著者
西 教生
出版者
The Japanese Bird Banding Association
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.69-74, 2014
被引用文献数
2

2013年11月11日および同年12月28日,三重県南牟婁郡御浜町でオオセッカ<i>Locustella pryeri</i>が3羽標識放鳥された.3羽はいずれも上面が茶褐色で,頭頂から腰にかけてと上尾筒の一部,肩羽に黒色の太い縦斑があった.尾羽は12枚あり,くさび尾で尾羽に斑はみられなかった.風切羽および雨覆,小翼羽も茶褐色で,三列風切の外弁,雨覆および小翼羽に黒褐色の縦斑がみられた.眉斑および眼先は白で,眉斑は眼より後ろで不明瞭になり,焦げ茶色の細い過眼線があった.腮および喉,腹は白色で,胸および脇,下尾筒は茶褐色であった.嘴は細く,上嘴および下嘴先端は黒炭色で,下嘴基部および会合線は淡い肉色を帯びていた.最外初列風切(P10)は初列雨覆よりも長く,初列風切第9羽(P9)の約半分の長さであり,これらはオオセッカの特徴と一致した.過去に三重県内でオオセッカが標識放鳥されていないことから,今回の記録が初標識放鳥記録である.同年11月11日に標識放鳥した個体が47日後に再捕獲されたこと,その個体以外に12月下旬に2個体が捕獲されたことから,越冬していることが示唆された.
著者
深井 宣男
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1_2, pp.57-63, 2010 (Released:2012-09-01)
参考文献数
8

サメビタキMuscicapa sibirica,エゾビタキM. griseisticta,コサメビタキM. dauuricaの幼羽について,既存の情報を整理し,観察結果を加えて識別点をまとめた.これら3種の幼羽では,頭部から背にかけての斑の色と形,大きさが特徴的で,種の識別に役立つ.第1回冬羽に換羽した個体でも,これらの幼羽の一部が残っていれば識別に役立つと考えられる.
著者
深井 宣男
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.22-28, 2016 (Released:2016-10-05)
参考文献数
19

アオバズクNinox scutulataの齢の識別について論じた.標識調査で捕獲された個体と標本の写真,文献の生態写真を用いて比較した結果,幼鳥の尾羽は,やや先細りする形状で,先端の淡色部が内側の淡色帯とほぼ同じ色で太いのに対し,成鳥では先細りしない丸い形状で,先端の淡色部が内側の淡色帯より白くて細かった.幼鳥は秋に尾羽を換羽しないため,生まれた翌年に尾羽を換羽するまでは尾羽の特徴で齢の識別が可能である.
著者
今野 怜 今野 美和
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1_2, pp.21-35, 2020-12-31 (Released:2021-10-01)
参考文献数
17

マミチャジナイTurdus obscurus 29個体,シロハラT. pallidus 39個体,アカハラT. chrysolaus 79個体,アカコッコT. celaenops 16個体の翼式の要素(初列風切最長羽,p9の位置,初列風切の間隙,外弁欠刻)を比較した.4種の各要素は有意に異なっており,渡る距離が長い種ほど翼の形状が尖っていた.初列風切の間隙の見た目はマミチャジナイ・アカコッコとシロハラ・アカハラに大別された.アカコッコは間隙を形成する羽毛が独特で外弁欠刻はより近位にあると推察されたこと,マミチャジナイの外弁欠刻はより遠位にあったこととあわせ,翼式は4種の識別に有効であった.
著者
桑原 和之 茂田 良光 野口 一誠 富谷 健三
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.43-48, 2004 (Released:2015-08-20)
参考文献数
11

アカコッコTurdus celaenopsは,伊豆諸島とトカラ列島でのみ繁殖する日本固有種である.本種は,本州では房総半島と伊豆半島で稀に越冬期の記録がある.1983年12月15日から1984年5月7日まで雄成鳥が千葉県銚子市(35°44′N,140°51′E,)で越冬し,また1992年4月25日から5月2日に雄成鳥が千葉県山武郡山武町(35°39′N,140°23′E,)で観察された.この2例が千葉県における初めての確実な報告例となる.
著者
内田 博
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.16-24, 2017 (Released:2018-07-25)
参考文献数
14

