著者
長谷川 倫子
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究学会
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
no.13, pp.57-60, 2014-03-31

第二次世界大戦後のベビーブーマーである団塊世代へのアンケートで、彼らは青年期に流行した音楽(フォークソング・グループサウンズ・ビートルズ)を自らの世代観として上位に挙げている。団塊世代と音楽の関わりを研究するため、彼らに音楽体験や世代観をインタビューし、その語りを分析ワークシートを用いて構造化した。そこから、「団塊世代における格差・階層意識は、音楽の受容とも関連があるのではないか。」という問題意識が生成された。次に、日本版 General Social Surveys(JGSS-2003&2008)やインターネット調査のデータを用いて、時系列で団塊世代の音楽受容の特徴や階層性との関連を統計的に分析した。その結果、団塊世代が子供の頃の生活レベルや音楽環境は父親の影響を受け、それが現在の音楽聴取や階層帰属意識にも繋がっていることが見出された。また、クラシック音楽は女性や教育年数が長い層に、演歌は男性や教育年数が短い層に好まれていた。団塊世代は多様な音楽ジャンルを好み、複数嗜好の場合、演歌の影響力は大きかった。さらに、親世代→団塊世代→子世代という世代間において、高学歴とクラシック音楽嗜好の継承がみられた。質的・量的研究により、「団塊世代は一括りにされるが、人数が多く競争が激しかった。そこには格差・階層意識が存在し、それは音楽の受容とも様々な関連をしていた。そして、その関連は他世代に比べより顕著であった。」という結果となった。
著者
木村 由香 安藤 孝敏
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究学会
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-19, 2018-03-31

近年、「終活」と呼ばれる、自らの死に備える動きが見られる。終活とは、マス・メディアによって作られた言葉である。2009 年週刊朝日での連載記事によるものとされ、当初は主に葬儀や墓に関する内容を指した。終活という言葉が広がるにつれ、その内容に相続、財産整理、延命治療、介護、認知症、また遺品整理などが含まれるべきとの動きが生じ、現在では辞書でもそのように定義されている。つまり終活とは、マス・メディアによって作られ、世相を取り込み多様な内容を含む広義の言葉として変化したと言える。このことは、終活に関わる人々や企業、団体によってそのとらえ方が異なる可能性も示唆する。そこで本研究では、今一度終活がマス・メディアによって作られた葬儀や墓への備えを中心とした言葉であることに留意しつつ、終活に関するマス・メディアのとらえ方とその変遷を明らかとすることを目的とする。そのために、「終活」の語を含む新聞記事について、テキストマイニングを用いて内容分析を行った。記事数は、2015 年をピークとしつつ2016 年・2017 年ともに同水準で推移し、かつ読者投稿の比率が年々増加しており、終活は一般に浸透していることが伺えた。記事の内容からは、葬儀や墓についての内容を依然としてその中心としつつ、明るい側面を強調する形で報道されてきたことから、終活に取り組むことを肯定する視点でとらえてきたことがわかった。さらに近年では徐々に生活者の視点を取り込みつつあり、その内容はまさに変化の時期あることが示唆された。
著者
芹沢 浩 雨宮 隆 伊藤 公紀
出版者
横浜国立大学
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-14, 2010

