著者
長岡 慎介
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.26-31, 2016-01-01 (Released:2016-04-01)

中東アラブ世界は,イスラーム文明がもたらした「読み(誦み)」「書く」伝統が連綿と受け継がれてきた地域である。その伝統は,21世紀でも依然として健在である。他方,ヨーロッパ近代が生みだしたテクノロジーによって,その伝統が新しいメディアによって再構築され,以前には考えられなかった形で伝播していく動きも見られ始めている。本稿は,そのような新旧の伝統と革新が複雑に入り交じる現代中東アラブ世界の「読み(誦み)」「書く」伝統を支える知的インフラである出版メディア(書籍,インターネット)の一側面を描写する。
著者
酒井 美里
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.325-330, 2016-07-01 (Released:2016-07-01)

スマートフォン知財訴訟や体重計の意匠,腕時計の商標など,身近な製品に関する知財訴訟を目にする機会が多くなっている。また,平成27年より特許異議申立制度の運用が開始されるなど,審判制度にも新たな動きが発生している。しかし日本だけを例にとってみても,審判や訴訟に関する情報としての審決公報や審判記録情報,判決文などは,その管轄が特許庁審判部,知財高裁,高等裁判所と多岐にわたり「ここさえ見ればすべての情報を簡単に入手可能」とはいかないのが現状である。したがって一般の特許情報利用者には,その入手や利用方法の把握が難しく,ましてや審判や訴訟の情報整理など,より敷居が高く感じられる,といった状況にもある。本稿では日本及び米国を中心に,知財審判・訴訟に関する情報の種類ならびに情報入手方法を概説する。
著者
木本 裕司 佐々木 良一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.329-335, 2012-08-01

内閣官房情報セキュリティセンターは,わが国の情報セキュリティ政策の中核機関である。その役割は,基本戦略の策定,政府機関や重要インフラ分野の対策,国民への普及啓発,国際連携など多岐に及ぶ。政府機関の対策の中から,統一基準群の策定,情報セキュリティ報告書の策定,SBD,送信ドメイン認証,不審メール対処訓練,ペネトレーションテスト,組織内CSIRTの整備等を紹介し,今後政府機関のセキュリティ対策の方向性を展望する。
著者
角田 朗
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.266-271, 2016-06-01 (Released:2016-06-01)

初めて特許業務に関わる方や,これから本格的に特許調査に取り組む方に向け,特許分類とはどのようなものか平易に解説した。特許分類をイメージしやすくするため,特許分類を生物学の分類と比較した。次に,国際特許分類についてその概要を説明した。我が国独自の特許分類であるFI,ファセット分類記号,Fタームについても,国際特許分類と比較しながら,その概要を解説した。分類付与の実際についても説明した。加えて,外国の特許分類であるCPCとUSクラスについても簡単に紹介した。最後に,特許分類の調べ方と分類を使って検索する際に,知っておくべき注意点を解説した。
著者
岩橋 正樹
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.260-265, 2016-06-01 (Released:2016-06-01)

個人も企業も政府も,直接的あるいは間接的に社会全体とかかわりを持ち,日々,意思決定を行っている。適切な意思決定には,正確な情報に基づく状況判断が欠かせない。政府は,国民にとって合理的な意思決定を行うための重要な情報である公的統計を作成し提供している。日本標準産業分類などの標準統計分類は,各種公的統計相互の比較可能性を高め,統計の利用向上を図ることを目的に定められた統計分類である。
著者
高木 元 タカギ ゲン TAKAGI Gen
出版者
情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, 2005-10-01

