著者
中村 研一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.241-250, 2013-06-01

建築家として設計した3つの図書館(フランス国立図書館,慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスメディアセンター,西町インターナショナルスクール八城メディアセンター)での経験から,図書館を設計するプロセスについて主に西町での経験を説明している。どのような図書館を目指すかというヴィジョンを建築家とクライアントが共有するために,図書館建築の歴史を知の体系のメタファーという観点から概観し,マニエリスム期のミケランジェロから現代のコールハースまでの代表的な図書館の特徴を説明して,フランス国立図書館コンペやせんだいメディアテークコンペがその後の図書館建築に与えた影響を考察して,図書館の未来の姿を考察する。
著者
中井 孝幸
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.228-234, 2013-06-01
参考文献数
15

公共図書館と大学図書館では,利用者層や利用内容,提供しているサービスも異なるが,アンケート調査や行動観察調査から,利用者が図書館という「場」に何を求めて利用しているのかを整理し,図書館計画への示唆を得ることを目的としている。公共図書館では,図書の貸出が主な利用ではあるが,館内での滞在的な利用も多くなっている。少数ではあるが人ごみに紛れることで匿名性を確保して,落ち着きを求めている利用者も見受けられた。大学図書館では,個人で集中して勉強する場としての利用が多いが,会話を伴う学習形態も増えている。静かな場所とにぎやかな場所,アナログとデジタル資料など,利用者は図書館サービスを適切に使い分けている。
著者
五十嵐 太郎
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.251-254, 2013-06-01

この論考では,情報化の時代において建築家がどのように図書館のデザインを提案しているかをとりあげた。とくに1995年以降,伊東豊雄や古谷誠章を含む,建築家たちは,新しい図書館の可能性を開拓している。彼らは,デザインを通じて,透明性,情報の可視化,変化し続ける空間,そしてビルディングタイプの融解といったテーマを表現した。
著者
益子 一彦
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.235-240, 2013-06-01

図書館の空間はその時代における知識・情報のありかたを示すものだった。デジタル情報化が進行した未来にあっても図書館という場所が必要となされるのであれば,図書館の本質は空間に還元されるはずである。そのときの基準は人間の身体である。その望み得る図書館空間を実現しようとするならば,建築家の存在は不可欠である。その建築家をどう選ぶかが課題となる。
著者
中原 まり
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.221-227, 2013-06-01
参考文献数
9

20年ほど前から急速に発展した電子技術と昨今のデジタル時代の到来は,情報世界に旋風を巻き起こした。図書館のインフラの整備はもとより,利用者が図書館に要求する空間やサービスが変化し,それに対応して図書館の用途変更が余儀なくされたり,またその結果として,新しい図書館建築意匠が提案されたりと,その影響は広範である。本稿は,図書館建築の歴史的経緯を踏まえながら,現在の図書館に見られる傾向と新しい図書館建築意匠との関係を分析・考察することを目的とする。また,建築歴史意匠学研究者ならびに図書館司書である筆者の視点から,このデジタル時代が研究自体に与える影響を指摘する。
著者
久保田 壮活
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.474-479, 2005-11-01

東京大学柏図書館は, 東京大学「3極構造」構想の一つである柏キャンパスの中心的図書館として, 平成17年2月正式開館した。柏キャンパスで活動する学生教職員のための学習研究図書館としてだけではなく, 全学資料共同利用センターとして, 50万冊収容可能の自動化書庫を備え, 文献提供の拠点としても機能している。さらに社会に開かれた図書館として, 社会連携を中心としたさまざまな活動, 「場」の提供も重要なサービスと位置づけている。「次世代型図書館」をキーワードにつくられた東京大学柏図書館の建設計画から完成までの経緯をたどり, 活動中の現在, そして, 今後の計画について述べる。
著者
薬袋 秀樹
出版者
情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.360-365, 2001-07

日本では,最近,先進的な公共図書館が新しい情報サービスを提供している。また,公共図書館の新しい経営方法と情報サービスを提案する数点の指針が発表されている。しかし,他の多くの公共図書館は管理運営上の多くの問題をかかえている。これらの公共図書館は地方自治体によって高く評価されていない。その理由は,日本の多くの公共図書館が,米国の公共図書館と異なり,十分なレファレンスサービスや雑誌コレクションを提供せず,専門的職務と非専門的職務を区分していないことにある。また,日本の公共図書館は過去30年間に適切な改革を進めてこなかった。日本の公共図書館の今後の課題は,専門的職務と非専門的職務を分離すること,情報ネットワークの公共図書館に対する影響を予測して将来に備えることである。
著者
小嶋 智美
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.186-192, 2013-05-01
参考文献数
21

