著者
芹沢 浩 雨宮 隆 伊藤 公紀
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.405-420, 2011 (Released:2012-09-01)
参考文献数
15

エントロピーに関しては,その増減を支配する2つの重要な法則がある.外界から隔絶された閉鎖系で成り立つ熱力学の第2法則と物質やエネルギーが絶えず出入りする開放系で成り立つエントロピー生成率最大化(MEP)の原理である.前者はエントロピー増大の法則として以前よりよく知られているが,後者は近年の非平衡熱力学,複雑系研究の成果として得られた新たな知見で,社会科学の研究者の間で,その存在を知っている人はそれほど多くない.エントロピーについて深く理解するためには双方を熟知している必要があり,前者だけではエントロピーの破壊的な側面は理解できても,創造的な側面は見落とされてしまう.本論文はあまり知られていないMEP原理に焦点を当て,それを社会科学に移植する試みである.簡単な人間社会モデルによってMEP原理の基本的な考え方を説明した後に,社会現象においてもこれが機能すると仮定し,地球上に存在する社会形態の多様性とMEP原理の関連を考察する.
著者
早田 義博 加藤 治文 周 明智 立花 正徳 林 永信 田原 真 河内 堯 瀬尾 泰樹 雨宮 隆太
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.15, no.11, pp.759-768, 1977-11-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
20

In order to examine the carcinogenetic process of squamous cell carcinoma of the lung, the authors observed chronologically the changes of the bronchial epithelium throughout the duration of the experiment which produced squamous cell carcinoma in dogs. The changes were observed cytologically, histologically and bronchofiber-scopically.At the bifurcation of the apical and cardiac bronchi of two adult beagles and four adult mongrels a single dose of 50mg 20-methylcholanthrene (20-MC) was injected by means of a special needle which we developed for both therapeutic and experimental use through a bronchifiberscope at seven day intervals. Proliferation of basal cells accompanied by atypical nuclei or nuclear fission appeared immediately after injection of 20-MC, and were replaced by metaplastic cells after one week. Mildly atypical squamous cell metaplasia occured after 1-4 weeks, and moderately atypical squamous cell metaplasia after 2-8 weeks in all dogs. Five to nine weeks after the commencement of the experiment severely atypical squamous cell metaplasia appeared in 4 dogs, and in 3 dogs carcinoma in situ between 8 and 14 weeks. Invasive carcinoma developed after 18-22 weeks in 3 dogs (2 beagles, 1 mongrel). Squamous cell metaplasia was thus recognized to be an important precursor of squamous cell carcinoma, and further research on DNA analysis performed throughout the experiment may provide further elucidation of the carcinogenetic process.
著者
植田 英治 吉見 富洋 古川 聡 小野 久之 朝戸 裕二 登内 仁 井上 真也 黒木 義浩 雨宮 隆太 小泉 澄彦 長谷川 博
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.29, no.10, pp.2010-2013, 1996-10-01
被引用文献数
4

私たちは,患者がより良い医療を受けるためには患者自身が自分の病気について知っていることが不可欠であると考え,癌告知を積極的に進めてきた.告知に際して原発臓器・進行度・年齢・性別等は考慮しなかった.外科手術患者543人に癌告知を行い,生存していてアンケート実施可能な患者413人のうち366人(配布率89%)にアンケートを実施し,300人(回収率82%)より回答を得た.89%の患者が,「病名を告げられてよかった」と答えており,「癌では無いと嘘をついて欲しかった」と答えた患者は1%であった.告知により55%の患者がショックを受けたと答えていたが,回答患者の87%が3か月以内に立ち直ったと答えていた.現在当科では,癌であることを「知らないでいる権利」をも尊重する目的で,全初診患者を対象として,外来で告知希望の有無を確認した上で告知を進めている.癌告知を広く積極的に進めるべきであると考えられた.
著者
雨宮 隆 榎本 隆寿 ロスベアグ アクセル 伊藤 公紀
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第51回日本生態学会大会 釧路大会
巻号頁・発行日
pp.726, 2004 (Released:2004-07-30)