人文科学系基礎学の研究業績は、多くの場合経済的な見返りが期待できない。のみならず、短期間に個人で完璧な成果を挙げることの困難な課題が多い。したがって活字媒体での公表のみならず、インターネット上に webサイトを確保して、そこにアーカイブし公開することの意義は大変に大きい。著者自らが日々新たな知見や情報によって自らの記述の更新が可能だからである。しかし、一般に個人サイトの維持は有限である。千葉大学で始まった学術成果リボジトリは、書誌情報を添加して固定的なurlで持続的に保存されるという点で劃期的であるが、機械可読テキストの最大の長所である適時の更新、ないしは更新履歴の保存に対応していない点などの課題も残している。In most cases, scholarly work in the humanities does not result in economic compensation. Furthermore, there are many subjects for which it is difficult to produce thorough results. There is thus a great significance and potential in making public the results of one's work not only through the medium of print but also by means of maintaining a website and creating a public archive on the internet. This allows the author him or herself to modify and update even on a daily basis their work by adding new information. There are, however, normally limits to maintaining a personal website. The institutional repository begun at Chiba University is in many ways truly revolutionary in that it allows for a continuous preservations of fixed URLs to which have been added bibliographic data. Two important problems, however, remain: the ability to cope in a timely manner with revisions and updates - which, after all, is the great advantage of electronic text - and the preservation of a history of updates.
著者
梅本 勝博
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.276-280, 2012-07-01

21世紀知識社会の経営パラダイムとしてのナレッジマネジメントは,二人の日本人研究者が英語で書いて1995年に出版したThe Knowledge-Creating Companyというベストセラーをきっかけに始まったとされ,それ以降,ビジネス企業のみならず,行政や教育,医療などの非営利公共セクターにも拡がってきた。その普及の大きな推進力となったのが,グループウェアやイントラネット,データベース技術,テレビ会議システム,インターネット,ウェブ技術などの情報通信技術である。本論文では,特集テーマの総論として,ナレッジマネジメントの最近の理解と動向,ウェブの役割について論じる。
著者
松本 多恵
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.481-484, 2014

最近,ゲームの教育利用に関する研究・実践や学習成績の評価など様々な事例が報告されてきている。特にゲーミフィケーションやシリアスゲーム,ソーシャルゲームなども教育に取り入れられてきている。しかし,これらの相違点を明記した論文や書籍は少ない。そこで,本稿では,ゲーミフィケーションとシリアスゲーム,ソーシャルゲームの相違点について解説するとともに,それぞれ教育を進めるうえで考慮すべき長所と短所を整理し,解説する。そして,ゲーミフィケーション,シリアスゲーム,ソーシャルゲームそれぞれを効果的に導入するためのために考慮すべき今後の課題も含めて議論を行う。
著者
小池 聖一
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.148-152, 2016-04-01 (Released:2016-04-01)

大学アーカイブズは,必ずしも全ての大学に設置されているわけでないが,大学の個性に対応した形態をとり,その個性に相応する個人文書を所蔵している。反面,大学アーカイブズでは,これまで機関アーカイブズとして,当該機関の諸記録に目配りすることが忘失されがちであった。その点で,二室体制をとる広島大学文書館では,公文書管理法の政令指定機関となり,公文書の統一的管理を果たす一方,大学史資料室が個人文書を学術的資料として収集・整理・公開し,多様な個人文書を所蔵している。今後,アーカイブズは,全体として検証と底辺拡大の二方向を有しているが,課題は大きい。個人文書については,国立国会図書館憲政資料室,大学アーカイブズ,その他のアーカイブズとの連携による調査・研究機関が必要ではないだろうか。
著者
和田 一夫
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.143-147, 2016-04-01 (Released:2016-04-01)

過去の企業経営を知ろうと思えば,経営体が自ら生み出した文書(経営文書)の利用が不可欠となる。ただ日本で文書というと「手書き文書」のみを連想しがちである。しかし複製技術の進展だけでなく,企業規模の拡大もあって19世紀後半から「複製文書」が経営文書の中心になっている。こうしたことを踏まえて,かつ「複製文書」のデジタル化が進行していることを考えにいれながら文書の保存体制を整えていく必要がある。経営文書の保存について,日本の場合を考えて見ると,どこに何が保存されているかという利用者にとって重要な情報さえも整備されていないのが実情である。