著者
吉田 聡 立花 義裕 小松 幸生 山本 雄平 藤田 実季子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

日本に豪雨をもたらす水蒸気は熱帯・亜熱帯の暖かい海から蒸発し、陸上へ流入する。しかし、極軌道衛星搭載マイクロ波放射計による鉛直積算水蒸気量(可降水量)の1日2回の観測では数時間で数kmの範囲に局所的な豪雨をもたらす降雨帯への水蒸気流入を把握することはできない。本研究では、船舶に搭載したGNSS受信機及び雲カメラ付きマイクロ波放射計と、新世代静止気象衛星ひまわり8号の多チャンネル熱赤外センサとの高頻度同時観測を元にした、海上可降水量の微細構造を水平解像度2kmかつ10分毎にリアルタイム推定する高解像度海上可降水量マップ作製手法を開発し、豪雨災害予測の定量化と早期警戒情報の高精度化に貢献する。
著者
立花 義裕 本田 明治 竹内 謙介
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.579-584, 1996-08-25
被引用文献数
14

オホーツク海の海氷の1969年から1994年までの経年変動を流氷レーダデータ及び海氷格子データを用いて調べた. その結果, 1989年を境にオホーツク海南部の海氷量が激減していることが明らかになった. また, 冬のアリューシャン低気圧も, 1989年を境に急激に弱まっており, ラグ相関の解析結果からその低気圧の弱まりが海氷の激減に影響していることが示された.
著者
坂田 晴香 中川 耕三 北澤 健二 山本 澪 森 航大 高柳 和史 菊田 昌義 合田 賀彦 立花 義裕
出版者
日仏海洋学会
雑誌
La mer (ISSN:05031540)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3-4, pp.79-100, 2022 (Released:2022-06-27)

Using data collected from 2004 to 2018, the relationships between fluctuation in water quality and river loads were analyzed in eight areas within Osaka Bay, comprising the A-, B-, and C-type areas as designated by the chemical oxygen demand(COD)environmental quality standards. Different trends were confirmed in each area, related to their location in the bay. Decreasing COD concentrations were observed around the Muko River mouth, while concentrations near the Yodo River mouth, near the Yamato River mouth, and in areas at the center of the bay remained unchanged. These stable trends might be attributable to the high COD concentrations in the inflow water at the inner part of the bay, as well as the in situ COD production in the center of the bay. In summary, changes in water quality reflecting river loads were observed in the inner part of the bay, but the effect decreased toward the center of the bay where in situ production might be greater. Therefore, for the future restoration plan in Osaka Bay, different approaches will be required, depending on the characteristics of the individual sea areas.
著者
関 陽平 立花 義裕
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

天気予報などで耳にする気温の前日差は,体感温度に関係しており,寒暖差アレルギーや熱中症などの健康面への被害だけでなく,商品の売り上げ等に関連する経済的にも重要な指標である.<br> どの地域どの季節で前日差が大きいかを気候学的に理解しておくことは重要である.しかし,前日差の地域性・季節性について詳細に検討した研究例はない.今回は最低気温の前日差に着目して,地域性・季節性を気候学的に解析した結果を報告する.<br> 結論から記述すると,北海道の冬季は最低気温前日差が非常に大きい.そのため,北海道と比較して,最低気温前日差が大きい条件を考察していく.
著者
立花 義裕 万田 敦昌 山本 勝 児玉 安正 茂木 耕作 吉岡 真由美 吉田 聡 坪木 和久 中村 知裕 小田巻 実
出版者
三重大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

四方を海に囲まれた日本.その鮮明な四季は極めて特徴的である.日本の気候に対しては,日本を囲む縁辺海の海洋の影響が強くあることを大気と海洋の変動を評価し明らかにした.例えば,梅雨末期に豪雨が集中する理由は東シナ海の水温の季節的上昇が,九州で梅雨期に起こる集中豪雨の発生時期の重要な決定要因であること,日本海の海面水温の高低によって,寒気の気団変質過程に影響を及ぼし,寒波を強化・緩和されることを示した.
著者
佐藤 晋介 立花 義裕 遠藤 辰雄
出版者
北海道大学
雑誌
低温科学. 物理篇 (ISSN:04393538)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.109-121, 1993-03

石狩川河口付近に設置した1台のドップラーレーダー観測から,大雪が降ったときの陸風の時間変化とエコーの形態の関係を調べた。観測された陸風の強さと厚さには明かな日変化が認められ,陸風は北海道内陸部の放射冷却によって生成される冷気流であることが確認された。この陸風が弱いまたは存在しない期間は,LモードまたはTモードの筋状エコーが見られ,陸風が発達すると帯状エコーが形成された。帯状エコーは陸風が強い時の方が発達し,陸風が発達すると帯状エコーが形成された。帯状エコーは陸風が強い時の方が発達し,陸風の厚さは最大1kmに達した。発達した帯状雲の成因は上空の強い寒気の侵入であると考えられ,それによって対流不安定な成層が形成されるのと同時に,陸風も強化される。そして,対流雲の発達過程には,不安定成層の存在と陸風と季節風の間に形成される下層収束が重要な役割を担っていると考えられる。
著者
上田 博 遊馬 芳雄 高橋 暢宏 清水 収司 菊地 理 木下 温 松岡 静樹 勝俣 昌己 竹内 謙介 遠藤 辰雄 大井 正行 佐藤 晋介 立花 義裕 牛山 朋来 藤吉 康志 城岡 竜一 西 憲敬 冨田 智彦 植田 宏昭 末田 達彦 住 明正
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.415-426, 1995-06-15
参考文献数
26
被引用文献数
11