埼玉県中央部の都幾川における,繁殖期のイカルチドリの雌雄の計測値の比較から,雌は雄よりも体重が重く,自然翼長が長い傾向が見られた.頭部の額黒色帯羽部の幅は雌よりも雄で広かった.ただし,雌雄における測定値の重複は大きく,単独の測定値だけでは性別の判断は難しいと考えられた.色彩の比較では,雄は雌に比べ眼下羽部から耳羽までの羽色が黒い傾向があり,雌は体羽色であるOlive-Brownに近い羽色をもつ個体が多かった.この顔の色彩の判別点は雌雄を判断する上で有用であると考えられるが,完全に雌雄を分離するものではないため,計測値と色彩とを総合的に判断することが重要であると考えられた.
著者
渡辺 朝一
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.59-65, 1998 (Released:2015-08-20)
参考文献数
5
被引用文献数
1 2

ムナグロの冬羽タイプにおいて,成鳥冬羽,幼羽,第一回冬羽の3タイプを背面の羽毛に着目して区別できることを示した.幼羽では,前頸と胸に縦斑が著しく,背面の羽毛は大部分が黒色で,羽縁に半円状の淡色斑がある.成鳥冬羽では,前頸と胸の縦斑は見られず,背面の羽毛は黒色と黄金色が段階的に模様を形成している.第一回冬羽では,やはり前頸と胸の縦斑は見られず,背面の羽毛は大部分が黒色で羽縁が淡色である. ムナグロは,冬羽タイプにおいても,換羽直後は黄金色が著しいが,次第に退色して褐色味を欠くようになることがある.
著者
續 ユキ子
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.107-111, 2018-12-31 (Released:2021-03-31)
参考文献数
6

2017年5月23日,山梨県北杜市でジョウビタキの巣を発見した.この巣の雌親には環境省標識調査用足環が付いており,写真撮影を行って足環番号を読み取ったところ,この個体は2016年に,繁殖場所から約220m離れた地点で,巣内雛で放鳥された個体と判明した.ジョウビタキは冬鳥だが,近年日本各地から繁殖報告が相次ぎ,繁殖分布の拡大が示唆されている.しかし,国内繁殖個体の越冬地や渡り経路,幼鳥の分散といった基礎的な生態は全く解明されていない.本報告は,日本で生まれたジョウビタキが,巣立ちの翌年に自らが巣立った場所の至近で繁殖を行った確実な記録として,今後の個体群動態を推測するうえでも貴重なものであろう.
著者
脇坂 英弥 中川 宗孝
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.25-27, 2005

On 8 June, 2002, one fledgling Common Sandpiper was captured, banded and released on the Kizu River (34&deg;52&prime;N, 135&deg;46&prime;E) in Kyoto Prefecture, Japan. On the same date the following year, a breeding adult Common Sandpiper was captured, banded and released, using a slipknot loop trap. Common Sandpiper breed across the middle and higher latitudes of the Eurasian continent. In Japan, they breed around lakes and marshes, and on river gravels, from the Ryukyu Islands north through Hokkaido. Even though they are resident in the Kinki Region, breeding records to date had been limited to Hyogo and Wakayama Prefectures, and these reports are the first for Kyoto Prefecture. The flood plain of the Kizu River consists of gravel interspersed with small patches of reeds and willows. The breeding sites were all located between 80 to 100 meters from the river, on gravelly soil protected by dense grasses. In addition to Common Sandpiper, Long-billed Ringed Plover, Little Ringed Plover, Snowy Plover and Little Tern also nest along the Kizu River. Currently, these breeding grounds are though to be diminishing. Conservation measures, such as establishment of seasonal sanctuaries and strict regulation of off-road vehicles, are urgently required.
著者
深井 宣男
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1-12, 2000 (Released:2015-08-20)
参考文献数
9

栃木県渡良瀬遊水地での秋の標識調査において,1994年から2000年までの7年間で,ヨタカが51羽標識放鳥された.そのうちの31羽について写真撮影を行って比較資料とし,齢の識別点を検討した.齢の確定した再捕獲個体と幼鳥の写真,死体,換羽状態から推定される齢をもとに,各部の羽色を比較した結果,初列雨覆,大雨覆,尾羽,換羽状態に注目すれば,本種の秋における齢の識別は可能であることがわかった.また,本種の秋季における換羽様式を推定した.成鳥は繁殖地で完全換羽を開始し,外側初列風切と次列風切の一部,尾羽の一部を換羽した後,越冬地への渡りを行うが,多くの幼鳥は,繁殖地では体羽と雨覆の一部を換羽するのみで,越冬地への渡りを行うものと考えられる.
著者
山本 敏夫
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.1-4, 1994 (Released:2015-08-20)
参考文献数
1
被引用文献数
1

