著者
谷島 貫太 阿部 卓也
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.518-524, 2016-10-01 (Released:2016-10-01)

本稿では,東京大学附属図書館の「新図書館計画」の一環で実施された,「読書」をテーマとする三つの実証実験を紹介する。一つ目は,専門家の知識をデジタルアーカイブのなかに埋め込み,資料群を構造化することで,図書館利用者と資料との出会いを支援する実験,二つ目は,電子書籍に文献の索引と注釈を機械的に生成する機能を組み込むことで,利用者の読書行為を補助する実験,そして三つ目は,書き込み共有機能を有した電子書籍を用いて,文献講読の授業を行う実験である。これらの実験全体を通して,紙の書物と電子書籍それぞれの特性を適切に踏まえ,両者を創造的に組み合わせた読書環境を構想することの重要性が改めて浮かび上がった。
著者
石原 眞理
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.74-79, 2009-02-01

ここ数年,図書館関係の機関・団体が,図書館員の研修や養成に関する調査研究を行っている。本稿では,主に全国公共図書館協議会が行った研究を基に,図書館員の研修とキャリアパスについて考察した。図書館においては,急激に人員の削減や非正規職員化が進んでいる。一方,図書館に対する利用者の期待は,年々高まっている。図書館の現場では,従来から続いている図書・逐次刊行物などの現物提供に加え,ITC関連の技術の進展など図書館サービスをめぐる変化がある。このような状況の中で,研修の主催側は,これまで以上に研修の強化が必要になっている。図書館員側は自らのキャリアパスについての認識を持ち,受講する研修を主体的に選択することが必要であるだろう。
著者
青柳 英治
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.446-451, 2016-09-01 (Released:2016-09-01)

本稿の目的は,公開型専門図書館を取り巻く内外の状況を踏まえ,公開型専門図書館の現状把握を行い,今後の課題を検討し,解決の方策を提示することである。まず,公開型専門図書館の現状を,管理運営とサービスの側面から明らかにした。次に,公開型専門図書館の顕著な取り組み事例を参照し,二つの側面から課題の検討を行い,それを解決するための方策を提示した。具体的には次の点を提示した。管理運営においては,(1)ボランティアによる人的支援の導入,(2)交流を促進する場所としての機能,(3)外部資金の調達である。サービスにおいては,(1)レファレンス事例の公開,蔵書横断検索による利用機会の拡大,(2)社会人から児童・生徒までのサービス対象者層の拡大である。
著者
山口 美佐子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.406-411, 2016-08-01 (Released:2016-08-01)

コレクション対象である印刷物並びに関連資料は時代的には幅広いが,印刷・発行年代が明らかな資料の大半を占めるのが,近現代の資料である。すなわち,大量印刷時代の印刷物であり,消耗品的色合いが濃い。これまで,博物館や美術館とは縁遠かった近現代の資料も,時を経て,当時の社会を知る上で重要な資料という認識が広まり,その価値も見直されてきている。しかし,こうした印刷物には,長期保存に適さない素材が用いられていることが多い。また,資料から得られる情報が乏しいこともある。こうした資料を取り扱う,印刷博物館の取り組みついてまとめる。
著者
大石 和江
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.412-415, 2016-08-01 (Released:2016-08-01)

大学博物館はその大学の特色や方針が垣間見られ,一般市民への広報部門として注目されてきている。現在,東京理科大学の神楽坂キャンパスに位置する東京理科大学近代科学資料館は大学が遺し収集してきた科学技術遺産を基に「計算機の歴史」を中心とした展示と,毎年その時々のトピックスを中心に企画展示を行ってきた。科学技術をわかりやすく解説する科学コミュニケーターとして様々なイベントを企画してきた経験の基づき,大学の持つ所蔵資料を調査・保存する学芸員として行っているとりくみについて実例と考察を述べる。
著者
野秋 誠治
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.416-421, 2016-08-01 (Released:2016-08-01)

お菓子の「おまけ」は,子どもの楽しみを倍増させるだけではなく,文化資源として時代を映す鏡でもある。本稿では,まず景表法に触れ,景品としての「おまけ」について説明する。その上で,「おまけ」そのものについての理解を深めるために,森永製菓の保有する様々な「おまけ」について取り上げる。森永製菓の史料室には1915年の「地理絵合わせ」カードに始まり,シール,小さなおもちゃ,商品パッケージと一体化した「おまけ」など,様々な「おまけ」が保存されている。最後に,「おまけ」の保存から活用までを,森永製菓の実例を紹介し,史資料としての「おまけ」の課題も指摘する。活用では,著作権法にも触れている。