著者
岡本 直久 川田 真理絵 石田 東生 堤 盛人 谷口 綾子 諸田 恵士
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.801-806, 2008-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
5

本論文では、つくばエクスプレスの周辺地域における住民の交通行動の変化と、交通手段に対する意識の変化を把握し、つくばエクスプレス開業が住民に与えた影響を把握することを目的としている。2005年8月24日、つくば市と秋葉原を結ぶつくばエクスプレスが開業し、つくば市とその周辺地域では、路線バスの再編や駅の新設・道路整備などが行われ、地域内の交通体系が大きく変化したことが期待される。結果として、駅などの幹線公共交通へのアクセス手段について、つくばエクスプレス開業前に比べて住民がより合理的に交通手段を選択する傾向が示唆され、アクセス手段の交通サービスレベルが変化していることが伺えた。
著者
平澤 匡介 武本 東 葛西 聡
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1035-1044, 2010 (Released:2017-11-29)
参考文献数
9

中央分離帯がない2車線道路では、限られた空間を対向する車両が高速で移動するために、正面衝突による死亡事故が起きることがある。道路構造令では、特例として中央分離帯の設置が認められているが、費用が高額になるので、設置は限定される。ワイヤーロープ式防護柵は、支柱が細く緩衝機能があり、必要幅員も少ない。本稿は、緩衝機能を有するワイヤーロープ式防護柵を2車線道路の中央分離施設として導入するために、試験施工や性能を確認するための衝突試験を行い、道路構造令や防護柵設置基準等の適用性を検討し、日本における導入可能性を考察した結果を報告するものである。
著者
村田 香織 室町 泰徳
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.497-504, 2006-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
30
被引用文献数
5 4

本研究では、日常的な交通行動として通勤交通行動に着目し、交通と健康分野における既往研究からパネルデータによる調査・分析が必要性を検討し、2万枚の通勤交通行動と健康に関するアンケート調査及び、30名の被験者による通勤交通手段転換実験を行った。その結果、通勤交通行動がBMIに影響していること、歩数増加とがBMI、HbAlc等の改善を介して生活習慣病の罹病率低下に寄与する可能性があることを確認した。また、健康増進に関して簡単なシナリオ分析を行い、交通手段転換による健康便益についても検討した。
著者
河田 恵昭 柄谷 友香
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.393-400, 2000-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

自然災害や疾病をはじめとするリスクの定量的な評価をできる限り客観的・科学的な方法によって行う場合、人命の社会的価値に関する議論を避けることはできない。そこで本論文では、平均寿命とGRP (地域内総生産) との間の強い相関関係に着目し、自然災害、交通事故、疾病などに起因する大規模な人命の損失がもたらす社会的価値の損失を、それらの要因による平均寿命の低下量から評価する手法を構築した。その手法を用いて1995年の阪神・淡路大震災がもたらした社会的価値の損失を推定した。その結果、阪神・淡路大震災がもたらした初年度における社会的価値の損失は、兵庫県で約1.62兆円、全国で約1.75兆円と推定された。
著者
柴崎 隆一 家田 仁
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.381-391, 2000-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本研究は, 生起確率や被害額といった各種の事故・災害リスク固有の値と, 実際に行われる防災投資の意志決定において用いられていると考えられる, 人間の認知プロセスを介した主観的な評価値との差異を, 認知バイアスとよび, 死亡リスクや地震被災リスクといった個人的なリスクを対象として, リスク固有の値と, リスクの主観的な評価に基づく意志決定の結果と考えられる行動データとから, 認知バイアスの計測を行った. その結果, 人々は実際の被害額を約2-3倍大きく評価する傾向があることや, 確率についての認知バイアスは, リスクの種類によって異なり, 死亡リスクはほぼ原確率に等しく認知するが, 地震被災リスクは原確率よりも過小評価される可能性があることなどがわかった.
著者
木村 一裕 清水 浩志郎 三浦 大和
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.389-397, 2006-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
38

近年、歴史的遺産や町並みに対する関心の高まりから、都市の歴史と文化の重要性が徐々に認識されるようになった。現在の都市のありようはこれまでの歴史の積み重ねによって形作られたものであり、今後のまちづくりを考える際にも都市の歴史を理解したうえで、継承し、展開することが重要であると考えられる。本研究は、文献調査によって、近世秋田の都市の構造とその形成過程を歴史的な視点から把握することを目的とする。研究の結果、秋田市は防御、景観および経済活動の面からコントロールされ、計画的に形作られていた。また、経済、娯楽、まちづくりなどそこに住む人々の活動とともに都市の構造は徐々に変化していったことがわかった。
著者
本間 正勝 宮田 晋
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.869-874, 2002-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
4