湖沼生態系におけるアオコの異常発生現象には次のような特徴が見られる.(1)アオコをもたらす究極の原因である湖の富栄養化は10年,20年の歳月をかけて徐々に進行するが,異常発生はある年を境に,突然,勃発する(突然の出現).(2)アオコの主成分であるミクロキスティスなどの藍藻類は冬から春にかけて湖底で越冬し,夏の訪れとともに湖面に上昇して「水の華」と呼ばれる異常発生現象を引き起こす(年周期の垂直上下運動).(3)夏季の異常発生期間でもこれらの藍藻類は,午前中,水面に出て光合成を行い,午後になると水中に沈んで栄養分を吸収する(日周期の垂直上下運動).本論文ではタイムスケールの異なるこれら3つの特徴を的確に説明するために,栄養塩と藍藻類から成る2つの2変数数理モデル(常微分系の基本モデルと偏微分系の垂直上下運動モデル)を作成する.そして,これらのモデルを用いて,神奈川県の『県営水道の水質』に記録された相模湖と津久井湖におけるアオコの異常発生現象を解析する.本論文の解析によれば,相模湖・津久井湖水系は1970年代前半に澄んだ状態から濁った状態にレジームシフトし,以後,現在まで濁った状態,すなわち夏季のアオコ異常発生が恒常化した状態が継続している.またアオコの発生量,発生パターンに関する年ごとの変動には日照量,水温,栄養塩濃度といった生態学的,生理学的要因とともに,台風の襲来,ダムの放流といった自然,人為による偶発的要因も深く関与していると考えられる. Algal blooms in lake ecosystems are characterized by the following features. (1) Algal blooms break out abruptly at a certain time, although eutrophication, the ultimate cause of algal blooms, proceeds gradually over decades (abrupt outbreak of the phenomena). (2) Cyanobacteria such as Microcystis, the main component of algal blooms, overwinter at the bottom of the lake during the winter season, rising up to the water surface with the coming of summer (annual vertical migration). (3) During the summer season, cyanobacteria repeat vertical movement for photosynthesis at the surface from the midnight to the morning and for nutrient uptake at subsurface layers from the afternoon to the early evening (diurnal vertical migration). In this paper, we present two mutually correlated mathematical models, a fundamental model described by ordinary differential equations and a vertical migration model described by partial differential equations, both of which consist of nutrients and cyanobacteria. These models can properly explain the above-mentioned phenomena that differ in time scales. Then, we apply these aquatic models to the algal blooms in Lake Sagami and Lake Tsukui, referring to "Quality of prefectural tap water" published by Kanagawa Prefecture. According to our analyses, the aquatic system of these lakes has undergone the regime shift from the clear-water state to the turbid-water state at the beginning of the 1970s, with the turbid-water state continuing until now. In both lakes, the abundance of cyanobacteria and the seasonal algal blooming pattern differ considerably depending on years, indicating the significant influence of accidental factors of the natural and the anthropogenic origins such as the advent of typhoon and the water discharge from the dam as well as the ecological and the physiological factors such as the light intensity, the water temperature and the nutrient concentration.
著者
星名 美幸
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究学会
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
no.15, pp.3-15, 2016-03-31

本研究の目的は、ギアチェンジ(治療目的を治癒以外に方向転換し症状緩和を主とした治療の選択に変更していく時期)を告げられ意思決定する前のがん患者と、意思決定したがん患者の役割にはどのような変化が起きているのかを明らかにすることである。入院中の患者はどのような役割があり、他者からどのような役割を期待されているのか、「看護師から患者への役割期待」、「医師から患者への役割期待」、「家族から患者への役割期待」「病院から患者への役割期待」の4 つに分類して文献検討を行った。その結果、ギアチェンジ期におけるがん患者の役割期待は、ギアチェンジポイントを境に看護師・家族・医師の役割期待は変化すると捉え、ギアチェンジ期にあるがん患者の役割期待と病院からの役割期待を概念枠組みの図にまとめた。ギアチェンジ前は看護師、医師、家族はがん患者に対して、「積極的に病気と闘ってくださいという期待」があり、治療を行うが積極的治療にも限界が生じる。その瞬間が、ギアチェンジポントである。ギアチェンジ後、「症状緩和を最優先にしてくださいという期待」へと変化する。その一方で、病院のルールを守ってくださいという「病院からの患者への役割期待」に変化は起きていないことを導いた。これらのことから、看護師はがん患者の役割を知ることで、そのがん患者に合った接し方や看護の方法を工夫することができると示唆された。The purpose of this study is to clarify how the role of a cancer patient has been changing before and after the patient makes a decision toward the changing gear. The changing gear which is the period shifting the therapeutic purpose from cancer reduction to palliative care focusing on symptom reduction. In order to identify the patient's roles and the patient's roles expected from others during hospitalization, we examined the related documents by classifying the roles into four categories. The categories include "the roles expected from the nurse to the patient," "the roles expected from the doctor to the patient," "the roles expected from the family to the patient," and "the roles expected from the hospital to the patient." As a result, for the roles of cancer patients in the changing gear period, the expectation from the nurses, the family, and the doctors have changed before and after the changing gear point. In addition, we showed the summary of the expected roles of cancer patients in the changing gear period and the roles expected from the hospital in a figure of conceptual framework. Before the changing gear , the nurses, the doctors, and the family have the "expectation to fight thedisease actively" for the patient. Although the treatment to cure the cancer is performed, the treatment also has the limit. That moment is a changing gear point.After the changing gear, the patient has been shifted to the "expectation to put the first priority on the symptom relief." On the other hand, we found that "the role expected from the hospital to the patient" that is to follow the hospital rules has not changed through the changing gear. From these findings, it was suggested that the nurses can improve their attitude and the nursing methods corresponding to the individual cancer patient by understanding the roles of cancer patients.
著者
村上 英吾
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究会
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.14-26, 2003

