著者
田中 尚人 川崎 雅史
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.331-338, 2002-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
29

水辺は都市と水域の双方を包含する境界領域であり, 舟運や陸運など様々な都市基盤が接続する結節点である. 本研究では, 京都伏見を対象地として歴史的な文献・資料等を用い, インフラストラクチャーとしての水辺の近代化プロセス, 都市空間への影響を分析した. 近世の水辺は物流・旅客のターミナルとして機能し, 都市施設を集積させ都市的な賑わいの基盤となった. 近代においては, 近世以来舟運により保持されてきた都市機能やアメニティは鉄道駅周辺へと移行し, 水辺の工業基盤機能が卓越するようになった結果, 都市アメニティを享受する場としての水辺が散漫になった. このような都市形成のメカニズム, 及びそこで水辺が果たした役割が本論文にて明らかになった.
著者
岡田 幸子 小林 一郎 増山 晃太 田中 尚人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.76-85, 2016 (Released:2016-08-20)
参考文献数
25

「軌道用敷石」とは,近代の都市交通の主役を担ってきた路面電車に欠かせない「板石舗装」〔1957(昭和32)年には全国の軌道敷舗装の78.84%を占めていた〕の表層に用いられる舗装材である.板石舗装用材として最も普及した軌道用敷石は,路面電車を支えてきた重要な石材だった.本研究ではこれまであまり研究されてこなかった軌道用敷石の体系化の基礎資料として,軌道用敷石の規格と産地を調査し,整理することを目的とした.その結果,軌道用敷石は舗装材の要求性能を満たす仕様(材質,形状,寸法,許容差,仕上げ)が明確な規格品であり,国内の主要6ヶ所の産地(茨城県稲田,群馬県沢入,山梨県塩山,岐阜県恵那,広島県倉橋島,香川県小豆島)から明治から昭和にかけて全国に供給された花崗岩であることが明らかになった.
著者
田中 尚人
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.3-7, 2019-03-14 (Released:2020-05-20)
参考文献数
17
被引用文献数
1

乳酸菌は多岐にわたってヒトの生活に貢献する有用な微生物であり、資源として今後もさらに開拓されていく主要微生物であることは間違いない。長年に渡る乳酸菌の研究により、乳酸菌の性質をうまく活用した効率的な分離技術が確立されているため、微生物を扱う基本的な技術があれば、初めてであっても容易に分離できる。ここでは特にこれから乳酸菌の分離を始める方を対象に、乳酸菌という生き物についての説明も交えながらその乳酸菌の分離方法と乳酸菌を分離する時に知っておくべきことおよび考えるべきことについて述べる。
著者
田中 尚人 川崎 雅史
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.151-159, 2000-05-01 (Released:2010-06-15)
参考文献数
40

It is useful for infrastructure planning to learn the technologies of civil engineering in the past and study a process of urban development. We classify the transition of urban development along the Lake Biwa Canal that was based on the function of navigation systems, and consider the action of the infrastructure on urban development.The Lake Biwa Canal was constructed by using water from the Lake Biwa in the 19th century applying the latest technology in Meiji period. This canal has been produced a lot of amenity for about 100 years since the construction, in spite of disappearance of shipping there. It was found through our study that navigation systems was one of the most important function of the Lake Biwa Canal and this infrastructure played an important part in the urban development of Kyoto.
著者
西村 直 田中 尚人 川崎 雅史
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.413-424, 1998-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
10

本研究は、ニュータウンをはじめとする人為的な空間の水辺計画を考える際の基礎資料として、1960年以降の近畿圏における代表的なニュータウンを対象とし、実地踏査、設計者へのヒアリングをもとに水辺の計画・設計の歴史的な変遷を整理したものである。失われた水辺を再びアメニティの要素として復活させようという社会の要請が高まる中で、ニュータウンの水辺の計画も、初期の機能が限定されていた施設単体の点的、線的な整備の時代から、複合的な機能をもつ施設を重ねてニュータウン全体へ面的な広がりを持たせる整備の時代に至っている。このような中で、本研究では、水辺の立地、水供給システム、意匠のコンセプトの視点から、近年の水辺計画は手法が多様化しているという動向を明らかにすることができた。
著者
井形 康太郎 田中 尚人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_181-I_189, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
13

