著者
Mitzi D. Clark Danny W. Scott Longying Dong Sean P. McDonough
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.233-237, 2012 (Released:2012-12-29)
参考文献数
29
被引用文献数
2

健常な表皮には少数のT細胞が常在することが,これまでヒト,マウス,ウシおよびヒツジで報告されている。しかしネコやウマでは,同様の細胞は表皮や付属器上皮に認められない。そこでイヌの表皮や付属器上皮におけるリンパ球,CD3陽性細胞(T細胞)ならびにPax5陽性細胞 (B細胞)の存在を調べるため,29頭のイヌ胸背部から生検により採材した健常皮膚を組織学的および免疫組織化学的に解析した。その結果全ての組織において,前述の細胞はいずれも認められなかった。以上より,健常イヌの表皮にはリンパ球はほとんど認められないか,存在してもごくわずかな数であることが示唆された。
著者
Danny W. Scott William H. Miller Jr.
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.239-243, 2012 (Released:2012-12-29)
参考文献数
14
被引用文献数
1

Fly-bite dermatitis was diagnosed in 35 dogs, accounting for 0.4% of the canine dermatology cases and 0.1% of the canine hospital population over an 11-year period. Labrador retrievers appeared to be over-represented. Three different clinical presentations were recognized, and may be associated with the bites of Simulium spp. (black flies), Chrysops spp. (deer flies), or Stomoxys calcitrans (stable flies). The dermatoses occur during fly season in dogs that go outdoors.
著者
Danny W. Scott William H. Miller
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.203-209, 2010 (Released:2011-08-26)
参考文献数
25
被引用文献数
5

74例の猫が,猫のざ瘡と診断された。好発年齢,品種または性別などは認められなかった。また本症の病因となる病態を特定することはできなかった。猫の多く(58.1%)が,猫のざ瘡の病勢別分類のうち自覚症状を伴わない非炎症性面皰のステージに属し,何らかの治療は行われていなかった。猫の一部(41.9%)では,ざ瘡に伴い二次的な細菌性毛包炎/せつ腫症が認められた。二次的な細菌感染症は,抗菌薬を用いた治療により良好に管理することができた。82.4%の猫では予後調査が可能であり,調査した全ての猫で面皰のステージが持続して認められた。
著者
Danny W. Scott William H. Miller Jr.
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.169-170, 2012 (Released:2012-10-13)
参考文献数
3
被引用文献数
3

鼻・趾端の特発性角化症は,特有の外観を呈する犬の疾患である。本症では特徴的な病歴を伴うが,皮膚以外には異常は認められない。過去11年間において35例の犬が本症と診断され,その来院頻度は犬の皮膚科症例では0.4%で,犬の外来症例全体では0.1%であった。イングリッシュ・ブルドッグ,ミニチュア・プードル,ミニチュア・シュナウザー,アメリカン・コッカー・スパニエル,ならびにドーベルマンは本症の好発犬種と考えられた。ほとんどの症例(71.4%)では,鼻部のみに病変が認められた。本症は無症候性で病変が永続し,自然寛解に関する報告はこれまでのところない。
著者
朝比奈 良太 千村 直輝 酒井 洋樹 神志那 弘明 前田 貞俊
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.159-163, 2012 (Released:2012-10-13)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

ダプソンおよびグルココルチコイドに対する反応性が低い角層下膿疱症の疑われた症例に対して,シクロスポリンを用いたところ皮疹が早期に改善した。本症例の病変部皮膚におけるサイトカイン遺伝子転写量を解析したところ,IL-8およびTh17サイトカインの転写量が高値であった。これらの結果より,本症例の病態にはTh17サイトカインが関連している可能性が示された。
著者
Danny W. Scott William H. Miller Jr.
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.165-167, 2012 (Released:2012-10-13)
参考文献数
10
被引用文献数
1

