著者
新美 秀和 鎌田 千花 土井 美里 中西 一輝 西堀 咲輝 西山 淳 久武 貴昌 松浦 健吾 山川 綾音
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.21, pp.49-63, 2013

本稿では,大学のゼミ活動の一環として実践した「河童を用いた想像遊び」について報告した.活動の具体的内容は,ある学童保育で実践している活動(NPO 法人芹川子育て支援部門,2013)を参考にして原案を作成し,活動の場となった幼稚園の園長先生及びクラス担任との協議を経て決定した.協議の結果,5回の活動時間が与えられることとなった.1回あたりの活動時間は30分〜1時間,頻度は週に1回であった.第1回は彦根にいるとされる妖怪を紹介し,第2回と第3回では河童の絵本を読み,第4回目には河童への絵手紙を園児たちに作成させ,第5回目には河童からの返事を手渡した.5回の活動が終了した後,保護者に対し自由記述のアンケートにとったところ,園児たちはすっかり河童の存在を信じ込んだこと,また休日などに親子で河童を探しに近所を散策したことなどが報告された.最後に,今回の活動が園児に及ぼした影響,保護者に及ぼした影響および,本稿執筆者たちに及ぼした影響について論じた.
著者
押岡 大覚 鎌倉 利光 寺原 美歩
出版者
聖泉大学紀要委員会
雑誌
聖泉論叢 = The Seisen review (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.24, pp.33-44, 2017

本研究は,コ・ファシリテーター方式,3日間の通い形式により実施した第2回フォーカシング指向グループ("Focusing-oriented" Group:以下,F.O.G.)参加者から得られた《満足した点》及び《不満足な点・心残り・気がかり》に係る自由記述について,テキストマイニング及び多変量解析による分析を施し,F.O.G.のグループ・プロセスに関する仮説の生成を目的とした.その結果,「他者との関わり感覚」,「他者のフェルトセンスの感受」,「場のフェルトセンスの感受」の3要因による好循環を基盤とした「フェルトセンスの言語化」による体験的相互作用の経験が,F.O.G.において満足感を覚えるに至るグループ・プロセスである可能性が示唆された.一方,F.O.G.参加者は「他者との距離感」及び「自己の発信が出来ない」という2要因の悪循環の経験が,F.O.G.において参加者が不満足や心残り,気がかりを感じるグループ・プロセスである可能性が示唆された.ただし,これらの仮説は第2回F.O.G.モデル構成から得られたものであり,これまで,あるいはこれ以降実施されるF.O.G.モデル構成全般に汎化して考えられるか否かについては,一定の保留が必要である
著者
押岡 大覚 鎌倉 利光 寺原 美歩
出版者
聖泉大学紀要委員会
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.23, pp.1-12, 2016

本研究は,第1回フォーカシング指向グループ("Focusing-oriented" Group:以下,F.O.G.)参加者から得られた《満足した点》及び《不満足な点・心残り・気がかり》に係る自由記述について,テキストマイニング及び多変量解析を用いた体系的,計量的分析を行い,F.O.G.のグループ・プロセスに関する仮説の生成を目的とした.その結果,F.O.G.参加者は,集団内で「他者との関わりの感覚」を覚え,安心できる存在として他者を感じ,その安心感を基盤として,多方向的な相互作用を経験する.そして,個人が「他者との関わりの感覚」を覚えるようになると,「自己の身体感覚」が賦活され,「自己の発信」が行えるようになるという,満足感に係るグループ・プロセスの仮説が生成された.一方,F.O.G.参加者は「他者の身体内感覚を感じられない」,あるいは「自己の身体感覚を感じられない」状態になると,「自己の発信ができない」状態になるという,不満足感等に係るグループ・プロセスの仮説が生成された.ただし,これらの仮説は,第1回F.O.G.のみから得られた限定的なものであり,今後のF.O.G.モデル構成全てに適用して考えられるか否かについては,一定の保留が必要である.
著者
竹村 朋子
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.19, pp.77-90, 2011

今日、米国におけるジャーナリズムは経営および報道の質において衰退を続けている。その最も大きな要因は、メディアの過度な商業化にある。1970年代後半からメディアの商業化が加速したことで、米ジャーナリズムはより安価なニュースを制作し、より多くの利益を得るというビジネス・モデルへ傾いていった。ニュース・ルームへの投資が削減される中で、調査報道は最も予算や規模が縮小している部門のひとつである。近年、非営利のオンライン調査報道機関が設立され始めている。非営利機関と既存の商業メディアが連携することで、非営利機関が行った調査報道を商業メディアが記事として伝えるという新たな情報発信の流れが生まれた。本稿では、2007年に設立され、2010年、2011年と2年連続でピューリッツァー賞を受賞したProPublicaを取り上げ、米国の新たなジャーナリズムの流れを検討する。ProPublica の運営において最も大きな課題は、非営利の形態を続けるために安定的な資金源を獲得することである。資金の安定化こそ、非営利メディア組織が質の高いジャーナリズムを維持・提供することの源になると考える。
著者
李 艶
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.16, pp.55-73, 2008

