著者
山地 一禎
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.54-59, 2014-02-01

大学や研究機関では,多くのオープンソースソフトウェアが公開されている。その多くは,個人やチームで利用するものを単に公開しているにとどまり,大きなコミュニティにまで発展している例は数少ない。あるいは,日本の学術関係者が海外のオープンソースソフトウェアの開発に積極的に関与している例も多くない。諸外国に比べ日本では,オープンソースソフトウェアに対する理解や活動が低いのが現状である。本稿では,学術機関においてオープンソースソフトウェアを開発・活用する意義を概説するとともに,これまでに開発してきたリポジトリソフトウエアWEKOの開発事例を紹介する。さらに,筆者が関係しているオープンソースコミュニティの活動状況や,その背景にある政治的な側面についても言及する。
著者
椎名 ゆかり
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 = The journal of Information Science and Technology Association (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.146-152, 2014

アメリカの図書館でマンガが所蔵されるようになったのは近年のことである。長い間マンガ,特に「コミック・ブック」と呼ばれるマンガの刊行物は,「子供向けの低俗な読み物」として時には規制運動も巻き起こるほど批判され,図書館はむしろ「コミック・ブック」に対して批判する側であった。その図書館が21世紀に入り,マンガを積極的に支持し,所蔵対象にするようになっている。本稿では,マンガが図書館に所蔵されるようになった歴史的経緯を概観し,この変化の起こった要因の一部に,マンガが「グラフィック・ノベル」として再発見された点や日本マンガ人気があった点を考察することにより,アメリカ社会におけるマンガの文化ヒエラルキーの変遷を検証する。
著者
久永 茂人 高久 真一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.140-145, 2014-04-01

国立国会図書館では多数のマンガ単行本(コミックス)やマンガ雑誌を所蔵している。マンガ雑誌を中心とした所蔵および利用状況について踏まえたうえで,マンガの破損の実例とその補修方法について事例報告する。当館で所蔵しているマンガ雑誌は約1200誌である。利用冊数が多い雑誌の上位15誌に,マンガ雑誌は6誌が入っている。マンガ単行本は,分類による抽出が十分にできないためリスト化が困難である。作りが簡易であること,材料の質がよくないこと,利用が多いことから当館ではマンガの破損が問題となっている。破損したマンガ単行本は,主に無線綴じの綴じ直しの手法で補修している。破損したマンガ雑誌は,再製本したり破れたページを和紙で補修している。
著者
池川 佳宏 秋田 孝宏
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.133-139, 2014-04-01

平成22〜23年度の文化庁メディア芸術デジタルアーカイブ事業マンガ分野において,国立国会図書館,川崎市市民ミュージアム,明治大学米沢嘉博記念図書館,京都国際マンガミュージアム,大阪府立中央図書館国際児童文学館の5つの機関のマンガ所蔵をデータベース化するプロジェクトが行われた。これに際し,どのような内容のデータを集め,どのような共通のメタデータ項目を設定し,どのようにデータを整理し書誌の同定を行ったかについて,実際の作業内容をもとに報告する。また,プロジェクトの成果として,現在,所蔵元が明確なマンガについて,その数量を明らかにした。
著者
出口 弘
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.122-132, 2014-04-01

本稿では日本の漫画を広く絵物語のコンテクストの中で位置づけ,その文化史的な意義と可能性を明らかにする。日本の絵巻や浮世絵,絵草紙,漫画などの諸コンテンツは社会階級に依存せず創作され,また複製や二次創作を積極的に是認する文化を持つ。これは欧州型の,オリジナル作品にオーラがあるとみなし二次創作を是認せず,権威による作品の評価を基軸とするアートの文化とは大きく異なる。本稿では,絵物語の歴史を概観しながら,あらゆる社会の場から表出され,異なる立ち位置の人々の世界観を混淆循環させる力と多様性を持つメディアとしての絵物語空間に着目する。その上で,漫画の様な絵物語を日本のサブカルチャーではなくメインカルチャーとして位置づけその可能性を論じる。
著者
佐渡島 紗織
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 = The journal of Information Science and Technology Association (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.22-28, 2014

本稿の目的は,アカデミック・ライティング教育において情報リテラシーに関する問題はどのような点にあるかを検討し,今後,求められる指導の方向を示すことである。国語科教科書や小論文演習教材などをみると,日本の小・中・高・大学と受験塾では,情報を自分の文章にどのように取り込むかの,十分な指導,一貫した指導がなされていないことがわかる。引用・参考文献明記の学習を通して,《情報を再定義させる》学習をさせることが必要である。それによって,多様な立場・意見を検討した上で自身の立場を確立し,明確な意見を発信できる学生を育成したい。
著者
井田 浩之
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.8-14, 2014-01-01

本稿では,学習者の知識創造を可能にする情報リテラシーの条件として,(1)学習者の情報リテラシー能力を向上させるための「問い」を共有するプラットフォームの必要性,(2)情報リテラシーのスキル的側面を考えたときに,「脱文脈」化されたスキルに意味があるのか,換言すれば,学習者にとっての情報リテラシー能力とは知識創造に結びついていること,(3)学習者の情報探索行動のメカニズムが解明されていない中,情報行動に制約をかける取り組みへの疑問を呈する。今後情報リテラシー教育を図書館側が牽引するには,カリキュラム,教育内容,その評価方法を含め,学習者の視点で一からデザインすることが求められていることを指摘する。