著者
波床 正敏 塚本 直幸
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.599-608, 2005-10-31 (Released:2010-06-04)
参考文献数
22

本研究では、公共交通の輸送需要と運行頻度の関係に着目し、速度相当のパフォーマンス指標として期待サービス速度を定義した。この指標は輸送需要の増加にともない増大し、表定速度を漸近線とする。自動車交通についても輸送需要を人単位に換算し、公共交通と比較可能とした。次に、自動車交通と公共交通との両方が整備される場合、総合的に都市交通空間がどのようなパフォーマンスを示す可能性があるかについて考察した。その結果、公共交通の小規模な水準向上では道路渋滞が解消しないばかりか、乗客減少の可能性すらあること、車線増設で渋滞が発生する可能性があること、総需要減少で渋滞が発生する可能性があることなどがわかった。
著者
田中 尚人 二村 春香 秋山 孝正
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.407-415, 2006

本論文は, 水辺を基盤として発展してきた都市形成におけるコミュニティの成立構造, 変化のプロセスについて考察し, 水辺のインフラストラクチャーとコミュニティのあり方について考察したものである.具体的には, 岐阜市中心部長良橋周辺を対象として, 文献資料から都市基盤整備の概要を把握, 特に水防と水辺利用の要として整備されてきた陸閘に着目し現地調査を行った.さらにヒアリング調査により, コミュニティの変遷と現況を整理し, 水辺に対する意識や工夫, ルールを抽出した.本論文の成果として, 水辺のコミュニティが自ら継承してきた水防システムを保持している場合適切な水辺利用が可能となり, 水防と水辺利用のバランスを保つシステムの運用には, 地域住民のインフラストラクチャーに対する理解が重要な要素となることが明らかとなった.
著者
近藤 光男 青山 吉隆 高田 礼栄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.171-178, 1995
被引用文献数
1

本研究では、地方圏内における人口の社会移動を対象とし、農山村対都市部の構図の中で人口移動は地域の効用格差によって生じるとの仮定によってモデルを作成し、それを用いて移動のメカニズムを解明した。モデル分析では、わが国の地方圏の1つである徳島県を対象とし、県内の50市町村を分析単位とした。その結果、1人当たり所得、生活環境施設の利用機会、故郷や都市までの時間、地価が人口移動の影響要因になっていることが明らかになった。また、地域内の道路整備による時間短縮は都市部に比べ、農山村の効用をより高めることがわかった。しかしながら、農山村と都市部の間には大きな効用の差が依然として存在しており、農山村からの人口流出問題の解決は短期的には厳しい状況にあると思われる。
著者
菊池 輝 山本 俊行 芦川 圭 北村 隆一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.503-508, 2001-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

本研究では, 従来より用いられてきたゾーンシステムにおける問題点に着目し, 空間表現技法として直交座標系でトリップ目的地点を表現する座標システムを用いた目的地点選択行動の再現手法を開発した. 巨大となる目的地選択肢集合に対処するため, MCMC法を適用することで効率的なサンプリングを行った. 仮想的な領域を想定したシミュレーションの再現値は, 設定した効用関数より算定した理論値とほぼ一致し, 本研究による計算法の妥当性を確認した. また京都市中心部を対象としたシミュレーションにおいても, 推定したパラメータの影響を反映する再現値が得られ, 目的地選択行動の再現方法として有用な手法であることが示された.
著者
羽藤 英二
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.13-27, 2002-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
81
被引用文献数
1 1

本稿では, ネットワーク上の行動原理とモデルを整理した上で, 今後の研究の方向性を展望してみたい. 交通行動モデル発展の経緯を整理した上で, 行動モデルとネットワークモデルの理論的整合性に留意して, 均衡配分理論の定式化と, 最適性条件, ローディングアルゴリズムをレビューする. 従来のモデルを下敷きに, 新たなモデルの枠組み構築に向けた課題と展望について触れる.
著者
北村 隆一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.1-15, 2003-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
111
被引用文献数
3 4 3
著者
藤井 聡 染谷 祐輔
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.481-487, 2007-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
17
被引用文献数
1 5 12

本研究では, 交通行動が居住地選択行動に影響を及ぼし, かつ, 居住地選択行動がさらに交通行動に影響を及ぼす, という形で, 交通行動と居住地選択行動に相互依存関係が存在するという仮説を措定した. それに加えて, 交通行動は, 転居を経てもなお, 習慣の効果により, その形態が持続されるであろうという仮説を措定した. 本研究では, これらの仮説より演繹される転居前後の交通行動, ならびに, 居住地選択行動との間の構造的因果関係を, 転居者を対象としたアンケート調査より得られたデータに基づいて検証したところ, その因果関係を支持する結果が得られた. 本稿では最後に, こうした結果の含意を議論することを通じて, 交通施策, 土地利用施策と行動変容施策の三者を一体的に展開することが, 望ましい都市と交通を期するためには重要であることを指摘した.
著者
横松 宗太
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.17-32, 2003-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
54

自然災害リスクは負の効果をもつ地方公共財と考えることができる. 地域政府は防災施設の整備や保険システムの利用を通じて地域リスクを制御し, 家計はリスク選好に従って居住地域を選択する. 地域間では種種の外部性が発生する. 本稿では自然災害リスクの地域間配分の問題が, 基本的な地方公共財の地域間配分の問題としての性格を備えることを指摘するとともに, 自然災害リスクの問題に特有の構造について整理する. また自然災害リスク管理に関する地域政府と中央政府の役割について検討する. 本稿は多地域システムにおける自然災害リスク配分の研究の体系化を志向しながら, 本分野の今後の展開のための論点整理を与えることを目的とする.
著者
金子 雄一郎 福田 敦 香田 淳一 千脇 康信
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.175-181, 2004-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
8
被引用文献数
2

本研究は首都圏の大手私鉄8社の代表的路線を対象に, 路線別・券種別の需要の運賃弾力性を計測したものである. 具体的には運賃や沿線人口, 景気指標など需要に影響を与えると想定される要因を説明変数とした需要関数を設定し, 時系列データを用いてパラメータを推定しその妥当性を検討した. その結果, 対象路線の運賃弾力性については定期が-0.14--0.41, 定期外が-0.31--0.42となり, 全般的に定期外の方が高い値となった. ただしいずれの券種についても運賃弾力性は-1以上 (絶対値で表現する場合1以下) となり, 単純な運賃値下げは収入を減少させる可能性があることが示唆された.
著者
永田 尚人 西村 典子 山本 幸司
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.265-270, 2005-10-31 (Released:2010-06-04)
参考文献数
9

大都市部における大規模地震発災直後において, 主要な輸送機関である鉄道の運行停止等により多くの帰宅困難者の発生が予測されている. 帰宅困難者は徒歩により帰宅を行うものと考えられるが, 帰宅経路の安全状態や被害状況に関する情報とともに, 帰宅経路における食料や飲料水の確保が大きな課題となる. 本研究では, 東海地震に対する警戒宣言発令後における交通輸送機関の麻痺により発生する帰宅困難者の問題点を明らかにした上で, 飲食料等確保の観点からコンビニエンスストア活用のあり方について検討を行うことを目的とする.