著者
冨岡 達治
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.256-261, 2009-06-01

本稿では,「外国雑誌」という資料を取り扱う上での基本事項を整理する。外国雑誌の購入業務は商習慣の違いが大きな壁となるが,図書館では代理店を仲介することにより,その差を吸収してきた。雑誌は継続的な購読が前提となっているため,年間スケジュールが比較的はっきりしており,期限に間に合うように必要な処理をすることが重要である。また,購読予約後はキャンセルが難しいため,事前の情報収集が欠かせない。さらに,契約データとして保持すべき情報や日々のチェックイン業務に際し,未着・欠号管理や他の業務と連携する上での留意事項についても触れる。
著者
清田 陽司
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.484-489, 2012-11-01

現代のさまざまな情報サービスの基幹システムとして利用されているリレーショナルデータベースシステム(RDBMS)は,トランザクションやセキュリティなどの重要な機能を備えている一方,大規模Web情報サービスのログデータなど,テラバイト〜ペタバイト規模のいわゆるビッグデータの活用についてはいくつかの課題を抱えている。ビッグデータを扱うため,Hadoopや分散型Key-Value Storeなどの分散型コンピューティングシステムが普及しつつある。本稿では,分散型コンピューティングシステムの仕組みと,役割に応じたRDBMS と分散型コンピューティングシステムの使い分けについて解説する。また,ビッグデータ活用の流れの中で,図書館などの機関がどのようにビッグデータと向き合うべきかについて考察する。
著者
佐藤 卓己
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.230-235, 2012-06-01

デジタル・テクストとして物理的存在を欠いた電子ブックの普及は,「書物」の再定義をせまっている。しかし,電子ブック登場以前から,書物はすでに大きな変容を遂げてきている。本稿では比較メディア論の視点から,書物の変容を1920年代のラジオ放送開始,1930年代のペーパーバック革命において検討した。それは「書物のラジオ化/雑誌化」,すなわち「書物の広告媒体(メディア)化」の系譜である。こうした「書物のメディア化」の最終段階として,広告料収入で運営されるメディア企業,Googleによるライブラリープロジェクトが登場する。ウェブ2.0時代のコミュニケーション状況において「書物のデジタル化」がもたらす問題点を整理した上で,電子ブックを既存の書物のリテラシーに接合する必要性を指摘した。
著者
名和 小太郎
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.260-265, 1995-06-01
被引用文献数
3

著作権制度は情報の改変・断片化技術はありえないという前提のもとで構築されており,したがって,テジタル著作物を管理するためには不具合なルールを含んでいる。このために,既存の制度はアドホックな制度改正,デファクトな業界慣行による補完を行わないと機能しなくなった。
著者
平鍋 健児
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.498-504, 2009
参考文献数
6
被引用文献数
1

絵と文字を使って発想を大胆に描いていくマインドマップ。この手法をビジネスや教育,システム開発の現場でどのように利用していくかを,実例を用いて解説する。マインドマップの特徴である「ひろげる」発想術と「まとめる」整理術を使って,自己紹介,議事録,ブレインストーミング,システム開発での例を示しながら,その具体的な手法と利点をまとめる。
著者
倉田 敬子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.132-137, 2010-04-01
被引用文献数
1

オープンアクセスとは何なのか,その全体的な見取り図,概略図を示すことが本稿の目的である。最初に,基本的なオープンアクセスの定義,その前提となること,実現するための手段について概略した。次に,生物医学分野の2005年と2007年におけるオープンアクセスの現状を簡単に紹介し,機関リポジトリや著者支払いオープンアクセス雑誌だけで,現在のオープンアクセスが実現されているわけではないことを示した。最後に,従来とは異なるより広い文脈において,オープンアクセスを再検討した。本来の理念としてのアクセスの改善という観点から,オープンアクセスの対象の拡大,各種制約・制限を撤廃するのではない方向の検討を行った。
著者
杉山 智章 森内 文 高橋 里江 森部 圭亮
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.478-483, 2012-11-01

クラウドコンピューティングの普及とともに,クラウドを使用した図書館向けサービスや,機関単位でのクラウド化の事例がみられるようになった。静岡大学では,プライベートクラウドとパブリッククラウドの両方を活用した情報基盤の更新が行われ,附属図書館でも機関リポジトリや図書館業務システムなど,システムの全面パブリッククラウド化を達成した。その際,データの保全性を高めるためのバックアップや事業継続のためのリストア手順の確認を行った。クラウドによる効果はこれまでの機器・設備管理からの解放などがあげられる。一方,停電時の対応など,実際の運用を通して危機管理意識の重要性を再認識した。
著者
小林 麻実
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.52-57, 2006-02-01

