著者
大田 美香 小田 剛 喜多 伸一 前田 英一 菅野 亜紀 高岡 裕
出版者
神戸常盤大学
雑誌
神戸常盤大学紀要 (ISSN:18845487)
巻号頁・発行日
no.9, pp.23-34, 2016-03-31

我が国では、緑内障や糖尿病性網膜色素変性症の罹病率の増大に伴い、弱視者の数が増加している。これらの中途視覚障害者の多くは中高年で残存視覚への依存が大きく、点字の習得が困難である。加えて、点字教育を担当する教師も減っており、これら中途視覚障害者の点字学習をより困難にしている。そこで我々は、残存視覚 (RV)のみを使用する画面によるプログラム、画面と点字ディスプレイ(BD)が協働するプログラム、画面と音声アシスト(BDV) が点字ディスプレイと協働するプログラム、の3種類のWebベースのe-ラーニングプログラムと基本API (Application Programming Interface) を研究開発した。
著者
高松 邦彦 村上 勝彦 伴仲 謙欣 野田 育宏 光成 研一郎 大森 雅人 中田 康夫
出版者
神戸常盤大学・神戸常盤大学短期大学部
雑誌
神戸常盤大学紀要 = Bulletin of Kobe Tokiwa University (ISSN:18845487)
巻号頁・発行日
no.14, pp.22-29, 2021-03-31

教学IRにおいては、従来は説明モデルによる解析や可視化にもとづく意思決定支援が主要な機能であったが、近年では予測モデルにもとづく種々の予測に関してその重要性が高まっているといわれている。そこで本稿では、教学IRにおける機械学習の意義と可能性について、われわれの経験を題材として検討した。われわれの経験では、機械学習を用いることで、大学における中途退学や学力進捗を予測できる可能性があることが明らかになっている。このことから、いわゆる教学データを用いた機械学習により、今までなし得なかった教学上の種々の予測が可能となり、今後のわが国の教学IRが飛躍的に進展する可能性が示唆された。|In institutional research (IR) for education, the decision-making support based on the analysis and visualization by the explanation model was the main function in the past. However, the importance of various predictions based on predictive models is currently increasing in IR for education. Therefore, this paper examined the significance and possibility of artificial intelligence/machine learning (AI/ML) in IR for education using our experience as subjects. Our experience reveals that using AI/ML can predict dropouts and academic progress in university and college. Thus, it is suggested that using students' educational data, AI/ML could make various predictions in higher education that were not possible earlier, leading to dramatic progress in Japan's IR for education.
著者
菅野 亜紀 小田 剛 大田 美香 熊岡 穣 喜多 伸一 渡辺 哲也 一瀬 晃洋 高雄 由美子 前田 英一 西本 隆 高岡 裕
出版者
神戸常盤大学
雑誌
神戸常盤大学紀要 = Bulletin of Kobe Tokiwa University (ISSN:18845487)
巻号頁・発行日
no.9, pp.23-34, 2016

我々は視覚障害者向けの鍼灸、特に経絡と経穴に関する教育材料の研究に取り組んだ。この教材では、鍼灸分野における概念間の関係の体系的な理解を可能にすべく、オントロジーを用いた。オントロジーの概念図によりオントロジー教材を作成し、これを鍼灸の講義で使用した群とオントロジー教材未使用群とで経絡・経穴の試験の結果を比較し、その有効性を解析した。その結果、オントロジー教材を使用した学生の経絡・経穴の試験の得点は、オントロジー教材未使用群の学生の得点よりも有意(P < 0.001)に高く、経絡と経穴の学習にオントロジー教材有効である事が明らかになった。この結果は、オントロジーの視覚障害者教育への利用が視覚障害者の鍼灸理論の学習へも有効であることを示唆している。
著者
中村 由果理 西原 詩子 藤原 桜
出版者
神戸常盤大学・神戸常盤大学短期大学部
雑誌
神戸常盤大学紀要 = Bulletin of Kobe Tokiwa University (ISSN:18845487)
巻号頁・発行日
no.13, pp.186-192, 2020

