- 出版者
- 人工知能学会
- 雑誌
- 人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
- 巻号頁・発行日
- vol.25, 2011
2011年春にリメイク映画が公開された,藤子・F・不二雄の『大長編ドラえもん のび太と鉄人兵団』は,「ひとりの人間がロボットのユートピア社会を設計することは可能なのか」というハードな主題を持つ傑作漫画であった.この漫画には人工知能を搭載する多彩なロボットが登場するが,なかでも興味深いのはスネ夫が持つヒト型ホビーロボット〈ミクロス〉の設定である.原作漫画と1986年版のアニメ映画を比べてみてほしい.ドラえもんから人工知能を授かったミクロスは,原作では「人間並みの知能」と説明されるが,映画版では主人である「スネ夫並みの知能」と表現されている.このわずかな違いは,しかし現代において先端の人工知能SFを描く際に,重要なポイントのひとつとなり得る.
「人間並みの知能」を考えることの可能性と限界はどこにあるか.この講演では,演者が2011年2月に発表したノベライズ長編『小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団』(小学館刊)のエピソードを皮切りに,古今の人工知能SFを参照しながら,人工知能研究の未来ヴィジョンと物語が持つ想像力の交差点を探ってゆく.知能と身体性,社会,未来,創造性などがキーワードとなるだろう.わかりやすく肩の凝らない講演にしますので,くつろいでお聴きいただければ幸いです.
招待講演