本論では、横浜国立大学で大学院生を対象に実施したアカデミック・ハラスメントに関する調査をもとに、アカデミック・ハラスメントに関する先行研究を再検討した。主な論点は2 つある。ひとつは、アカハラの背景として「大学社会の二重性」にもとづく権力性の問題があるという点であり、もうひとつは、アカハラを性差別に限定するべきかどうかという点である。第1 の論点については、博士課程在籍者の最も深刻な被害経験をみると、学年が高まるほど被害の割合が高まることから、アカハラの背景として研究室の「風土」が問題であるという「疫学的」解釈に対して、権力性の問題がより重要であるという社会学的解釈を支持している。第2 の論点については、セクハラ型以外のアカハラ被害に関しては男女間の被害経験の有無に統計的有意差がないこと、加害者の女性比率が低いとはいえないことから、アカハラ被害は「性差別」問題としての側面に加えて、「性差別」にとどまらない問題を内包していることが看過されるべきではないことを指摘した。
著者
田中 ひかる
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究会
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.42-55, 2003

現在、日本の生理用品の種類と性能は、世界一と言われている。しかしつい40 年前まで、日本女性は「蒸れる」「かぶれる」「ただれる」の三拍子揃ったゴム製の月経帯と脱脂綿を組み合せた不便な月経処置法を行っており、欧米に比べかなり遅れていた。このように月経処置法が日本で進歩しなかった背景には、社会学的視点から、月経不浄視など様々な理由が考えられる。このような慣習を破り、現在のような使い捨てナプキンを開発・販売、女性たちを物理的のみならず先駆的なコマーシャルによって精神的にも解放したのが、1961 年に坂井泰子が設立したアンネ社である。本稿の目的は、アンネ社について記録し、アンネ社が月経観に与えた影響を検証することである。<br> まず第1章第1節では、月経処置法の進歩を妨げていた月経に対する不浄視や偏見について触れ、それらがいかに女性たちを拘束してきたかを明らかにしている。第2節では、アンネナプキンが販売される以前、日本女性たちが行っていた月経処置法についてまとめた。第2章では、坂井泰子がアンネ社を設立してからライオンに吸収合併されるまでの過程をまとめ、アンネ社がアンネナプキンを普及させるために月経観の改革が必要だったこと、普及した結果月経観さらには女性の身体観までもが大きく変わったことを検証している。
著者
王 尚可 安本 雅典 許 経明
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究学会
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.31-45, 2018-03-31

本研究では、後発企業が技術スピルオーバーによって、どのように知識を獲得し蓄積するのかを検討する。より具体的には、既存の有力な標準化の推進企業から後発企業への技術的リーダーシップの移転のプロセスを検討することによって、標準化にともなう技術のスピルオーバーにおいて、後発企業がいかに知識の獲得・強化できるのかを明らかにする。本研究では、技術仕様に関して宣言される必須特許(SEP:standard essential patent)と独自特許(Non-SEP)の分析を行った。その結果、補完的企業である、ある後発の半導体サプライヤーは、既存の有力な標準化の推進者からの必須特許の引用を通じて、システム知識を構築・強化し、それによって先発企業を圧倒してきたことが明らかとなった。この発見は、標準化の推進企業の知識マネジメントについての議論を拡張するとともに、実践的な示唆を提供すると期待される。
著者
高橋 知也
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究学会
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.51-54, 2018-03-31