本研究は、時差式信号機の安全性向上のために、分かりにくく、危険性のある特定の時差式信号制御を改善するための対策手法を明示し、その対策効果を評価することを目的とした。実際の運用面での検討を行った結果、危険性のある時差式信号制御の代替となる信号制御について、実効性のある具体的な対策種別を明示した。東京都内において、危険性のある時差式信号の全廃を目指し、実際にこれらの対策を2ヶ年に渡り計61交差点で実施した。これらの交差点について対策前後の人身事故発生件数について分析を行った結果、対策が事故の減少に寄与することを明らかにした。
著者
谷口 守 石田 東生 小川 博之 黒川 洸
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.443-451, 1995-08-31 (Released:2010-06-04)
参考文献数
7

自動車交通問題の解決のためには、個人の交通手段選択を自動車から公共交通などにシフトさせることの重要性が指摘されている。しかし、そのための基礎となる都市の特性と交通手段選択の関係に関する実証的研究は不十分である。本研究では、全国の131都市を対象に、1970、80、90年の国勢調査報告の通勤・通学利用交通手段のデータを用い、各都市の通勤・通学交通手段分担率の地域的・時間的変化を把握すると共に、その都市特性との関連を判別分析、正準相関分析を通じて明らかにした。この結果、モータリゼーション化のばらつき特性、分担率変化の特性を把握するとともに、都市構造にまで言及しない交通政策の限界を指摘した。
著者
松永 千晶 宮崎 彩 角 知憲
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.239-243, 2009
被引用文献数
5

本研究は,防犯環境設計手法に基づいた安全・安心な通学路設計のための具体的かつ定量的な知見を得ることを目的とし,交通量や沿道の状態,路上物件などの物的な道路空間構成要因と犯罪発生および不審者出没の関係について統計分析を行う.これは,子どもを対象とした犯罪の多くが下校時の通学路上で発生する機会犯罪であるという前提と,道路交通に関する空間構成要因が犯罪発生に影響を与えていること,またそれらの変化によって犯罪発生も変化するという仮説に基づく.福岡市内3校区を対象とした数量化II類による分析の結果,静的・動的監視性に関する道路空間構成要因が犯罪発生・不審者出没に与える影響度を定量的に表現・比較できた.
著者
加藤 浩徳 家田 仁 小野田 惠一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.523-530, 2003-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
15

本論文では, 出発時刻選択モデルを用いて, 通勤者の交通行動を分析し, その結果から, 時間の差に対する意識限界を推定した. 出発時刻選択モデルを構築する上で, 通勤者の選択行動に影響を与える説明変数を検討し, 列車待ち時間・乗車希望列車スケジュール早着・同スケジュール遅延・最終不遅刻列車スケジュール早着の組み合わせが適切であることを示した. そのモデルを用いて, 鉄道利用者の通勤行動を分析した結果, 時間の差に対する意識限界は平均運行時隔にして約4分30秒-4分56秒であることが分かった.
著者
井上 英彦 奥村 誠 塚井 誠人
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.843-848, 2003

本州四国連絡橋は、平日においては日常交通に利用されるのための生活橋として、休日においては広域的な周遊などに利用される観光橋としての役割の増加が期待されている。この役割の変化の分析にはアンケート調査が適しているが、費用などの問題がある。一方、本四架橋内の交通量は日ごとに計測されているものの、有効に活用されているとはいえない。<BR>本論文では、本四架橋の日交通量を分析することで交通量および架橋同士の相互作用の変化を明らかにすることを目的とした。その結果、交通量はカレンダー情報により大きく影響を受け、また架橋間には特に東西間をまたぐような周遊行動が発生していることが明らかとなった。さらに、これらの特徴は経年的に変化していることが明らかとなった。
著者
室井 寿明 森地 茂
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.181-192, 2010 (Released:2017-11-29)
参考文献数
22
被引用文献数
1

都市において大震災が発生した場合,複数の都市鉄道路線で復旧に数ヶ月もの期間を要する恐れがあり,鉄道の長期途絶が経済社会活動の停滞に与える影響は極めて大きく,代替交通手段の確保が必要である.そこで本研究では,鉄道が復旧するまでの交通機関として代行バスに着目した.まず,阪神・淡路大震災時の代行バスの成果と課題を整理し,その技術的・制度的工夫および成果と課題について把握し,震災時の都市鉄道の効果的な代行バスの運行に資するための提案を試みた.
著者
金田一 淳司 岸 邦宏 佐藤 馨一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.399-406, 2004-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
12

都市の交通渋滞対策として, 環状道路の整備が推進されているが, ほとんどの都市で建設が進んでいないこのような中, 札幌では約70年の歳月を要したが, 日本初の一般道路による環状道路が実現した.研究成果は, 札幌環状通完成までの札幌の都市建設や都市・道路計画などを対象に, 歴史的背景, 史実, 計画の変遷を計画史の視点より研究した.その結果, 戦時体制下の国防, 防空と防火の思想を背景とした火防線を理想型の環状系広路として計画し, 実現性を踏まえた「アーク (環状系) 道路」を配置し, その思想を今日まで持続した点にあったとともに, 計画史的評価による新たな事業評価も可能であることを明らかにした.
著者
日野 智 岸 邦宏 相浦 宣徳 佐藤 馨一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.667-674, 2001

