著者
望月 直美 小林 正夫 西大路 賢一 宮田 正年 宇野 耕治 桂 奏
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 = Journal of gastroenterological cancer screening (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.557-563, 2013-09-15
参考文献数
19

症例は61歳, 男性。人間ドックの上部消化管内視鏡検診で胸部中部食道に長径約2cmの隆起性病変を認めた。中心部には陥凹を認めたが, 辺縁部は既存の上皮に覆われており粘膜下腫瘍様形態であった。生検組織で免疫染色上クロモグラニンAとシナプトフィジンが陽性であり, 食道内分泌細胞癌と診断した。超音波内視鏡検査の結果, 食道外膜への浸潤を認めた。また多発肝転移を認め, StageIVbであった。化学療法としてCPT11/CDDPおよびVP-16/CDDPを行ったが, 9か月後に永眠された。食道内分泌細胞癌は進行が速く, 予後はきわめて不良である。稀な疾患であるが, 診断のためには臨床的特徴を把握しておくことが重要である。
著者
水町 寿伸 米湊 健 鶴田 修 佐田 通夫 中原 慶太 前川 進 副島 満 高木 優 荒木 祐美子 芹川 習 田宮 芳孝 渡辺 靖友
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.43-54, 2009

背景:新・胃X線撮影法の前壁撮影ではフトン使用が必須とされている。しかし, フトンの具体的な使用法に関する報告は少なく, 胃形によっても撮影の難易度が異なる。目的:胃形に合わせて任意に調節可能なバスタオルのり巻き法の有用性を明らかにする。対象:施設検診において直接胃X線検査を施行した83例(鈎状胃群43例, 牛角胃群40例)。方法:バスタオルのり巻き法として, バスタオル1枚を鈎状胃群に対しては薄巻き, 牛角胃群には厚巻きに調節して撮影した。胃形別の前壁二重造影像(腹臥位正面位, 第二斜位)に関して, 1)ポジショニング, 2)示現範囲, 3)造影効果をバスタオル使用の有無別に比較検討した。結果:バスタオル使用の場合, 鈎状胃群では2)示現範囲, 3)造影効果が, 牛角胃群は3項目すべてが有意に適切となった。結論:バスタオルのり巻き法は胃形に対するバスタオル形状の調節が簡便で, 高い画像精度が得られる有用な手技と思われた。
著者
瀬古 千佳子 松井 大輔 松川 泰子 小山 晃英 渡邉 功 尾崎 悦子 栗山 長門 水野 成人 渡邊 能行
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.30-41, 2016 (Released:2016-02-01)
参考文献数
23

ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)感染は胃がんの確実な発がん因子である。H. pylori感染から慢性萎縮性胃炎への進展過程における摂取食品との関連については多くの先行研究が行われているが, 栄養素摂取量との関連についての報告は少ない。そこで, 本研究はH. pylori感染者における慢性萎縮性胃炎陽性者と陰性者の栄養素摂取量の差異を検討した。対象者は京都在住の35歳から69歳までの健診参加者4,330人のうちH. pylori感染陽性者1,251人とした。解析対象者はこの内の栄養素摂取量算出を完了した女性296人とした。年齢, 喫煙, ビタミン剤服用, エネルギーによる補正を行い, 各栄養素摂取量を三分位に分けてロジスティック回帰分析を行った結果, カルシウムの中等量摂取, 多量摂取, 及び多価不飽和脂肪酸の中等量摂取は有意に慢性萎縮性胃炎のリスクを低めていた。これにより, これらの栄養素が慢性萎縮性胃炎進展の抑制と関連している可能性が示唆された。
著者
馬嶋 健一郎 永田 浩一 松本 啓志
出版者
The Japanese Society of Gastrointestinal Cancer Screening
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.600-606, 2015

大腸CTの読影で使用する三次元画像は精度検証済みの仮想内視鏡像が世界標準だが, 本邦では大腸展開像も使用される機会が多い。今回, 両読影法の精度を比較した。内視鏡にて病変が診断されている大腸CT症例100例を, 初級者1名が, 大腸展開像+MPR像による読影と, 仮想内視鏡像+MPR像による読影を行った。100例は1-50症例を第1セット, 51-100症例を第2セットとした。6mm以上の大腸ポリープ・癌の病変別感度は, 展開群, 仮想内視鏡群の順に第1セット67.9%(19/28), 89.3%(25/28), 第2セット86.1%(31/36), 91.7%(33/36)であった。展開群よりも仮想内視鏡群で感度が高く, 大腸CTの標準化では, 精度検証が済んでいる仮想内視鏡像による読影方法を優先すべきと考えられた。
著者
安田 貢 前田 剛 小林 三善
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.17-29, 2015

