著者
塚田 悠貴 髙島 一昭 山根 剛 山根 義久
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.30-33, 2014-03-20 (Released:2016-02-05)
参考文献数
8

9歳齢,未去勢雄のミニチュアダックスフンドがブドウの皮を摂取した後何度も吐くとの主訴で来院した。血液検査でBUN(104.5 mg/dl),Cre(6.9 mg/dl),Ca(13.1 mg/dl),P(17.9 mg/dl),K(5.15 mmol/l)の上昇を認めた。以上からブドウの皮を摂取したことに関連する急性腎不全と診断し,入院下で治療した。第1病日に一時的に乏尿に陥ったが,利尿薬等の投与で改善傾向にあった。その後も血液検査に改善がみられたが,第7病日に一般状態が悪化し,血小板数も低下しDICが疑われ,第10病日に死の転帰をとった。
著者
強矢 治 鶴岡 学 久保田 真理 中西 真紀子 田川 雅代 森 千秋 斉藤 久美子
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3,4, pp.99-103, 2004 (Released:2007-11-07)
参考文献数
14

ウサギの臼歯不正咬合の発生要因を検討するため,発症群137例,対照群345例について疫学的に調査するとともに,食餌内容に関するアンケート調査を行い,発症群34例,対照群58例より回答を得た。発症群の平均体重は対照群よりも有意に低く,体格の小さなウサギほど臼歯不正咬合を発症しやすい可能性があるものと思われた。臼歯不正咬合の罹患率は雑種で高く,ロップイヤー系品種で低い傾向にあった。雄は雌に比べて罹患率が有意に高かった。発症群の平均乾草摂取量は対照群と比較して有意に少なく,過去の記述と一致して,乾草摂取量が少ないことは臼歯不正咬合発症の危険因子となりうることが推察された。食餌指導により乾草の摂取量を十分確保させること,さらに雑種や雄,そして体格の小さな個体には,より厳密な食餌指導を行うことが,臼歯不正咬合の発症予防となり,または発症後の進行防止に役立つものと思われた。
著者
相馬 武久 齋藤 奈美子 河口 雅登 石井 博
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.35-40, 2010-06-20 (Released:2011-09-08)
参考文献数
28

1993~2009年に血清検査を行ったわが国の家猫83,606頭の抗猫コロナウイルス(FCoV)抗体陽性率を品種別に解析した。純血種の陽性率(76.3%)は雑種(50.1%)に比べ極めて高い値を示した(p<0.0001,χ2=4,408.5)。両種ともに陽性率は1カ月齢から4カ月齢まで急速に上昇し,その後加齢に伴い減少した。また,本調査期間に雑種の陽性率は年度が進むにつれて減少したが,純血種では上昇傾向を示した。以上の成績からわが国では純血種が幼齢期にFCoVに感染する機会が多く,その感染状況が近年悪化していることが示唆された。また,スコティッシュフォールド,メインクーンの陽性率(それぞれ87.5%,89.6%)が純血種の平均値(76.3%)に比べて極めて高い値を示し(それぞれ,p<0.0001,χ2=143.2,131.6),シャム,ペルシャが極めて低い値(それぞれ47.1%,65.3%)を示した(それぞれ,p<0.0001,χ2=332.2,248.9)。低値の2品種はこれまでの研究でもFCoVおよび猫伝染性腹膜炎に低感受性であることが報告されており,本研究でも同様な傾向が認められた。
著者
竹中 雅彦 町田 登 鈴木 基弘 佐藤 れえ子 山根 義久
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.125-134, 2010-12-31 (Released:2012-02-07)
参考文献数
27

猫の肥大型心筋症(HCM)では,局所性のプロスタサイクリン(PGI2)の産生低下あるいはトロンボキサンA2/PGI2比の不均衡が微小循環障害を招来し病態を悪化させるのではないかとの仮説に基づき,PGI2誘導体であるベラプロストナトリウム(BPS)を猫のHCM症例2例に対して長期にわたって投与し,心エコー検査によって心臓の形態および機能について検討した。その結果,BPSの投与により,超音波検査において左室後壁厚(LVPW)および心室中隔厚(IVS)は減少し,左室拡張末期径(LVEDD)および左室収縮末期径(LVESD),拡張末期左室容積(LVEDV)および収縮末期左室容積(LVESV),左室内径短縮率(FS),左室駆出率(EF)などは改善されて心拍出量が増加した。したがって,猫のHCMに対してPGI2誘導体であるBPSが奏効する可能性が示された。
著者
水越 美奈 松本 千穂 脇坂 真美
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.119-125, 2017-09-25 (Released:2018-09-25)
参考文献数
16