現代の地域コミュニティには,地域住民の地域に対する関心の低さという課題がある.解決には,地域に対する愛着と誇りという意味のシビックプライドの考え方が必要である.この考え方の醸成のきっかけとして,小学校で取り組まれる地域学習が位置づけられる.本研究では,熊本市内にある向山小学校を対象に,地域学習によって児童に起きる,地域に対する意識の変化の構造とその行程を明らかにすることが目的である.児童の好きな風景の絵や理由と10年後の校区をこうしたいという設問の回答を,共起ネットワークなどを用いて分析した.その結果,地域学習を通じた他者との関わりが地域に対する意識の変化を生むことが分かった.
著者
熊谷 浩一 田中 尚人 佐藤 英一 岡田 早苗 Kumagai Koichi Naoto Tanaka Eiichi Satoh Sanae Okada 東京農業大学大学院農学研究科農芸化学専攻 東京農業大学応用生物科学部菌株保存室 東京農業大学応用生物科学部生物応用化学科 東京農業大学応用生物科学部生物応用化学科 Department of Agricultural Chemistry Tokyo University of Agriculture NRIC Tokyo University of Agriculture Department of Applied Biology and Chemistry Tokyo University of Agriculture Department of Applied Biology and Chemistry Tokyo University of Agriculture
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.274-282,

長崎県対馬市は南北に長い島であり,対馬のそれぞれの農家ではサツマイモを原料とした固有の伝統保存食品である『せんだんご』を小規模に製造している。 せんだんごは,水で戻し,捏ねた生地を麺状に加工して茹であげ『ろくべえ麺』として食される。 ろくべえは,原料であるサツマイモ単体では生じ得ない食感を有していることから,せんだんごの製造工程に着目した。 せんだんごの製造には,"芋を腐らせる(発酵させる)"工程,それを丸めて数ヶ月に及ぶ軒下での"寒晒し"の工程があることから,島内各地域の「せんだんご製造農家」を訪問し,製造方法の調査を行った。 その結果,これら両工程にはカビなどの微生物が繁殖しており,黒色カビが繁殖した場合は味が悪くなるという理由からその部位が破棄され,白色や青色カビが繁殖した部位の製造が続行される。 このことから微生物の働きがあってせんだんごとなり,さらにろくべえ麺特有の食感が与えられると推察した。 さらに,せんだんご製造に重要な働きをすると考えられる微生物を特定するにあたり,数年にわたり島内の調査を重ねた結果,基本的にはせんだんご製造工程には3段階の発酵工程(発酵1(浸漬),発酵2(棚板に広げて発酵),発酵3(ソフトボール大の塊で発酵))と洗浄・成型工程の2工程4区分に分けられることが確認された。Sendango is an indigenous preserved food derived from sweet potato that is traditionally made in Tsushima, Japan located between the Korean Peninsula and Kyushu. The local people process a noodle called Rokube from Sendango and eat it with soup, fish or chicken. Rokube has a unique texture similar to konyaku, and unlike that of cooked sweet potato. There are two or three fermentation processes involved in Sendango production; therefore, we inferred that the unique texture of Rokube may result from the fermentation process. Sendango is manufactured in several farmhouses on the island ; however, the manufacturing process varies among districts. We investigated each local Sendango manufacturing process and determined the microorganisms involved in fermentation. The investigation of Sendango manufacturing procedures was carried out in three towns, Toyotama, Izuhara, and Mitsushima, by interviews and observations between December and February each year from 2008 to 2011. The processes consist of three main fermentations. In Fermentation-1 (F1), sliced or smashed sweet potatoes were soaked in cold water for 7-10 days. Gas production and film formation were observed during F1. In Fermentation-2 (F2), the soaked sweet potato pieces were piled to a thickness of 5-20cm for 20-30 days. Intense propagation of filamentous fungi was observed during F2. In fermentation-3 (F3), softball-sized lumps were formed on the sticky sweet potato by fungi. The sweet potatoes were left outside for approximately 1 month. The lumps gradually hardened by drying. Many fungal mycelia were observed on the surface of potatoes and inside the lumps during F3. The three aforementioned fermentation processes were used for Sendango production in two towns (Toyotama and Izuhara). In Izuhara, smashed sweet potatoes were placed in sandbags knit with plastic strings, and the bags were soaked in the flowing river water. The sandbags collected from the river water were left on the river bank for 20 days. F2 was carried out in sandbags. In Mitsushima, Sendango production consisted of two fermentation processes, F1 and F3. The fermentation process occurs over a long time period. The propagation of filamentous fungi was particularly intense during F2 and F3. It is thought that filamentous fungi are indispensable for Sendango production. We characterized the microorganisms participating in Sendango production based on this investigation.
著者
田中 尚人 坂井 華海
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.22-00350, 2023 (Released:2023-10-20)
参考文献数
19