シュナウツァー面疱症候群は,特有の外観を呈するミニチュア・シュナウツァーの皮膚疾患である。過去11年間において16例の犬が本症と診断され,その来院頻度は犬の皮膚科症例では0.2%で,犬の外来症例全体では0.04%であった。興味深いことに,本症を主訴として来院した症例は2例のみで,12例(75%)の犬のオーナーは来院するまで本症に気づかなかったとのことであった。予後に関する情報は10例(62%)の症例で得られたが,本症の臨床症状は3ヵ月~9年の間変化することはなかった。
著者
志賀 朋子 松浦 幹人 関口 麻衣子 伊從 慶太 井手 香織 岩﨑 利郎 西藤 公司
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.107-110, 2012 (Released:2012-07-13)
参考文献数
6
被引用文献数
1

本稿では,犬種および症状から無菌性脂肪織炎が考慮されたものの,病変部の切除生検により異物肉芽腫と診断されたミニチュア・ダックスフンドの3例を経験したので報告する。いずれの症例でも臨床的に皮下結節が認められ,病変部の切除により症例1では病巣から針葉樹の葉が,症例2では竹串が,症例3では縫合糸が摘出された。病理組織学的には,3症例ともに異物を取り囲む化膿性肉芽腫性炎が認められた。犬に皮下結節を認めた場合,異物肉芽腫などの類症鑑別を常に考慮に入れ,切除生検を実施する必要があると考えられた。
著者
林屋 早苗 中村 有加里 林屋 牧男 深瀬 徹
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.93-98, 2012 (Released:2012-07-13)
参考文献数
9
被引用文献数
1 3

イミダクロプリド製剤を繰り返して投与しても十分に駆除することができなかった犬寄生のノミについて検討した。この症例から採取したノミはネコノミ Ctenocephalides felisと同定された。また,他の犬から採取したネコノミ3分離株を対照として,イミダクロプリドとフィプロニルに対する感受性を in vitroにおいてノックダウン試験により検討した結果,本症例に寄生していたノミはイミダクロプリドに対して低感受性を示すことが確認された。これにもとづき,フィプロニルを有効成分とする滴下投与用液剤による駆除を試みたところ,ノミを完全に駆除することが可能であった。
著者
山田 茂夫 加山 英 徳田 雅史 立野 祐子 相内 聖峰
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.99-102, 2012 (Released:2012-07-13)
参考文献数
6

両耳の外耳道に耳垢腺癌が同時発生した1歳,スコティッシュホールドを経験した。肉眼所見として,左外耳道には5 mm径の自壊した出血性暗色丘疹,右には隣接した各3 mm径の暗赤色および黒色丘疹がそれぞれ外耳道開口部内側皮膚のほぼ同位置に観察された。両耳に外耳炎は認められなかった。病理組織学検査では左右ともに耳垢腺が強い異型性と浸潤性を有し,大小の塊状に乳頭状―腺様増殖していた。この結果から,両耳共に丘疹を含むように外耳道皮膚および耳介軟骨を拡大切除した垂直耳道切除術を実施した。術後1年間において再発は認められなかった。
著者
川野 浩志 石川 剛司 圓尾 拓也 並河 和彦 信田 卓男
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.23-27, 2012 (Released:2012-04-17)
参考文献数
18

ミニチュア・ダックスフント,オス,12歳が,鼻稜部,体幹部,足根関節部の皮膚病変,腹部膨満と多飲多尿(192 ml/kg/day)を呈して来院した。ACTH刺激試験では,投与前のコルチゾール値が12.1 μg/dl,投与1時間後が68.4 μg/dlであった。下垂体依存性副腎皮質機能亢進症(PDH)と診断し,小分割照射(毎週1回[6 Gy],合計3回[18Gy])を実施した。飲水量は徐々に減少し,約1年後には85 ml/kg/dayとなり,被毛も改善した。ACTH刺激試験では,投与前が6.3 μg/dl,投与1時間後が36.1 μg/dlであった。ACTH試験では依然高値であったが,PDHに対する低線量小分割照射は,臨床症状の改善には有効である可能性が示唆された。
著者
山岸 建太郎 関口 麻衣子
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.19-22, 2012 (Released:2012-04-17)
参考文献数
4