本論文は,心理学の立場から漢字と漢字の認知について検討する。漢字はそれ自体論理性があり,漢字を学習することは人間の論理性を育てるのに役に立つ。漢字は形,音声,意味という3つのコーデイングがあり,視覚的に優れている。また,漢字は弁別や認知もしやすい文字である。従って,漢字は学習しやすい文字であるといえる。以上の視点を踏まえて,漢字の優位性,漢字の認知,漢字と脳,漢字の学習,漢字と書道,漢字ゲーム,現代漢字心理などについて論じる。
著者
西村 敏雄
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.11, pp.61-78, 2003

凶悪な少年犯罪が起こるたびに、新聞などのメディアによる犯罪報道が、加害者や被害者の氏名や家族関係などのプライバシーの人権を侵害するケースがあとをたたない。本稿では少年法の適用や犯罪報道などの事例を基に報道(表現)の自由や人権問題をとりあげる。そしてまだ完全とはいえない少年法の改正については、単なる合理性や論理性だけを重視した法律論議だけではなく、人の感情や価値観なども抱合するような議論を、また報道の自由に関してはある一定の「制約」が必要であることを指摘した。
著者
赤井伸之
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.17, pp.21-39, 2009

聖書に記された姦通の語を手掛りに,姦通関連の記事を探り,姦通疑惑の女に対してなされたユニークな神判をめぐって,ささやかな考察を進めた。
著者
水野 邦夫
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.53-59, 2006

本研究は, Midzuno(2004)のモデルに従い, 良好な対人関係を形成・維持する際に, どのような社会的スキルが関連するかを検討することを目的とした。大学生および専門学校生188名(男子99名, 女子89名)に質問紙調査を実施し, 思い浮かべた1名の人物について, そのパーソナリティ特性(外向性, 協調性), さまざまな社会的スキル(関係開始, 自己主張, 関係維持)およびその人物との関係性(関係の良好度)を回答させた。モデルに従ってパス解析を行ったところ, 関係維持スキルは良好な関係性と正の関連を持つのに対して, 自己主張や関係開始スキルは関連しないかむしろ負の関連を持つことが示された。パスを整理し, 再度分析を行ったところ, 社会的スキルは外向性を背景とした関係開始・自己主張スキルと, 協調性を背景とした関係維持スキルに分かれ, しかも, 関係開始・自己主張スキル(および外向性)は良好な対人関係に直接関連しないことが示された。これらの結果をもとに, 関係の開始から維持にかけて, 表現性スキルと感受性・制御スキルとの間に機能的な役割の交代が生じている可能性が示唆された。
著者
山西 洋平 新美 秀和
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.19, pp.91-103, 2011

本研究は,青年期の「こころの居場所」をテーマとして取り上げ,青年期にある大学生42名に対して「こころの居場所」に関する自由記述形式の質問紙と室内画を用いて調査を行った。その結果,「こころの居場所」として大きく「一人の世界」「他とのかかわり」「場所や状況」というありかたがみられ,さらに下位に11分類し,それらの特徴を見出した。室内画では,描画の大きさ,部屋が描かれる際の視点,壁の有無において特徴がみられた。「こころの居場所」のありかたと室内画の特徴の関係を調べるためにχ2検定を行った結果,下位分類である「一人の場所」「動物とのふれあい」「社会的集団」を「こころの居場所」とする人においては室内画の視点に関して特徴が示され,「二者的なかかわり」を「こころの居場所」とする人においては壁の有無に関して特徴が示された。以上を青年期の特徴や対象化の観点から検討し,事例を2つ挙げて考察を行った。
著者
水野 邦夫
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.11, pp.13-25, 2003

本研究では、対人場面において他者から好意的な感情を得るとき、代表的な性格特性のひとつである外向性(extroversion)がどのように寄与するかを、他の性格特性との関連において調べることを目的とした。97名の学生にアンケート調査を行い、各人の友人を1名想起させたうえで、その人物の性格特性の認知やその人物への諸感情などを評定させた。その結果、好意的な感惰と最も関連する性格特性は協調性(agreeableness)であり、外向性はこれらの性格特性要因を統制した場合、好意的感情の生起にほとんど関係しないことが明らかとなり、「外向性は好まれる性格である」とは見かけ上の認知に過ぎないことが示唆された。また、外向性をさまざまな側面から検討したところ、「友好的外向」という成分が協調性や好意的感情と関連を持つことが示され、これが見かけ上の認知を生む原因であることが考察された。
著者
炭谷 将史
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.15, pp.157-172, 2007
被引用文献数
3

