著者
山川 宏 市瀬 龍太郎
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.514-519, 2012-12-01

21世紀にはいりIT分野の研究者が専門能力の強みのみでキャリア形成をすることは難しくなってきた。我々はこうした背景から,主に若手研究者らの自律的なキャリア形成を支援しうる教材としてHappy Academic Life 2006(HAL2006)というボードゲームを開発し,人工知能学会の20周年記念事業の一環として2006年に全会員に配布し,さらに電子版としてD-HAL2006を開発/公開した。電子版ではプレイログを利用したリフレクションにより自らの経験を大局的に客観視できるため,プレイ中に得られた教訓を各人の多様な将来像に転移しやすい。さらにD-HAL2006におけるプレイヤを学習エージェントとしてモデル化し,知的教授システムと融合した教育支援型ゲーミングシステムの研究も進めている。
著者
松隈 浩之 東 浩子 梶原 治朗 服部 文忠
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.520-526, 2012-12-01

九州大学では現在,ゲーム産業の拡大および人材育成を目的とし,シリアスゲームプロジェクトを推進している2010年から2年間にわたり,厳しいリハビリ訓練をゲームの力で楽しくしようというコンセプトで,長尾病院との共同研究にて,起立-着席訓練を支援するゲーム『樹立の森リハビリウム』の開発を行った。制作後,病院および介護老人保健施設にて,利用者を対象にゲームの有用性および安全性についての検証をおこない,それぞれで高い評価を得ている。超高齢化社会の到来を目前に控え,社会において高齢者に対するケア,および関連産業のニーズが高まる中で,現場へ導入する際の具体的な留意点やリハビリ用ゲームの意義について述べる。
著者
飯田 弘之
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.527-532, 2012-12-01

本稿では,ゲームの三つの側面(競技性・遊戯性・知的相互作用)に注目し,「ゲーム=知層」の観点からゲーム研究の流れについて概観する。競技性を重視したミニマックス戦略から相手モデル探索への移行,遊戯性の主要因の一つであるスリル感に基づくゲーム洗練度の理論,そして,ゲーム場における知的相互作用として試合中の情報の流れをモデル化するゲーム情報力学を紹介する。ゲームにおける人間とコンピュータの知能の相違に焦点をあてながら,投了に現れる知性の豊かさ,相手モデルにみる人間の知性の賢さ,ゲームのルール変遷に現れるスリル感の変遷,そして,ゲーム情報力学のアプローチによるゲーム場における知的な相互作用の解析例を示す。
著者
黒橋 禎夫 荒牧 英治
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.326-330, 2005
参考文献数
12

計算機パワーの増大と計算機ネットワークの発展に伴い, 電子テキストが遍在する時代となった。これに伴い, 人手で翻訳規則を与えるのではなく, 電子的対訳データに基づく統計翻訳, 用例ベース翻訳の研究開発が急速に進展している。これの現状, 差異を議論し, さらに, 機械翻訳の自動評価尺度, 評価型ワークショップなどについても説明する。
著者
下畑 さより
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.331-334, 2005
参考文献数
5

日本に商用の機械翻訳システムが登場してから15年以上経ち, 今日では様々な形態の機械翻訳システムおよび翻訳支援ツールが利用可能になっている。機械翻訳システムによる翻訳については, いぜんとして否定的な意見もあるが, その特性を十分に理解して使用すれば, 非常に有用なツールである。本稿では, ビジネスシーンを対象に, 機械翻訳の有効な活用方法を紹介する。業務における翻訳は, 翻訳者のレベルも, 翻訳の目的も, 翻訳に求められる条件(スピード, コスト, 翻訳品質)も様々である。それぞれの状況に応じてどのようなシステムが最適か, どのような利用方法が有効かについて考察する。また, 急速に需要の高まっている英語以外の言語を対象とする機械翻訳の現状についても言及する。
著者
笹沼 崇
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.50-55, 2004-01-01

公共図書館は,蔵書を中心とした情報提供を行うことにとどまらず,様々な情報発信拠点としても施設を活用することにより,市民の情報活動を活性化させ,それを市の活性化にも繋げることができる。こうした考えに基づいた,茨城県結城市の図書館情報サービス計画と,図書館システムの概要を紹介する。
著者
須賀 千絵
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.384-389, 2007-08-01

本稿では,利用者の視点を導入した図書館評価を,利用者の意見を内部評価に反映させる「意見反映方式」,評価主体として参画した利用者等と図書館が協働で評価を行う「協働評価方式」,市民が独自の評価機構を作って評価を実施する「独立評価方式」に分類した。そのうえで具体的な事例が存在する「意見反映方式」「協働評価方式」の評価方法を概説した。「意見反映方式」の評価方法には,満足度評価,有効度評価,SERVQUAL評価がある。また「協働評価方式」の評価方法には,市民と専門家から構成される評価組織が公共図書館評価に参画する方法がある。合わせてそれぞれの方式の意義と問題点についてまとめた。
著者
村上 祐子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.2-6, 2009-01-01
被引用文献数
1

e-リサーチとは,電子データをネットワークを介して共有し,シミュレーションなどの処理を行って新たなデータを得ることによって,理論を展開する科学研究の方法論である。理工医薬系が主たるフィールドであるように思われているが,人文社会系でも研究データの共有から新たな検索ツールの開発,またGISなど,さまざまな試みが行われている。小論では,日本国内での例をとりあげ,今後の展開を予想するとともに,学術図書館の役割を再考する。
著者
佐藤 翔
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.51-56, 2013-02-01

