著者
藤田 卓 高山 浩司 加藤 英寿
出版者
日本植物分類学会
雑誌
分類 (ISSN:13466852)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.131-142, 2009
参考文献数
14

南硫黄島において過去に記録があった絶滅危惧種(準絶滅危惧も含む)23種の内17種を本調査で確認した.このうち,本島で確認した個体数が全国の推定個体数の50%以上を占める種が6種あり,本島は絶滅危惧植物の保全を考える上で重要な地域と言える.25年前の調査と比較すると,分布範囲が変化しない種が多かった.しかし,個体群の消失や新規出現などの入れ替わりが半数近くの地域にみられた.本島において25年前に分布範囲が広かった種の多くは,今回の調査においても分布範囲が維持され,絶滅の危険性が低いと判断されたため,準絶滅危惧種とすべきかもしれない.一方,25年前に分布範囲が狭かった種の中には消失した種があったため,これらの種は従来通り絶滅危惧種とすべきである.本研究は調査が困難な島々においては,分布範囲の変遷という限られた情報のみを用いて,絶滅リスクを評価できる可能性を示した.
著者
加藤 沙織 藤井 伸二 山下 由美 根本 秀一 葛西 英明 黒沢 高秀
出版者
日本植物分類学会
雑誌
分類 (ISSN:13466852)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.211-216, 2016

A population of <i>Polygala tatarinowii </i>Regel, an endangered annual herb in Japan, was found near Abukuma Limestone Cave, Tamura City, Fukushima Prefecture, Japan. It could be one of the largest population of the species in Japan, where more than a thousand plants grew on dry meadows beneath limestone bluff or on the flower garden surrounding the Limestone Cave.
著者
加藤 沙織 藤井 伸二 山下 由美 根本 秀一 葛西 英明 黒沢 高秀
出版者
日本植物分類学会
雑誌
分類 (ISSN:13466852)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.211-216, 2016 (Released:2017-01-16)

A population of Polygala tatarinowii Regel, an endangered annual herb in Japan, was found near Abukuma Limestone Cave, Tamura City, Fukushima Prefecture, Japan. It could be one of the largest population of the species in Japan, where more than a thousand plants grew on dry meadows beneath limestone bluff or on the flower garden surrounding the Limestone Cave.
著者
早川 宗志 楠本 良延 西田 智子 前津 栄信
出版者
日本植物分類学会
雑誌
分類 (ISSN:13466852)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.147-157, 2015

日本では沖縄県石垣島にのみ分布する絶滅危惧IA類テングノハナIlligera luzonensis (C.Presl) Merr.の開花調査,標本調査,系統解析を行った.石垣島産テングノハナは午前中にのみ開花した.石垣島産テングノハナの花期は既報の夏開花(7-8月)ではなく,春(3-5月)と秋(10-12月)の2回開花であったため,夏開花の台湾産テングノハナとは異なった.さらに,石垣島産テングノハナはフィリピン産と葉緑体DNAの塩基配列が異なった.以上より,石垣島産テングノハナは,台湾産と花期が異なり,フィリピン産と系統的に異なることから,固有の系統群である可能性が示唆された.
著者
藤井 紀行
出版者
日本植物分類学会
雑誌
分類 : bunrui : 日本植物分類学会誌 (ISSN:13466852)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.5-14, 2008-02-20
被引用文献数
3

日本列島における高山帯は,本州中部以北の山岳に点々と隔離分布している.一般にこの高山帯に生育の中心を持つ植物のことを「高山植物」と呼んでいる.高山帯がハイマツ帯と呼ばれることもあるように,この植生帯ではハイマツ(マツ科)がマット状に広がったり,色とりどりのお花畑が広がったり,美しく雄大な景観を見ることができる.日本に分布する各高山植物の種レベルの分布を見ると,その多くが日本より北の高緯度地域にその分布の中心を持っており,日本の本州中部地域がその南限になっていることが多い.こうした分布パターンから,一般的に高山植物の起源は北方地域にあり,過去の寒冷な時期に北から日本列島へ侵入し,現在はそれらが遺存的に分布しているものと考えられている.しかしそうした仮説の検証を含め,いつ頃どのようにして侵入してきたのか,その分布変遷過程について具体的なことはまったく分かっていないのが現状である.そこで筆者はこれまで,こうした植物地理学的な課題を解明するために,主に葉緑体DNAをマーカーとした系統地理学的解析を進めてきた(Fujii et al. 1995, 1996, 1997, 1999, 2001, Fujii 2003, Senni et al. 2005,Fujii and Senni 2006).本稿ではそれらの解析を通して見えできた本州中部山岳の系統地理学的な重要性について言及する.過去に書いた総説的な和文諭文も参照していただきたい(藤井1997, 2000, 2001, 2002,植田・藤井2000).
著者
福田 一郎 堀井 雄治郎
出版者
日本植物分類学会
雑誌
分類 : bunrui : 日本植物分類学会誌 (ISSN:13466852)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.117-123, 2004-08-31

About 1,000 plants of Trillium camschatcense (2n=2x=10) are growing well in the Sashimaki marshland (5 hectare area) near Lake Tazawa in Tohoku district. These plants are located in the most southern limit of their distributions (Trillium camschatcense). 13 plants of Trillium apetalon (2n=4x=20) also grow there. Only 3 plants of Trillium yezoense (2n=3x=15) have been found growing in this area. By means of chromosome analysis of cold-induced banding karyotype, it has been confirmed that their plants are hybrid between T. camschatcense and T. apetalon.