高齢社会を迎え,国際的な気候変動や頻発する災禍のなか,持続可能な地域運営のため地域風土に根差した知恵や技を継承することは有用である.本研究では,クロスロードゲームのアーカイブ機能に着目し,対話を重視し,日常と非日常とを繋ぐ追体験を可能とする記憶の継承について考察した.本研究の目的は,クロスロードゲームの作問における語り継ぎの場の構造とその内容の諸相を明らかにすることである.研究対象地は,近年様々な災禍を経験してきた熊本県熊本市,菊池市,あさぎり町の3市町とした.クロスロードの作問内容を分析した結果,自分⇔他者,能動⇔受動の2軸をもって,語り継がれた場を理解することできた.また作問された内容と場は,他者の経験も含め誰もが追体験可能なジレンマとして語り継ぎの場において継承される可能性が示された.
著者
出村 嘉史 川崎 雅史 田中 尚人
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.387-394, 2001-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

本研究では、絵図や文献などの歴史的資料の分析やヒアリング調査、現地の観察をもとに、近世円山界隈に存在した時宗寺院の空間構成を明らかにした。急傾斜である長楽寺では幾つかの平場を立体的に組み合わせて構成され、平場間の起伏が豊かな場所に庭園を造った。次に傾斜の大きい安養寺では、敷地内に起伏を持つ塔頭が立体的に組み合わせられ、建築と庭の多様な位置関係が視線の多様性を産み出した。そして緩傾斜の双林寺では平面上に並んだ塔頭で構成され、立体的な空間構成を造る為に築山や借景が用いられた。このように豊かにつくられた空間では、後に席貸が行われ、飲食、宴席が積極的に行われ文化的交流の場として利用された。
著者
畠山 誉史 田中 尚人 佐藤 英一 内村 泰 岡田 早苗
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.49-54, 2011
被引用文献数
1

植物質発酵食品から分離された乳酸菌(<i>Lactobacillus plantarum</i> SNJ81, <i>Lb. fermentum</i> SNA41, <i>Lb. </i><i>parabuchneri</i> SNC91, <i>Lb. delbrueckii</i> SNK64, and <i>Leuconostoc mesenteroides</i> subsp.<i> mesenteroides </i>10D-2)の食品由来の変異原物質における吸着能を検証した。食品由来の変異原物質は肉や魚のこげなどから検出されるヘテロサイクリックアミン(2-amino-1-methyl-6-phenylimidazo [4,5-b] pyridine (PhIP), 2-amino-3,8-dimethylimidazo [4,5-f] quinoxaline (MeIQx), 2-amino-9H-pyrydo [2,3-b] indole (AαC),3-amino-1,4-dimethyl-5H-pyrido [4,3-b] indole (Trp-P-1) and 2-amino-3,4-dimethylimidazo [4,5-f] quinoline(MeIQ))を用いた。乳酸菌のヘテロサイクリックアミン吸着能は様々であった。使用したヘテロサイクリックアミンの中で、Trp-P-1 が最も高く吸着された。そして死菌体に同等の吸着能を有しており、さらには人工消化液存在下でも吸着能を有していた。乳酸菌の変異原物質吸着に関する研究のほとんどは乳由来の乳酸菌を用いた報告である。本研究では、新規分離原として植物質発酵食品であるすんきに着目し、これまで検証されて来なかった植物質由来の乳酸菌を用いて高い変異原物質吸着能を有することが明らかとなった。
著者
田中 尚人 川崎 雅史 坪田 樹
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究論文集 (ISSN:13495712)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.109-116, 2004-06-15 (Released:2010-06-04)
参考文献数
41