本研究は,人工的に配合された香りであるサーキュエッセンスと一般的にアロマテラピーで用いられているレモン精油の効果に関する実験研究である。男子大学生8名を被験者として吸香前,吸香直後,吸香10分後の脳波を測定した。測定された脳波から各帯域の含有率を算出し,前安静時と吸香直後,前安静と吸香10分後の平均値の差の検定を行った。その結果,サーキュエッセンス条件でβ波の減少およびα2波の優勢化が認められ,β波減少効果は10分後にも維持されていた。レモン条件では,吸香直後の速波化傾向が明らかになったが,10分後には前安静よりも徐波化しており,効果は持続していないと考えられた。このことから,ストレスマネジメントを目的とした利用に際して,サーキュエッセンスがより適している可能性が示唆された。
著者
石川 肇
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.147-171, 2005

重度知的障害の方が自傷,他傷,パニックなど激しい行動上の問題を示すことがある。これらの方の約8割は自閉症の方であり,行動障害は自閉症という障害特性からくるもの,障害特性を無視した,あるいは配慮が不足した場合に生じるもの,精神科疾患との関連で生じるもの等があるが,それぞれが複雑に絡み合って生じることも多い。今回は事例を通じて行動障害が発生する原因を探り,有効な療育方法に言及する。さらに,療育的関わりだけでは行動改善の効果が上がらない一群もあることも述べたい。
著者
立脇 一美
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.16, pp.157-176, 2008

介護に従事する職員の職務満足度は,上司・同僚・利用者との相互関係や,事業所の運営方針によって大きく推移する。今回,既存文献も希少である「特定施設入居者生活介護」に従事する職員を対象に,一定の論証を得るために,職務価値に関しての聞き取り調査を実施した。その結果,「特定施設入居者生活介護」に従事する職員は,日々複数の職務不満足を体感し,他職には見られない特有の職務価値や悪循環を形成していることが明確となった。職務不満足に関するファクターを,「組織風土」から派生するもの,「他者関係」から派生するもの,「自分自身の内的感情」から派生するものという三層構造として,その概念枠組みの検討を行った。
著者
日下 純子
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.18, pp.185-192, 2010

本研究では,リハビリテーションとは障害があっても高齢になっても『その人らしく,いつまでも,楽しく生き生きできることを目指して取り組むこと』という滋賀県立リハビリテーションセンターの定義と昨今,教育や医療の現場で注目を浴びているポートフォリオをリンクした。自分の大切なものや自分史をファイルする過程で作成者の変化を「時間的展望体験尺度」を用い測定した。安価で簡単にできるポートフォリオが,ささやかであるが効果を認めたので報告する。
著者
山内 高太郎
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.99-107, 2003

国際会計基準審議会は、組織改革とともに会計基準の収斂(convergence)をキーワードとした。各国における会計基準の収斂の問題を考える場合、金融商品プロジェクトは重要な意味をもち、その動向が今後の収斂に影響を与えると考える。金融商品プロジェクト問題の根底にあるのは、公正価値の導入であり、金融商品プロジェクトについて、公正価値測定と収斂という2点から考察を行った。
著者
立脇 一美
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.16, pp.177-196, 2008

介護福祉士を目指す学生は,年々減少している。今回,短期大学系の介護福祉士養成校の在学生を対象に,介護福祉に興味を抱き始めた契機から,養成校受験に至るまでの意識形成過程の分析を行った。その結果,「個人の生育歴や生活歴といった外的環境因子」と「個人の有する職業観」といった二つの要因が折り重なり,意識が形成されていくことがわかった。前者には,個人の生まれ育った家庭環境や,中学や高等学校で学び得た福祉に関する知識・体験,保護者の職業意識,進路を意識した時代背景などが含有され,意識形成の基礎要因となっていた。後者では,介護職に対し「やりがい」を追及し,他者の役に立ちたいという動機が検出できた。学生は,社会的雑念に翻弄されることなく,純粋に自分らしく生きる一つの手段として,養成校を受験する意識を形成していくことが明確となった。
著者
上松 健治
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.139-151, 2006

「人権の世紀」と言われる21世紀に入って, 人権教育や啓発活動, 法整備などが積極的に推進されている。しかしその一方で, 弱肉強食や拝金の世相が一層強まるとともに, 親子の殺傷事件や凶悪犯罪は増加の一途をたどり, 人間の生命が軽んじられる風潮が急速に広がってきている。国際的にも, 大国による搾取・略奪が合理化, 正当化される一方で, 途上国では多くの人々が飢餓や環境破壊で苦しみ続けている。このような現状認識にたって, 近代西欧に源をもつ現代の人権思想を批判的に検証し, 生きとし生けるものへの「尊厳としての人権」「自然との共生の人権」の意義について, 人格の陶冶に光を当てて論じる。
著者
富川 拓 炭谷 将史 多胡 陽介
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.255-270, 2007

本稿では地域の高齢グラウンドゴルフプレーヤーに対しライフストーリー・インタビューを実施し,「運動・スポーツ」「健康」「地域」と関連する語りからその生活世界の一部を明らかにした。また地域での運動会やゴルフ・グラウンドゴルフの活動を通した社会的ネットワークの構築や,競技に打ち込む高齢者の実態が確認された。