著者
村山 信雄 榊原 一夫 永田 雅彦
出版者
Japanese Society of Veterinary Dermatology
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.239-241, 2006
被引用文献数
1

6歳齢,避妊雌のメイン・クーンの両耳介と外耳道に暗青色を呈した丘疹と結節を多数認め,耳道は狭窄していた。これら皮疹は幼少よりみられ,徐々に拡大した。病理組織学的検査で耳垢腺の拡張と内腔分泌物の貯留を認めた。全身症状はなく,血液検査の異常も認められなかった。以上よりFeline ceruminous cystomatosisと診断した。0.05%クロルヘキシジン液による洗浄とオフロキサシン・ケトコナゾール・トリアムシノロンアセトニド配合薬の点耳により,1年後に明らかな改善を認めた。<br>
著者
須藤 哲長 寺井 洋子 三枝 早苗 椿下 早絵 佐々木 崇 平松 啓一
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.79-83, 2011 (Released:2011-10-07)
参考文献数
21
被引用文献数
1

小動物臨床の高度化にともない広域抗菌薬が広く用いられるになり,メチシリン耐性 Staphylococcus pseudintermedius(MRSP)が犬に世界的に蔓延している。小動物皮膚科領域においてもMRSPは臨床上深刻な問題となっている。本研究では,日本国内の健康な犬104頭のMRSPおよびメチシリン耐性S. aureus (MRSA)の保菌調査を行い,二次診療施設(大学付属施設)を受診した病犬102頭の保菌率と比較した。健康犬および二次診療受診犬の鼻腔内MRSP保菌率はそれぞれ4.8%,21.6%(p<0.001)であり,二次診療受診犬で有意に高かった。二次診療受診犬は当該施設受診までに相当の抗菌薬選択圧を受けていることが示唆された。健康犬のMRSP保菌率は海外の報告とほぼ同等な結果であった。一方,MRSA保菌率は,健康犬で0%,二次診療受診犬で1.96%と両者に有意差はなかった。どのような抗菌薬選択圧下でもMRSA保菌率が有意に上昇しないことから,犬はMRSAのレゼルボアにはならないことが示唆された。
著者
畑 大二郎 佐藤 千絵子 山岸 真貴 大城 菅雄
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.7-10, 2016 (Released:2016-05-11)
参考文献数
15
被引用文献数
1

沖縄県名護市の屋外生活主体の飼い猫に脱毛や掻痒の症状が認められ,セロファンテープを用いた皮膚検査により猫柔皮ダニ(Lynxcarus radovskyi)が確認された。フィプロニル・(S)-メトプレンのスポットオンとドラメクチン連日経口投与により症状は寛解し,その後の経過も良好であった。日本でも,沖縄のような亜熱帯地域では,臨床現場で本種ダニ寄生例に遭遇する可能性がある。
著者
根津 葉子 永田 雅彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.15-18, 2016 (Released:2016-05-11)
参考文献数
8

6歳齢,避妊雌のウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアが,シャンプー後躯幹を主体に痒がるようになり当科紹介受診となった。日常のケアには極力刺激の生じにくい製品を選択し,少量で洗浄していた。皮膚生検は表皮リンパ球浸潤と海綿状態を伴う真皮浅層血管周囲細胞浸潤,血清アレルゲン特異的IgE検査(アラセプトパネルテスト)で特記すべき異常は認められなかった。外的刺激による皮膚炎と診断した。シャンプーの代替として高濃度人工炭酸泉浴装置による沐浴を実施したところ,皮膚は適正に管理され,明らかな育毛が観察された。
著者
西山 美衣 伊從 慶太 関口 麻衣子 岩崎 利郎 西藤 公司
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.77-80, 2015 (Released:2015-07-29)
参考文献数
6
被引用文献数
2

本稿では,稟告および病理組織学的所見が熱傷と合致した犬および猫の3例を経験したので報告する。症例1は犬で,背部に個在性の潰瘍および皮膚壊死が認められた。症例2は犬で,左肩甲部に潰瘍および皮膚壊死が認められた。症例3は猫で,下腹部および側腹部に脱毛,紅斑などが認められた。病理組織学的所見には,症例1と症例2ではⅢ度熱傷を,症例3では深達性Ⅱ度熱傷を疑わせる所見であった。いずれの症例でも稟告により,発症前に病変部が熱源と接触したという病歴が聴取されたことから,本症例を熱傷と診断するに至った。
著者
西山 武男 伊從 慶太 岩﨑 利郎 西藤 公司
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.71-75, 2015 (Released:2015-07-29)
参考文献数
15
被引用文献数
2

