- 著者
-
岡田 匡史
- 出版者
- 美術科教育学会
- 雑誌
- 美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
- 巻号頁・発行日
- vol.30, pp.135-149, 2009
本稿では,西洋=異文化を基本観点とし,旧版より新版が引き継ぐ,『中学校学習指導要領』第6節美術B鑑賞(1)ウの「美術を通した国際理解」を主たる根拠に,絵を指導媒体とした西洋理解の在り方を考える。生活形態の欧米化,衣食住の均質化(グローバリゼーション)が進むと,何となし西洋(The West)が解った気になるが,深層は掴みがたい。深層とは,キリスト教的精神性(メンタリティ)(信仰態度に換言可),つまり"Christianity"で,依然異文化である(米国留学体験[1982-85年]でそう痛感した)。そこで,キリスト教美術にかつて求められた教化的働きを教育機能の一種と捉え,「キリスト教美術(殊に宗教画)による西洋(異文化)理解」を提起することが,本稿眼目となる。リップハルト男爵説によりレオナルド帰属がほぼ確定した,瑞々しさ溢れる初期傑作,「受胎告知」を鑑賞対象とし,テキスト(宗教画ゆえ新・旧約聖書)とキリスト教図像学を両輪とした諸解釈を調べ,筆者自身の解釈も示しながら,教材研究を構築。そこを経,フェルドマン提起の4段階批評方式に則る"Instructional Resources"を参考に,指導範例を述べる。