基礎看護技術における創傷管理技術では、看護学生が基本的な創洗浄や創処置ついての看護技術を修得することを目的としている。看護技術の修得にはより実践的な教育が必要である。看護学生が教科書や講義から知識を得るだけでなく、演習で創傷処置技術が修得できるよう『創傷モデル』が作成された。『創傷モデル』の作成においては〝創傷被覆材が着脱できる〞〝水での洗浄ができる〞〝石鹸での洗浄ができる〞ことを考慮した。『創傷モデル』は臀部注射モデルを土台として利用し、グルーガンとクリアファイル、ホットメルト接着剤を使用し作成した。90人が使用する材料費は60円であった。『創傷モデル』に創傷被覆材を貼付し、石鹸とぬるま湯で洗浄したが、90名の学生が行う創傷処置への耐久性があった。『創傷モデル』は、作成が簡単で安価であり、さらに創傷処置技術を演習する必要な耐久性を備えていると考える。今後、学生の反応など調査し活用を検討していく。| The objective of the "wound management" teaching unit of basic nursing techniques is to help nursing students acquire the skills of basic wound cleaning and wound care. Nursing techniques require an educational method based on a more practical approach. Accordingly, a "wound model" was created with the objective of students obtaining knowledge not only through textbooks and lectures, but also through technical practice using the wound model. The model was created considering how "dressing materials can be used on it," "it can be washed with water," and "can be washed with soap." The "wound model" uses the buttock injection model as a foundation. The wound model was created using a glue gun, a clear file folder and a dissolving hot melt adhesive. The necessary expense for 90 students was approximately 60 yen. Using the created model, dressing materials were used and washing was performed with both soap and lukewarm water. The model could withstand the practice of 9 0 students. The wound model was both easy and inexpensive to create. Furthermore, the model had the durability necessary for use in practice. Hereafter, we believe we can survey student responses and use the model in the next academic year as well.
著者
Иванов Ю. А. 後藤 隆雄 田中 正義
出版者
神戸常盤大学 :
雑誌
神戸常盤大学紀要 (ISSN:18845487)
巻号頁・発行日
no.5, pp.23-37, 2012

チェルノブイリの立ち入り禁止区域及び退避勧告区域(無条件再定住区域)で、90Sr と137Csの土壌から植物への長期に亘る移動が測定された。本論文では移動の主たる要因を解析した。放射性降下物質(フォールアウト:fall-out)の様々な痕跡に対する土壌中の移動形態、放射性核種の水系での形成過程、放射性核種の垂直方向移動のプロファイル、土壌から植物への放射性核種の移動等について計算した。更に、移動過程のメカニズムを定量的に計算した。
著者
大城 亜水
出版者
神戸常盤大学・神戸常盤大学短期大学部
雑誌
神戸常盤大学紀要 = Bulletin of Kobe Tokiwa University (ISSN:18845487)
巻号頁・発行日
no.11, pp.125-136, 2018-03-31

本稿は、近代日本における女性労働論の史的検証を通して、その古典的価値から現代的意義を見出し、改めて今日の家庭支援のあり方への示唆を引き出そうというものである。そこで、家庭支援の初期形態を問いただす契機となった1920年代の女性労働問題に焦点をあて考察する。具体的には、女性労働の実態に精通していた河田嗣郎(かわた・しろう)の所説を取り上げる。河田は、当時の工業女性労働の視点から労働そのものの改革あるいはそれと関連する家庭支援のあり方の検討を行った。代表的な対策としては、男女平等を念頭においた「最低勞賃制の制定」や「同一様の仕事に對する同一様の報酬」、女性の職場環境の改善を目的とした「女子勞働組合」、託児所の必要性などが挙げられる。結論として、河田の所説は現在実施されている政策の先駆けともいうべきものであり、差し迫った今日的課題に対して深層から訴える有益な示唆を与えてくれているということができる。|The purpose of this study is to examine the origin of family support in Japan. We focus on the ideologies and thoughts regarding female workers’ problems in the 1920s. It is important to pay attention to Kawata Shiro, who was a leading thinker on the subject of the socioeconomic problems of female workers. Kawata conducted research on the living and working conditions of female workers in urban areas and proposed new policies to help them. His proposals included a minimum wage system and the establishment of trade unions for female workers in urban areas. Though his ideas were not implemented, it is possible to say that historical studies on Kawata's career provide useful suggestions about contemporary family support problems.
著者
佐野 光彦 岩木 秀樹
出版者
神戸常盤大学・神戸常盤大学短期大学部
雑誌
神戸常盤大学紀要 = Bulletin of Kobe Tokiwa University (ISSN:18845487)
巻号頁・発行日
no.11, pp.1-6, 2018-03-31