KKR高松病院人間ドックセンターでは, 平成25年度より, 任意型検診である人間ドックの胃がん検診において, 受診者全員の血清<I>H.pylori</I>(Hp)抗体価, pepsinogen(PG)値を測定し, 問診内容も参考の上で, 総合的に個々のHp感染状態(現感染・既感染・未感染)を判定している。これをgold standardとした際の, 胃X線(1,535名)の背景胃粘膜読影によるHp感染状態の正診率は91.4%であったが, 現感染と既感染を区別しなければ96.5%と良好であった。今後は未感染者増加への対応が課題と考えられた。この読影方法は胃X線検査のみ実施する対策型検診においても適用可能である。Hp感染が疑われる受診者は, 精検不要であっても感染診断後, 除菌治療が考慮されるべきであろう。胃がんの早期撲滅のためには, 今後すべての胃がん検診システムが「Hp感染胃炎」という新基軸をもとに再構築されていく必要があると考えられた。
著者
山本 智美 安保 智典 田中 伸一 細川 肇 春木 秀敏 西田 大 中川 栄志 廣田 恵理果 長谷川 達也
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.759-765, 2015 (Released:2015-12-16)
参考文献数
12

対策型検診撮影法では独特の素早い体位変換や回転動作が困難な受診者に遭遇する事が少なくない。今回, 改善を目的に動画説明を導入し, 最初の右回り3回転動作に着目し有効性を評価した。対象と方法:右回り3回転を40秒未満で行えなかった者を3回転困難者とした。動画説明導入前群:1,665名(2011年11月17日~同年12月7日), 動画説明導入後群:1,631名(2012年1月19日~同年2月9日)で評価した。結果:全体では3回転困難者は, 動画説明導入前群で25.7%, 動画説明導入後群で12.1%であった(p<0.01)。3回転困難となる原因は74歳以下では体位変換に関する具体的な理解不足であったが, 75歳以上の高齢者では運動機能低下であり, 対策型検診撮影法を一律適用するのは困難である。結論:体位変換を視覚的に理解できる動画説明は多くの年齢層で右回り3回転動作を正しく理解させるのに有用である。
著者
山本 兼右 山崎 秀男
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.380-386, 2014 (Released:2014-06-15)
参考文献数
14

誤嚥事故の状況分析として, 硫酸バリウムの粘度と誤嚥頻度, 性・年齢別と誤嚥頻度の関係を調査した。80歳以上男性の誤嚥頻度が高いことが判明した。第1次対策は, 問診時に過去の誤嚥の有無を確認し, 誤嚥経験者を特定した。誤嚥経験者と80歳以上男性をハイリスク群と定義し, この群にはバリウムを紙コップに移し替えて服用させることにした。また, バリウム服用上の注意書きを「あわてずに, ゆっくりお飲みください」と修正した。第2次対策は, ハイリスク群に対して, 高粘度(粘度:280mPa・s)の高濃度硫酸バリウム180W/V%ゾル製剤を用い検査を行った。第1次対策は効果がなかった。第2次対策は, ハイリスク群(誤嚥経験者と80歳以上男性)の誤嚥発生頻度が有意に低下し(P<0.05), 誤嚥事故防止に成果があった。
著者
赤羽 たけみ 福居 健一 美登路 昭 白井 康代 片岡 智栄子 榎本 泰典 野々村 昭孝 大石 元
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.447-453, 2010 (Released:2010-09-15)
参考文献数
18

膵Solid-pseudopapillary neoplasm(SPN)は稀な膵腫瘍として知られている。健診で発見されたSPNを経験したので報告する。症例は30歳女性。健診の腹部超音波検査で膵尾部に径4cm大の境界明瞭で内部が不均一な円形の低エコー腫瘤を指摘された。超音波内視鏡検査(EUS)で嚢胞部分と充実性部分が混在している腫瘤が明瞭に描出された。CT, MRIでも同様の所見であり, 膵solid-pseudopapillary neoplasm(SPN)と診断し脾合併膵体尾部切除術を施行した。切除標本の肉眼所見は被膜を有し充実部分と出血による嚢胞部分が混在する球形の腫瘍で病理組織所見からSPNと診断した。本症例は無症状で健診が発見の契機となった。無症状の若年女性でSPNに特徴的な画像所見を呈したため術前診断が容易であったが, EUSがとくに質的診断に有用であった。
著者
田村 次朗 安里 憲二 外間 昭 中村 献 金城 徹 平田 哲生 藤田 次郎
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.46-55, 2019

