著者
桑原 卓哉
出版者
分子シミュレーション学会
雑誌
アンサンブル (ISSN:18846750)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.285-288, 2017-10-31 (Released:2018-10-31)
参考文献数
3
著者
安藤 嘉倫
出版者
分子シミュレーション学会
雑誌
アンサンブル (ISSN:18846750)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.99-104, 2017-04-30 (Released:2018-04-30)
参考文献数
18

本記事では「京」コンピュータと汎用分子動力学計算ソフトウェアMODYLAS を用いて行った電解質水溶液中でのポリオウィルスエンプティカプシドの全原子分子動力学計算の概要を説明する. 生体系で重要な長距離静電相互作用を, 大規模並列に適した高速多重極展開法(FMM) により計算することで, 1,000 万原子規模の巨大系についても長時間の分子動力学計算を可能とした. 平衡状態でのトラジェクトリに対する解析から, ポリオウィルスカプシドの安定性についての分子論的知見を得た. 研究の過程で生じた大規模系特有の問題についても記す.
著者
永井 佑紀
出版者
分子シミュレーション学会
雑誌
アンサンブル (ISSN:18846750)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.31-39, 2021-01-31 (Released:2022-05-14)
参考文献数
27

自己学習ハイブリッドモンテカルロ法(Self-learning Hybrid Monte Carlo Method (SLHMC))法とは, 「第一原理分子動力学法と同じ精度が保証された」機械学習分子シミュレーションである. この手法について解説を行う. 第一原理分子動力学法(密度汎関数理論によって計算されたポテンシャルを用いる手法)は計算コストが高いために, 最近では機械学習分子動力学法が使われ始めてきている. この手法は広く用いられてきているが, 実行される結果の精度が用いた人工ニューラルネットワークの質に左右されるために, どのくらいのデータを学習すればよいのか, どこまで学習すれば十分な精度が得られるのか, 等を判断することが難しい. また, 第一原理分子動力学計算では計算が難しいより大きな系に機械学習分子動力学法を用いる場合, そもそもその領域で正しい結果となっているのか, 注意深く調べなければならない. 本原稿では, 機械学習分子動力学法の概略と問題点について述べたあと, これらの問題を解決するために,SLHMC 法の紹介を行う.
著者
吉井 範行
出版者
分子シミュレーション学会
雑誌
アンサンブル (ISSN:18846750)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.258-264, 2019-10-31 (Released:2020-10-31)
参考文献数
22

本稿では静電相互作用計算アルゴリズムである高速多重極展開法(fast multipole method, FMM)について解説する.FMMは,原子数Nの系の静電相互作用をNのオーダーの計算量で求めることができる,いわゆるO(N)アルゴリズムである.並列計算におけるMPI通信や計算量の観点から,高並列コンピュータを用いた大規模系のMD計算においてその有効性を発揮する.ここでは,GreengardとRokhlinによって示された球面調和関数でなく,solid harmonicsを基底関数として用い,簡潔な形のFMM表式を示す.
著者
堀越 篤史
出版者
分子シミュレーション学会
雑誌
アンサンブル (ISSN:18846750)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.42-47, 2017-01-31 (Released:2018-01-31)
参考文献数
13

南部力学とは,一般化されたハミルトン力学である.南部力学はシンプレクティック性を持たないが,ハミルトン力学系におけるシンプレクティック数値積分法に似た,相空間の体積要素を保存する数値積分法を構成できる.オイラーのコマを例に,南部力学系における体積保存数値積分法を解説する.
著者
野口 博司
出版者
分子シミュレーション研究会
雑誌
アンサンブル (ISSN:18846750)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.265-268, 2013-10-31 (Released:2014-10-31)
参考文献数
16

本連載では粒子描像の流体力学計算手法, 散逸粒子動力学法(dissipative particle dynamics, DPD)とmulti-particle collision dynamics (MPC)について解説する. 一回目は各手法の簡単な説明と手法間の関係について説明する.
著者
横田 理央
出版者
分子シミュレーション研究会
雑誌
アンサンブル (ISSN:18846750)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.85-89, 2012-04-30 (Released:2013-04-30)
参考文献数
11

Treecode やFMM などのアルゴリズムはN 個の粒子同士の相互作用の計算量を精度と引き換えにO(N2) からO(N logN) もしくはO(N) に軽減することができる.これらの手法では,粒子をセルに分割し木構造を構築した後,その木構造を走査しながらセル単位で相互作用を計算する.このとき,木構造の走査は並列化が容易でありGPU 上での計算に向いているが,木構造の構築はGPU への実装の際に多少の工夫を要する.ここでは,GPU 上での木構造の構築の一例を示すとともに,性能向上に必要なアルゴリズム上の工夫に関する検討を行う.
著者
大槻 道夫
出版者
分子シミュレーション学会
雑誌
アンサンブル (ISSN:18846750)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.88-93, 2014-04-30 (Released:2015-06-03)
被引用文献数
1

砂や粉などの大きさを持った粒子が多数集合した粉体は,その中に含まれる粒子の密度があるしきい値より低い場合は流体的に振る舞う一方,そのしきい値より高い場合は固体的な振る舞いをしめす.この密度による状態変化はジャミング転移と呼ばれ,転移点近傍で様々な臨界的性質が観測される.近年のシミュレーションや現象論を用いた研究によって,その臨界指数や転移のタイプが粒子間相互作用のような系の詳細に対して強い依存性を示すことがわかってきた.
著者
小林 千草
出版者
分子シミュレーション学会
雑誌
アンサンブル (ISSN:18846750)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.51-59, 2022-01-31 (Released:2023-01-31)
参考文献数
54

