著者
石井 岳史 川上 直人 橋本 剛 池田 心
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.12-19, 2019-11-01

ボードゲーム『ガイスター』は6×6 のボード上で青赤2 種8 つの駒を交互に動かし,「脱出」「青駒全取り」「赤駒全取られ」のいずれかを狙う,互いの駒色がわからない2 人用不完全情報ゲームである.著者らはガイスターにおけるコンテンツとして詰めガイスター問題を提案したが,生成アルゴリズムの要因から 11 手詰めまでの問題しか生成できず,さらに問題の質を評価することができなかった.そこで本稿は,生成アルゴリズムにおける必勝手探索の探索法に Df-pn を用いることで大幅に探索速度を改善し,19 手詰め問題を得ることに成功した.それに加え,元の問題から手を戻すことで新たな問題を生成する逆順生成法を用いることで,狙った手数の問題の生成を可能とした.さらに,被験者実験を行い生成した問題の面白さと難しさについてアンケートを取り,教師あり学習を行うことで特徴量から面白さと難しさの推定を行った.推定誤差は5 段階評価の 0.5~0.6 程度で,ある程度の問題選別が可能であることを示した.
著者
若林 広志 伊藤 毅志
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.60-65, 2019-11-01

本研究では,人間よりも十分に強い囲碁 AI を学習に役立てる方法として,囲碁初心者の着手を褒めることに着目する.囲碁指導者の資格を持つ指導者の協力のもとに行った調査により,どのような点に着目し,どのような褒め方をどの程度の頻度で行っているのかを調べ,それを反映したプロトタイプシステムを提案した.それを用いた評価実験では,このシステムによる明確な動機づけの向上が確認されなかった.その理由として,褒め方が単調であった点や初心者のプレイヤーは着手や盤面の良し悪しを理解することが難しいため,達成したことがうまく伝わらなか った可能性が示唆された.そのため,改良する提案システムでは,改良されたことを具体的な数値や図示しながら褒めることでプレイヤーが達成したことをわかりやすく伝え,自己効力感を向上させることにした.今後は,提案システムを用いた評価実験を行い,その有効性を示していく.
著者
宗藤 大貴 長尾 智晴
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.1-6, 2019-11-01

人工知能の発展により,様々な論理パズル問題を人間の事前知識なしで解く能力は年々向上している.しかし,パズル問題の創作に関しては,解が一つでないことや生成された問題の評価が難しいことから解答に比べ困難なタスクである.本稿では,パズル問題の中でも,持ち駒があるなどの性質から創作が難しいと考えられる詰将棋を題材とする.エキスパートによる詰将棋創作では,短手数の詰将棋や長手数の余詰めのある詰む局面の情報を利用する.この考え方に基づき,進化計算法の 1 つである遺伝的アルゴリズムによって,局面の変換を最適化することで長手数の詰将棋を生成する手法を提案する.実験の結果,最長で 31 手詰めの詰将棋が生成できることが確認できた.
著者
木谷 裕紀 大渡 勝己 小野 廣隆
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.258-265, 2019-11-01

単貧民とは,不完全情報多人数ゲームである大貧民を完全情報ゲームとして簡易化したものである.これまでの研究により,二人単貧民に関しては配られた手札からどちらが必勝プレイヤであるかどうかを線形時間で判定できることがわかっている.本研究では手札非公開で行う不完全情報単貧民において如何に「必勝戦略」を得るかについて考える.手札に関する情報が全くない場合,確定的な意味で「必勝戦略」を得ることは難しい.このため,本研究では相手の手札に関する部分的な情報を提供するオラクルの存在を許したモデルを定義し,そのオラクル存在下で必勝戦略が得られるかどうかについて考察する.相手がどの札を持っているかなどの情報がない状況でも,マッチング数と呼ばれるゲームの構造パラメータを得るオラクルさえあれば完全情報単貧民と同様の必勝戦略をとることができるなど,オラクルの強さと必勝戦略発見可能性に関する様々な結果が得られることを示す.
著者
瀧澤 武信
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.101-108, 2019-11-01

「世界コンピュータ将棋選手権」(第 10 回までは「コンピュータ将棋選手権」)は 1990 年 12 月 2 日に第 1 回(1 日制)が開催され,その後,時期を少しずつ後ろにずらしたため1995年には行われていないが,継続的にほぼ年に 1 回ずつ開催され,2019 年 5 月 3日~5 日(3日制)には第 29回が開催された. 初期のころは上位入賞プログラムも弱いものであったが,2005 年ころから急速に強くなり,今日に至っている.ここでは,第16 回から第 20回までのコンピュータ将棋選手権で活躍したプログラムの実力を検証し,さらに人間プレ ーヤとの対局と今日への繋がりについて考察する.
著者
原口 海 池田 心
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.227-234, 2019-11-01