本研究では特に独居高齢者の持つ被援助志向性に焦点を当てた5 つの研究を実施し、主として以下の3 つの成果を得た。第1 に、高齢者における被援助志向性を測定する尺度の作成を行ったことである。先行研究からはこれに該当する尺度が確認できなかったため、研究Ⅰから研究Ⅲを通じて、高齢者用被援助志向性尺度を作成した。第2 に、独居高齢者における被援助志向性の関連要因の検討を行ったことである。研究Ⅲおよび研究Ⅳでは、高齢者用被援助志向性尺度の各下位尺度得点を従属変数とする重回帰分析を行った。その結果、「援助に対する欲求」と「援助に対する抵抗感」の両者に影響を与える要因として、研究Ⅲでは暮らし向き、研究Ⅳでは学歴が認められ、暮らし向きが良いほど、また学歴が高いほど援助に対する欲求と抵抗感の両者を低減させる結果となっていた。第3 に、独居高齢者へのインタビューを通じた高齢者用被援助志向性尺度の妥当性と関連要因の検討を行ったことである。独居高齢者6 名に対するインタビュー調査の内容分析を行った結果、全員の高齢者用被援助志向性尺度の下位尺度得点の高低と、実際の援助に対する考え方がほぼ一致していることが示唆された。以上の成果は、今後さらに増加することが見込まれる独居高齢者に対する身近な人物、あるいは公的機関などによる援助の在り方を検討する上で大きな意義を持つと考えられる。
著者
高橋 知也 小池 高史 安藤 孝敏
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究学会
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.20-30, 2018-03-31

独居高齢者の「援助を受けること」に対する認知的枠組み(以下、被援助志向性)を質的に検討することにより、被援助志向性に影響を与えるライフイベントを明らかにすることを目的として、6 名を対象に半構造化インタビュー調査を実施した。インタビューデータからSteps for Coding and Theorization (SCAT) による理論記述を行った結果、現在における被援助志向性がそれまでに個々人が経験してきたライフイベントに影響されることが示唆された。具体的には、(1) 援助職や小売業といった職業経験が肯定的、あるいは否定的な被援助志向性を形成する要因となり得ることや、(2) 身近な人との互助性を伴うつながりが肯定的な被援助志向性を形成する要因となり得ること、(3)自身や家族の健康、あるいは経済上の変化に伴う公的サービス(介護サービスや生活保護、求職支援など)の利用経験が被援助志向性を形成する要因となり得ることなどが示された。
著者
竹田 陽子
出版者
横浜国立大学
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.15-24, 2010

本研究では、ネット上のコミュニケーションが活発になされている韓国の20代と30代に対して質問紙調査をおこない、ネット上での弱いつながりと強いつながりに関するポジティブ、ネガティブ両面の認識がネット上で求めるつながりの強さにいかに影響するかを検証した。ネットへの弱いつながり志向は、弱いつながりに対する情報収集、影響力強化、自己表現のメリット、不確実性のリスクの認識がなされているほど、また、強いつながりに対する情報収集メリットの認識がなされていないほど高かった。一方、ネットへの強いつながり志向は、強いつながりから得られる影響力強化のメリットが認識されているほど、また、弱いつながりに対する情報収集メリットと不確実性リスクが認識されているほど高かった。つながりの志向性を問わずネットで活発にコミュニケーションする人は情報や資源が幅広く得られるというメリットを感じ、同時に、よく知らない人とやりとりすることのリスクも感じているということが言える。また、ネットに弱いつながりを求める人と強いつながりを求める人の違いには、影響力の源泉に対する認識が関わっていることが明らかになった。This research identified how positive and negative cognition towards weak and strong ties influences strength of expected ties on networks through questionnaire survey on Korean people in their 20's and 30's. The weak-tie orientation increased when the merits of weak ties regarding information gathering, influence strengthening and self-expression, and the anxiety risk with weak ties were cognized. The strong-tie orientation increased when the merits of strong ties regarding influence strengthening as well as information-gathering with weak ties and the anxiety risk with weak ties were cognized. It could be said that, regardless of strength of ties, those who communicate with other people actively felt merits of getting wide range of information and resources, and at the same time they felt anxiety of communicating unknown people. In addition, we found that the difference between those who expect weak ties and those who expect strong ties on networks is related to their cognition about source of influence.
著者
杉山 貴士
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究会
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.67-79, 2006