GENESIS(Generalized-Ensemble Simulation System)はタンパク質や核酸,膜分子などの生体システムの分子動力学法計算エンジン,モデリング,解析ツールを含んだプログラムである.これまでに計算が難しかった時空間の生命科学等を解析するため,「富岳」などスーパーコンピュータによる効率的な大規模並列計算を実現できることが大きな特長である.本稿では,GENESIS の特徴などを述べるとともに,公開版GENESIS1.7 と,開発版GENESIS2.0b3 の二つの最新版に対して,代表的な機能や高速化について紹介する.
著者
三上 益弘
出版者
分子シミュレーション学会
雑誌
アンサンブル (ISSN:18846750)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.108-112, 2018-04-30 (Released:2019-07-04)
参考文献数
32

初回は,モンテカルロ法と分子動力学法の誕生の歴史について述べたい.モンテカルロ(MC)法の誕生の契機は第二次世界大戦中の原子爆弾の開発において,媒質中の中性子拡散を正確に予測するために,主としてスタン・ウラムにより創始され,フォン ノイマンはその命名者となった.一方,分子動力学(MD)法は,アルダーらにより,剛体球系で創始され,ソフトコア系に拡張され結晶の放射線損傷のシミュレーションに適用された.その後,MC, MD法ともに物質科学に本格的に利用されるようになった.
著者
志賀 基之
出版者
分子シミュレーション学会
雑誌
アンサンブル (ISSN:18846750)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.102-105, 2012-04-30 (Released:2013-04-30)
参考文献数
15

近年の大型並列計算機の発展とともに分子シミュレーションと電子状態計算を統合した第一原理シミュレーションが普及し,国際標準になりつつある.これを用いて,従来では扱えなかった複雑な化学反応動力学や,光吸収や電磁場応答のような電子状態由来の物性などを対象に,さまざまな応用研究が広まっている.本稿では,電子状態理論の基礎をなす Hartree-Fock 法について,分子シミュレーションとの接点を少し意識しながら再考したい.
著者
高橋 英明
出版者
分子シミュレーション研究会
雑誌
アンサンブル (ISSN:18846750)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.51-54, 2014-01-31 (Released:2015-07-10)
参考文献数
11

大規模系の電子状態計算において要となるKohn-Sham の密度汎関数法(DFT)について,そのいくつかの問題点をレビューする.その1つは,Kohn-Sham 法において変分探索する電子密度の集合にある.通常のやり方では,実際には,相互作用の無い参照系の「基底状態」電子密度の集合のみを探索することになる.この密度の集合は,本来探索すべきN-表示可能な密度の部分集合にしかなっていないので,正しい電子密度に辿りつけない可能性がある.また,全エネルギーへの寄与の大きな交換汎関数Ex[n]について,これまでの主流の汎関数開発の経緯とその設計指針を論じ,それらとは異なる始点を持つBecke-Roussel 汎関数の概要と利点を紹介する.現在の主流の交換汎関数は一様な電子ガスの交換ホールをモデルとして構築されているが,このモデルは,原子や分子のように,その外縁部の密度が一様性から著しく逸脱する場合には適切ではない.Becke-Roussel のモデルは,原子,分子系の応用にとって理にかなった描像を与えるものである.
著者
川井 敦 福重 俊幸 中里 直人 成見 哲
出版者
分子シミュレーション研究会
雑誌
アンサンブル (ISSN:18846750)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.81-84, 2012-04-30 (Released:2013-04-30)
参考文献数
4

GPU を使用するためにはアーキテクチャや開発環境の使用法を学び,既存のプログラムに変更を加えねばなりません.PC クラスタのような分散環境を用いる場合には,プログラムの変更はさらに煩雑になります.これらの手間を軽減するために,我々はGoose とDS-CUDA という2 つのツールを開発しました.
著者
米谷 佳晃 河野 秀俊
出版者
分子シミュレーション研究会
雑誌
アンサンブル (ISSN:18846750)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.182-186, 2012-10-31 (Released:2013-12-31)
参考文献数
18

生体分子表面は複雑であり,それゆえ水のダイナミクスは多様である.水分子の生体分子表面滞在時間は,数psから数100 psまで様々であるが,その違いはどのようにして生じるのであろうか.筆者らは,様々な塩基配列をもつDNAを対象にした分子動力学シミュレーションから,DNAと水の水素結合様式とDNA表面の構造揺らぎが,水分子の滞在時間に関係していることを明らかにした.そこでは,Laage-Hynesにより示された水素結合組換えのメカニズムとの接点も明らかになった.今後,タンパク質の場合なども含め,水分子の滞在時間を統一的に理解し,表現していくためには,これまで示唆されてきた表面の形状と電気的性質の影響も考慮しなければならない.
著者
森 貴司
出版者
分子シミュレーション学会
雑誌
アンサンブル (ISSN:18846750)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.118-126, 2020-04-30 (Released:2021-04-30)
参考文献数
16

相加性は統計熱力学の基本的な性質である.相加性を認めれば,そこからエントロピーの凸性,異なるアンサンブルの等価性,比熱の非負性など,様々な重要な性質が導かれる.統計力学の理論を数学的に厳密に適用すると,短距離相互作用系の平衡状態は必ず相加性を満たすという結論が得られる.しかしながら,この議論には落とし穴があり,短距離相互作用系であっても,「真の平衡状態」に達する前に現れる長寿命の「準平衡状態」においては,自由度間に実効的な長距離相互作用が働く結果相加性を破る場合があることを説明する.この「準平衡状態」はもとのハミルトニアンとは異なるハミルトニアンの平衡統計力学で記述される.つまり,多体系の非平衡ダイナミクスから得られる時系列データの中に,まったく異質なハミルトニアンの平衡統計力学が埋まっていたことになる.