スピードランとは,主にアクションゲームをできるだけ短い時間でクリアする“遊び方”であり, 日本ではタイムアタックなどとも呼ばれて親しまれている.スピードランをうまく行うためには,適切なルートつまりステージの進め方を設定したうえで,それを正確にこなす必要がある.上級者のルートは動画サイトなどで見つけられるが,それは初中級者には模倣が難しいものである.そこで本研究では,Marioについて初中級者でもプレイできるようなルートを自動的に提案するようなシステムを目指し,これをペナルティ付き遺伝的アルゴリズム(GA)で実現することを目指した.最速クリアのみを目指した GA では12 回も敵キャラとニアミスをしたが,ニアミスにペナルティを加えた GA ではそれを 4 回に抑えることができた.面白い点として,後者のほうがクリアタイム自体も早くなったことも挙げられる.
著者
中屋敷 太一 金子 知適
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.86-93, 2019-11-01

AlphaZero は同一のアルゴリズムで強いプレイヤを作成できることを将棋,チェス,そして囲碁の3 つのゲームのそれぞれで示した.しかし AlphaZero の手法は,どのくらいの学習でどのくらい強くなるかなどを理論的に解析することは難しく,プレイヤ強さを測るには実験的に行うしかない.本稿ではAlphaZero の手法で学習を行ったニューラルネットワークがどの程度正しい判断をしているかを,すでに完全解析されたゲームであるどうぶつしょうぎを用いて,完全解析結果と比較し測定した.また異なる大きさのニューラルネットワークを用いて実験を行い,ニューラルネットワークの大きさによる影響を測定した.さらに完全解析結果を用いた教師あり学習も行い,ニューラルネットワークの大きさそのものによる性能比較も行った.最後に AlphaZero が指し手決定の際に用いている探索アルゴリズムである.Monte-Carlo Tree Search について,そのハイパーパラメータによる違いを簡単に調査した.実験の結果,教師あり学習の場合には大きいニューラルネットワークほどよい性能である一方で,AlphaZero の手法で用いる際には必ずしもそうではないことを示した.また Monte-Carlo Tree Search のハイパーパラメータによって探索の挙動が大きく変わることを示した.
著者
芝 世弐
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.7-11, 2019-11-01

本研究はコンピュータ将棋における対戦勝率を向上させる手段として考慮時間を有効活用する手法を改良するものである.過去に示したモデルに加えて対戦相手の指し手をさらに手絞り込むことの可能性を示した.
著者
天川 拓海 荒川 達也
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.109-113, 2019-11-01

プレイに対してアドバイスを行う格闘ゲーム初心者向け練習支援システムを提案する.今回は,試合後に試合中のミスプレイに対する正しいプレイをアドバイスする機能,ミスプレイをした場面をやり直す機能,悪質行為とみなされる行為を警告する機能を提案し,簡単な試作システムにより評価実験を行った.
著者
許 俊傑 問馬 樹 方 舟 パリヤワン プージャナー 原田 智広 ターウォンマット ラック
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.221-226, 2019-11-01

本論文では,体全身を使用するモーションゲームにおいて,身体部位の使用のバランスを促進するための,対戦格闘ゲーム AI を提案する.本研究では,プレイヤーのゲーム支配力を調整することで,プレイヤーの入力に基づき,AI のアクションを制御する「プレイヤー支配調整(Player Dominance Adjustment, PDA)」と呼ばれる,新しい概念を使用する.これは,AI がプレイヤーの実行しようとしているアクションを分析し,そのアクションがバランスを高める場合,AI キャラクターにもっと有利な行動を取って,プレイヤーのゲーム支配力を上昇させる.そうでない場合,プレイヤーに対し AI が強い行動を取るように,モンテカルロ木探索(MCTS)から取得した行動を実行する.実験により,提案された AI が既存の AI(MCTS ベースの AI)よりもバランスが取れていることが示唆される.
著者
山田 豊大 阿原 一志
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.122-125, 2019-11-01

不完全情報ゲームの 1 種であるトレーディングカードゲーム(TCG)は,デッキ(ゲームに使用するカードセット)を各プレイヤーが一定のルール化で自由に作成できるなど,囲碁や将棋,その他ボードゲームにはないゲーム要素が特徴である.したがって、強い,または人間らしいエージェントの作成等の研究は人間の意思決定過程の解明等に有意義であると考えられる.本稿では,『エージェントの個性に合わせたデッキを構築することが可能である』という仮説の実証のため,単純な TCG のプラットフォームをオリジナルに実装した.その上で遺伝的アルゴリズムによって個性のあるエージェント作成し,異なる個性のデッキを扱わせた際の挙動について観察した.さらに,そのエージ ェントの盤面評価をさらに良いものにするためにニューラルネットワークを用いたエージェントについても考察した.
著者
阿保 達也 松原 仁
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.155-160, 2019-11-01

コンピュータゲーム開発において、レベルデザイン、つまり難易度の調整は非常に重要なフェーズであるとともに、手間がかかりそれ自体が難しい。本研究では、ローグライクゲームのプレイ特徴を抽出、クラスタリングすることで、その結果を動的難易度調整に適用し、プレイ内容に応じて実際に難易度を動的に調整することを目的とする。