著者
藤野 洋輔 福本 浩之
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン (ISSN:21860661)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.284-297, 2022 (Released:2022-03-01)
参考文献数
20
被引用文献数
2

水中での通信には,吸収減衰が少なく,海水の濁りや太陽光の干渉等の影響を受けない音響通信が一般的に利用されている.しかし,音波の伝搬速度は電波と比べて5桁以上遅いことから,遅延広がり,ドップラー広がりが共に桁違いに大きい二重選択性フェージングが発生し,その伝搬路変動の克服が課題である.一般的に通信の高速化には高周波数帯を利用した広帯域伝送が有効であるが,高い周波数を利用した際により顕著となる高速な伝搬路変動に追従可能な波形等化技術が確立されていなかったため,水中音響通信の高速化には限界があった.近年,高周波数帯利用時に発生する高速な伝搬路変動の克服を目指し,マルチパス波の一部を空間領域で抑圧することで遅延広がり,ドップラー広がりを圧縮する時空間等化技術が提案されている.本論文では,時空間等化技術を解説するとともに,その動作原理や伝搬路変動への耐性を確認するための計算機シミュレーション,伝送実験について紹介する.
著者
荒木 智宏
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン (ISSN:21860661)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.205-215, 2019 (Released:2019-12-01)
参考文献数
53
被引用文献数
1

長い助走期間を終えて,宇宙での光通信はようやく実用段階に到達した.本論文では,まず宇宙光通信のれい明期からの歴史について概説する.次に,世界の宇宙光通信の研究開発動向について距離別に分類し述べる.更に,宇宙光通信を実現するための技術及び課題を,主に大容量通信技術の観点から紹介する.その中で,特に送受信技術については,IoT 時代を支える大容量通信技術である光ファイバ通信システム・デバイス技術の成果を活用していることを,国際標準化の動向とともに紹介する.
著者
庄木 裕樹 田邉 康彦
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン (ISSN:21860661)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.11, pp.11_12-11_22, 2009-12-01 (Released:2011-06-02)
参考文献数
25

無線通信システムは,通信速度の高速化への要求とその実現によって発展してきた.そして,現在も,更なる高速化を目指して,研究開発や標準化が進められている.では,今後,どこまで高速化されるのか? 高速化できるのか? 本論文では,無線通信の更なる高速化に対する要求とその可能性について探る.
著者
伴 弘司 北沢 祥一 小林 聖
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン (ISSN:21860661)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.25-32, 2013-06-01 (Released:2013-09-01)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

様々な機器を無線で接続して自動化やシステムの効率化を進める機器間通信 (Machine-to-Machine,M2M) 技術が広がりを見せている.この技術を狭小な機器内空間に適用して機器内の部品間の通信用配線を無線化しようとするのがワイヤレスハーネスである.我々はこれまでにICT機器内の通信用ハーネスに着目し,その無線化の要素技術の確立と効果について検証を進めてきた.今年度からは対象を車両に向け,燃費向上や省エネ化を進める車載ハーネスの無線化技術の研究を開始したところである.ワイヤレスハーネスを特徴付けるものは,部品が多く金属に囲まれた狭小な空間内という伝搬環境と,低システム遅延や多元接続性などの通信要求仕様である.ただし,後者については適用シーンによって様々な考え方がある.ワイヤレスハーネスは軽量化をテコとする省資源・省エネに効果があるだけでなく,作業性向上などの様々なメリットがあるが,実用化例はまだ多くない.コストとともに信頼性や厳しいシステム要件がハードルになっているように思われる.そこで,我々のこれまでの研究成果を振り返るとともにワイヤレスハーネスについて内外の動向を紹介し,そのユニークさや有用性,課題などについて論じる.