本稿は、性的違和を抱える同性愛の高校生へのインタビューを通して、高等学校における彼らの性的自己形成過程の一端を検討するものである。ジェンダー規範に包含される異性愛中心性は、高等学校の明示的カリキュラムにおける同性愛の封印と、隠れたカリキュラムによる同性愛嫌悪により支えられている。高等学校において、彼らは (1) 自己受容の困難、(2) 自己イメージ形成の困難、(3) 情報アクセスの困難、(4) 自己開示・人間関係づくりの困難、(5) 事故回避の困難に直面し、結果として、いじめ、不登校、家出などの教育問題を導いていた。特に、同性愛に関する情報へのアクセスを、学校外部にしか求められない状況は、同性愛の高校生が問題予知力を備える性的自己決定能力を育むことが保障されずに性的自己決定を迫られること示しており、現状の高等学校は同性愛の生徒の「性の学習」を奪うことになる。本稿は、高等学校での同性愛の封印解除と積極的なセクシュアリティ教育の必要性を提起するものである。
著者
長谷川 倫子
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究学会
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
no.13, pp.57-60, 2014-03-31

第二次世界大戦後のベビーブーマーである団塊世代へのアンケートで、彼らは青年期に流行した音楽(フォークソング・グループサウンズ・ビートルズ)を自らの世代観として上位に挙げている。団塊世代と音楽の関わりを研究するため、彼らに音楽体験や世代観をインタビューし、その語りを分析ワークシートを用いて構造化した。そこから、「団塊世代における格差・階層意識は、音楽の受容とも関連があるのではないか。」という問題意識が生成された。次に、日本版 General Social Surveys(JGSS-2003&2008)やインターネット調査のデータを用いて、時系列で団塊世代の音楽受容の特徴や階層性との関連を統計的に分析した。その結果、団塊世代が子供の頃の生活レベルや音楽環境は父親の影響を受け、それが現在の音楽聴取や階層帰属意識にも繋がっていることが見出された。また、クラシック音楽は女性や教育年数が長い層に、演歌は男性や教育年数が短い層に好まれていた。団塊世代は多様な音楽ジャンルを好み、複数嗜好の場合、演歌の影響力は大きかった。さらに、親世代→団塊世代→子世代という世代間において、高学歴とクラシック音楽嗜好の継承がみられた。質的・量的研究により、「団塊世代は一括りにされるが、人数が多く競争が激しかった。そこには格差・階層意識が存在し、それは音楽の受容とも様々な関連をしていた。そして、その関連は他世代に比べより顕著であった。」という結果となった。In answer to questionnaires to the Dankai Generation (Post-World War II Baby-Boomers), they ranked high of such music(folk song, "group sounds" and the Beatles), which were popular in their youth, as images of their generation. In orderto study the relations between the Dankai Generation and their music, I interviewed them about their musical experiencesand generational images, and got their talk structured by using various analysis worksheets. Consequently, a hypothesiswas generated: "Disparities and hierarchy consciousness existing in the Dankai Generation might be related to their musicalacceptance." Next, by utilizing some data based on Japanese version of General Social Surveys (JGSS-2003&2008) andthe Internet investigation, I analyzed the relations statistically between characteristics of the Dankai Generation's musicalacceptance and hierarchy in chronological order. It turned out that their living level and musical environment in childhoodwere affected from their fathers, and that the fact has led to their current music appreciation and stratum identifications.In addition, it proved that classical music was favored among women or those with longer-term education, whileEnka ballads were favored among men or those with shorter-term education. The Dankai Generation, however, likes variousmusical genres, and in terms of plural tastes, Enka ballads had a strong influence. Furthermore, it showed that as generationschange from their parents to the Dankai Generation and to their children, higher educational background and apenchant for classical music has been succeeded. By my qualitative and quantitative studies, I have reached the followingconclusion: "Although the Dankai Generation has been lumped together, there were so huge numbers of people that competitionswere intense among them. There existed disparities and hierarchy consciousness, which were closely related withtheir musical acceptance. Above all, the relations were more remarkable than other generations. "
著者
横山 道史
出版者
横浜国立大学
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.21-33, 2007

