著者
井田 浩之
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.8-14, 2014-01-01

本稿では,学習者の知識創造を可能にする情報リテラシーの条件として,(1)学習者の情報リテラシー能力を向上させるための「問い」を共有するプラットフォームの必要性,(2)情報リテラシーのスキル的側面を考えたときに,「脱文脈」化されたスキルに意味があるのか,換言すれば,学習者にとっての情報リテラシー能力とは知識創造に結びついていること,(3)学習者の情報探索行動のメカニズムが解明されていない中,情報行動に制約をかける取り組みへの疑問を呈する。今後情報リテラシー教育を図書館側が牽引するには,カリキュラム,教育内容,その評価方法を含め,学習者の視点で一からデザインすることが求められていることを指摘する。
著者
野末 俊比古
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.2-7, 2014-01-01

情報リテラシー教育の「これまで」の動向と「これから」の方向性について,"情報リテラシー(教育)観"を軸としながら整理.検討した。次のような"大きな流れ"としてまとめた。「マルチメディアの視点からからトランスメディアの視点へ」「情報源の評価から情報の評価へ」「理念としての情報リテラシー(教育)から戦略としての情報リテラシー(教育)へ」「目的・目標としての情報リテラシー(教育)から手段・方法としての情報リテラシー(教育)へ」「『ツールを(で)教える』から『プロセスを(で)教える』」へ」「"教える"情報リテラシー教育から"教えない"情報リテラシー教育へ」
著者
佐川 亜矢子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.426-429, 2013-10-01

エルゼビア社は,ライフサイエンス研究の上流から下流までサポートする様々なソリューションを提供しているが,今回新たに医薬品開発を効率化するデータベースとして,メディシナルケミスト向けのReaxys Medicinal Chemistryを開発した。これは反応・化合物データベースとして定評のあるReaxysからは独立した別のデータベースである。化合物情報としてReaxysの収録情報を一部活用し,さらに新たに化合物情報を追加している。化合物データは標準化して収録し,メディシナルケミストが使いやすい情報として整理されている。本稿ではこの新しいデータベースの特長について紹介する。
著者
平野 泉
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.421-425, 2013-10-01

本稿は,草の根の,営利を目的としない逐次刊行物であり,一般図書館等でアクセスしにくい「ミニコミ」について,研究資源としての可能性を示すことを目的とする。筆者の勤務先である立教大学共生社会研究センターが所蔵するミニコミ・コレクションと,それにまつわる試みとを事例として検討し,ミニコミが,書かれた文字以上のものを伝える,コンテクストと強く結びつけられたメディアであり,むしろアーカイブス資料に近いものであることを明らかにする。そのうえで,そうした性質を持つミニコミを保存し,研究資源として利用に供することにまつわる課題等についても考察を加える。
著者
稲垣 太郎
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.415-420, 2013-10-01

広告と配送方法に依存するフリーペーパーの特徴を大学講座で知ることにより,学生たちは記事コンテンツの作成のみならず,広告営業と配送方法のマッチングの重要性を認識する。発行に挑戦する学生も多く,広告営業と配布活動を体験することで,社会人になるための大きな一歩を踏み出している。時代を映す史料としての役割は大きいが,大量に読まれては捨てられ散逸するフリーペーパー。どこが主体になり,どのようにして収集,保存すべきか考える時期に来ている。発行社や関連団体,大学の支援を仰ぎ,基金を設立して,少数のスタッフが運営する専門図書館を作るべきだろう。
著者
松江 健介
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 = The journal of Information Science and Technology Association (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.409-414, 2013

有名雑誌が次々と休刊を余儀なくされる中でフリーペーパーへの注目は高くなり,発行元も地域もテーマも多岐に渡りより細分化された個性的なフリーペーパーが次々と登場するようになった。デジタルメディアが主流の時代において人々がフリーペーパーに求めるものは何であるのか。全国の多種多様なフリーペーパーを実際に見てきた立場からフリーペーパーの役割そしてこれからの動向を考察してみた。
著者
戸邉 俊哉
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.403-408, 2013-10-01

近年様々な種類のフリーペーパーが発行されている中で,その転換点となったのは1970年代に新聞社によって発行されたフリーペーパーだとされる。本稿では,なぜ新聞社系フリーペーパーが発行され読者に受容されていったのかを,新聞社の収入構造における広告の位置という経済的要因,フリーペーパーの発行地域である都市郊外の新たな住宅地に住む家族のネットワークという社会的状況から考察した。また,この経済的・社会的要因を架橋するものとして,新聞社系フリーペーパーから生まれ出た「信頼」に関する独自の機制について言及した。特に,新聞社系フリーペーパーにおいて記事体広告が信頼の創出の一翼を担っていたことを,新聞記事と広告の関係を通じて指摘した。
著者
佐藤 義則
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.377-384, 2013-09-01

e-サイエンスあるいはe-リサーチといったデータ集約型の研究がますます広範囲に広がり,重要性を増す中で,データの共有や再利用を前提とした研究データ公開への要求が強まりつつある。研究データサービスとは,こうしたデータ公開を前提に,大学図書館がデータのライフサイクル全般にわたって一連の支援を提供するものである。本稿では,研究データ公開の論拠,資金提供機関による研究データ公開の義務化,問題点について整理したうえで,研究データサービスの現状と今後の課題について検討を行なった。
著者
大石 雅寿
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.363-368, 2013-09-01

半導体技術やネットワーク技術の進展は,世界に分散する大規模データを活用するタイプの天文学という新しい研究パラダイムを生みつつある。ヴァーチャル天文台は,世界の関連するプロジェクトが合同で標準プロトコルを定め,大量のデータを活用する天文学研究を加速できることを示した。一方,将来の天文学において爆発するデータ生産率はテラビット毎秒を越える可能性があり,ペタフロップスクラスのスーパーコンピュータを用いた大規模データ処理が必要となると予想されている。さらには人手を介さない機械学習など情報学や統計科学との連携が非常に重要になってくると考えられる。
著者
スティーン 智子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.358-362, 2013-09-01

1999年の,英国科学技術省のJohn Taylor所長の提唱以来,e-Scienceのアプローチが,色んな科学分野で,使われているという事が確認され,科学の方向性がさらに変わって来た。情報科学分野の方でもそれに見合う対応性が望まれる様になったので,アメリカでは,政府機関,大学,民間企業それぞれに,新しい動きが出て来ている。この論文では,いろんな例を上げて,e-Science時代に情報を提供するアーカイブズや図書館,さらに情報専門家に期待される施設や知識,さらに将来の展望なども,検討してみる。e-Scienceは,国境のない科学で,求められる情報も多言語で供給しなくてはならない。
著者
稲木 美由紀
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.222-227, 2011-06-01

神奈川県立川崎図書館は「科学と産業の情報ライブラリー」という愛称を持ち,理工学関係の専門書,専門誌を多く所蔵している公共図書館として知られている。当館は1958年の開館以来,特許公報等を利用者に提供し続けているが,現在では知的財産権分野に関しては,文献提供のみならず,セミナーや相談事業を行う等の独自のビジネス支援サービスを展開している。公共図書館がそのようなサービスを利用者に提供し続けるには,他機関との連携が欠かせない。そのサービスの歴史や国の知財に関する施策との関係に触れつつ,どのような機関と連携して,どのようなサービスを行っているのかを具体的に紹介する。