加齢により犬は人における年齢が関係する認知機能不全や認知症と同様な症状を示す。これらの臨床徴候は飼い主が排泄の失敗や睡眠と覚醒サイクル,見当識障害など実際的に観察することでわかることがほとんどである。6歳以上の健康な犬のこれらの徴候を調べたところ,CDSの徴候は年齢と共に上昇し,13歳で70%を超えた。また比較的若い6~9歳では雌より雄,14~18歳では未避妊雌より避妊雌,10~13歳では日本犬系より洋犬で高いことがわかった。さらに認知の低下は飼い主との散歩や遊びに関連することが示された。多くの飼い主は年齢と共に現れる行動変化について気づいていたが,これらについて相談する人はほとんどいなかった。相談しなかった多くの飼い主はこれらの行動変化は問題でないと感じていた。
著者
丹野 翔伍 髙島 一昭 山根 剛 山根 義久
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.49-52, 2013-06-20 (Released:2014-12-06)
参考文献数
5

6カ月齢と11カ月齢の雑種猫が,人用に市販されている乾燥スルメイカを摂食した後に嘔吐したとの主訴で来院した。富士フィルムメディカル株式会社DRI-CHEM7000V(以下,DRI-CHEM)を用いた血液検査にて,2症例ともに血中クレアチニン濃度の著しい上昇が認められた。皮下輸液および制吐処置などの治療により,翌日にはクレアチニン濃度は正常に回復し,臨床症状も消失した。 後日,健常猫を用いて乾燥スルメイカの摂食試験を行った。その結果,前述の臨床例と同様に,嘔吐およびDRI-CHEMを用いた血液検査で血中クレアチニン濃度の上昇が認められた。しかし,同検体を酵素法で測定したところ血中クレアチニン濃度の上昇は認められなかった。したがって,猫が乾燥スルメイカを摂食した場合,DRI-CHEMでは偽高クレアチニン血症を生じることが判明した。
著者
合屋 征二郎 佐藤 琴美 島田 香寿美 上村 暁子 田中 綾
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.107-111, 2018-09-25 (Released:2019-09-25)
参考文献数
24

低ナトリウム血症を伴うACVIM分類ステージCの僧帽弁閉鎖不全症犬に対してアルギニンバソプレシンV2受容体拮抗薬であるトルバプタンを投与した。投与前134 mmol/lであった血漿ナトリウム濃度はトルバプタン投与から7週間後に147 mmol/lまで上昇した。トルバプタン投与に伴い,左室拡張末期径およびE/Emは29.9 mmから27.8 mm,19.0 から11.6にそれぞれ減少した。これらの結果はトルバプタンの水利尿効果により前負荷の軽減と電解質の正常化が同時に行われたことを示した。
著者
和田 慎太郎 八村 寿恵 山岡 佳代 白石 加南 久山 朋子 網本 昭輝
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.71-74, 2012-06-30 (Released:2013-06-30)
参考文献数
8

歯周病や歯内疾患がみられた犬7症例の多根歯に対してヘミセクションまたはトライセクション(分割抜歯)を実施した。患歯の歯冠を歯根の位置に対応するように分割し保存不可能な歯根を分割した歯冠とともに抜歯し,残された保存可能な部分は歯内療法を行い保存した。7症例中,歯周病により歯槽骨に垂直吸収の病変がみられた犬の5頭8歯(308:2歯,309:3歯,408:1歯,409:2歯),破折により歯髄の露出がみられた犬の2頭2歯(208:2歯)を対象とした。このうち,保存した部分は抜髄根管充填を行ったものが5歯,生活歯髄切断(断髄)を行ったものが5歯であった。経過観察では,術後426日で根尖周囲のX 線透過性の亢進と歯根膜腔の拡大を認めたために抜歯を行った症例が1例(1歯)あり,その他の症例では現在まで経過は良好であった。最長の症例では術後約4年で保存部分は良好に保たれている。
著者
真下 忠久
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.17-20, 2009-03-20 (Released:2010-03-16)
参考文献数
7
著者
廣瀬 快 髙島 一昭 山根 剛 山根 義久
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.12-15, 2016

<p>公益財団法人 動物臨床医学研究所の附属施設である人と動物の未来センター"アミティエ"に保護され,コクシジウム症と診断した猫19頭に対して,トルトラズリル(豚用バイコックス®)を用いて治療を行い,その有効性を検討した。トルトラズリルは,30 mg/kg PO 単回,30 mg/kg PO 2日連続,30 mg/kg PO 3日連続/週の2週間の3通りで経口投与した。駆虫率はそれぞれ,33.3 %,83.3 %,100 %であり,トルトラズリルの高い有効性が確認された。また,トルトラズリルは2~3日の連日投与およびオーシスト排泄の予防効果が認められなくなる投与10日目以前に再投薬を行うことが重要であると考えられた。</p>
著者
廣瀬 快 髙島 一昭 山根 剛 山根 義久
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.12-15, 2016-03-25 (Released:2017-03-25)
参考文献数
7