アカデミーヒルズ六本木ライブラリーの創設は, 誰からも理解されず賛同も得られなかった個人の夢を, 諦めずに粘り強く抱き続けて現実に移した苦闘の歴史である。既存の海外・国内の図書館の事例を全く真似することなく, ゼロベースでライブラリーの本来あるべき姿・存在意義をただ一人で研究してきた個人のクリエイティビティの帰着点ともいえる。したがって独自のアイデンティティを構築しているのは当然である。このようなアイデンティティの構築過程においては, いまだ誰も見たことのない世界, および想像のつかない顧客層を自ら作り出していく信念を維持できるか, 与えられた環境をその信念とどのように適合させていくことができるか, という2点が鍵となる。
著者
本間 善夫
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.615-620, 2002-12-01

インターネットが急激に普及する中で,国内では携帯電話によるインターネット利用者が急増している。携帯電話は通信費が高いものの,どこでも膨大なWeb資源にアクセスできる利点を活かして教育分野でも活用が期待される。利用者が個別に調べ学習ができるほかに,教室での講義などにも利用可能である。本稿では携帯電話向けに公開されている自然科学分野のページをいくつか取り上げ,その可能性を述べる。また,筆者らが公開している化学関連ぺージについても触れ,画像やインタラクティブなコンテンツの重要性に言及する。
著者
岡本 真
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.502-508, 2006-11-01
被引用文献数
1

図書館関係者向けに行った講演をベースに,図書館がWeb2.0に対応するためにとるべき方策を論じる。前半部ではWeb2.0とは何か,という問いをBlogやRSS, SNSの具体例を紹介しながら論じ,Web2.0における重要概念であるCGMの意義を述べる。後半部では,図書館は依然としてWeb2.0以前の段階にあり,Web2.0に対応していくには,利用者を巻き込んだサービス像の転換が必要であることを指摘する。その上で一例として貸出記録を活用することで,オンライン書店Amazonに比肩する図書館サービスの実現可能性を示唆し,そのために図書館が乗り越えるべき課題を指摘する。
著者
時実 象一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.249-255, 2007-05-01
被引用文献数
3

最初のオープンアクセス出版社BioMed Centralが設立されてからすでに7年となる。その節目にオープンアクセスのさまざまな動きをまとめた。(II)では日本でも盛んになってきた大学・研究機関リポジトリ,NIH,Wellcome財団,RCUKなど研究助成機関のオープンアクセス支援などについて最近の動向をまとめた。Wellcome財団やCERNが出版社にオープンアクセスのための費用を支払う方向を示したことが注目される。
著者
増田 豊
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.268-274, 2009
参考文献数
10

電子ジャーナルは学術図書館における定期刊行物予算の多くを占めているが,その管理をどのようにシステム化するかに関しては模索が続いている。本稿では,電子情報資源管理システム(ERMS)とリンクリゾルバーが電子ジャーナルの業務にどのような効果をもたらすのか,代表的な製品であるEx Libris社のVerdeとSFXの機能を概説することにより考察する。また,ERMSとリンクリゾルバーとの連動,その他の図書館システムとの相互運用性や,出版機関との連携とその背景にあるデータの標準化の動向などを通じて製品の位置づけの現状を近未来も含めて報告する
著者
尼川 洋子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.513-518, 2009-10-01

ライブラリーの活性化をはかるために,一人ひとりのライブラリアンがマネジメントの視点とスキル,ノウハウを身につけることをめざして,2004年から5回の少人数ゼミナール形式の「ライブラリーマネジメント・ゼミナール」を企画・実施した。そのプログラムの概要とゼミナールの企画,運営の実際,得られた成果について報告する。
著者
孫 媛
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 = The journal of Information Science and Technology Association (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.372-377, 2007-08-01

近年,研究評価に関する客観的指標への要請が高まり,ビブリオメトリックス指標に関心が向けられている。しかし,各指標はかならずしも適切に用いられているとはいえない。たとえば,インパクトファクタという指標が大学・研究機関あるいは研究者個人の研究業績評価に用いられるケースが増えているが,本来の定義・性質からは導き得ない解釈が行われることも多い。本稿では,ビブリオメトリックス研究一般について紹介した後,インパクトファクタ,h指数など,研究評価に利用される指標について,その特徴を解説する。研究評価におけるビブリオメトリックス指標を利用することの有効性と問題点についても整理する。