過去の報告において,中毒性表皮壊死症(TEN)の犬では角化細胞のアポトーシスが認められなかったことが報告されている。本報告では,表皮内にアポトーシス細胞が検出された犬の1例について報告する。13歳,雌の雑種犬が,主に腹部皮膚や可視粘膜に急性かつ広範な紅斑,水疱および潰瘍を認めたとのことで来院した。本症例では食欲不振および元気消失も認められた。本症例では皮膚症状が発症する5日前よりアモキシシリンが経口投与されていた。皮膚病変の組織学的検査では表皮全層にわたる凝固壊死やリンパ球の表皮内浸潤が認められ,これらの所見はTENに矛盾しないものであった。免疫組織化学染色により,浸潤していたリンパ球はCD3陽性であることが示された。さらに本症例では,アポトーシス細胞を示すTdT-mediated dUTP end labeling(TUNEL)陽性細胞が,角化細胞を含む表皮細胞中に認められた。上記の所見から,本症例ではT細胞に由来する表皮角化細胞のアポトーシスが,表皮壊死の病因となった可能性が示唆された。
著者
Danny W. Scott Heather D. Edginton William H. Miller Jr. Mitzi D. Clark
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.7-9, 2015 (Released:2015-05-12)
参考文献数
12
被引用文献数
2

第2世代の抗ヒスタミン薬であるロラタジンが,猫アレルギー性皮膚炎の管理に有効であるという逸話的情報が教科書やインターネット上で報告されている。そこでロラタジンをアレルギー性皮膚炎に罹患した27頭の猫に,5 mg/catで1日1回経口投与した。その結果,わずか1頭(4%)の猫においてそう痒を良好に管理することが可能であった。有害事象は認められなかった。
著者
串田 壽明 串田 尚隆 嶋田 義治 長谷川 篤彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.121-125, 2003 (Released:2007-02-06)
参考文献数
3

皮膚糸状菌症の猫3例に対し,1回量約90~170 mg/kgのルフェヌロンを2週間隔で投与したとき,症例1と3では2回,症例2では5回の投与で臨床症状が改善され,治療開始後,症例1では8週目,症例2では11週目,症例3では4週目には,1部の脱毛部分を残したものの,皮膚は正常となり,直接検査,培養検査ともに陰性となった。症例3では,治癒と判定した後3週目に他の部位に新しい病巣が発生したため,125 mg/kg,さらに3週間後に133 mg/kgを投与した結果,完治した。以上のことから,本剤の皮膚糸状菌症に対する治療効果は,症例によっては期待できるものと思われた。
著者
長谷川 剛拡
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.91-95, 2014 (Released:2014-07-24)
参考文献数
6

1歳,避妊メス,キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル(CKCS)が右耳の痒み動作を主訴に来院した。耳鏡検査では,外耳炎の所見はなかったが,膨隆した鼓膜が確認できた。MRI検査所見では,右鼓室内にT2強調画像で高信号の物質が貯留していた。耳道内視鏡下で鼓膜切開したところ粘稠性の高い灰白色をした粘液が多量に漏出した。処置から2週間後には,ほとんどかゆみ動作はみられなかった。以上の経過より,本症例を原発性滲出性中耳炎(primary secretory otitis media;PSOM)と診断した。
著者
佐藤 良彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.85-89, 2014 (Released:2014-07-24)
参考文献数
7

特徴的な牙痕および臨床症状からニホンマムシ(Gloydius blomhoffii)の咬症と診断した猫2症例の治療例を報告する。両症例とも夜間外出中に受傷したと思われ,家に戻ってきた際,症状は認められなかったが,翌朝には顔面が腫大していた。両例とも受傷した約12時間後に受診,症例1は下唇に牙痕を1ヵ所認め,下顎に高度な浮腫が見られた。症例2は前頭部に2ヵ所の牙痕を認め,顔面と下顎に高度の浮腫が観察された。両例とも初診時にプレドニゾロンを2.3~4.0 mg/kg投与し,その後漸減,抗生物質も投与したところ,4日間ほどで回復した。
著者
伊藤 直之 伊藤 洋一 村岡 登 増田 健一 金井 一享 近澤 征史朗 堀 泰智 星 史雄 樋口 誠一
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.17-21, 2014 (Released:2014-04-26)
参考文献数
14
被引用文献数
1