1993年の5月から7月にかけて富山県黒部市黒部川河口中州のコアジサシのコロニーにおいてアジサシの日本初記録である繁殖を観察した。観察結果から抱卵を開始したのは5月18日,孵化したのは6月10日と考えられた。7月10日には活発に飛び回る幼鳥が観察され、7月15日から17日の間に飛去した。この場所でアジサシが繁殖したのは、外敵の接近しにくい地形と外敵の侵入をコアジサシが発見してくれる事による安全の確保や、コアジサシの餌を横取りする事による餌の確保が容易であったためと考えられる。
著者
福田 道雄
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.5-10, 1994 (Released:2015-08-20)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

東京都上野公園不忍池のコロニーに住むカワウの,日常的な行動範囲はコロニーから30~40km以内とみられる。この範囲を越える50km以上離れた地点で,7羽のカラーリングを装着したカワウが観察確認または回収された。それらが出生コロニーから消失したのは2~11カ月齢であった。関東地域に生息するカワウは定住していたが,幼鳥がより遠方まで移動するという3種のウ類についての報告と同じ傾向を示していた。不忍池コロニーのカワウは,100km以内の移動は短期的な放浪で,出生コロニーに帰還することも多く,200km以上の移動は分散で,他のコロニーに住み着いてしまうことが多いと考えられる。これらのことには,不忍池の200km以内に,個体の行き来のあるコロニーが無いという立地条件が大きく影響していた。さらに,不忍池のように定住したカワウでも、生息地域内での羽数の増加やコロニーや塒が複数化することで,移動・分散しやすくなるとみられた。
著者
山根 みどり
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.23-34, 2015 (Released:2016-04-20)
参考文献数
22

兵庫県宝塚市内のゴルフ場敷地内で,2012年9月24日,エゾセンニュウLocustella fasciolata amnicolaが1羽標識放鳥された.兵庫県内の観察記録は数件あるが,標識記録は本個体が初めてである.捕獲場所は林縁部の草藪で,狭い範囲で3羽の地鳴きが同時に聞かれたため,秋は小群で渡ることが推測できた.形態を他の類似種と比較した結果,種名をエゾセンニュウ,亜種名amnicolaと同定し,性不明,第1回冬羽と判断した. また,未知の部分が多い本種の渡り生態について,山階鳥類研究所より提供された過去30年間のエゾセンニュウの放鳥データと,過去の文献を分析して推測を試みた.本種は,北海道で繁殖し繁殖期に多数標識放鳥されているものの,春と秋の渡りのデータは少ない.別の文献による,灯台に衝突死した個体数の記録と照らし合わせながら場所と個体数を地図に落として,本種の春と秋の渡りについて,それぞれの開始と終了の時期,そのルート,渡り中継地における滞在日数の推測を行った. 標識調査の結果と過去の知見を組み合わせて,さまざまな角度から分析することにより,鳥の渡り生態の解明に貢献できる可能性があると考えられた.
著者
田中 正彦 三上 かつら
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1-15, 2017 (Released:2018-07-25)
参考文献数
9

北海道の渡島半島にある七飯町の休耕田において,1990年から2014年までの間に,標識調査で捕獲された鳥類について報告する.この期間中に,のべ 37,868羽,108種が放鳥された.放鳥数が多かった鳥類種は,上位から,オオジュリン,カシラダカ,アオジ,ツバメであった.本調査地の特徴として,秋季のカシラダカ放鳥数が多いことと,オオジュリンの回収にかかわる記録が多いことが挙げられる.カシラダカは,七飯町を含む渡島半島で秋季には多く見られることから,音声誘引と地形的要因が集中を強化したものと思われる.オオジュリンは,秋季・春季ともに当地で数多く捕獲され,181個体が当地で放鳥され他地域で回収された,359個体が他地域で放鳥され当地で回収された.本調査地を通過するオオジュリンを地図上に可視化させると,初放鳥または再捕獲地点は日本海側・太平洋側を問わず日本全国(一部国外も含む)に及んでいた.七飯町は,日本のオオジュリンにとって,重要な渡りの中継地のひとつとなっていると考えられる.ツバメとショウドウツバメは当地を夏のねぐらとして利用していた.
著者
福田 道雄
出版者
The Japanese Bird Banding Association
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.1-4, 1996