本稿は、日本のフェミニズムにおいてエコフェミニズムが不在である理由とその背景について考察するものである。日本においても、エコフェミ論争(1985)が象徴しているようにエコフェミニズムに関する理論的知的格闘が存在してこなかったわけではない。しかし、日本においてエコフェミニズムがフェミニズムの一つの潮流として未だ根付いていないように見受けられるのはなぜなのか。本稿は、このような問題意識を基盤として、フェミニズムとエコロジー思想が接近・遭遇しつつも距離をとらざるを得なかった事情について考察するものである。その際、エコフェミ論争の議論を中心に検討し、また、日本におけるエコフェミニズムの可能性を探っていくという意味で欧米のエコフェミニズムの議論も併せて検討していきたい。This paper examines the reason why eco-feminism is absent in Japanese feminism and that background. In Japan, there was a theoretical intellectual fight about eco-feminism as an "eco-feminism controversy" in 1985. However, it is supposed that eco-feminism has not yet take root as a current in the feminism in Japan. This paper analyzes the circumstances that feminism and ecology have taken distance while they once come close and encounter, based on such my critical mind. On that occasion I examine mainly on an argument about "eco-feminism controversy" and, want to examine an argument of European and American eco-feminism in a meaning to investigate the possibility of eco-feminism in Japan.
著者
川崎(梅野) りんこ
出版者
横浜国立大学
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.37-41, 2013

16世紀末フィレンツェで生まれ、ギリシャ悲劇の再現をめざしたオペラは、17世紀にヨーロッパ中に広まり、フランスではルイ14世の保護のもと、フランス独自のオペラが隆盛を極めた。ルイ14世治下のフランスでは、ギリシャ神話の登場人物メデを題材にしたオペラが4 本作られている。メデは自分を捨てた夫に憤激し、恋敵とその父、および自らの子どもを殺して復讐した人物である。本論文は、絶対王政、男性優位の時代にありながら、王や夫に反逆するメデの物語が何度も舞台化されたことに着目し、当時のフランス社会の状況を検証しつつ、作品研究の方法を用いて4本のオペラ台本を分析し、時代による女性表象の変遷を考察する。 オペラは常に王侯貴族や裕福な市民階級の傍らにあり、恋愛劇を通じて支配層のイデオロギーや女性観を表してきた。ヨーロッパ社会は古典ギリシャ時代から男性優位であったが、ルネサンス以降の近代に女性の地位はよりいっそう低下した。ルネサンス期に誕生した新興芸術であるオペラはその影響を受け、当時の女性観を反映した物語を作ったと考えられる。古代から文学や音楽、版画や絵画の題材に取り上げられてきたメデは、男性的秩序を脅かすものとしてヨーロッパが忌避してきた「女性的なるもの」を体現して繰り返し表現され、女性に対するヨーロッパの主要な言説であるミソジニーとともに、人々の心性の底流に潜む女性に対する恐怖、畏怖を表している。Operas first appeared at the end of the 16th century in Florence and these Operas reproduced Greek Tragedies. In the 17th century, operas became popular throughout Europe. In France, operas flourished under the patronage of Louis XIV. Four operas were produced at the time based on the story of Medea, a woman in Greek mythology, who got furiously angry with her husband who had abandoned her and took revenge by killing her rival in love, the rival's father and her own children. The present study investigated changes in the female image in different periods, by analyzing the scripts of these four operas and the condition of the French society of the time. Why was the opera, Medea, staged repeatedly in spite of the absolute monarchy and the male-dominated society of the time? Usually, royalty and titled nobility, as well as the rich bourgeoisies went to the opera. Operas expressed the ideology and views of women of the ruling class through romantic dramas. European society had been male-dominated since the ancient Greek Era and the status of women in the society further declined after the Renaissance. Operas were a new art form that appeared in the Renaissance period and they were affected by the currents of the times. The stories supposedly reflected views of women in those days. Medea, which had been often chosen as a theme in literature, music, prints and pictures, expressed femininity that was abominated and avoided in Europe, because it threatened the male-dominated order. The theme of Medea expressed fear and awe of women that existed at the bottom of people's minds, such as Misogyny, which has been a major idea on women in Europe.
著者
神藤 猛
出版者
横浜国立大学
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.28-39, 2004