非季節性の?痒性皮膚炎をともなう犬139頭について,リンパ球増殖反応と定量的血清IgEレベルを検査した。検査した犬の103頭(74.1%)と73頭(52.5%)が,それぞれリンパ球増殖テストおよび血清IgEテストで,一つ以上の食物アレルゲンに対して陽性だった。多くの症例で複数の食物アレルゲンに反応し,しかも,反応しているアレルゲンは,リンパ球増殖テストと血清IgEテストで必ずしも同一ではなかった。これらの成績から,非季節性の?痒性皮膚炎をともなう犬では,食物アレルゲンに感作されている割合が予想以上に高いことが示された。また,非季節性の?痒性皮膚炎をともなう犬の中に、多くの食物アレルギーの症例が含まれている可能性が示唆された。犬の食物アレルギーの診断および治療には,除去食・暴露試験が必要とされることから,アレルゲン特異的なリンパ球増殖テストと血清IgEテストを同時に実施することは,非季節性の?痒性皮膚炎をともなう犬において,除去食および暴露試験における食物アレルゲンの選択に有用であると考えられる。
著者
Evin R. Adolph Danny W. Scott William H. Miller Jr. Hollis N. Erb
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.9-15, 2014 (Released:2014-04-26)
参考文献数
35
被引用文献数
2 9

テトラサイクリンとナイアシンアミドを12例の円板状エリテマトーデス(DLE),3例の肛門周囲/陰部周囲エリテマトーデス(PPLE),1例の水疱型皮膚エリテマトーデス(VCLE)および1例の剥脱型皮膚エリテマトーデス(ECLE)に投与した。DLE 12例中8例(67%)およびPPLE 3例中3例(100%)では十分に制御できた。ECLEでは部分的な反応であり,VCLEでは無反応であった。
著者
福澤 あぐり 桃井 康行 町田 登 紺野 克彦 岩崎 利郎
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.129-131, 2005 (Released:2006-10-27)
参考文献数
5

12歳齢, 未去勢雄のヨークシャー・テリアが, 尿の混濁, 排便障害, 腰背部を中心とした体幹の非そう痒性脱毛を主訴として来院した。身体検査により乳房の腫大, 包皮の下垂, 前立腺肥大を認め, 腹腔内及び鼠経部皮下に腫大した陰睾と思われる腫瘤が認められた。摘出後の病理組織学検査の結果, 摘出した腹腔内腫瘤はセルトリー細胞種, 鼠経部皮下腫瘤はセルトリー細胞種とセミノーマの混合腫瘍であった。腫瘍の摘出後に臨床症状の改善が認められたことから, 非炎症性非そう痒性の脱毛は精巣腫瘍によるエストロジェン過多が原因であると考えられた。
著者
Danny W. Scott William H. Miller Jr.
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.135-147, 2013 (Released:2013-10-31)
参考文献数
50
被引用文献数
8

過去15年の間に皮膚疾患を主訴として受診した猫の13.8%,ならびに全症例の0.9%がアトピー性皮膚炎と診断された。本症に特有の好発年齢や性差は認められなかったが,アビシニアン,ヒマラヤンまたはペルシャに好発する傾向があった。季節性を伴わない臨床症状が症例の62.4%で認められた。皮膚の反応パターンを頻度の高いものから順に挙げると,皮疹を伴わない左右対称性の?痒(特に顔面,耳介および頸部),外傷性脱毛(特に腹部,背部および四肢),粟粒性皮膚炎(特に背部および頸部)ならびに好酸球性肉芽腫群(特に亢進,腹部および大腿内側)の順であった。症例の36.2%では異なる反応パターンが同時に認められた。症例の18.6%では二次的な細菌感染が,また症例の6.6%では酵母による感染症が認められた。食物アレルギーとの合併を認めた症例の頻度はわずか4.5%で,ノミアレルギーとの合併例は認められなかった。多くの症例では,グルココルチコイド製剤や抗ヒスタミン薬,オメガ-6/オメガ-3脂肪酸,アレルゲン特異的減感作療法,ならびにこれらの併用療法により,臨床症状を良好に管理することができた。
著者
Heather D. Edginton Jeanine Peters-Kennedy Danny W. Scott
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.149-153, 2013 (Released:2013-10-31)
参考文献数
21
被引用文献数
2