イスラームと、人権や平等、話し合いを基調とする民主主義は、両立不可能ではない。そもそもイスラームは、合議としてのシューラーを重視しており、西欧の民主主義とも通底する側面がある。本稿ではイスラームと民主主義の類型を考察し、西欧型民主主義の問題点を指摘し、最後にイスラーム的民主主義の可能性を展望していく。これからは西欧もイスラームも自らの民主主義を絶対視するのではなく、人権や民主などの普遍性をある程度共有しながら、各地域・時代に合った民主主義を構築する必要があろう。|Islam and democracy are not always contradictory. Originally, Islam emphasized Shura, a type of consultation before making decisions. In this paper, we consider different types of Islam and democracy, as well as the problems of Western democracy. Finally, we point out the possibility of Islamic democracy. It will be necessary to share the values of human rights and democracy and make a democracy that is adapted to the regions and the ages.
著者
伊東 美智子
出版者
神戸常盤大学・神戸常盤大学短期大学部
雑誌
神戸常盤大学紀要 = Bulletin of Kobe Tokiwa University (ISSN:18845487)
巻号頁・発行日
no.13, pp.119-126, 2020

目的:臨地実習に絞って、社会人看護学生の学びの特徴をインタビューによって明らかにする。主なインタビュー内容は、これまでの経験の中で身につけてきた知識と、新しく学ぶ看護の知識とを再構築する上での、難しさや工夫点についてである。方法:半構成的インタビューを行い、質的に分析した。結果:これまでの経験が活きてきたこととして、【言葉や技の馴染みやすさ】により学習は進みやすく、患者との【関係性の構築】はスムーズであった。しかし、経験が仇になった例として、これまでの経験の【体験レベルは人さまざま】であるのに【社会人の呪縛】に苦しみながら、看護ならではの【コミュニケーションの違い】にも苦しんでいた。また、社会人学生たちは、周囲からの期待と自己との間で【葛藤】を抱えていた。考察:社会人学生たちは、経験から学ぶ力の三要素である【ストレッチ】【リフレクション】【エンジョイメント】を相互につなげ、循環させていた。| Objective: To focus on clinical training and clarify the characteristics of learning for adult nursing students through interviews. The main content of the interviews involved the difficulty and ingenuity in reconstructing knowledge acquired in previous experiences and newly learned nursing knowledge. Method: Semi-structured interviews and qualitative analysis. Result: The experiences I have gained so far were familiarity of words and skills and building relationships. However, as an example of experience becoming a habit, students reported that while the experience level varies from person to person, being an outcast of society? they also suffered from a difference unique to nursing. In addition, working students had a conflict between their expectations and their own self. Discussion: Working students connected and circulated stretch, reflection, and enjoyment, which are the three elements of the ability to learn of learning from experience.
著者
脇本 聡美 Satomi WAKIMOTO
出版者
神戸常盤大学
雑誌
神戸常盤大学紀要 (ISSN:18845487)
巻号頁・発行日
no.2, pp.1-7, 2010

両親を亡くし、財産も少ない29歳のリリー・バートはその美貌と洗練された感性を駆使し、華やかなニューヨーク社交界に受け入れられようと、金銭的な力を持つ結婚相手を求めている。ソースティン・ヴェブレンの言う「顕示的消費」が社会的規範となっている社交界では、個人の金銭的な力が社会的名声と直結する。有閑階級の生活を手に入れようとする一方で、リリーはその社会的規範を超越したいという願望を持っている。結局、金銭的な力は手に入らず、でっち上げられたスキャンダルによって社交界を追放されたリリーは、自活する術ももたず、窮地に陥る。たまたま手にしていた手紙によって、リリーは自分を陥れた相手に復讐し、社交界に返り咲くという手段が残されていたが、自分が本当に求めていたものは、物質的ではなく精神的な充足であると気付いたリリーは、その手段を使うことなく、命を落とす。金銭至上主義社会の順応者になることを放棄し、人間として正実な道を選び死んだリリーは、道徳的にイノセンスを貫いたという点では、アメリカのイヴに、人間として気高い選択をして破滅したという点では、悲劇のヒロインと見ることができる。自分自身も社交界の中心にいた作者イーディス・ウォートンは、リリーの悲劇によって金銭至上主義となった社会を批判している。
著者
藤原 桜 尾﨑 雅子 中村 由果理 高野 奈央 高松 邦彦 破魔 幸枝 杉浦 あおい 高松 明子 中田 康夫
出版者
神戸常盤大学・神戸常盤大学短期大学部
雑誌
神戸常盤大学紀要 = Bulletin of Kobe Tokiwa University (ISSN:18845487)
巻号頁・発行日
no.13, pp.83-92, 2020-03-31