15週齢の雌のトイ・プードルにおいて,眼瞼および口吻の腫脹とびらんを中心とした皮膚病変と,混合ワクチン接種部位における限局性の腫脹と自壊が認められた。病理組織学的検査により,顔面は重度の毛包炎を特徴とする無菌性化膿性肉芽腫性皮膚炎が,自壊したワクチン接種部位は無菌性肉芽腫性脂肪織炎が認められた。検査結果および臨床経過から若年性無菌性肉芽腫性皮膚炎および無菌性脂肪織炎と診断した。両病変とも免疫抑制用量のプレドニゾロンによる治療が奏功した。
著者
Danny W. Scott William H. Miller Jr.
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.13-18, 2012 (Released:2012-04-17)
参考文献数
40
被引用文献数
1 2

特発性好酸球性肉芽腫の猫55症例について後向き研究が行われた。初発年齢は,症例の93%で4歳以下であった。病変は主に口唇,大腿後縁または下顎に認められ,無症候性のことが多かった。症例の70%では丘疹-結節が,また症例の30%では線状病変が認められた。症例の78%では治療は行われず,中でも予後調査が可能であった症例(67%)では症状が自然寛解し,再発も認められなかった。
著者
Koji Yasuda Danny W. Scott Hollis N. Erb
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.5-11, 2012 (Released:2012-04-17)
参考文献数
33

組織球性多核巨細胞(MHGC)は炎症性皮膚疾患に罹患した猫の皮膚生検標本において時折認められる。しかし,MHGCの出現率・出現細胞数や形態学的な型別に関する報告はない。そこで我々は,炎症性皮膚疾患に罹患した猫526例と健常な皮膚を有する33例の猫から採取した皮膚生検標本を用い,上述の点について検討した。その結果,炎症性皮膚疾患を伴う猫の7%(35/526例)で標本中にMHGCが認められた。肉芽腫性皮膚疾患におけるMHGCの出現率(32/125例)は,非肉芽腫性皮膚疾患における出現率(3/401例)と比べて有位に高値を示した(p<0.0001)。非感染性肉芽腫性皮膚疾患におけるMHGCの出現率(27/84例)は感染性肉芽腫性皮膚疾患(5/41例)と比べて有位に高値を示した(p=0.016)。MHGCの出現が見られた35例の全てにおいて,異物型MHGCが見られた。ラングハンス型MHGCが見られたのは,この35例中2例のみであった。健常な猫の皮膚ではMHGCは認められなかった。以上より,MHGCの出現数や形態学的型別には明らかな診断学的意義が認められないことが示された。
著者
Heather D. Edginton Danny W. Scott William H. Miller Jr. Joya S. Griffin Hollis N. Erb
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.241-246, 2011 (Released:2012-01-19)
参考文献数
38
被引用文献数
2 3

表在性天疱瘡(落葉状天疱瘡,紅斑性天疱瘡)の犬34例をテトラサイクリンおよびニコチン酸アミド(TCN)併用療法により治療した。29例の犬について予後に関する情報が得られ,62%の犬ではTCN併用療法が奏功した。TCN併用療法の有効性と,性別,治療開始までの期間,過去におけるグルココルチコイド療法の有無,そう痒の有無,TCN併用療法による治療期間,TCNの投与間隔の延長の有無,または病変分布との間に関連は認められなかった。
著者
永田 雅彦 南光 弘子
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.3-8, 2010 (Released:2010-04-29)
参考文献数
17
被引用文献数
2 2

約6年間に皮膚科診療施設を受診した犬1,407頭,猫178頭,ヒト患者24,657人を対象とし,Common Skin Diseases(CSD)を比較検討した。ヒトと犬に共通するCSDは脂漏性皮膚炎,アトピー性皮膚炎,疥癬で,ヒトと猫に共通するCSDは皮膚炎・湿疹,皮膚糸状菌症(白癬)であった。なお犬と猫ではヒトのCSDである接触皮膚炎,ウイルス性疾患,母斑性疾患などの受診がまれであった。ヒトおよび犬と猫の両者に共通してみられる各種皮膚疾患の名称,定義,概念の統一化に課題はあるが,上記疾患を中心とした比較皮膚科学的検討の有用性が示唆された。