近年、航空会社には効率性を重視した経営が求められている。そのため、採算性の低い地方航空路線ではサービス水準が低下する恐れがある。そこで、本研究はコミューター航空をフィーダー路線として活用したハブ・アンド・スポークシステムの実現可能性を明らかにした。女満別空港における意識調査から時間的な制約条件から利用者は乗り継ぎ便を選択し、運賃以外にも交通方向と目的の組み合わせが影響していることが明らかとなった。また、乗り継ぎ便選択率モデルを構築し、利用者数算出とコミューター機を含めた機材運用の設定を行った。結果として、コミューター機を活用することが座席利用率を向上させうることを示した。
著者
中川 大 西村 嘉浩 波床 正敏
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.57-64, 1993-12-01 (Released:2010-06-04)
参考文献数
12
被引用文献数
2 1

Since Meiji era, the population had been increasing rapidly and its distribution has been changing in Japan. On the other hand, the construction of the transportation network has been developing and it has caused the change of accessibility between regions in Japan. It is generally thought that the construction of the transportation facilities makes some contributions to the development of the regions. But in the present condition, it cannot be affirmed that it is understood accurately that the transportation has a significant effect on the regions.In this study, we surveyed the relation between the population and the sufficiency of the transportation by using all census data of all cities, towns and villages. As a result, it can be noted that the period of the construction of the transportation has a remarkable effect on the changes of their population.
著者
塚井 誠人 奥村 誠
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.209-215, 2004-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
7

本研究は, 平成3年と13年の事業所・企業統計調査から得られる本所支所間の管轄/被管轄関係のデータを用いて企業の業務ネットワークの空間構造を明らかにした. さらに, 得られた業務ネットワークと各管轄関係の下で雇用されている従業者数について分析を行い, 全国企業の従業者の顧客管理能力について経年比較を行った. その結果, 全国企業の本社は東京周辺の都市では減少する一方で, 東京都内に回帰する傾向にあることが明らかとなった. さらに全国企業の従業者の顧客管理能力については, 同一の支社機能水準で比較した場合, 平成13年の方が全国企業の従業者1人当たりの顧客管理能力が高くなる傾向にあることが明らかとなった.
著者
新田 博之 秀島 栄三 山本 幸司
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.317-324, 2004

近年都市圏において発生している都市水害に対し、地下空間の浸水に対する脆弱性が指摘されている。本研究では、特に浸水発生時において地下鉄列車を安全に退避させるための具体的な列車退避方策を導き出すことを目的として、地下空間への浸水プロセスと列車退避プロセスを結合したモデルを構築する。名古屋市交通局鶴舞線に本モデルを適用した上で、浸水に対する合理的な防災計画の策定について考察する。
著者
瀬尾 和寛 伊豆原 浩二 安藤 良輔
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.173-182, 2007

本論文では、日独の代表的な自動車産業都市における比較研究を通じて、企業と地域社会が共生した持続可能な都市とはどのようなものなのか、そのために立地企業は企業市民としてどのような役割が求められるのかについて考察した。わが国の産業都市では、都市化とモータリゼーションが短期間且つ急速に進行したため都市設計における計画的な配慮が追いつかなかった。現在もなお、交通渋滞、危険市街地の存在などの課題が残されているとともに、交通負荷、環境負荷の大きい都市構造といった課題も生じている。このような状況下で、企業は企業市民として地域社会と共生した持続可能な都市建設を目指して、社会に貢献していくことが求められる。
著者
加藤 哲男 李 偉国 川上 洋司 本多 義明
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.899-906, 2000
被引用文献数
1

本研究は実際に顕在化した事故のみならず潜在的な事故 (ニアミス) のデータを収集し分析することにより, 近年増加傾向にある高齢者事故の減少に役立てられることを明らかにすることを目的とする. 福井県を対象地域として調査分析を行った結果, 顕在事故と潜在事故との間に関連性が認められたこと (基準連関妥当性), 運転者の意識と解読者の判定との相違点が事故分析に有効であること (構成概念妥当性) が検証された. 高齢者事故の典型ケースとして, 顕在・潜在いずれの事故データからも無信号交差点での出合頭事故が抽出された. 高齢者事故の減少には, 安全意識の向上策のみならず, 運転者がヒューマン・エラーを犯し難い交通環境の整備改善も必要である.
著者
森杉 壽芳 小池 淳司 佐藤 博信
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.131-140, 1995

近年、国会・中央省庁等の首都機能移転に関心がもたれ、政府をはじめとする各種研究機関等で多数の提言, 提案がなされてきた。このような首都機能移転の社会的意味を判断するためには、その効果を把握する必要がある。そのため、本研究では、首都機能移転によって影響を受ける主体を東京, 新首都, その他の地域及び移転する政府自身に分類し、それぞれの主体に帰着する効果を一覧表にして示す「地域間帰着便益構成表」を提案する。この表では、東京だけでなく、新首都や他の地域を便益を享受する主体としてとりあげることで、首都機能移転に関する個別の効果を国土及び国民全体の観点から総合的に見ることができる。また、必要に応じて、さらに細かい便益の帰着構造を把握し、表の中に位置づけることができる。