本稿では,EBMを意識したPubMedの検索について,JMLA診療ガイドラインワーキンググループの活動で得た知見と実例を交えて解説する。Advanced Searchは,BuilderとHistoryにより検索式を作成することができる。Filterは,検索結果の絞り込みに用いる。Detailsで,検索の実際を確認する。検索フィールドの指定には,タグを用いる。My NCBIで,検索式や文献を保存する。MeSHを検索に用いる時は,索引情報やルールに留意する。検索担当者に必要なのは,PubMed・MeSH・EBMの知識と共に,依頼者と協同して作業を行う姿勢である。
著者
大波 純一 佐藤 恵子 白木澤 佳子 高木 利久
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.179-185, 2013-05-01
参考文献数
14

バイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)は,独立行政法人科学技術振興機構(JST)に平成23年4月に設置された組織であり,ライフサイエンス分野のデータベースの統合を推進している。NBDCでは,Integbioデータベースカタログ,生命科学データベース横断検索,生命科学系データベースアーカイブなどのサービスや,ファンディングによって開発されたサービス(新着論文レビュー,領域融合レビュー,統合TV,TogoDoc,BodyParts3D/Anatomography,生物アイコン,Allie,inMeXes等)をポータルサイトから無償で公開している。本稿ではNBDCの取り組みと各サービスを利用した医学関連データベースへのアクセス方法やツールの活用例を紹介する。
著者
岡田 英孝
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.201-205, 2013-05-01
参考文献数
17
被引用文献数
1

医学中央雑誌について,医学中央雑誌刊行会の見学会を通じて得られた見解を元に以下の観点から論じた。1.記事の採択を現在行なっているが,できれば収録雑誌の全ての記事を採択するのが望ましいこと。2.インデクシングは再現率を高めるように付与されているので,利用の際はそこに留意すること。システム上の検索機能も合わせて活用すること。3.一次資料の入手まで考慮に入れた展開が必要なこと。4.会議録の取り扱いについて今後も協議して望ましい提供ができること。5.撤回記事は更なる充実が望まれること。明確な解決策が難しい問題もあるが,時代の変化にあわせた改善が望まれる。
著者
鈴木 博道
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.174-178, 2013-05-01
参考文献数
4

医学もデータベースも,きちんと定義し説明するのは難しいものである。天文学や理論物理学については日常会話にのぼることがほとんどないであろうが,医学医療については話題となることは多い。データベースなどのIT関連用語は身近で触れることは多いものの,きちんとした説明をするのは誰にでも出来ることではない。医学分野の特性,特殊性を踏まえて,いわゆる医学分野のデータベース概要と利活用について紹介をする。
著者
永田 治樹 増田 元 大西 直樹
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.175-184, 1987-05-01

データのアップロード及びダウンロードの技法は,情報ネットワークにおけるデータベース形成にとって重要な手段である。東京大学図書館では、学術情報センターに存在する全国総合目録データベースと東京大学ローカルのデータベースをこの技法によって結びつけ,ローカルな作業が全国データベース形成に転化するようにするとともに,全国データベースを円滑にローカル側に取り込むことを可能にした。目録情報ネットワークにおける「分散データベース」を展望するものである。また,図書館システムとしては,受入作業から目録作成作業,そして目録情報提供サービスまでが一貫した流れとなり,外部システム・外部データベースを使っているにもかかわらず,使いやすいシステムの実現をみた。この技法の意味合い,技術的側面,運用について述べる。
著者
井上 真琴
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.130-136, 2013-04-01
参考文献数
12

インフォプロとして働いていくには,どのような自己トレーニングが求められるのか。インフォプロの持つべき心構えはどのようなものか。自身がもつ図書館レファレンスライブラリアンの業務経験を振り返り,情報の取り扱いが職業的な楽しみや喜びに繋がるような研鑽の方法と情報源との接し方を紹介する。前半は情報の取り扱い技術と読解法に焦点をあて,(1)情報源の知見の深め方,(2)情報源の編まれ方,(3)他のインフォプロによる情報の使われ方の調査の仕方を具体的事例に即して説明する。後半はプロフェッショナルの意味を検討したうえで,クライアントとのコミュニケーションと協調の重要性を論ずる。