著者
Paul S. Adler
出版者
Japan Academy of Business Administration
雑誌
經營學論集 (ISSN:24322237)
巻号頁・発行日
pp.5-25, 2017 (Released:2019-09-26)

Confronted by so much unnecessary suffering and destruction around us, scholars have an obligation to contribute to efforts to repair the world. We must then decide what model of a better world should guide these efforts Among the competing models, I focus on democratic socialism—a planned economy under socialized ownership. Large-scale experiments with socialism to date have not been successful in meeting economic and social needs, but nor were they very democratic. I argue that the organizing principles that would undergird a genuinely democratic form of socialism that meets our economic and social needs are emerging in some of our leading corporations. In order to stabilize and generalize this emergent organizational model, these same principles could be applied at the societal level.

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著者
加護野 忠男
出版者
日本経営学会
雑誌
經營學論集 第87集 日本の経営学90年の内省と構想【日本経営学会90周年記念特集】 (ISSN:24322237)
巻号頁・発行日
pp.26-31, 2017 (Released:2019-09-26)

バブル崩壊以降,金融庁と東京証券取引所が主導して行った企業統治制度改革は,日本の産業界にさまざまな影響を及ぼした。よい影響より悪い影響のほうが多かったと私は感じている。雇用の不安定化や非正規従業員比率の増大など,健全だった日本的雇用慣行が劣化した。このままでは日本企業の競争力が失われるのではないかと危惧する専門家も出てきている。長期のメリットよりも短期の利益が優先された結果だといえるであろう。配当や自社株買いなどのペイアウトが増大し,投資が縮退した。新事業開発投資は行われなくなり,低収益事業からの撤退が相次いだ。撤退はトップ主導で行うことができる。日本企業の強みであったボトムアップ経営は弱体化し,トップダウン経営が強化された。低収益事業からの撤退は,短期的には利益率の改善をもたらす。経営者の短期利益志向,リスク回避の傾向がより顕著になり,長期志向の抜本的な事業改革よりも短期的視野での利益率改善策が優先されるようになった。並行して行われた銀行融資制度の改革にともなってリスクヘッジとなる内部留保が必要以上に増大した。企業統治制度改革は,これらの経営劣化の唯一の原因だとは言うつもりはないが,少なくとも多様な原因の一つ,それも重要な原因の一つとなっていたとは言えるだろう。なぜこのような失敗が犯されたのか。これらの劣化から脱却し,企業の長期的活力を高めるために,金融庁や東京証券取引所などの市場規制当局や企業経営者自身は何をなすべきか。また経営学者は何をすべきか。これらの問題をこの講演で考えたい。
著者
李 東浩
出版者
日本経営学会
雑誌
經營學論集 第89集 日本的経営の現在─日本的経営の何を残し,何を変えるか─ (ISSN:24322237)
巻号頁・発行日
pp.F39-1-F39-8, 2019 (Released:2019-09-26)

本論文は,従来の模倣か創造かという二者択一的な見方と一線を画して,組織学習理論と組織能力理論の視角から,模倣と創造の両者におけるダイナミックなスパイラル上昇進化関係に焦点を合わせ,模創(もそう: imicreation)という理論概念と模創モデル(ダイクモデル:DAIC Model)を提起し,模倣と創造の理論フレームワークを構築する。模創は複製型模倣(DI:Duplicative Imitation),適応型模倣(AI:Adaptive Imitation),模倣型革新(II: Imitative Innovation),創造型革新(CI:Creative Innovation)の4モードから構成される。学習構造の面では「複製→活用→再結合→探索」といったダイナミックなサイクル(RERE Cycle)を導入し,知識能力の面では「何をするか→如何にするか→何故なのか→するかどうか・何時か」といったダイナミックなサイクル(WHWW Cycle)をも導入し,この2つのサイクルを行いながら,常に高いステージへの進化を目指すことを説明する。
著者
青木 幹喜
出版者
日本経営学会
雑誌
經營學論集 第89集 日本的経営の現在─日本的経営の何を残し,何を変えるか─ (ISSN:24322237)
巻号頁・発行日
pp.F42-1-F42-9, 2019 (Released:2019-09-26)

本研究では,「日本企業においてマネジャーがエンパワリング・リーダーシップをとるのは,どのような要因によって影響されるだろうか」というリサーチ・クエスチョンを明らかにするために,実証研究を行った。マネジャーがエンパワリング・リーダーシップをとるかどうかに影響を与える要因として,マネジャー自身の特徴(プロアクティブ性向,仕事の負担),部下の特徴(プロアクティブ性向,成熟度),そしてタスクの特徴(不確実性,依存性)を取り上げ,これら3つの要因がエンパワリング・リーダーシップへ影響を与えると予測した。日本の製造企業の製造現場で勤務する従業員を対象にしたアンケート調査を行い,データを入手し,そのデータを分析した結果,マネジャー自身の特徴のうち,マネジャー自身がプロアクティブ性向を持つかどうかが,マネジャーがエンパワリング・リーダーシップをとるかどうかにもっとも影響を与えることがわかった。
著者
三崎 秀央
出版者
日本経営学会
雑誌
經營學論集 第89集 日本的経営の現在─日本的経営の何を残し,何を変えるか─ (ISSN:24322237)
巻号頁・発行日
pp.F26-1-F26-9, 2019 (Released:2019-09-26)