This study focused on the development of Uji City under the modernization before the consolidation in 1951. Before modern age, this area had been famous for the sightseeing and the tea plant. Under the modernization, some infrastructures such as road systems, railway systems and electric generation systems were constructed in this area, and had consisted or sustained the image of this area.This study analyzed the influence of infrastructure toward urban landscape, urban life and the image of the city, and then clarified the city planning and management of the Uji City on the process of the modernization. The image of Uji City itself was not made revolutionized by the infrastructure, but elements of the image were updated taking advantage of the infrastructure. Therefore, the image of Uji City constituted before modern age have been succeeded.
著者
田中 尚人 川崎 雅史 亀山 泰典
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.385-391, 2004-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
34
被引用文献数
1 1

本研究では, 明治初期から昭和戦前期までの近代化プロセスにおいて, 鉄道及び電気軌道によって支えられた都市形成の過程を実証的に分析した. 都市骨格を形成する鉄道・軌道網と, 都市活動の触媒装置として機能する都市施設の発達プロセスに焦点を当て, これらの関連性について考察を行った. 都市施設配置の変遷を分析し都市活動を考慮することにより, 近代京都の都市計画では, 郊外部が「風致」のための空間として認識されていたこと, また直接的な都市部への鉄道の乗り入れは見られず電気軌道網が人々の足となり都市施設立地が進んだことが特徴的であり, 郊外部における「観光」という都市活動を含む都市文化の形成に役立ったことが分かった.
著者
田中 尚人 二村 春香 秋山 孝正
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.407-415, 2006-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
13

本論文は, 水辺を基盤として発展してきた都市形成におけるコミュニティの成立構造, 変化のプロセスについて考察し, 水辺のインフラストラクチャーとコミュニティのあり方について考察したものである.具体的には, 岐阜市中心部長良橋周辺を対象として, 文献資料から都市基盤整備の概要を把握, 特に水防と水辺利用の要として整備されてきた陸閘に着目し現地調査を行った.さらにヒアリング調査により, コミュニティの変遷と現況を整理し, 水辺に対する意識や工夫, ルールを抽出した.本論文の成果として, 水辺のコミュニティが自ら継承してきた水防システムを保持している場合適切な水辺利用が可能となり, 水防と水辺利用のバランスを保つシステムの運用には, 地域住民のインフラストラクチャーに対する理解が重要な要素となることが明らかとなった.
著者
田中 尚人
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学政策研究 (ISSN:2185985X)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.25-32, 2016-03-31

三角西港は熊本県宇城市三角町に位置し、『明治の三大築港』の一つに数えられる土木遺産であり、平成27年7月『明治日本の産業革命遺産製鉄・製鋼、造船、石炭産業』の資産として、ユネスコの世界文化遺産に登録された。本年度、筆者らは宇城市立三角小学校の6年生、35名を対象としたWSを3回実施した。本研究では、文化的景観保全に対する理解を基盤としたワークショップを通じて、児童たちが獲得したシビックプライドについて定性的に分析することを目的とする。具体的には、ワークショップは、①三角西港に関する基礎知識の獲得、②三角西港におけるまち歩き、③三角西港のガイドブックづくり、の3回を授業時間中に実施した。The Misumi-Nishi port is located in Misumi town, Uki city, Kumamoto prefecture. This old stone port is one of "Meiji three important port" and was selected as the UNESCO's world heritage "Sites of Japan's Meiji Industrial Revolution: Iron and Steel, Shipbuilding and Coal Mining". In this year, the authors carried out workshops for preservation of cultural landscape and community development with 35 students who are sixth grader of Misumi Elementary School, three times. In this study, it is aimed to analyze qualitatively about the civic pride that children acquired through the workshop which assumed understanding for the cultural landscape maintenance. The theme of workshop are ⅰ) Acquisition of the basic knowledge about the Misumi-Nishi port, ⅱ) Town walk (Machi-aruki) survey in the Misumi-Nishi port and ⅲ) Making a guidebook of the Misumi-Nishi port.
著者
田中 尚人 二村 春香 秋山 孝正
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.407-415, 2006