【はじめに】生態学的レジリエンス(以下,レジリエンス)とは,生態系の復元力,弾力性,自己組織化能などを意味する.レジリエンスは生態系の多重安定性の概念から提唱され(Holling, 1973),富栄養化や生息地の縮小等により減少し,その結果生態系は異なる状態へと変化し易くなると考えられている.本研究では,レジリエンスの概念を生態系の構造・機能・動態・自己組織化能の観点から整理し,生態環境の管理について検討を行う.【レジリエンスの図的表現】レジリエンスは,例えば生態系の状態を表す分岐図を用いて説明される(Scheffer et al., 2001).制御パラメータは人為的な負荷を表し,あるパラメータ領域において生態系は双安定性を示すことがある.レジリエンスは安定状態と不安定状態の幅で示され,この範囲内の擾乱であれば生態系は元の状態に戻るとされる.【レジリエンスと環境管理】ここではレジリエンスの概念を広く捉え,レジリエンスを次の3つに分類し,環境管理について検討する.(1)Type Iレジリエンス:上記のように安定状態と不安定状態の幅で示されるような復元力.状態間遷移が起こると,生態系の動態(状態)は変化するが構造と機能は変化しない.従って,負荷の低減,生物操作などによる環境修復が考えられる.(2)Type IIレジリエンス:Type Iと同様の復元力であるが状態間遷移により種の絶滅等が生じ生態系の構造が変化する.しかし,生態系の自己組織化能(数理モデルでは力学系)は保持される場合で,絶滅種の再生や回復により元の状態の復元の可能性が残されている.(3)Type IIIレジリエンス:生態系の自己組織化能の喪失に関わる復元力.無機的な環境変化により種の絶滅等が生じた場合で,生態系の回復が極めて困難となる.それぞれのレジリエンスの喪失が生態環境リスクの各エンドポイントとなり得るだろう.
著者
雨宮 隆
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.17, pp.89-91, 2013-04-25

2次元平面に分散させた酵母細胞の解糖反応を調べることで,クオラムセンシングに関して新しい知見を得ることができた。すなわち,酵母細胞は空間的な不均一性をもって,同期的振動反応を起こす。特に,孤立した細胞の振動反応は極めて弱く,定常的な解糖反応に近い。細胞がクラスター化した集団においては,同期の程度が極めて高い。さらに,同期現象を通して,個々の細胞は,振動反応をある一定の周期へと収斂させる。酵母の解糖系における細胞密度依存性の協同現象であるクオラムセンシングの生物学的な意義についても議論する。
著者
芹沢 浩 雨宮 隆 伊藤 公紀
出版者
横浜国立大学
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-14, 2010

湖沼生態系におけるアオコの異常発生現象には次のような特徴が見られる.(1)アオコをもたらす究極の原因である湖の富栄養化は10年,20年の歳月をかけて徐々に進行するが,異常発生はある年を境に,突然,勃発する(突然の出現).(2)アオコの主成分であるミクロキスティスなどの藍藻類は冬から春にかけて湖底で越冬し,夏の訪れとともに湖面に上昇して「水の華」と呼ばれる異常発生現象を引き起こす(年周期の垂直上下運動).(3)夏季の異常発生期間でもこれらの藍藻類は,午前中,水面に出て光合成を行い,午後になると水中に沈んで栄養分を吸収する(日周期の垂直上下運動).本論文ではタイムスケールの異なるこれら3つの特徴を的確に説明するために,栄養塩と藍藻類から成る2つの2変数数理モデル(常微分系の基本モデルと偏微分系の垂直上下運動モデル)を作成する.そして,これらのモデルを用いて,神奈川県の『県営水道の水質』に記録された相模湖と津久井湖におけるアオコの異常発生現象を解析する.本論文の解析によれば,相模湖・津久井湖水系は1970年代前半に澄んだ状態から濁った状態にレジームシフトし,以後,現在まで濁った状態,すなわち夏季のアオコ異常発生が恒常化した状態が継続している.またアオコの発生量,発生パターンに関する年ごとの変動には日照量,水温,栄養塩濃度といった生態学的,生理学的要因とともに,台風の襲来,ダムの放流といった自然,人為による偶発的要因も深く関与していると考えられる. Algal blooms in lake ecosystems are characterized by the following features. (1) Algal blooms break out abruptly at a certain time, although eutrophication, the ultimate cause of algal blooms, proceeds gradually over decades (abrupt outbreak of the phenomena). (2) Cyanobacteria such as Microcystis, the main component of algal blooms, overwinter at the bottom of the lake during the winter season, rising up to the water surface with the coming of summer (annual vertical migration). (3) During the summer season, cyanobacteria repeat vertical movement for photosynthesis at the surface from the midnight to the morning and for nutrient uptake at subsurface layers from the afternoon to the early evening (diurnal vertical migration). In this paper, we present two mutually correlated mathematical models, a fundamental model described by ordinary differential equations and a vertical migration model described by partial differential equations, both of which consist of nutrients and cyanobacteria. These models can properly explain the above-mentioned phenomena that differ in time scales. Then, we apply these aquatic models to the algal blooms in Lake Sagami and Lake Tsukui, referring to "Quality of prefectural tap water" published by Kanagawa Prefecture. According to our analyses, the aquatic system of these lakes has undergone the regime shift from the clear-water state to the turbid-water state at the beginning of the 1970s, with the turbid-water state continuing until now. In both lakes, the abundance of cyanobacteria and the seasonal algal blooming pattern differ considerably depending on years, indicating the significant influence of accidental factors of the natural and the anthropogenic origins such as the advent of typhoon and the water discharge from the dam as well as the ecological and the physiological factors such as the light intensity, the water temperature and the nutrient concentration.
著者
内藤 淳 於保 健吉 斎藤 宏 坪井 正博 高橋 英介 輿石 晴也 沖津 宏 永井 完治 雨宮 隆太 澤柳 久嘉 赤田 荘一 阿部 公彦 河内 堯 河村 一太
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.176-181, 1991-03-25

