著者
大島 茂樹
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.49-54, 2010
参考文献数
30
被引用文献数
1

記録メディアの劣化・陳腐化やファイルフォーマットの陳腐化は,デジタル情報保存にとって大きなリスクとなる。これらの問題への対処としては,適切な記録メディアの劣化防止策をとること,マイグレーション(新しい記録メディアへのデータ移行)を行うこと,ファイルフォーマットの陳腐化のリスクを管理し,フォーマット変換等の対策をとることなどが考えられる。本稿では,主な記録メディアの劣化寿命および劣化防止策について述べ,そのマイグレーション方策についても検討する。また,主に海外で行われている,ファイルフォーマットの陳腐化のリスクを管理するための取り組みを紹介する。
著者
佐藤 翔
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.51-56, 2013-02-01
参考文献数
32

電子ジャーナル等の電子リソースの普及に伴い,そのアクセスログに基づいた研究が増えている。本文へのアクセス状況を包括的に示すアクセスログの分析は利用者行動を知る際に役立つものであるが,その目的や意図はログからはわからないため,その他の手法と組み合わせることが有益である。また,引用データとは異なる傾向を示すものとしてビブリオメトリクスの中でも注目されているが,研究評価に用いるには水増しが容易である等の問題もある。日本においては,海外で行なわれているような電子ジャーナルの大規模ログ分析が未だ行なわれていないことが課題である。
著者
中村 裕一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.57-62, 2013-02-01
参考文献数
16

映像には多くの情報を記録することができ,ライフログのデータとして優れている反面,閲覧に時間がかかり,一覧性も悪いなどの欠点もある。そのため,メディア技術を用いて,ライフログ映像の加工を行うことが必須となる。本稿では,記憶補助から集団活動の解析や補助まで,様々な目的に対して,種々の画像・映像処理を行って,ライフログ映像の活用を支援する手法について紹介する。
著者
菊池 亮 高橋 克巳
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.69-73, 2013-02-01
参考文献数
4

健全なログ情報活用のためには,プライバシー上のリスクに対する正しい理解の上で,最善な技術的措置を講じることが重要である。本稿ではログ情報の活用のために必要と考えられるプライバシー保護の技術的手段に関して考察を行う。本稿ではログ活用のプロセスをログ情報の提供者,処理者,活用者の3主体に分類し,その主体間でそれぞれ,入力プライバシー,処理プライバシー,出力プライバシーを定義する。次にその上でのリスクを定義し,リスクの要因となる処理形式や背景知識について整理し,対策となる技術を紹介する。
著者
橋詰 秋子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.214-217, 2012-05-01
参考文献数
13

「国際子ども図書館子どもOPAC」は,小学生向けインターフェイスによる蔵書検索システムで,国立国会図書館の支部図書館である国際子ども図書館の所蔵資料を検索することができる。「国立国会図書館サーチ」のシステムの一部として2011年に開発され,識字や各種知識の習得段階にある児童が無理なく使えるように,大人向けのOPACには無い,様々な機能や工夫を盛り込んでいる。「国際子ども図書館子どもOPAC」について,児童図書館サービスのためのツールという開発コンセプトとともに,年齢層別の3つの検索メニューや案内キャラクターなどの特徴的な機能を紹介する。
著者
秋葉 友良
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.21-27, 2013
参考文献数
39

情報通信網の発展とデータ記録コストの低減により,テキストデータに加えてマルチメディアコンテンツの増大が加速している。音声ドキュメント検索は,音声データに含まれる言語情報を利用した検索技術であり,今後マルチメディアコンテンツの情報爆発時代に必要不可欠な技術になると考えられる。本稿では,音声ドキュメント検索の諸相について論じる。まず,音声ドキュメント検索の問題設定と,現在技術目標として評価が行われている2つのタスク設定である音声中の検索語検出(STD)と音声ドキュメントの内容検索(SCR)について述べる。また,音声ドキュメント検索に必要な技術課題を整理し,研究動向を紹介する。最後に,音声ドキュメント検索手法の性能評価に不可欠なテストコレクションの整備状況と,現在評価が進行しつつあるNTCIR SpokenDocタスクについて紹介する。
著者
三輪 眞木子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.2-8, 2013
参考文献数
24

