著者
岡田 健次 井上 大志 山中 勝弘 江本 拓央 山下 智也
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

大動脈解離の発生機序は未解明であり、治療法も発症後早期の緊急手術が選択され、新規の予防法および進展抑制法の開発が急務である。本研究の目的は、ヒト大動脈解離手術サンプルの単一細胞遺伝子発現解析を行い、病変部の炎症細胞と血管細胞の単一細胞ごとの遺伝子発現を調査することで、大動脈解離発生メカニズムの一端を解明することである。解離病変に特異的な遺伝子発現から関連分子を特定し、蛋白レベルでの解析も加えて病態との関係を検証する。新規治療標的の可能性のある炎症細胞とその関連分子に対して動物モデルによる介入実験を行い検証する。
著者
松﨑 隆朗 清水 太郎 安藤 英紀 異島 優 山中 勝弘 三輪 泰司 濱本 英利 石田 竜弘
雑誌
日本薬学会第142年会(名古屋)
巻号頁・発行日
2022-02-01

【目的】近年、がん抗原に対して特異的な免疫反応を誘導できるがんワクチンが注目されている。従来の皮下投与に比べて、免疫反応を増強するために抗原提示細胞が多く存在する皮膚を標的としたワクチンが注目されてきている。以前、我々は角質層透過性を持ち経皮吸収促進剤として利用できるイオン液体(ILs)にアジュバントとがん抗原模倣ペプチドを溶解させたワクチンを調製した。腫瘍を皮下移植したマウスの腹部にアジュバントを24時間貼付した後にペプチドの24時間貼付を行う免疫を3週間で3回行ったところ、有意な腫瘍増殖抑制効果が得られることを示した。本検討では、腫瘍増殖抑制効果が得られたメカニズムを明らかにするために、貼付部位の皮膚および流入リンパ節での免疫細胞の存在割合の変化を経時的に評価した。【方法】アジュバントであるResiquimod(R848)を含むILs(R848-ILs)およびOVAペプチド(OVAp)を含むILs(OVAp-ILs)を調製し、それぞれを貼付したマウスの貼付部位の皮膚およびリンパ節を経時的に回収し、その中の白血球(CD45)、更にはマクロファージ(CD11b)及び樹状細胞(CD11c)の存在割合をフローサイトメーターで測定した。【結果・考察】R848-ILsを貼付したマウスの皮膚では、各細胞の割合が貼付12時間以降に有意に増加した。また、R848-ILsの24時間貼付し続けた後にOVAp-ILsを貼付したところ、OVApの抗原提示を行っている細胞の割合が皮膚ではOVAp-ILs貼付3時間後から有意に増加し、リンパ節では貼付の6時間後から増加した。腫瘍増殖抑制効果が得られたメカニズムとして、R848-ILsによって皮膚免疫細胞が増加し、そこにOVAp-ILsを貼付することで、皮膚でペプチドが抗原として捕捉される機会が増加するのと同時にリンパ節へと運搬されやすくなり、結果として細胞傷害性Tリンパ球の活性化が強くなり、高い腫瘍増殖抑制効果に繋がったものと考えられた。以上より、イオン液体を利用したワクチン製剤は皮膚免疫反応の増強を可能とすることが示され、新規の非侵襲性ワクチンへの展開が可能であることが示唆された。
著者
山中 勝
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.159-171, 2017-05-31 (Released:2017-06-28)
参考文献数
12
被引用文献数
1
著者
今西 純一 奥川 裕子 金 鉉〓 飯田 義彦 森本 幸裕 山中 勝次 小島 玉雄
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 = Journal of the Japanese Society of Revegetation Technology (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.9-14, 2011-08-31
参考文献数
20
被引用文献数
2 1

サクラ類は全国に広く植栽され,地域の重要な景観資源となっている。サクラ類を適切に管理するために,活力度の評価が必要となるが,開花期の着花状況に基づく活力度評価の方法は定まっていない。そこで,本研究は,奈良県吉野山のヤマザクラを対象として,着花状況に関する 4 つの評価項目の検討を行った。その結果,樹頂部の頂枝における芽の数や,葉芽と花芽の比率は,栄養成長と関連を持ち,活力度の評価項目として適切であることが明らかとなった。一方,1 つの花芽から出る花数は,様々な生育段階を含む集団の活力度評価には適さなかった。個体全体の満開時の着花量は,活力度評価には適さないと考えられた。
著者
中野 孝教 荒矢 大輔 飯田 史哉 石本 達成 伊戸 康清 猪嶋 清文 今村 智子 江川 勇飛 小澤 弘幸 帰山 寿章 片瀬 靖規 酒井 元哉 佐藤 実 澤田 誠司 下島 浩平 野田 博幸 松田 智幸 松本 高志 山田 明弘 山田 佳裕 山下 勝行 岡野 修 岸本 圭祐 勝見 尚也 山中 勝 城間 吉貴 大河内 博
出版者
日本地学教育学会
雑誌
みんなの地学 (ISSN:24356441)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.10-15, 2020-06-30 (Released:2021-12-02)
参考文献数
10

人間社会は岩石や水,生物,大気などの様々な自然資源を開発し利用することで発展してきたが,それに伴い環境は変化し時に汚染や災害など生存にかかわる問題を引き起こしてきた.地学は持続可能な社会を支える必須な学問であるにもかかわらず,高校地学の履修者は少なく,教師も研究者も減少している.人間と自然の関係は複雑だがシームレスにつながっており,共に地域的な多様性に富むという特徴がある.地球環境研究は社会変革につながる学際研究,大学は地域貢献,自治体は地域創生が求められるようになってきた.ここでは健全な水循環の実現に向けて,大学と小学校が連携しながら,地域性が強い水資源を観測・調査している福井県大野市の例を紹介し,生徒の環境リテラシーの向上と地学研究を協働して推進する地学教育の可能性を考えてみたい.
著者
後藤 正夫 山中 勝司
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.618-626, 1981-12-25

健全なナツミカン葉細胞間汁液(IF)中に見出される21種のアミノ酸について, かいよう病菌X. campestris pv. citriの感染に伴う濃度変化を定量的に調べ, 高濃度の主要アミノ酸について, 病菌増殖との関係を調べた。本病菌は増殖にメチオニンを必須成分として要求した。その最適濃度は0.05〜1.0μmol/mlで, IFはこれに匹敵するメチオニンを含有した。メチオニンの存在下でアスパラギン酸, アスパラギン, グルタミン酸, バリン, ロイシン, プロリン等がIF濃度で有効に増殖に利用された。特にプロリンはIFに多量に含まれ, しかも接種後数日で約10倍量に増加する点で, 重要な栄養源と考えられた。一方セリンおよびヒドロキシリジンはIF内濃度でかいよう病菌の増殖を顕著に抑制した。病原性菌株は非病原性菌株に比較して低濃度で増殖抑制を受けた。この抑制作用はIF内濃度に相当するメチオニンとプロリンの存在下で解除された。プロリンによるこの増殖抑制の解除は, アラニンの共存下で顕著になり, しかも非病原性菌株よりも病原性菌株に対して効果的に現われた。かいよう病抵抗性のキンカン葉磨砕汁は, ナツミカンに比べてプロリン濃度が低く, セリン濃度は高い数値を示したことから, 両アミノ酸の濃度比の相違が, 両カンキッのかいよう病抵抗性の差の一因をなしているものと考えられた。