産後の母親の7割は、育児に対して自信がもてず、ストレスを感じ、身体的・精神的な不調を自覚しているといわれていることから、子育て中の母親のストレスに対する支援は重要である。アロマセラピーは、ストレスを軽減することが知られており、産褥期についての報告はあるが、子育て中の母親に対する効果の報告はない。そこで、本研究は、子育て中の母親にアロマハンドマッサージを行い、ストレスに対する効果を生理学的(唾液アミラーゼ活性)および主観的(POMS 2Ⓡ成人用 短縮版)に明らかにした。t検定とWilcoxonの符号付順位検定を用いて、対応のある母平均の差の検定を行い、マッサージの前後について、唾液アミラーゼ活性とPOMS 2Ⓡ成人用 短縮版で計測した。その結果「怒り-敵意」、「混乱-当惑」、「抑うつ-落込み」、「疲労- 無気力」、「緊張-不安」、「総合的気分状態」が有意に低下し、逆に「活気-活力」と「友好」は、有意に上昇した。なお、本研究は平成29年度に、採択された私立大学研究ブランディング事業タイプA「地域子育てプラットホームの構築を通したAll-Winプラン」における研究ブランディングAチームの地域研究の一貫として行われた研究成果である。| Because 70% of postpartum mothers are not confident about childcare, feel stressed, and are aware of physical and mental disorders, it is important to support the mother's stress during childcare. Aromatherapy is known to relieve stress, and there are reports about the effect of aromatherapy on the postpartum period. However, there are no reports on the effects of aromatherapy on the mother during childcare. Therefore, this study clarified the effects on stress, physiologically (saliva amylase level) and subjectively (Japanese version POMS2 shortened version), by giving aroma hand massages to mothers raising children. Using the t-test and Wilcoxon's signed-rank test, the difference between the population means was tested to reveal a decrease in salivary amylase activation and a 7-scale decrease. In addition, this research was conducted in 2017 as a part of the research branding A-team's area of research in private university research branding type A titled "All-Win plan through the construction of a regional childcare platform."
著者
松田 光信 河野 あゆみ 先谷 亮 Mitsunobu MATSUDA Ayumi KONO Ryo SAKITANI 神戸常盤大学保健科学部看護学科 神戸常盤大学保健科学部看護学科 財団法人松原病院
出版者
神戸常盤大学 :
雑誌
神戸常盤大学紀要 (ISSN:18845487)
巻号頁・発行日
no.5, pp.1-8, 2012

本研究の目的は、早期退院を控えた統合失調症患者の服薬アドヒアランスに影響する要因を探索し、看護実践の示唆を得ることであった。対象者は、精神科急性期治療病棟に入院中の統合失調症患者22名(男性9名、女性13名)、平均年齢44.6±13.0歳、平均罹病期間12.7±13.5年、平均入院回数2.8±3.1回、心理教育参加者15名であった。データ収集は、心理教育開催時期に合わせ、開催前にデモグラフィックスデータ、治療状況、CP換算値、機能の全体的評価、服薬アドヒアランス、服薬と病気の知識を測定し、開催後にCP換算値、機能の全体的評価、服薬アドヒアランス、服薬と病気の知識を測定した。データ分析には、強制投入法による重回帰分析を用いた。結果、服薬アドヒアランスへの影響要因は、年齢、罹病期間、職業、心理教育参加、心理教育開催前の服薬アドヒアランス(MPS、DAI-10)であり、モデル全体の78 ~ 86%が有意に説明された。これより、患者の個人特性を考慮した服薬アドヒアランスを高める支援を模索する必要性と、心理教育が患者の服薬アドヒアランス改善に向けた看護援助になり得ることが示唆された。
著者
永島 聡
出版者
神戸常盤大学・神戸常盤大学短期大学部
雑誌
神戸常盤大学紀要 = Bulletin of Kobe Tokiwa University (ISSN:18845487)
巻号頁・発行日
no.12, pp.65-72, 2019-03-31