2台のドップラーレーダーを主に用いた熱帯の雲やクラウドクラスターの観測を、TOGA-COARE集中観測期間内の1992年11月12日から約2カ月半に渡って、パプアニューギニア、マヌス島で行った。観測期間中に、スコールライン、クラウドクラスターに伴う対流雲や層状雲、及び、日中のマヌス島上に発生する孤立対流雲等の種々の異なるタイプの雲について、ドップラーレーダーで観測した。マヌス島における観測の概要と観測結果の要約について述べる。観測データについての解析結果の予備的な要約は以下の通りである。1)レーダーエコーの発達の初期には暖かい雨のプロセスが支配的であり、最大のレーダー反射因子はこの時期に観測された。2)エコー頂高度の最大は最初のレーダーエコーが認められてから3時間以内に観測された。3)レーダー観測範囲内における、レーダーエコー面積の最大値はクラウドクラスターの大きさに対応して最大のエコー頂高度が観測された時刻より数時間遅れて観測された。4)長時間持続する層状エコー内の融解層の上部に、融解層下層の上昇流とは独立した上昇流が観測された。これらの観測データを用いてさらに研究をすすめることにより、熱帯のクラウドクラスターの構造や発達機構を解明できると考えられた。
著者
白岩 孝行 中塚 武 立花 義裕 山縣 耕太郎 的場 澄人
出版者
総合地球環境学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

ランゲル山のコアについて、表層から深度100mまでの解析・分析を実施した。内容は、水素同位体比(0-50m)、主要イオン(0-50m)、ダスト濃度(0-80m)、X線精密密度(0-100m)、トリチウム(0-50m)である。微量金属濃度については、ローガン山のコアについて測定した。以下、上記の解析・分析から明らかになったことを箇条書きでまとめる;1.ランゲル山コアの0-50mの深度では、水素同位体比、ダスト濃度、トリチウム濃度に明瞭な季節変動が見出された。濃度のピークは水素同位体比が夏、ダスト濃度とトリチウムが春と判断された。2.ランゲル山のX線精密密度の深度方向への偏差値は、水素同位体比の変動と良く一致し、水素同位体比の重いピークに偏差の小さいピークが重なる。このことは、春から夏にかけて生じる間欠的な降雪が密度変動を大きくしていると考えられ、密度のような物理シグナルでも季節変動を記録していることが明らかとなった。3.ランゲル山コアのダスト濃度は春に高く、その他の季節に低い季節変動を示す。ダストフラックスは2000年以降増加傾向にあり、これは日本で観測された黄砂現象の増加傾向と一致する。4.ランゲル山コアのトリチウム濃度は明瞭な季節変動を示し、濃度のピークが晩春に現れる。この変動は対流圏と成層圏の物質交換に起因すると考えられ、春の低気圧性擾乱の指標になる可能性が見出された。5.ランゲル山のNaの年フラックスは冬のPDOインデックスと良い相関があり、長周期気候振動の指標となることが示された。6.微量金属分析はローガンコアの1980-2000年にかけて実施された。年間の鉄フラックスは数μg/平方mから80μg/平方m程度で変動しており、その原因として黄砂と火山噴出物があることが示された。7.ローガン山と北部北太平洋の西側に位置するウシュコフスキー山の両方で得られコアの涵養速度を比較したところ、逆相関の関係が認められ、これがPDOと連動していることが明らかとなった。
著者
立花 義裕
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.697-715, 1995-06-25
被引用文献数
3

北海道石狩平野の降雪分布の特性について統計的な研究を行った。主に1982から1991年の冬季のAMeDAS毎時降水量データ用いて調べたREOF (rotated empirical orthogonal function)解析の結果、第1成分(31%)は山雪のパターン、第2成分(11%)は石狩平野を中心とする里雪のパターンになることがわかった。二つの成分の時間的な変化を調べたところ、里雪型は冬の後半に、また、昼間よりは早朝に多いことがわかった。次に、里雪型の降雪をもたらす気象条件を総観場及びメソスケール場の関連に着目して調べた。その結果里雪型の降雪が生じる場合には、北西季節風とは反対向きの寒冷な気流が海岸部の地表付近に存在していることが明らかになった。特に、降雪が1日以上持続する場合は、寒冷な気流は石狩川全流域におよぶ。この事実は、持続する里雪と北海道内陸部に形成される寒気のプールとの関連を示唆する。すなわち、カタバ風によって内陸の山から平野部に流れこんだ寒気が持続的に海上に流出する際に、海岸付近に収束帯形成され、持続的な降雪がもたらされると考えられる。さらに、里雪型降雪の際の総観揚を統計的に調べた結果、偏西風が非常に弱く、上空の気温が非常に低いことがわかった。このような総観場は、カタバ風の発生に好都合であり、上記の推測と整合的である。また、これらの総観場の特徴は他の日本海側の降雪域の特徴に似ていることもわかった。