著者
王 丹紅 李 相国 銭 衛華 石原 篤 加部 利明
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.39-44, 2002
被引用文献数
3

Co/Mo比の異なるCoMo/TiO<sub>2</sub>触媒を調製し, ジベンゾチオフェン (DBT) の水素化脱硫反応を行った。Co/Mo比が0.2の場合には, Coの添加効果によって触媒の脱硫活性が約2倍増加したが, Co/Mo比が0.2以上では脱硫活性の増加はわずかであった。これに対し, 触媒の水素化活性はCoを添加することによって変化が見られなかった。[<sup>35</sup>S]DBTの脱硫反応の結果から, Co/Mo比が0.2の場合にはCoの添加効果によって触媒上に交換可能な硫黄量 (<i>S</i><sub>0</sub>) が大きく増加したが, Co/Mo比が0.2以上では<i>S</i><sub>0</sub>はわずかしか増加しなかった。これに対し, CoMo/TiO<sub>2</sub>触媒はMo/TiO<sub>2</sub>触媒とほぼ同様なH<sub>2</sub>S放出速度定数を示す。この結果から, CoはMo/TiO<sub>2</sub>触媒上の交換可能な硫黄量 (活性点数) を増加させることがわかった。
著者
金 英傑 浅岡 佐知夫 黎 暁紅 朝見 賢二 藤元 薫
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.97-105, 2005-03-01
参考文献数
15
被引用文献数
4

天然ガスからの燃料合成の潜在的ルートであるメタノールおよび/あるいはジメチルエーテル(DME)の液化石油ガス(LPG)への転化について,H-ZSM-5およびH-FeAlMFI-シリケート触媒上で,高転化率でLPG成分への高選択性が得られる条件,生成エチレンのリサイクル,触媒の活性低下と再生を検討した。<br> LPG選択性は,触媒性能,反応温度,原料分圧および接触時間に依存した。原料分圧が高くなるほど,炭化水素生成物分布が広幅になった。エチレンは,H-ZSM-5触媒上ではメタノールおよび/ないしDMEとの組合せ反応によって,LPGに選択的に転化できた。LPGのプロセス選択性は,生成したC<sub>2</sub>成分を可能なリサイクル比で反応器に循環すれば,大幅に向上できることが明らかとなった。ただし,ワンスルーで良好なH-FeAlMFI-シリケート触媒はリサイクルモードでは能力が発揮できないことが判明した。活性の低下した両触媒とも適度の炭素燃焼処理によって,成分選択性を含めてうまく再生することができた。H-FeAlMFI-シリケート触媒は,H-ZSM-5に比べてわずかな活性低下におさまっており,またFeを骨格に導入することにより再生と反応の繰返しによる活性を抑えることができた。この触媒について観察される再生に伴う安定性の改善は強酸点の消失に起因すると推定した。<br> 以上,エチレンリサイクルモードでの使用を除くと,H-ZSM-5触媒よりもH-FeAlMFI-シリケート触媒がよい触媒であることが分かった。<br>
著者
江頭 竜一 斎藤 潤
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.218-226, 2007-07-01
参考文献数
10
被引用文献数
1 7

メタノール水溶液を溶媒とした吸収油の液液抽出に対して,連続式向流接触スプレー塔型の抽出装置を適用した。スプレー塔は構造が簡素であることから,塔内の物質移動現象を検討するのに適している。まず,物質移動係数の算出に必要となる吸収油─メタノール水溶液間の液液平衡を実測し既往の結果と比較した。本報で得られた液液平衡関係と既往の結果とは良好に一致し結果の再現性,信頼性を確認した。ついで,スプレー塔による液液抽出における操作性ならびに分離性について検討した。連続(抽出)相に比較して分散(抽残)相の密度は十分大きく良好な向流接触操作が可能であり,本報の範囲においては分散相の飛まつ同伴やフラッディングは観察されなかった。0.5 mほどの研究室規模のスプレー塔により十分な物質移動が検出され,塔内の物質移動現象の検討が可能であった。同素環化合物など吸収油中の他の成分に比較して含窒素複素環式化合物が選択的に抽出され,これらの成分の分離が可能であった。また,この分離は平衡関係に基く分離であった。本スプレー塔において,含窒素複素環式化合物の収率および分離の選択性は,最高でそれぞれ0.4および30程度であった。連続(抽出)相流量の増加とともに,総括物質移動係数は増加し,連続相側に物質移動抵抗が存在した。<br>
著者
奥山 泰世 小池 充 佐々木 伸也 劉 斯宝 田村 正純 中川 善直 今井 章雄 冨重 圭一
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.228-234, 2016-09-01 (Released:2016-11-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1 4