本論文は, 水辺を基盤として発展してきた都市形成におけるコミュニティの成立構造, 変化のプロセスについて考察し, 水辺のインフラストラクチャーとコミュニティのあり方について考察したものである.具体的には, 岐阜市中心部長良橋周辺を対象として, 文献資料から都市基盤整備の概要を把握, 特に水防と水辺利用の要として整備されてきた陸閘に着目し現地調査を行った.さらにヒアリング調査により, コミュニティの変遷と現況を整理し, 水辺に対する意識や工夫, ルールを抽出した.本論文の成果として, 水辺のコミュニティが自ら継承してきた水防システムを保持している場合適切な水辺利用が可能となり, 水防と水辺利用のバランスを保つシステムの運用には, 地域住民のインフラストラクチャーに対する理解が重要な要素となることが明らかとなった.
著者
山中 孝文 田中 尚人 星野 裕司 本田 泰寛
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.82-95, 2012 (Released:2012-08-20)
参考文献数
27

熊本大学工学部の前身である第五高等学校工学部,のちの熊本高等工業学校は1897(明治30)年,1906(明治39)年に実業専門学校として設立された.上記の学校の卒業生は高等専門学を教授され,工学得業士の称号を授与された.本研究では,まず土木分野における五高工学部・熊本高工の位置づけを整理し,実社会における工学得業士の割合を示した.さらに,卒業時点の進路と勤務先の変遷に関するデータベースを作成することにより,工学得業士の主な勤務先が地方官庁だったことを明らかにした.最終的に,地方官庁の勤務者を抽出してその就業状況について分析することにより,その特徴を考察した.
著者
小林 一郎 田中 尚人 星野 裕司 ギエルム アンドレ マルラン シリル 本田 泰寛 岩田 圭佑 永村 景子
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,高齢化・過疎化の著しい中山間地の農村を対象に,歴史的構造物や文化的景観を含む土木遺産を基盤とした,地域コミュニティと基礎自治体の協働による持続可能な観光支援システムを構築することを目的とする.そのために,地方分権により既存の道路ネットワークと農村の持つ利点を活かした観光支援政策,事業の先進地であるフランスに範を求め,同地と地理的・歴史的に共通点を多く有する熊本県,鹿児島県の中山間地域の農村を事例として,日仏の事例分析を行う.さらに,フランスにおける現地事例調査,国内における実践的地域づくり活動を通して,農村観光支援のための政策,人材育成,道路ネットワークの活用手法を提案する.本研究の研究対象地は,全て農業を主産業として発展してきており,道路や橋梁,運河,水利施設などを社会的資産としてストックしてきている.フランスにおける先進事例分析として文化的景観保全調査を行い,観光支援に繋がる社会的資産を分析,評価する.さらに,自立した農村観光を成功させている基礎自治体の政策立案・実施システムについて調査する.国内では,文化的景観保全調査及び,先進事例分析を受けて,日本でも実施可能な政策としていくための,地域コミュニティと基礎自治体の協働による地域づくりとして実践する.さらに,このシステム開発に有用と考えられる,研究者,行政担当者,実務者の交流を行う.研究の成果として,フランスの文化的景観制度ともいえるシット制度について,策定手法,住民参加の意味合い,歴史・景観の価値共有手法を整理した.この文化的景観保全地域の現地踏査を行うとともに,海外事例との比較調査を実施し,さらにフランスにおける景域保全計画策定への地域住民参画について整理した.日本においては,各地において,着地型観光の担い手となる観光ボランティアガイド導入の支援を行い,農業や各地の生活・生業の持続可能性に着目した地域内外の交流促進に資する視点・手法の提供を行った.