現在, 膵・胆道疾患において腹部超音波検査が標準的な検診法として一般に認知されているが, その結果についての詳細な報告は少ない。2016年1月から12月までの1年間に, 豊見城中央病院附属健康管理センターで腹部超音波検診を施行した受診者を対象とし, 膵・胆道に関する結果を検討した。総受診者数は17248名であった。膵観察不良率は男性55.1%, 女性12.1%であり, 体型別では痩せ型/標準型/肥満型の順に男性16.3%/43.6%/70.0%, 女性1.4%/7.4%/27.8%であった。各臓器に何らかの所見を有する有所見率は膵1.1%, 胆道28.1%であった。各所見の有所見率のうち高頻度のものは, 膵で膵嚢胞0.61%, 主膵管拡張0.27%, 膵腫瘤0.19%, 胆道で胆嚢ポリープ18.7%, 胆石18.7%, 胆嚢腺筋腫症3.6%であった。要精検率は膵0.44%, 胆道0.35%であった。精検受診率は膵76.0%, 胆道71.8%であった。癌発見率は膵0.012%, 胆道0%であった。男性で標準型・肥満型, 女性で肥満型の受診者は膵描出能が悪く, 飲水法追加などの方法改善を要すると考えられた。
著者
高後 裕
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.161-171, 2007

消化器がん検診における遺伝子異常把握のメリットは, 多くの遺伝, 環境因子によって生じる遺伝子変化をとらえ, 癌の拾い上げと発癌リスクの評価をおこなえることにある。頭頸部がん, 食道がん, 胃がん, 膵管内乳頭粘液産生腫瘍などの消化器がんの発生には, Field cancerizationの概念があてはまる。これらの臨床例を蓄積し, その遺伝子変化を解析することにより, 高リスク群の拾い上げに役立つ分子マーカーを見つけることが重要である。その際, 検診という大きな手段を対象とする戦略では, 感度・特異度はもちろん, 処理能力, 経済性, 安全性のいずれもが十分満足することが要求される。現在, 個別検診でのみ可能な高コストの先進的診断法が, 将来的に機器開発の努力等により急速にコスト, 処理能力が改善され, 最終的に「集団」のそれに対しても応用可能となること期待したい。
著者
菊地 正悟 黒澤 美智子
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.431-435, 2009 (Released:2011-04-15)
参考文献数
11

約11万人の地域住民を対象としてコホート研究のデータを用いて喫煙, 飲酒と膵がん, 胆嚢がんの関係を分析した結果の検診への応用を検討した。男性では, 喫煙が膵がんと胆嚢がん, 飲酒が胆嚢がんのリスクを有意に上昇させる結果が得られ, 最大曝露群は非曝露群に比べて, いずれも約3.2倍リスクが高かった。女性では, 喫煙について有意でないが男性と同様の関連を示唆する結果が, 飲酒については関連がないことを示唆する結果が得られた。3倍程度のリスクの違いでは, 喫煙習慣, 飲酒習慣を単独で対象者のスクリーニングに用いることは難しい。むしろ, 曝露群をハイリスク群として, 検診受診を特に強力に勧奨する手段として用いる方が実際的である。喫煙, 飲酒と膵がん, 胆嚢がんの関係を周知することは, 喫煙や飲酒に関連する疾患の予防にも役立つと思われる。血清タンパク, 遺伝子多型など, 新たなマーカーの検診への導入の検討も今後の課題である。
著者
鯵坂 秀之 小山 文誉 魚谷 知佳
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 = Journal of gastroenterological cancer screening (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.237-242, 2011-03-15
参考文献数
13

胃内視鏡検診の精度を評価するために, 2006年9月から2009年8月までの内視鏡検診発見胃癌42例のうち, 逐年内視鏡検診の既往を持つ"広義偽陰性例"20例を対象に, 臨床病理学的特長を検討するとともに, 前年度の記録を見直した。肉眼型は全例早期陥凹性病変(O-IIc 18例, O-IIb+IIc 1例, O-IIa +IIc 1例)であった。組織型は分化型が12例(tub1 9例, tub2 3例), 未分化型が8例(sig 5例, por 2例, muc 1例), 最大腫瘍径は16例が25mm以下であったのに対し, 4例は37mm・43mm・47mm・81mmと突出していた。壁深達度/リンパ節転移はM/N0が17例, SM1/N0・SM2/N0・M/N2が各1例ずつであった。前年度の記録を見直した結果, "非狭義偽陰性例"(前年度顕性病変なし)は5例, "見落し例"(前年度記録なし)は4例, "見逃し例"(前年度病変あり)が8例, "生検不備例"(前年度生検にて非悪性と判断された)が3例であった。内視鏡検診でも偽陰性があり, 逐年受診を勧めることが重要である。
著者
望月 直美 小林 正夫 西大路 賢一 釜口 麻衣
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.545-555, 2014 (Released:2014-10-15)
参考文献数
16