バイオマスから従来のガソリンに含まれる炭化水素を製造することは,既存のガソリン供給インフラを使用でき,またエタノールよりも多量にガソリンにブレンドできる可能性があることから魅力的である。そのような中,我々は,セルロースからガソリン沸点範囲のオレフィンを製造する方法として,Ir–ReOx/SiO2触媒と酸触媒を用いたセルロースからのヘキサノール製造と,脱水触媒(H-ZSM-5)を用いたヘキセン製造を組み合わせた方法を提案した。我々はこれまでに,硫酸を用いたメカノキャタリシスによる前処理を施したセルロースを水素とともにIr–ReOx/SiO2触媒で反応させたところ,60 %の比較的高収率でヘキサノールが得られることを見出している。本研究では,1-ヘキサノール,2-ヘキサノールおよび3-ヘキサノールの脱水によって得られるヘキセン混合物の組成を明らかにし,そのヘキセン混合物のガソリンへの適用性をJIS規格に基づいて調査した。その結果,ヘキセン混合物は夏季でおおむね22 vol%,冬季でおおむね7 vol%までレギュラーガソリンにブレンド可能であることが分かった。よって,提案した製造経路で得られたセルロース由来のヘキセン混合物は魅力的なバイオ燃料の一つであると考えられる。
著者
伊佐 亜希子 藤本 真司 平田 悟史 美濃輪 智朗
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.395-399, 2011 (Released:2012-01-01)
参考文献数
19
被引用文献数
4 8

微細藻類の実用的な炭化水素抽出技術であるヘキサン抽出法,水熱前処理を付加したヘキサン抽出法,超臨界二酸化炭素抽出法,およびDME抽出法の4通りの抽出技術で,同一のボツリオコッカス属の藻類脱水ケーキ(水分含量70 %)から炭化水素1 MJを抽出した場合の投入エネルギーを算出した。4通りの抽出技術で,文献値から設定した条件における投入エネルギーは0.73~1.83(MJ/MJ-炭化水素)の範囲で回収エネルギーの70 %以上を占めていた。投入エネルギー低減の観点から各抽出技術の問題点と改善点を考察し,湿藻体から抽出効率を高めるための研究開発,抽出媒体のロス率を最小限にする装置設計,および熱回収装置や動力回収装置の効率を高める技術開発が重要であることを明らかとした。
著者
Goshtasp Cheraghian
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.85-94, 2017-03-01 (Released:2017-05-01)
参考文献数
63
被引用文献数
1 48

Static and dynamic adsorption have key role in chemical flooding process and they are important parameters in surfactant polymer degradation and decrease oil recovery. The effects of nano concentration on static adsorption of surfactant were investigated at variable condition polymer and surfactant concentration and nanoparticles are critical parameters influence the adsorption behavior at a flooding process. Surfactant polymer solutions and newly developed nanoparticles solutions were tested. The crude oil had a viscosity of 1320 mPa s at test conditions. In this paper, the role of nanoparticles in the adsorption of surfactant polymers onto solid surfaces of reservoir core is studied. The results which obtained by means of static adsorption tests, show that the adsorption is dominated by the clay and silica nanoparticles between the polymer molecules and the solid surface. Higher nanoparticles concentration leads to less adsorption, where the adsorption may decrease to 20 % of the adsorption level of surfactant polymer. The clay and Aerosil A300 nanoparticles in surfactant polymer solutions improved oil recovery by about the same amount. The clay, however, showed improved performance in comparison to Aerosil A300.
著者
高橋 純平 森 聰明
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.262-267, 2006 (Released:2006-11-01)
参考文献数
20
被引用文献数
7 9