生徒指導ないし教育相談、あるいは看護場面等、一般的に心理援助場面においては、「共感」は「善いこと」であるということに疑問が抱かれることはまずない。このことはRogers,C.R. における「共感」がベースにあると考えられる。一方で、Bloom,P. にとって共感、特に「情動的共感」は、支援者- 要支援者関係に悪影響を及ぼし得るものである。 拙稿では、心理援助場面の実際におけるいくつかのパターンについて、Frankl,V.E. の「意志の自由」の観点から考察した。そして意志の自由が適切に機能すれば、情動的共感は治療的であり得ることを示した。|It is common for teachers and nurses to regard empathy as an absolute good in psychological support. It seems that their beliefs are based on C .R. Rogers's theory of Client-Centered Therapy. On the other hand, P. Bloom argues that empathy, particularly emotional empathy, can corrode relationships between therapists and clients. In this study, the empathy of some teachers and nurses is specifically examined in relation to the concept of "the freedom of will" (V.E. Frankl's term). Results suggest that emotional empathy can be therapeutic when the freedom of will is adequately performed.
著者
今西 麻樹子 今西 孝充 高松 邦彦 中田 康夫 松田 正文
出版者
神戸常盤大学・神戸常盤大学短期大学部
雑誌
神戸常盤大学紀要 = Bulletin of Kobe Tokiwa University (ISSN:18845487)
巻号頁・発行日
no.12, pp.29-36, 2019-03-31

本研究は、大学生の心拍変動(Heart Rate Variability)を周波数解析することで得られる自律神経機能(交感神経・副交感神経活動)と生活習慣および精神的健康度との関連を明らかにすることを目的とした。生活習慣は「健康・生活習慣診断検査(Diagnostic Inventory of Health and Life Habit)」を用いて、精神的健康度は「精神的健康パターン診断検査(Mental Health Pattern)」を用いて調査した。3者の関係をみるために、Spearman の順位相関係数ρを算出し、併せて無相関の検定を行った。次に、測定項目間の関連を可視化するために、算出した相関係数からネットワーク解析を行った。その結果、18~24時での交感神経活動が生活習慣の尺度である「休養」、精神的健康度のQOL 尺度および「生活の満足度」「生活意欲」と正の相関を示した。|The purpose of this research is to clarify the relationship between autonomic nervous system (activity of sympathetic/parasympathetic nervous system) assessed by frequency analysis of Heart Rate Variability, lifestyle habits and mental health of university students, using "Diagnosis Inventory of Health and Life habits" and "Mental Health Pattern" respectively. To evaluate the relationship between these three factors, Spearman's rank correlation coefficient (ρ) was calculated and a non-correlation test was performed. Next, correlation network analysis was conducted to visualize the relationship between the measured factors. As a result, sympathetic function from 6 pm to 12 pm showed a positive correlation with "rest", which is a measure of lifestyle habits, as well as "satisfaction of life", and "lifestyle motivation" which are indicators for Quality of Life (QOL) scale of mental health.
著者
松元 英理子 高松 邦彦 坊垣 美也子 今西 麻樹子 関 雅幸 中田 康夫
出版者
神戸常盤大学・神戸常盤大学短期大学部
雑誌
神戸常盤大学紀要 = Bulletin of Kobe Tokiwa University (ISSN:18845487)
巻号頁・発行日
no.12, pp.17-28, 2019-03-31