人間ドックで胃がんリスク評価(ABC分類)を実施した。対象は1223例, 平均年齢は56.3歳であった。A群が全体の61%でA群の割合は年代が上がるにつれ低下した。同時に実施した内視鏡検診でC群から3例, A群から1例の胃がんが発見された。いずれも年齢は65歳以上で内視鏡的に胃粘膜の萎縮は高度であった。ABC分類の結果と内視鏡的胃粘膜萎縮度を比較した結果, A群の13.9%は内視鏡的に萎縮を認める, いわゆる「偽A群」であった。内視鏡的に萎縮を認めない真のA群と比較すると, 「偽A群」では60歳以上, およびHp抗体価3.0U/ml以上の症例が有意に多かった。「偽A群」のうち高度の胃粘膜萎縮を有する20例はPGI低値, Hp抗体価3.0U/ml以上の両方, あるいはいずれかに合致し, Hp既感染, または現感染が考えられた。胃がんリスク評価を正確に行うため, 初回は内視鏡による画像診断を併用することが望ましい。
著者
一瀬 雅夫
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.355-364, 2008 (Released:2012-03-25)
参考文献数
31
被引用文献数
1 6

胃癌死亡率減少に大きく貢献した胃がん検診も, 現在, 受診率および検診効率の向上に向けての取り組みが強く求められている。その様な状況下, 血清ペプシノゲン(PG)検査により, 萎縮性胃炎の進展した個人を把握, 内視鏡検査の対象とする検診方法, PG法が高い評価を受け, 血清PGにより同定される萎縮性胃炎を標的とした胃癌ハイリスク集約が有効である事が明らかとなって来た。加えて, 萎縮性胃炎の最重要因子としてのH.pyloriの役割が明確になって以来, 胃癌発生の自然史をH.pylori感染を主軸に理解する事が可能となり, PGやH.pylori抗体などの血液検査データを基に, 各個人におけるH.pylori感染のstageの把握, 胃癌発生リスクの具体的な予測が可能になって来た。これらの情報は, さらに, 胃癌発生予防, 検診効率化を目標とした有効な胃癌対策を立案可能なものとしつつある。本稿ではその現況について概説する。
著者
日山 亨 田中 信治 茶山 一彰 吉原 正治
出版者
The Japanese Society of Gastrointestinal Cancer Screening
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 = Journal of gastroenterological cancer screening (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.393-400, 2011-05-10
被引用文献数
2

今回, 上部消化管内視鏡検査(生検を含む)に伴う稀な偶発症に関する報告について, レビューを行った。1990年から2009年末までに英語(抄録を含む)で医学雑誌に発表されたものをMedline を用いて検索した。これら報告からデータを抽出し, 検討を行った。該当する偶発症としては,(1)出血:食道粘膜内血腫および十二指腸血腫,(2)空気塞栓症,(3)気腫・気胸・緊張性気腹:皮下気腫, 後腹膜気腫等,(4)腹部コンパートメント症候群,(5)横隔膜ヘルニア,(6)内視鏡嵌頓,(7)口蓋垂炎,(8)膵炎,(9)感染症関連:敗血症等,(10)び漫性脳浮腫があった。報告の中には死亡例もあった(十二指腸血腫や空気塞栓症等)。上部消化管内視鏡検査に伴う稀な偶発症の中には迅速な対応が必要なものもあり, 内視鏡医はこれらについて, 十分な知識を持っておく必要があると思われた。
著者
日山 亨 田中 信治 茶山 一彰 吉原 正治
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 = Journal of gastroenterological cancer screening (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.393-400, 2011-05-10
参考文献数
37
被引用文献数
2

今回, 上部消化管内視鏡検査(生検を含む)に伴う稀な偶発症に関する報告について, レビューを行った。1990年から2009年末までに英語(抄録を含む)で医学雑誌に発表されたものをMedline を用いて検索した。これら報告からデータを抽出し, 検討を行った。該当する偶発症としては,(1)出血:食道粘膜内血腫および十二指腸血腫,(2)空気塞栓症,(3)気腫・気胸・緊張性気腹:皮下気腫, 後腹膜気腫等,(4)腹部コンパートメント症候群,(5)横隔膜ヘルニア,(6)内視鏡嵌頓,(7)口蓋垂炎,(8)膵炎,(9)感染症関連:敗血症等,(10)び漫性脳浮腫があった。報告の中には死亡例もあった(十二指腸血腫や空気塞栓症等)。上部消化管内視鏡検査に伴う稀な偶発症の中には迅速な対応が必要なものもあり, 内視鏡医はこれらについて, 十分な知識を持っておく必要があると思われた。