検索の歴史を振り返り将来を展望した。システム志向とユーザ志向のアプローチの立脚点を概観し,研究開発の歴史を両者のせめぎあいから歩み寄りに至るプロセスと位置づけ,両アプローチの概念モデルを紹介した。検索システムの進化を捉える軸として,適合性,情報探索プロセスモデル群,コストと時間削減のあゆみ,および学習や調査のための探索型検索への対応を取り上げた。あらゆるタスクやゴールを目指すユーザがいつでもどこにいても制約なく楽しみながら求める情報を入手することを検索の目標と位置づけ,その実現のために,適合性に代わる検索システム評価基準として知識の変化を測定する尺度の必要性に言及した。
著者
浅川 智恵子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.192-197, 2012
参考文献数
15

障害者にとって,情報技術は教育や就労をはじめ社会参加の機会を劇的に拡大させる重要な手段である。文字認識や音声合成といったインターフェース技術,パーソナル・コンピューター,Web,ソーシャル・ネットワークといった製品・サービスの登場により,障害者の情報アクセス環境は大きく変化してきた。本稿では,視覚障害をはじめ印刷された情報の利用が困難な障害を持つ人々を対象としたアクセシビリティ技術を中心に,それらの技術がユーザーの情報アクセス環境へもたらしてきたインパクトを振り返り,高齢者や非識字者などを対象とした新しいアクセシビリティ研究における将来の展望を述べる。
著者
兼松 芳之
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.288-295, 2012

情報が集まる図書館は,資料管理等の面で自然と情報の管理を行ってきた。一方,情報サービスの面では情報および知識の管理はこれからという状況である。そこで,この10年前後におけるナレッジマネジメントと図書館の動きを振り返ると共に,図書館の情報サービスにおけるナレッジマネジメントの一例として,国立国会図書館のレファレンスサービスにおけるナレッジマネジメントとツールを紹介する。具体的には,国立国会図書館の近年のレファレンスサービスに関連する知識のマネジメントについて,共同化,表出化,連結化,内面化の4ステップと照らし合わせながら,インフォメーションカード, FAQ機能,REX,リサーチ・ナビ,レファレンス受理処理,レファレンス協同データベースというツールを提示したい。
著者
尾身 朝子 時実 象一 山崎 匠
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.120-123, 2006
参考文献数
22
被引用文献数
4 3

電子ジャーナルのオープンアクセスの動きは,米国の国立衛生研究所(NIH)の助成研究成果論文公開の方針で新しい段階を迎えた。NIHは2005年2月に助成研究の成果については,論文刊行後12ヵ月以内にNIHの電子ジャーナルサービスPubMed Centralにその最終原稿の電子版を提供し,無料公開するように求める方針を発表し,この方針は2005年5月2日から実施された。また,英国の有力な研究助成団体であるWellcome財団も,5月にオープンアクセスの方針を発表した。これら海外の動きが日本の学協会へ与える影響も少なくない。日本化学会が6月にオープンアクセスオプションを発表した。オープンアクセスの議論点を整理し,考えられる影響や必要な対応について述べる。
著者
高山 正也
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.428-433, 2012
参考文献数
7

2011年4月1日を期して公文書管理法が施行された。この法律がつくられたのは年金記録や自衛艦航海日誌などの杜撰な扱いが社会の注目を集め,長年にわたり関係者からの公文書管理体制の整備の声を無視し続けた行政当局も何らかの対応の必要性に迫られた結果であった。しかし公文書の管理という事象は日本の行政面を中心とする文化を集約している。一つの法律で長年にわたり培われた文化が変わるものではない。そこで,本稿では日本の公文書管理体制,公文書の実態,公文書による行政情報の管理等の諸問題についてその従来の状況と法律による是正策と現状での業務紹介の一端として東日本大震災における水損公文書の復旧支援活動のあらましを概観する。