低線量率もしくは高線量率気管気管支腔内照射療法は, 手術適応のない気管気管支悪性腫瘍に対する補助療法として, 近年脚光を浴びてきた。また, Nd-YAG Laser治療と気管気管支腔内照射療法との合併療法も注目されている。今回, 我々は気管右主気管支に広範に発育した腺様嚢胞癌に対し, 内視鏡的Nd-YAG Laser療法による気道開大とfull doseのLinac外照射療法後に, ^<60>Co気管気管支高線量率腔内照射療法(腔内照射)を追加し, 腔内照射終了後約10日目に, 内視鏡的に腫瘍の消失を認めた。しかし, この症例は腔内照射終了後5カ月目に喀血死した。剖検により, 喀血の原因は, 喀血3週間前に挿入されたY-T tube先端による, 右主気管支壁の圧迫壊死に伴う肺動脈気管支瘻であることが確認された。しかし, 腺様嚢胞癌の遺残は認めなかった。以上より, 腔内照射が, 気管気管支腺様嚢胞癌に対する合併療法の一つとして, 有用であることが示唆された。
著者
芹沢 浩 雨宮 隆 伊藤 公紀
出版者
Japanese Association For Mathematical Sociology
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.405-420, 2011

エントロピーに関しては,その増減を支配する2つの重要な法則がある.外界から隔絶された閉鎖系で成り立つ熱力学の第2法則と物質やエネルギーが絶えず出入りする開放系で成り立つエントロピー生成率最大化(MEP)の原理である.前者はエントロピー増大の法則として以前よりよく知られているが,後者は近年の非平衡熱力学,複雑系研究の成果として得られた新たな知見で,社会科学の研究者の間で,その存在を知っている人はそれほど多くない.エントロピーについて深く理解するためには双方を熟知している必要があり,前者だけではエントロピーの破壊的な側面は理解できても,創造的な側面は見落とされてしまう.本論文はあまり知られていないMEP原理に焦点を当て,それを社会科学に移植する試みである.簡単な人間社会モデルによってMEP原理の基本的な考え方を説明した後に,社会現象においてもこれが機能すると仮定し,地球上に存在する社会形態の多様性とMEP原理の関連を考察する.
著者
太田 岳洋 大久保 貴生 石塚 恒夫 古川 聡 朝戸 裕二 小野 久之 吉見 富洋 雨宮 隆太 小泉 澄彦 長谷川 博
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.602-602, 1994-07-25

第25回消化器病センター例会 1994年1月22日‐23日 東京女子医科大学弥生記念講堂