電子ジャーナル等の電子リソースの普及に伴い,そのアクセスログに基づいた研究が増えている。本文へのアクセス状況を包括的に示すアクセスログの分析は利用者行動を知る際に役立つものであるが,その目的や意図はログからはわからないため,その他の手法と組み合わせることが有益である。また,引用データとは異なる傾向を示すものとしてビブリオメトリクスの中でも注目されているが,研究評価に用いるには水増しが容易である等の問題もある。日本においては,海外で行なわれているような電子ジャーナルの大規模ログ分析が未だ行なわれていないことが課題である。
著者
服部 雅一 谷川 均 近藤 雄二
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.466-472, 2012-11-01

電子政府をはじめとして,電子取引,事務データ,新聞記事など様々なデータを汎用的に表現する仕組みとして,データ構造の柔軟性を特長とするXML(eXtensible Markup Language)の活用が進んでいる。企業内においても,XMLの活用範囲が広がるにつれ,XMLデータをそのままの形式で管理し利活用したいというニーズが高まっている。そのニーズに対応できるのが「XMLデータベース(XMLDB)」である。本稿では,XMLが持つ高い柔軟性を活かしたXMLDBについての基本思想や操作方法を述べるとともに,ドキュメント管理アプリケーション開発の事例を通してXMLDB活用のメリットについて議論する。
著者
佐川 亜矢子 海附 玄龍
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.445-449, 2012-10-01

Reaxysは,エルゼビア社が提供する世界最大規模の化合物の合成反応および実測物性値のデータベースである。使いやすさとコンテンツの信頼性から,近年では医薬・農薬(創薬・プロセス),ファインケミカル,機能性材料などの化学関連分野にとどまらず,より幅広い研究分野で利用されている。さらに教育機関での導入も進んでいる。本稿では最近のReaxys追加機能のうち,検索機能の拡充,構造式描画機能の拡充,合成計画ツールの機能追加および, ReaxysのプレミアムバージョンReaxys Xcelerateについて紹介する。
著者
八幡 紕芦史
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.206-208, 2007-04-01

多くの話し手は,プレゼンテーションとは,自分の言いたいことを言うことと誤解している。プレゼンテーションとはプレゼントであるから,聴き手が聴きたいことを語るのが本来のプレゼンテーションである。プレゼンテーションに成功するためには,聴き手を分析し,目的と目標を分析し,場所と環境を分析する。そして,それらの分析結果に基づいて,プレゼンテーションのシナリオを組み立てる。プレゼンテーションで効果的かつ効率的に情報を発信するためには,時報を整理・分類し聴き手の聴きたい順番で提示すること,多くの情報を与えるのではなく情報はコンパクトに提示すること,そして,情報のもつ意味と聴き手にとっての意味づけをプレゼンテーションしなければならない。そして,実際のプレゼンテーションの場面では,言語と非言語を活用しながら,聴き手に情報を発信する。
著者
小林 万喜男
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.121-125, 2012-03-01

今回はマレーシア特許庁Webサイト(http://www.myipo.gov.my/)でのオンライン特許検索システムについて簡単に紹介する。このサイトは英語で表示されるので,非英語圏のサイトに比べ,その使用は非常に楽である。書誌情報,Abstract,現在の簡単な法的状況(生死)は無料で入手できるが,クレームは公報をダウンロードしなければ確認できない(登録が必要,有料)。審査・審判経過情報,年金支払,分割,権利譲渡情報などは当サイトからは得られない。その他として,ガゼット・特許統計データ・アニュアルレポートなどが入手可能である。
著者
武田 領子 高 仁子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.164-170, 2012-04-01

昭和電工(株)では,開発ステージ前期の先行技術・技術動向調査を技術者自身が行えるようになることを目的とし,情報調査教育の充実に取り組んでいる。研修ワーキンググループによる知財知識教育と情報調査教育の融合と,特許と非特許文献情報の相互補完教育により,従来は情報調査ツールの操作方法が中心となる傾向にあった情報調査教育から,技術者自身が入手した情報を評価・解析し,活用していくための教育内容に向けて拡充しつつある。知財戦略推進のために情報を活用できるような技術者への育成と,知財マインドの一層の向上を図ることが今後の課題として見えてきている。
著者
井上 直子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.177-180, 2012-04-01

最近では,各国特許庁のWebサイトから特許情報を入手する機会が増えている。しかし,中東諸国においては,言語の問題もあって,十分な情報が得られないことがある。イスラエル特許庁は,英語とヘブライ語の両方の特許データベースを提供している。本稿では,イスラエル特許庁の特許検索データベースの概要について紹介する。残念ながら,フルテキストデータでの検索はできないが,出願人,発明の名称,国際特許分類,ステータスでの検索が可能である。さらに,明細書を表示やダウンロードしたり,詳細なステータスを表示することもできるようになっている。