コンピテンシーに基づく履修指導(支援)の構築を目的とし、2017年度前期・後期の履修登録期間中に学生20名を対象にチューター教員による面談指導(支援)を行った。指導(支援)用資料として「各学生のコンピテンシー自己評価レーダーチャート・自記式」と、シラバス記載の「評価方法と評価項目との関係」のデータから算出した「各学生の登録科目全体で獲得できるコンピテンシーのレーダーチャート・Web式」「基盤教育分野40科目の関連性を2次元上に可視化した図」を作成した。これらを活用し、学生が苦手な部分を伸ばすのか、得意な部分を伸ばすのか、そのためにどの科目を履修すれば良いかなどについて履修指導(支援)を行った。履修登録は学生の判断にゆだねたが、本法による履修指導(支援)が、学生に対しコンピテンシーを意識した学修への動機づけができたことが明らかになった。一方、それらを成し得るための教学面での改善点もいくつか浮かび上がった。|While competency-based education has become a popular topic in the field of higher education, it has only recently been introduced in most Japanese universities. Kobe Tokiwa University is currently undergoing reforms—one of which is competency-based education. Our university has developed a common evaluation indicator called "Tokiwa competencies" that students can acquire through regular, quasi-regular (or remedial), and extra-curricular (or club) activities. This article describes the prototype of competency-based education in Kobe Tokiwa University and how it was developed through action research. Introducing our own efforts to effectively conduct competency-based education, this article details the prototype of lecture-select-coaching through a combination of competency-based education and a web-based support system that enables students to select courses using Tokiwa competencies. The Web-based Radar Chart System of Tokiwa Competencies facilitates a new way to visualize curricula using Tokiwa competencies through a combination of cosine similarity, multidimensional scaling methods (MDS), and scatter plotting. We conclude that it is important that students can reflect on and interpret Tokiwa competencies for themselves.
著者
Yang Manuel 黒野 利佐子
出版者
神戸常盤大学・神戸常盤大学短期大学部
雑誌
神戸常盤大学紀要 (ISSN:18845487)
巻号頁・発行日
no.1, pp.61-70, 2009

アメリカのフォーレン・アフェアズ(Foreign Affairs)誌2007年一月/二月号は、世界保健を専門とするジャーナリストであるローリー・ギャレットの記事「グローバルな公衆衛生の課題」("The Challenge of Global Health")を掲載した。この記事に対して、ハーバード大学社会医療学部所属の医師/人類学者ポール・ファーマーはコメント("Intelligent Design")を書き、それにまたギャレットは返答をした("The Song Remains the Same")。下記に訳出されているのは、フォーレン・アフェアズ誌2007年三月/四月号に掲載された、この討議であり、それを独立した形で発表すのには幾つかの重要な意義がある。第一に、フォーレン・アフェアズ誌がアメリカ政府と密着した超党派的組織「外交問題評議会」(Council of Foreign Relations)の出版物であり、「外交問題評議会」の一員であるギャレットとファーマーの討議に耳を傾けるのは、世界保健政策の動向に多大な影響を与えている政策立案者たちの議論を知る大きな手がかりになるからである。第二に、貧困国において最も大きな成果を収めている草の根医療団体の一つであるPartners in Health(PIH)の創始者の一人であり、ハイチを基点として世界の貧民保健の戦線で精力的に働き続け、社会医療の指導的な存在であるポール・ファーマーの議論は、現場にいる当事者特有の現実的で建設的な視点から展開されているだけではなく、発展途上国における保健医療と資金や国家も含む組織性に関する示唆に満ちている(ピューリッツァー賞作家トレイシー・キダーの手による、アメリカでベストセラーにもなったファーマーの伝記は『国境を超えた医師』として邦訳されているので、ファーマーの仕事に興味がある方には一読を勧める)。第三に、ファーマーが下記で「ハイチモデル」と呼んでいる「家族を基盤とした」治療方法は、医師や看護師といった職業枠を超えた地域共同体と有機的に繋がっている保健労働者を母体にしているもので、「保健」を医療的な問題だけではなく、「保健」に必要不可欠な生活の糧、清浄な環境、公正な労働条件を含む社会問題として捉える実践的模範を示している。日本の保健医療システムで働く我々が、世界といかに関わるべきなのかについてファーマーは大切なヒントを与えてくれるかもしれない。ギャレットは感染症を中心とした医療問題に関わる著名なアメリカのジャーナリストで、邦訳された著作は『カミング・プレイグ―迫りくる病原体の恐怖』と『崩壊の予兆―迫りくる大規模感染の恐怖』の二冊がある。ギャレットが「グローバルな公衆衛生の課題」(日本語版フォーレン・アフェアズ誌で入手可能)で展開している主旨はアフリカやハイチを含む困窮した地域に投入されている保健関係の資金は近年膨らんでいるが、それは貧民の保健を援助するどころか様々な問題を引き起こし、世界保健の危機の要因にまでなっている。その理由は資金の使用法が「垂直的に」限定されているからである(ギャレットは「ストーブの煙突」という比喩を用いている)。例えば、エイズに指定されている資金は他の疾患に割り当てることが出来ないため、バランスの取れた保健対策が出来ない現状を生んでいる。そして、これを改善するには地域からの頭脳流出を止め、援助の対象を貧民の保健全般に変えねばならないというものである。これに対してファーマーは、エイズ資金がこれだけ集結しているのは過去の資金不足の時期に比べれば世界保健の趨勢が健全な方向に向かっている印であり、ギャレットの指摘する問題は誤った管理を解消すれば改善されると主張する。その根拠として彼はハイチで特に大きな成果を実現したPHPの経験を引き合いに出し、ハイチに関する限り健康指標の低下はクーデターのような政治状況の悪化によるものだと反論するのだ。「保健」を人権全般の改善と切っても切れない本質的問題として捉えることをファーマーは特に強調し、エイズ資金の拡大に見られる「素晴らしい情勢」を全世界の保健を可能にするきっかけとして活用すべきだと提唱している。ギャレットはファーマーの功績に尊敬を示しつつも、記事で打ち出した自分の立場を保持する。つまり、保健資金が建設的なプログラムを作成できることを問題にしているのではなく、数十億ドルにも及ぶ資金を「夥しい数の世界保健プログラムにおける混沌、競争、頭脳流出、そして腐敗の現状」が無駄にしている現実を問題にしているのだと。|The following is a Japanese translation of an exchange between the American physician and anthropologist Paul Farmer and journalist Laurie Garrett over Garrett's "The Challenge of Global Health", an article that appeared in the January/February issues of Foreign Affair. In it Farmer points out that although many of the criticisms Garrett lays at the feet of recent resurgence in what she describes "stovepipe" funds - funds earmarked for specific disease, particularly AIDS - in failing to promote general healthcare in the world's poorest countries are justified, his own experience with Partners in Health( of which he is a co-founder) in practicing social medicine at the grassroots in Haiti, Rwanda, and other places demonstrate the possibility of utilizing these very "stovepipe", vertical funds for "horizontal", more comprehensive healthcare. In order to actualize such a universal healthcare, which views health as an inalienable human right, he offers a successfully field-tested alternative model of effective social medicine, in which trained healthcare workers distribute medication and work with doctors and nurses to integrate treatment with fulfillment of everyday social needs, such as subsistence and clean environment. Garrett's reply, while acknowledging Farmer as one of the "heroes" in the current struggle for global healthcare, notes that she never questioned the constructive use of funds butthe recent resurgence of funds in the billions of dollars "ought to buy better" services.
著者
野村 秀明 小峰 春香 澁谷 雪子 瀬藤 晃一 宇佐美 真
出版者
神戸常盤大学
雑誌
神戸常盤大学紀要 = Bulletin of Kobe Tokiwa University (ISSN:18845487)
巻号頁・発行日
no.9, pp.93-101, 2016