ハイパーゲームは、複雑な状況に関与する意思決定者の知覚、主観を考慮すると、ゲームの前提が変わり、その結果、均衡点が異なってくることを明らかにする、ゲーム理論を基礎に考案された分析枠組みである。通常のゲームでは、参加者は全て同じゲームを「同じように」見ていると仮定するのに対し、ハイパーゲームでは、強い相互作用のある同一の意思決定状況を異なって知覚するような場合を取り扱う。これにより現実のコンフリクトの強い錯綜した状況についても、実際的で有効な均衡解を得る意思決定分析が可能になる。本稿では、冷戦時代、キューバへのソ連の核ミサイル配備に端を発するキューバ危機を取り上げ、新たに確認された資料を基に、核戦争の危機による極度の緊張と不正確な情報から、政策決定者の合理性の機能の幅が狭められ、主観的判断が意思決定の中心となりがちであった、当時の錯綜した危機管理の状況をハイパーゲームを通して分析する。特に、相互に危機の回避を希求しながら、自らを守ろうとする力の増強が、この行動から自身を守ろうとする相手の力の増強を招き、その結果、逆に自らの力が相対的に低下し相互に緊張を高めてしまう、危機管理のジレンマとその形成のメカニズムについて検討する。
著者
石川 祐輔 大矢 勝
出版者
横浜国立大学
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-7, 2007

安全性に関する消費者情報の分析手法開発のための基礎的研究として、身近に存在する化学物質である洗剤と食品添加物の安全性に関する日本語、中国語、英語のWeb ページを調査した。調査対象Web ページは、検索エンジンGoogle で「LAS 界面活性剤」「合成洗剤」「石けん」(洗剤関連キーワード)及び「安息香酸」「ソルビン酸」「パラベン」(食品添加物関連キーワード)を検索し出力された上位200 件とした。それぞれのキーワードについて、対象物質の安全性に関する情報の割合、肯定・否定・中立情報の割合などを調査し言語間で比較した。その結果、①英語の洗剤関連の化学物質否定情報は農薬等を対象としたものが多い、②中国語情報では3 種の食品添加物の優劣を明確に打ち出しているが日本語と英語では添加物の種類による評価の差は少ない、③日本語は中国語・英語と比較して合成化学物質の安全性関連情報の割合が高く化学物質否定情報の割合も高い、などの結果を得た。We made an analysis of "Internet information concerning safety of detergents and food additives" in three languages; Japanese, Chinese, and English. The search engine "Google" was used for the search. Search words; "LAS surfactant", "synthetic detergent", and "soap" were used to obtain the WEB pages related to detergent. Search words; "benzoic acid", "sorbic acid", and "paraben" were used to obtain the WEB pages related to food additive. In each topics (i.e. the synthetic detergents, and the synthetic food additives) the searched WEB pages were classified to positive information, neutral information, and negative information. In addition, the WEB pages related to detergents were classified according to author's vocation. As a result, the rate of negative information for synthetic chemicals in Japanese was higher than that in either Chinese or English WEB pages concerning both the detergents and the food additives.