷 忠師 坂中 伸也
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.141-151, 2010-04-01
参考文献数
14

本稿では体験学習教室の教材開発とその理念について述べる。秋田大学では物理探査に関連するテーマの体験学習教室を2000年度から2006年度にかけて複数回開催した。体験学習教室では教材の選定・設計が重要である。我々の体験教室では物理探査に関連する簡易測定器の組み立てキットをオリジナルで制作し,用意した。また,簡易測定器の組み立てキットの制作には十分な注意を払った設計と,複数回の試作による検討が必要である。特にプリント基板の設計は教材製作の中で重要であった。複数の組立キットを自らまとめることは,体験学習教室で指導するときの説得力にも大きく寄与していると思われる。体験学習教室に参加した子供たちの反応を見ると,自分の手でなにか動くものを作り出すことと,身の回りに興味を引く現象がたくさん存在することを知ることは,大いにかれらの好奇心を刺激するものである。また,体験学習教室の参加者募集にあたっては,種々の条件を勘案して小学校高学年ぐらいを対象とすることが適切であると考えられる。これまで実施してきた我々の体験学習教室ではどうしても機器の製作に重点がおかれてしまうきらいがあった。今後の機会があれば製作した機器を用いる測定の応用例も充実させて,より広い応用に目を向けさせる必要がある。
著者
松林 弘智
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.283-295, 2007 (Released:2010-06-25)
参考文献数
21
被引用文献数
1

時系列解析に用いられる一般的なウェーブレット変換は,変換結果を定量的に解釈するには不適当な性質を含んでいる。例えば連続ウェーブレットでは,ごく短い時間幅の波形データがその前後の変換結果に繰り返し反映される。また離散ウェーブレットでは,同じ時系列データであっても変換の開始サンプルが異なるだけで,変換結果が大きく変化する。 マッチング追跡法(Mallat, 1993)やその拡張である高速マッチング追跡法(戸田, 2001)はこれらの欠点を解決した変換方法であった。しかしこの手法にも欠点がある。マッチング追跡法では,計算資源への負荷と周波数領域での変換結果の偏りの問題が,また高速マッチング追跡法では,変換する波群の処理順の決定方法や,使用するウェーブレットとデータの波形形状との相違による変換結果への影響という問題が存在する。 本研究ではメイエ(Meyer)ウェーブレットの定義より複素メイエウェーブレットを開発した。このウェーブレットにより周波数領域での偏りと,使用するウェーブレットとデータの波形形状との相違の問題に対処した。さらにこのウェーブレット関数と新たに考案したアルゴリズムより,複素メイエマッチング追跡法を開発した。処理順や計算資源の問題に対処したのみならず,波形形状を数値化するパラメータである位相を出力することが可能となった。例えば時期をずらして同じ観測点で同種の地震波について位相を比較した場合,震源の時間変化を反映する情報となる。 本研究では,阿蘇火山南方の防災科学技術研究所広帯域地震観測網の砥用観測点での波形データへ複素メイエマッチング追跡法を適用することで,阿蘇火山の地下活動に伴う超長周期地震波(Kaneshima et al., 1996)が記録されていることを明らかにした。また,期間ごとの波形形状情報である位相の比較を行い,期間によって地震波の震源の状態の変化していることを示唆する結果をえた。
著者
鈴木 浩一 塩竃 裕三 久野 春彦 東 義則
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 = BUTSURI-TANSA Geophysical Exploration (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.515-526, 2007-12-01
参考文献数
10
被引用文献数
8 3

近年,山間部の地すべり斜面を対象とした降雨浸透水による地下水面の変動,産業廃棄物層内への降雨浸透水の挙動、地下水涵養試験時の涵養水の浸透、沿岸部での潮汐に伴う塩淡境界面の変動など, 様々な分野において電気探査法により地下水の流動状況をモニタリングする適用事例が増えている。しかし,従来の電気探査装置では未固結地盤中など流速の大きい地下水の挙動を3次元に展開した測線において数分程度の時間で測定することは困難であった。今回開発した電気探査装置は、最大240点の電位データを同時に受信することができ,アナログ系でのフーリエ変換処理により電位を計測し、高周波数(最大5kHz)の正弦波を送信する。例えば、120測点に対する二極法による全ての組み合わせのデータ(120×119=14280通り)を約5分間で測定することが可能である。本装置の性能を確認するため,当所構内にある陥没空洞箇所に塩水を注入中の比抵抗変化を連続的に測定した。陥没箇所を中心に60点の電極を1m間隔で配置した2測線を展開した。本空洞はローム層(下総層群常総粘土層に相当)内に掘削された旧防空壕が崩落したものと推測されている。測定は塩水を注入する直前より開始し,約2分半間隔で繰り替えし測定を行い,塩水の注入が完了した20分後に測定を終了した。塩化カルシウム溶液(比抵抗1.4&Omega;m)を110分かけて1000ℓを注水した。全測定回数は51回で,1回当たりの観測データ数は3540通りである。全計測データ(51回分)に対しインバージョンにより比抵抗断面を求め,塩水注入前の比抵抗断面を基準値とした各測定時の比抵抗変化率断面を求めた。その結果,塩水が埋没空洞部に徐々に浸透していく状況を連続的に変化する比抵抗断面として可視化することができた。本装置は,流速の大きい地下水挙動の3次元的なモニタリングに十分貢献できると考えられる。<br>
著者
井口 正人
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.145-154, 2007 (Released:2010-06-25)
参考文献数
36
被引用文献数
2