近年の社会の高齢化に伴い、寝たきり患者数は200万人を超え、その10%以上に褥瘡の発生を見る。褥瘡の発生・増悪は直達力の他に、二次的なリスク因子が存在し、加齢に加え、栄養障害が強く相関している。この論文は、高齢者褥瘡患者についての臨床症例を通して、栄養と褥瘡治療の関連性について検討することである。今回、18名の高齢者褥瘡患者を対象に、栄養評価による栄養障害の程度、栄養管理法、および栄養療法を施行した後の褥瘡の治療反応性について検討した。その結果、対象患者は全例中等度〜高度の栄養障害を有し、その半数以上に高度の褥瘡を認めた。チーム医療による栄養管理を行った結果、18例中12例に治療効果を認め、この治療反応性は、経口摂取群、経腸栄養投与群に多く見られた。以上より、褥瘡患者では栄養障害が存在するため、局所の創管理に加えて、チーム医療による全身的な栄養管理をより生理的な栄養投与ルートを介して行うことが必要であると考えられた。
著者
戸川 晃子
出版者
神戸常盤大学
雑誌
神戸常盤大学紀要 (ISSN:18845487)
巻号頁・発行日
no.6, pp.35-47, 2013-03-31

クラシック音楽コンサートは、対象とする観客によって分別した際、マタニティーコンサート、親子のため のコンサート、そして「未就学児入場不可」のコンサートと、大きく3つのスタイルに分かれると考えられる。 しかし、未就学児の入場が可能でなおかつ、一般的なクラシック音楽で構成されたコンサートについてはあま り例がないと言える。本研究は、クラシック音楽の生の演奏を聴くことは、未就学児を含めた多世代に有用で あると考え、未就学児における、いわゆる単なる「子ども向け」ではない、一般的クラシック音楽プログラム コンサートの有用性について考察するものである。