バイオマスからの水素製造システムを確立するために,Ni系水蒸気改質触媒を用いた流動床反応装置によりりんご搾りかすの高温水蒸気改質を行った。Ni系触媒はりんご搾りかすと水との反応を促進して水素を生成した。反応物と生成ガスの物質収支および原料の熱分析結果より,高温水蒸気改質反応において,Ni触媒ではりんご搾りかすの分解が先行し,その後分解生成した析出炭素が水と反応すると考えられた。析出炭素と水蒸気との反応を促進すると考えられるカリウムやカルシウム化合物をNi触媒に添加すると,りんご搾りかすの水蒸気改質におけるガス化率は顕著に向上するが,このような事実は上の考えと合致する。バイオマス水蒸気改質による高性能水素製造システムの開発にとって,析出炭素と水蒸気との反応を促進することが有効な方策になり得る。
著者
加藤 真理子 関 建司 平岡 勵 一本松 正道
出版者
公益社団法人石油学会
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.1-9, 2002-01-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
18

ガスエンジン潤滑油は高温にさらされて熱分解を受けたり, 空気や燃焼によって生ずる窒素化合物に触れて酸化, あるいは窒化されるなどして次第に劣化する。潤滑油の劣化が進むと, エンジン効率の低下やエンジンの特定部位に腐食, 摩耗が発生するなどの不具合が生じる。そのため, 適切な周期での潤滑油交換 (更油) が必要となる。一般に, ガスエンジン潤滑油は基油と十数種の添加剤を一定の割合で配合されたものである。ところが, 従来から行っている潤滑油分析方法では粘度や酸化度など潤滑油全体の劣化を示すマクロな指標でしか評価されないので, その劣化原因を特定することや適切な更油周期を設定することが難しい。そこで, 新たに基油の分子量変化や, 特定の添加剤個々の変化を定性定量できる分析方法(より正確に潤滑油の寿命を評価できる方法) について検討を行った。これによって油種に関係なく, 基油や極圧剤•中和剤などの添加剤の劣化状況が判断できるようになったので, ここに報告する。
著者
鈴木 治 山野 紳二郎 小西 裕和 海野 洋 猪俣 誠
出版者
公益社団法人石油学会
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.207-213, 2002-07-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
20

Vacuum distillation unit (VDU) など, 残さ油の処理装置における加熱炉のコーキングでは, 油の安定性がその促進要因の一つであると考えられている。油安定性からコーク付着を予測する手法を確立するための第1段階の研究として, この論文では, 小型実験装置を用いた実験によって, 中東系常圧残さ油のアスファルテン凝集と加熱炉管のコーク付着傾向との関連を調べた。実験ではVDUの深絞りの領域となる450°C程度までの流体出口温度が達成されるように試験片を加熱して原料油を供給し, コーク付着速度と原料油ならびに通油後の油の性状を測定した。コーク付着に関しては, SUS304ステンレス鋼と, 比較のために加熱炉管材質として採用されているクロムモリブデン鋼 (5Cr-1/2Moあるいは9Cr-1Mo) も検討した。コーク付着速度は材質によらず試験片の加熱温度とともに指数関数的に増加した。材質間の付着速度はクロムモリブデン鋼よりもステンレス鋼の方が幾分抑制される結果となった。アスファルテンの凝集性の評価は, Heithaus 法に準じ, P値を測定することによって行った。P値はその値が小さいほど油が不安定であり, アスファルテンが凝集してコーク前駆体を形成しやすいことを示す。この油の安定性の評価では, 通油後の油のP値が流体出口温度とともに逆に大きくなることが示された。通油後の油におけるP値の増加は, コーク付着によって流体から不安定なコーク前駆体が除去され, 油が安定化したために生じた変化と考えられる。以上の結果は, 原料油と通油後の油のP値およびコーク付着傾向の評価が加熱炉管のコーク付着の指標として利用できる可能性を示している。
著者
大勝 靖一 藤原 貴文
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.87-93, 2007
被引用文献数
3 9