1996年11月7~16日に,フンボルトペンギンの生息地調査のためチリに行った.ペンギンのコロニー周辺,滞在した町や都市,また移動中などに各種の鳥類を目撃した.旅行中の前半は中部の温暖な地域で,後半は北部の乾燥した地域で活動した.短期間の滞在で,モノクロでスペイン語のフィールドガイドしか持っていなかったが,40種の鳥類を記録できた.
著者
風間 辰夫
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.11-22, 2014 (Released:2015-08-20)
参考文献数
12
被引用文献数
1

キジ科の種間雑種作出はあくまでも,狩猟,観光行政の面からの作業であり,科学的な視点での知見が乏しいのが現状である.日本では,鶏,矮鶏,軍鶏等の改良種は古くから行われてきたが,キジ類についてはほとんど例がない.そこで本稿では,暗中模索の状態で実施した交配実験結果を基に,その繁殖成績と交雑種の外観を記す事を目的とする.かけ合わせた種の組み合わせ20ペアは,すべてケージ内において自然繁殖で行った.その結果,量産可能な品種としては,コウライキジ雄×オナガキジ雌,キジ雄×キンケイ雌,キジ雄×コウライキジ雌(この逆交配も可)の4種の交配種が妥当であると考えられた.これらのうち,作出された雄の成鳥は交雑種であることの判別が外観より容易に行えるが,雌の場合は野外での判別は不可能であると考えられた.また作出には高度な技術を要するために,経済的な面から社会一般に容認されるものでないと思われた.過去の放鳥や交雑の影響により,放鳥猟区近隣等でキジ科の識別が困難となる可能性もありうる.本稿はその識別の一助となりうるであろう.
著者
風間 辰夫
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.14-24, 2013 (Released:2015-02-05)
参考文献数
5

筆者は新潟県愛鳥センター(旧称,新潟県傷病鳥救護舎)において,1971年10月~2001年3月にかけて,231種の野鳥(約24,000羽)を保護飼育した.本稿ではこれらの鳥類が産卵した589卵(28種)の形態的特徴について報告する.
著者
深井 宣男 須川 恒 千葉 晃 尾崎 清明
出版者
The Japanese Bird Banding Association
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.8-36, 2010
被引用文献数
2

1998~2000年に実施された日露共同標識調査の結果から,優占種,日周変化,再捕獲記録,主な種の渡り時期について解析した.3年間で合計46種5,278羽が標識放鳥され,21種361羽が再捕獲された.優占種は,カシラダカ,コガラ,メボソムシクイ,オジロビタキ,オオジュリンであった.日本での捕獲数との比較から,オジロビタキとアカマシコはカムチャツカ半島からオホーツク海を越えて大陸沿いに南下するものと推定される.種別の日周変化では,シマゴマなどの朝型,マミチャジナイの朝夕型,オオジュリンなどの午前型,オジロビタキなどの平均型の4つに類別された.移動後回収の記録はオオジュリンで18例あり,日本での回収地および放鳥地は宮城県から宮崎県まで広範囲に及んだことから,日本各地で越冬するオオジュリンにとって,カムチャツカ半島が重要な繁殖地の一つであることが再確認された.渡りの時期には,換羽様式などさまざまな要因が関係していると考えられる.成鳥が繁殖地で完全換羽をおこなうオジロビタキ,カシラダカ,オオジュリンでは幼鳥が先に渡り,越冬地で換羽をおこなうアカマシコ,メボソムシクイでは成鳥が先に渡ることがわかった.体重や皮下脂肪量との関係では,成鳥の渡りのピークは脂肪量の増加とほぼ一致していたが,幼鳥の体重と脂肪量の増加はピークから10日ほど遅れていた.成鳥の渡り期間に比べ幼鳥の渡りの期間が長いのは,体重や脂肪量の増加が渡りのピークとずれていることが関係している可能性が考えられた.
著者
澤 祐介
出版者
The Japanese Bird Banding Association
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.7-13, 2012

繁殖期のカワガラスの行動圏に関する調査を,2005年12月から2006年3月にかけて,京都府京都市の高野川流域にて行った.調査は,カラーリングを装着した4個体に対して,追い出し法による行動圏の調査と,タイムマッピング法による行動圏内の利用区域の調査を行った.その結果,造巣が開始される直前のつがい形成期には,1羽のオスの行動圏に2羽のメスの行動圏が形成された一夫二妻型の行動圏を形成した個体が観察された.このオスの行動圏は,他のオスの侵入により縮小し,結果的に一夫一妻での繁殖となったが,本種の一夫二妻の繁殖様式に発展する可能性があった事例だと考えられる.