桜島火山は姶良カルデラの南端に位置する後カルデラ火山である。これまで,火山爆発を予測するために多くの観測がなされており,それに伴い火山の構造,特にマグマ供給システムの構造が明らかになってきた。1914年の大正噴火に伴う顕著な地盤の沈降,1955年以降の山頂噴火に伴う地盤の隆起と沈降,1993年以降の再隆起を引き起こした圧力源は,姶良カルデラの下深さ10km付近に求められており,桜島の主マグマ溜りは姶良カルデラの下にあると考えられる。桜島における地盤の上下変動の詳細な測定から現在活動中の南岳の直下にも圧力源が推定されることから南岳直下にも小さいマグマ溜りがあると考えられる。爆発の数分から数時間前に捉えられる桜島の地盤の隆起・膨張を示す傾斜ベクトルの方向は南岳の火口方向を示すこと,南岳の直下を通過する地震波は,異常のない部分にくらべて 1/10以下と著しく減衰し,その減衰域は南岳直下の半径1km程度の領域に限られることからも桜島南岳直下のマグマ溜りの存在を確認できる。また,ガスの膨張・収縮によって発生するB型地震・爆発地震の震源が火口直下において鉛直方向に分布することはマグマ溜りと火口をつなぐ火道の存在を示す。2003年には南南西部においてA型地震が多発したが,地盤変動の特徴から見ると南南西側からマグマが直接上昇したと考えるよりも,姶良カルデラ下のマグマ溜りの膨張に伴うその周辺での歪の開放あるいは,桜島直下および南南西へのダイク状のマグマの貫入過程でA型地震が発生したと考えるほうがよい。このことを確かめるためには人工地震探査を行い,地震波速度,減衰,散乱・反射の状態から姶良カルデラ下のマグマ溜りと南岳直下のマグマ溜りをつなぐマグマの通路を調べる必要がある。
著者
本荘 千枝 浦 環 玉木 賢策 永橋 賢司 柴崎 洋志 細井 義孝
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.427-435, 2010 (Released:2016-04-15)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

2008年3月および10月に,伊豆・小笠原弧の背弧リフト東縁部に位置するベヨネーズ海丘カルデラにおいて東京大学生産技術研究所が開発したAUV(Autonomous Underwater Vehicle: 自律型海中ロボット)r2D4 による潜航調査が行われた。本研究では,カルデラ北部と南東部における2潜航で得られた地磁気データを用い,磁気インバージョンにより海底の磁化強度分布を明らかにした。その結果,カルデラ底北縁部とカルデラ壁南東部にそれぞれ磁化の強い箇所があることが判った。これらの高磁化域は,ベヨネーズ海丘の南北に延びる玄武岩質の海丘列とほぼ同じ線上にあることから,この海丘列の火山活動による玄武岩質の貫入岩であり,ベヨネーズ海丘の厚い地殻に阻まれて海底噴出には至らなかったものであることが推察される。また,この高磁化域のひとつはカルデラ床南東縁辺部にある白嶺鉱床に隣接しており,白嶺鉱床を形成した熱水活動の原動力がこの玄武岩質マグマの貫入であった可能性を示唆する。磁化強度分布と熱水鉱床との関係については,熱水循環に伴う変成作用で岩石が磁化を失い,鉱床周辺が低磁化域となることが指摘されているが,本研究域内にある白嶺鉱床は特に明らかな低磁化域を伴っているようには見えない。これは,ベヨネーズ海丘がそもそも強い磁化を持たないデイサイト質の溶岩と砕屑物から成るため,磁化を失った玄武岩などが存在しても周囲の岩石と見分けがつきにくいためであろう。熱水活動による消磁という効果を考慮すると,高磁化域として見えているのは,鉱床からある程度距離があり変成作用を受けなかった部分だけで,実際の貫入岩体の広がりは白嶺鉱床下まで及んでいることも考えられる。本研究で得られた磁化強度分布の解像度は,データ自体の解像度ではなく,解析過程で施される短波長成分を除くフィルターに規定されている。海上観測から深海観測へと重点が移りつつある海洋地磁気研究において,高解像度のデータを最大限に生かせる解析方法の確立こそが緊急の課題である。
著者
坂井 公俊 盛川 仁
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.331-338, 2005 (Released:2007-11-02)
参考文献数
25
被引用文献数
2 1