ヒト,マウス,ウシ,ヒツジおよびアルパカでは,少数の常在T細胞が健常な表皮に存在する。加えてヒト,ウシおよびヒツジでは,少数の常在T細胞が真皮にも存在する。本研究の目的はリンパ球,CD3陽性細胞(Tリンパ球)ならびにPax5陽性細胞(Bリンパ球)が,健常犬の皮膚の真皮浅層および深層に存在するかを解析することであった。26頭の犬から採取された正常な皮膚の生検組織を対象として,真皮浅層および深層にCD3陽性細胞 ならびにPax5陽性細胞が存在するかを組織学的ならびに免疫組織化学的手法を用いて解析した。その結果,全ての検体において前述の細胞は認められなかった。この結果から,正常犬皮膚の真皮浅層および深層ではリンパ球がほとんど存在しないか,存在してもごく少数であることが示唆された。
著者
赤熊 美紀 樋口 裕樹 熊谷 武久 永田 雅彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.155-158, 2013 (Released:2013-10-31)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

犬アトピー性皮膚炎(cAD)におけるLactobacillus paracasei K71(K71株)の補助的治療効果を検討した。犬アトピー性皮膚炎(cAD)と診断した5例にプレドニゾロン0.5 mg/kg隔日投与を処方し,3例に試験食乳酸菌(K71株)を,2例に陽性対照セチリジン塩酸塩を併用し,12週間追跡しその補助的治療効果を検討した。皮膚病変の重症度は,獣医師によるCADESI(Canine Atopic Dermatitis Extent and Severity Index)スコア,飼い主による痒みスコア,薬剤ステロイド使用量により評価した。試験終了時全例で皮膚症状の緩和が認められたが,K71株治療群は陽性対照治療群と比較して,CADESIスコア,痒みスコア,ステロイド使用量のいずれも減少する傾向にあった。以上より,K71株はcADの症状緩和に有用と推察された。
著者
Laura S. Barrientos Julian A. Crespi Veronica It Pilar Peral-García María C. Castellano Guillermo Giovambattista
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.57-61, 2013 (Released:2013-08-20)
参考文献数
16
被引用文献数
2

若年性汎発性ニキビダニ症は犬で頻繁にみられる疾患であり,遺伝的素因や免疫学的素因が関与する疾患である。本症は伝染性疾患でも人獣共通感染症でもないが,重篤で時に生命予後に影響することもある。本症はあらゆる犬種に発症しうるが,一部の報告では好発犬種に関する記載が見られる。本報告では1998年から2006年までの間に,アルゼンチン・ラブラタ国立大学獣医学部附属小動物病院で記録された499例について解析した。全ての症例において,ニキビダニ症があらゆる皮膚疾患よりも初発したと考えられ,最終的には本症と診断された。499例中28例が若年性汎発性ニキビダニ症と診断された。他の研究データと比較したところ,本研究ではボクサー,ジャーマン・シェパードおよび雑種犬に,本症が好発することが示された。本研究の成果は,若年性汎発性ニキビダニ症が一部の犬種に好発するという仮説を支持するものと考えられた。
著者
Danny W. Scott William H. Miller Jr.
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.3-9, 2013 (Released:2013-04-10)
参考文献数
42
被引用文献数
1

疥癬が疑われた犬350例と,耳介に皮膚疾患が認められたものの耳介―後肢反射が陰性であった1,345例の犬に関する後向き研究を行った。駆虫薬の投与後に症状が改善した犬の29%では,皮膚掻爬物鏡検により寄生虫が確認された。疥癬が確定された(皮膚掻爬物鏡検でダニが検出された)犬,ならびに疥癬が疑われた(皮膚掻爬物鏡検は陰性であったが駆虫薬の投与後に症状が改善した)犬の78.4%では耳介―後肢反射が陽性であり,またこれらの犬の全てで耳輪に皮膚症状が認められた。これに対し,疥癬とは異なる耳介の皮膚疾患を有する犬のうち,耳介―後肢反射が陽性であった症例はわずか1~12%であった。疥癬が疑われたものの皮膚掻爬物鏡検では陰性であった犬の83%で,駆虫薬の投与後に症状が改善した。疥癬が疑われたものの駆虫薬により症状が改善しなかった犬の多くが,アトピー性皮膚炎または食物アレルギーを有していた。疥癬は皮膚疾患を主訴として来院した犬症例の3.8%を占め,年齢,品種,性別による差は認められなかった。