ヒンダードアミン光安定剤ニトロキシド(HALS NO)とフェノール系酸化防止剤の拮抗作用を検討した。両者の反応生成物を詳細に検討したところ,HALS NOからはそれが還元されたHALSヒドロキシルアミン(HALS NOH)およびHALSアミン(HALS NH)が生成し,一方,フェノール,たとえば2,6-ジ-<i>t</i>-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)からは主にそのキノンメチドおよびスチルベンキノンなどが生成することが分かった。これらの生成物は初めての発見である。この結果に基づいて,新しいHALS NOとフェノールの拮抗作用が提案される。HALS NOは2分子間の電子移動反応によってHALSニトロソニウムとなる。このニトロソニウムは強い酸化力を持ち,フェノール,たとえばBHTをキノンメチド,そして最終的にスチルベンキノンに酸化し,無益に消費する。一方,HALS NOはHALSアミンおよびHALSヒドロキシルアミンへ還元される。<br>
著者
佐々木 厳 森吉 昭博 八谷 好高 永岡 紀行
出版者
Japan Petroleum Institute = 石油学会
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.33-37, 2006-01-01
被引用文献数
21

水分による歴青系舗装の損傷は,表面や路床から液状浸入した水が原因であると考えられてきた。しかし,滑走路等のアスファルト舗装表層は実質的に不透水であることが多い。したがって,著者らは大気中の水蒸気(湿気)がこれらの要因であると考え,この検証のために新しい透湿試験装置を開発した。透湿試験から,たとえ表層材料が実質的に不透水性であっても,典型的な夏の暑い日の気象条件においては水蒸気透過による物質移動により大気中の水分が透過し,凝縮した水分が混合物中に多量に蓄積しうることが明らかとなった。試験装置や試験条件に関してさらなる改良を加えることが必要であるものの,透湿試験は水分蓄積メカニズムの解明とブリスタリング現象等の水分に関連する損傷を評価する有効な試験方法である。<br>
著者
山本 博志 栃木 勝己
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.117-122, 2007 (Released:2007-07-01)
参考文献数
13
被引用文献数
3 5

環境化学的な観点から環境ホルモン等の極性化合物の室温付近での蒸気圧の推算は非常に重要である。蒸気圧の推算にはClausius-Clapeyron式を改良した様々な蒸気圧式が知られている。これらの式は沸点以上では非常に精度が高いが,1 Pa~100 Pa付近の低圧で極性物質の蒸気圧を精度よく推算できる蒸気圧式は知られていない。そこで蒸気圧が沸点や臨界定数の多項式で表せると仮定して,その係数を算出するプログラムを作成した。そのような非線形方程式の係数の組合せは多数存在しグローバルミニマムの解を見出すのは難しい。我々はこの係数を算出するのに遺伝的アルゴリズムを用いた。多項式展開型の蒸気圧式の係数をこのプログラムを用いて決定し,極性化合物の低圧領域に適用したところ,Riedelの蒸気圧式よりも低圧領域で優れた推算式が構築できた。また,蒸気圧の補正係数として重要な偏心因子を,Edmisterの偏心因子より精度が高く推算する式を構築した。
著者
石原 篤 望月 博美 李 載永 銭 衛華 加部 利明 巽 勇樹 梅原 一浩
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.137-144, 2005
被引用文献数
1

アルミナに担持したモリブデンジチオカルバメート(Mo-DTC)およびリン酸ジチオモリブデン(Mo-DTP)触媒前駆体を調製した。ジベンゾチオフェン(DBT)の水素化脱硫反応(HDS)を用い,これらの前駆体の触媒としての可能性を評価した。その結果,硫化水素または水素で予備処理したアルミナ担持Mo-DTCおよびMo-DTP触媒前駆体は,従来法でアンモニウムヘプタモリブデートを用いて調製したMo触媒と同等の活性を持つことが分かった。また,モリブデン錯体の触媒活性に及ぼす活性化方法の影響を調べた。窒素と水を用いて処理したMo-DTCおよびMo-DTP前駆体は最も高い活性を示すことが分かった。さらに,Mo-DTCおよびMo-DTP前駆体由来触媒は従来の予備硫化したモリブデン触媒より高い直接脱硫活性を示した。<br>