- 著者
-
藤 健一
- 出版者
- THE JAPANESE SOCIETY FOR ANIMAL PSYCHOLOGY
- 雑誌
- 動物心理学研究 (ISSN:09168419)
- 巻号頁・発行日
- vol.45, no.2, pp.51-65, 1996-03-25 (Released:2010-11-18)
- 参考文献数
- 37
- 被引用文献数
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行動実験の実験動物として多用される脊椎動物のハトやラット, サルなどにおいて見いだされた強化スケジュールの機能について, 系統発生的に遠い共通の祖先を持つ現生の魚類の真骨類骨鰾目のキンギョを対象に選び, 反復実験を行った。その結果, 正の強化スケジュールの行動統制機能は, キンギョにおいても確認された。しかしながら, 魚類を対象とした強化スケジュール研究には多くの強化スケジュールが未着手のまま残されており, こういったスケジュールが, 既にその行動統制力が確認された動物種におけるのと同様の統制力を有しているという保証は無い。また, 魚類は陸生動物と異なり, 環境に直接はたらきかける身体器官が限定されており, このことがオペラント行動にもたらす制約についても研究される必要がある。さらに, 脊椎動物とは異なった進化の道筋をたどって現在に至った他の動物種, たとえば節足動物や軟体動物における強化スケジュールの行動統制力の体系的分析は, 現在のところ非常に少ない (Abramson, 1986) 。行動分析学の進むべき一つの方向としての行動分析学的比較行動学ないしは行動進化学 (佐藤, 1993) は, 体系的実験の行われることの少なかった脊椎動物や無脊椎動物についての強化スケジュール研究をも要請していると考えられる。