公益財団法人 動物臨床医学研究所の附属施設である人と動物の未来センター“アミティエ”に保護され,コクシジウム症と診断した猫19頭に対して,トルトラズリル(豚用バイコックス®)を用いて治療を行い,その有効性を検討した。トルトラズリルは,30 mg/kg PO 単回,30 mg/kg PO 2日連続,30 mg/kg PO 3日連続/週の2週間の3通りで経口投与した。駆虫率はそれぞれ,33.3 %,83.3 %,100 %であり,トルトラズリルの高い有効性が確認された。また,トルトラズリルは2~3日の連日投与およびオーシスト排泄の予防効果が認められなくなる投与10日目以前に再投薬を行うことが重要であると考えられた。
著者
櫻井 玲奈 金野 好伸 小沼 政弘 内田 直宏 井口 愛子 小林 沙織 山﨑 真大 佐藤 れえ子
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.157-162, 2019-01-15 (Released:2020-01-15)
参考文献数
16

人の慢性腎臓病(CKD)では生体内での活性酸素種(ROS)の産生増加と,抗酸化能の低下が知られており,猫のCKDでも腎組織内のROSによる酸化障害が尿細管と間質の線維化につながることが報告されている。本研究では,初期のCKD猫に電子水を給与し,血中酸化度マーカーと抗酸化能マーカーの変化を観察して,その効果について検討した。1カ月の電子水給与により,対照群にて有意に抗酸化能マーカーが増加し,またCKD群でも有意差はないものの増加傾向を示した。また,血中酸化度マーカーは両群に有意差はないものの低下傾向が認められた。電子水の給与は猫でも人と同様に生体内における酸化ストレスの緩和と抗酸化能の活性化に寄与する可能性があると示唆された。
著者
福井 健太 安川 邦美 田端 克俊 森下 啓太郎 植野 孝志 庄司 祐樹 長屋 有祐 下田 哲也
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.115-120, 2011-12-31 (Released:2012-12-18)
参考文献数
22

2005年11月~2010年7月までに,縦隔型リンパ腫と診断した猫10例に,犬のUniversity of Wisconsin-Madison chemotherapy protocol(UW25)に準じたプロトコールを行い,完全寛解率,生存期間ならびに抗癌剤の副作用について調査した。完全寛解率は90%と非常に高く,生存期間は1年未満が6例(現在生存中1例含む),1年以上2年未満が1例(現在生存中),2年以上3年未満が1例(現在生存中),3年以上が2例(現在生存中1例含む)と長期の生存期間が得られた。副作用の程度は軽度であり対症療法により回復した。このプロトコールでは25週の治療期間中に再発がみられなかった場合,過去のCOP療法の報告と比べ非常に長期の生存期間が得られることが証明された。
著者
桑原 岳 桑原 和江 桑原 光一
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.65-68, 2013-06-20 (Released:2014-12-06)
参考文献数
7

症例は日本猫,16歳,避妊雌で進行性の呼吸困難を主訴に来院した。一般身体検査では喉頭部にマスが触知された。一般的に,猫の喉頭部腫瘍の予後は悪いといわれている。その理由として,腫瘍特異的な治療法が確立されていないこと,また全喉頭切除術により深刻な合併症を伴い得ることが挙げられる。本症例では永久気管切開による対症療法を実施し,喉頭部の腫瘍に対して部分切除生検を行った。病理学的検査を実施した結果,咽頭喉頭腺癌と診断された。症例は順調に麻酔から覚醒し,手術3日目に退院した。術後,飼い主による主観的なQOLは改善されたようであったが,手術54日目に嚥下困難による食欲廃絶が認められ,その後に死亡した。死亡直前まで呼吸状態は良好であった。咽頭喉頭腺癌により重度の呼吸器症状を呈する猫では,低侵襲な部分切除生検と永久気管切開術を実施して気道を確保することが,動物のQOLを改善し,なおかつ飼い主の満足度を得るための選択肢のひとつとなり得ることが示された。
著者
内山 秀彦 鈴鹿 輝昭 永澤 巧
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.47-53, 2019-06-25 (Released:2020-06-25)
参考文献数
21

人と猫とのより良い関係を探るため,人の性格特性や動物に対する心的な態度が,人と猫双方の行動と生理学的反応に及ぼす影響について検討した。人と猫がふれ合う状況を設定し,このとき人および猫の行動分析とともに心拍変動解析による自律神経活動の測定,また同時に近赤外線分光法(NIRS)によって対象者の前頭前野活動を同時に測定した。その結果,人の性格(神経症傾向・開放性・調和性)や愛着度は猫に対する態度や行動に影響を及ぼし,人の気質的特徴における猫との相性の存在が示された。さらに,人は猫とふれ合うことで交感神経活性による適度に覚醒,前頭前野の賦活化による認知機能向上の可能性が示され,このことは猫とのふれ合いから得られる人の心身の健康効果の機序の一端を説明するものと考えられる。