- 著者
-
後藤 正夫
山中 勝司
- 出版者
- 日本植物病理学会
- 雑誌
- 日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
- 巻号頁・発行日
- vol.47, no.5, pp.618-626, 1981-12-25
健全なナツミカン葉細胞間汁液(IF)中に見出される21種のアミノ酸について, かいよう病菌X. campestris pv. citriの感染に伴う濃度変化を定量的に調べ, 高濃度の主要アミノ酸について, 病菌増殖との関係を調べた。本病菌は増殖にメチオニンを必須成分として要求した。その最適濃度は0.05〜1.0μmol/mlで, IFはこれに匹敵するメチオニンを含有した。メチオニンの存在下でアスパラギン酸, アスパラギン, グルタミン酸, バリン, ロイシン, プロリン等がIF濃度で有効に増殖に利用された。特にプロリンはIFに多量に含まれ, しかも接種後数日で約10倍量に増加する点で, 重要な栄養源と考えられた。一方セリンおよびヒドロキシリジンはIF内濃度でかいよう病菌の増殖を顕著に抑制した。病原性菌株は非病原性菌株に比較して低濃度で増殖抑制を受けた。この抑制作用はIF内濃度に相当するメチオニンとプロリンの存在下で解除された。プロリンによるこの増殖抑制の解除は, アラニンの共存下で顕著になり, しかも非病原性菌株よりも病原性菌株に対して効果的に現われた。かいよう病抵抗性のキンカン葉磨砕汁は, ナツミカンに比べてプロリン濃度が低く, セリン濃度は高い数値を示したことから, 両アミノ酸の濃度比の相違が, 両カンキッのかいよう病抵抗性の差の一因をなしているものと考えられた。