本稿は戦略と人事との適合および戦略の明示が手続的公正に対して与える影響について,大量サンプルを用いた定量的分析によって明らかにするものである。筆者のこれまでの一連の研究では,人事の適合および戦略の明示が手続的公正に対して正の影響を与えることを一貫して示してきた。本稿では,評価や報酬,配置など人事をより詳細な次元で測定することでより具体的なインプリケーションを得ることができた。評価や昇進,配置などの人事と戦略の適合は,手続的公正に対して直接的な影響を与えていた。一方で,報酬と戦略の適合は,直接的な影響ではなく,戦略の明示と交互作用効果を示した。本稿の分析結果を端的に要約すると,組織の価値観を示す戦略を組織成員に対して明示することによって手続的公正が高まること,戦略と人事を適合させることによって手続的公正が高まること,報酬など一部の人事施策については,戦略適合だけでは効果を発揮せず,戦略の明示が必要であることなどが示された。
著者
志賀 敏宏
出版者
日本経営学会
雑誌
經營學論集 第89集 日本的経営の現在─日本的経営の何を残し,何を変えるか─ (ISSN:24322237)
巻号頁・発行日
pp.F29-1-F29-9, 2019 (Released:2019-09-26)

イノベーションにおいて,偶然が重要な要素となるセレンディピティに関して,偶然の役割の核心を明らかにした。それは「偶然が,含意する真理を示し,人がそれに気付くこと」,あるいは「偶然が思考の触発契機となり,潜在的に継続していた思考において,創造が瞬時に成就すること」である。左記の核心の存否によってセレンディピティを識別した上で,偶然が創造活動(科学的創造,技術革新,市場創造)のどの分野に生起するか,加えて仮説構築過程または仮説検証過程のいずれに作用するかによってセレンディピティの六類型を抽出した。以上により,今後のセレンディピティ研究の全体フレームを提示する。
著者
鈴木 信貴
出版者
日本経営学会
雑誌
經營學論集 第89集 日本的経営の現在─日本的経営の何を残し,何を変えるか─ (ISSN:24322237)
巻号頁・発行日
pp.F32-1-F32-7, 2019 (Released:2019-09-26)

企業,産業の海外シフトが進む中,地域の産業集積はどのようなプロセスのもとで再生が可能になるか。この問いに対し故天野倫文東大准教授は新潟県中越地域を事例として一連の研究を行った。先行研究は,成長している企業は地元業者との分業関係のもとに,自らは開発に特化しニッチ分野で高い競争力を持つ製品を開発し販売を東アジアに広げ受注を伸ばしていることを明らかにし,これらの企業の成長とともに産業集積が再生へ向かっていると論じた。 本研究は,先行研究から10年以上が過ぎた今,先行研究どおりに産業集積は再生したのかという問題意識のもとに,その検証を試みた。先行研究の調査後も一連の企業,産業集積はおおむね先行研究の方向で成長していた。しかし,リーマンショックにより,どの企業も壊滅的な打撃を受け,特に東アジア,ニッチ分野に力を入れていた企業は,その影響が大きかった。リーマンショック後,各社はそれぞれ経営体制を大きく変えることにより業績を戻し,そのことにより産業集積が新たな形で再び再生へと向かっていることが明らかになった。
著者
竹野 忠弘
出版者
日本経営学会
雑誌
經營學論集 第89集 日本的経営の現在─日本的経営の何を残し,何を変えるか─ (ISSN:24322237)
巻号頁・発行日
pp.F12-1-F12-8, 2019 (Released:2019-09-26)

「改善」主義への疑問=「かんばん」のない場合の「改善」運用問題 中小製造業企業経営において,「作業改善」活動のみがもちこまれてしまうと人員削減や事業そのものの廃業・転業などの問題を招くことが地元企業経営者やコンサルタントから指摘されてきた。すなわち量販量産の必要性がない場合や受注が「平準化」されていない場合,現場改善した中小企業は,少量の注文を効率的にこなすだけの「縮小均衡」に陥ると指摘されてきた。本論文では,こうした状況について,想定事例に基づき算術的に検討する。すなわち,現場「改善」の生じる利益は,新規事業開拓がされない場合,人件費の削減分として得られることを示す。その結果,「改善」は経営者には「利益」をもたすが,従業員には事業縮小と人員削減という不利益をもたらすことを指摘する。企業全体が事業を存続させ相互的な利益を得るには,経営側には「平準化」された注文を開拓できる製造体制づくりが必要となる。最後に,そのための改革・戦略の方向性について検討し提示する。
著者
宮重 徹也
出版者
日本経営学会
雑誌
經營學論集 第89集 日本的経営の現在─日本的経営の何を残し,何を変えるか─ (ISSN:24322237)
巻号頁・発行日
pp.F13-1-F13-7, 2019 (Released:2019-09-26)

本研究では,バイオ医薬品企業のパイオニアであるアムジェン社とジェネンテック社の 2社の事例から,バイオ医薬品の研究と開発が規模的に分離する傾向にあることを明らかにする。 まずは,医薬品企業の研究開発を分析した既存研究をまとめるとともに,低分子化合物医薬品とバイオ医薬品のそれぞれの研究開発プロセスを説明のうえ,バイオ医薬品の研究開発における特質を示す。続いて,バイオ医薬品企業であるアムジェン社の計量分析から,バイオ医薬品の研究と開発が規模的に分離していることを明らかする。さらに,アムジェン社とジェネンテック社の事例分析から,バイオ医薬品の研究と開発が規模的に分離していることを明らかにしていく。なお,アムジェン社については独立企業であり計量分析データが収集できたが,ジェネンテック社はロシュ社の子会社となっており,同社単独の計量分析データが収集できなかったため,計量分析は実施していない。