It is important to understand the detailed 3-D subsurface structure to estimate the strong ground motions. For this purpose, we will confirm the usability of the gravity survey and propose a process from modeling the ground structure to estimate of the strong ground motions.The gravity survey has been carried out to estimate the 3-D subsurface structure around the damaged area due to the 1909 Anegawa earthquake. Steep slopes of the bedrock are located around the severely damaged area. On the basis of the estimated 3-D subsurface structure, the strong motions are numerically simulated by using the finite-difference method (FDM). From the results of the simulations, it is shown that the peak ground velocity correspond to the collapse ratio of the wooden structures except for some cases.
著者
古村 孝志 中村 操
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.337-351, 2006 (Released:2008-08-25)
参考文献数
23
被引用文献数
1 4

1944年東南海地震(Mw8.1)において,関東平野で強く生成した長周期地震動の特性を詳しく調査するために,東金,大手町,そして横浜地点に設置されていた今村式 2 倍強震計と中央気象台式 1 倍強震計の波形記録の解析を行った。煤書き記録を読み取り,地震計の計器特性を補正することにより,3 地点の強震波形を得た。確認のために,2004年紀伊半島南東沖の地震(Mw7.4)で観測された 3 地点の強震記録から経験的グリーン関数法を用いて合成した東南海地震のフーリエスペクトルとの比較を行い,周期 2 秒以上の長周期地震動の振幅レベルがよく一致することを確認した。  復元された東南海地震の強震波形から,関東平野では周期 7~12秒の長周期地震動が,最大 10 cm の大きさで10分間以上にわたって長く続いたことが明らかになった。速度応答スペクトル(減衰 5%)を求めると,東金と横浜では固有周期12秒においてそれぞれ最大 60 cm/s と 30 cm/s の応答が,そして大手町では固有周期 9 秒において 25 cm/s の強い応答が得られた。この応答レベルは2004年紀伊半島南東沖(Mw7.4)の 2-2.5倍の大きさになることがわかった。
著者
毎熊 輝記 阿部 司 斎藤 徳美 小林 直太 中島 直吉 中村 操 野越 三雄 MAIGUMA Teruki ABE Mamoru SAITOH Tokumi KOBAYASHI Naota NAKAJIMA Naoyoshi NAKAMURA Misao NOGOSHI Mitsuo
出版者
社団法人物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.p338-356, 1987-10
被引用文献数
1

The 1983 Japan Sea Earthquake(M=7.7)caused heavy damage associated with remarkable liquefaction to many houses and the ground soils at certain areas(2kmx6km)in the Noshiro City region, Akita Pref. The geomechanical character of the ground there has been investigated through use of shear wave velocities from in-situ measurements, results of grain-size analyses, geoteclmical in formation from many drill holes and data for ground water depths. Almost all of the sites investigated in many places are underlain by loosely-packed sandy soils of fine-to medium-grained sediments(0.3 mm~0.5 mm), with low shear wave velocities less than 120m/s and small values of uniformity coefficients between 1.6 and 2.3. Seismicmicrozonation maps showing areas where local soil conditions would be favorable for liquefaction have been compiled for assessing future earthquake hazards in certain areas. In the Noshiro City areas investigated, all sites with shear wave velocities less than about 120m/s and with ground water depths less than 2 meters would be much likely to liquefy except for sites underlain mainly by silty and clayey soils. Sites with shear velocities greater than 150m/s would not have susceptibility to liquefaction.
著者
高野 忠 牧謙 一郎 相馬 央令子 千葉 茂生 前田 崇 藤原 顕 吉田 真吾
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.561-573, 2006 (Released:2010-06-18)
参考文献数
40

超高速な衝突や静的な圧力で物質を破壊する時,マイクロ波が発生することが見出された。本論文では,この現象を観測するための実験系,得られた内容・事実,そして物理探査に応用する可能性について述べる。この分野は多くの読者にこれまで余りなじみがないと思われ,かつ瞬発マイクロ波の受信・計測という特殊な技術を用いるので,全体的な記述に重きを置き詳細は省く。受信系では、まずマイクロ波信号を低雑音増幅器で増幅した後,観測する周波数にたいし十分高い標本化周波数でディジタル化して,データを取り込む。観測周波数としては,22GHz,2GHz,300MHz,1MHzを選んだ。データが多すぎて蓄積容量が足りない時は(22GHzと2GHz),ヘテロダイン受信で周波数を落としてからデータとする。 衝突実験における速度は最高約7km/secである。衝突標的の材料はアルミニウム,鉄などの金属,セラミック,煉瓦,ゴムなどを用いた。静的な圧力での破壊実験には,4種の岩石をコンプレッサで加圧した。得られたマイクロ波は,いずれの破壊モード・材料においても,断続的な極めて狭いパルス状である。岩石の静的圧力での破壊では,22GHzは硅石でのみ観測された。このようにして得られた波形は,パルス内でほぼ正弦波状なので,受信系を通して電力校正が可能である。その結果平均発生電力は2GHzにおいて,超高速衝突の実験で 2.7×10-5mW,静的圧力の実験で2.7×10-8mWであった。マイクロ波発生原因として原子あるいは分子間の結合が切れることが推定されるが,未だ確定するには至っていない。本現象は,次のような分野の物理探査に応用することを考えている。 (1)物質の性質探求:天体衝突現象,材料科学,宇宙デブリ問題 (2)地下構造の変動:岩石の破壊 (3)地震の探査