著者
藤岡 聖子 船津 敏弘 前田 紀子 小田 明良 香田 麻衣子 坂本 綾香 萩尾 光美
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.87-90, 2010-09-20 (Released:2011-12-16)
参考文献数
6

無症状の赤血球増加症の犬が来院した。一般臨床現場で行った心エコー検査から,著明な右心室の求心性肥大と心室中隔の扁平化が認められた。このことから,赤血球増加症は動脈管開存症や肺動脈弁狭窄症などの心疾患に起因しているものと考えられた。しかし,カラードプラ検査では各弁における逆流や短絡性疾患を疑うカラーシグナルは検出されなかった。このため,宮崎大学で精査したところ,生理食塩液によるコントラスト心エコー法で右左短絡の動脈管開存症が診断された。臨床上,生理食塩液を用いたコントラスト心エコー法は簡便で極めて有用な検査法であると考えられた。
著者
和田 美帆 仲島 茜 永浦 真由美 東之薗 宏規 日向 健介 和田 治弥
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.72-75, 2015-06-20 (Released:2016-06-20)
参考文献数
3

7歳,避妊済みの雌のビーグルが,2011年3月の震災後より尾の自傷行動が悪化したという主訴で来院した。種々の検査により,肝内門脈低形成から生じた肝機能障害が明らかになった。本症例には,肝機能障害への対症療法を優先的に実施したところ,尾の自傷行動も同時に減少させることが可能であった。
著者
相馬 武久 齋藤 奈美子 河口 雅登 石井 博
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.35-40, 2010

1993~2009年に血清検査を行ったわが国の家猫83,606頭の抗猫コロナウイルス(FCoV)抗体陽性率を品種別に解析した。純血種の陽性率(76.3%)は雑種(50.1%)に比べ極めて高い値を示した(p<0.0001,&chi;<sup>2</sup>=4,408.5)。両種ともに陽性率は1カ月齢から4カ月齢まで急速に上昇し,その後加齢に伴い減少した。また,本調査期間に雑種の陽性率は年度が進むにつれて減少したが,純血種では上昇傾向を示した。以上の成績からわが国では純血種が幼齢期にFCoVに感染する機会が多く,その感染状況が近年悪化していることが示唆された。また,スコティッシュフォールド,メインクーンの陽性率(それぞれ87.5%,89.6%)が純血種の平均値(76.3%)に比べて極めて高い値を示し(それぞれ,p<0.0001,&chi;<sup>2</sup>=143.2,131.6),シャム,ペルシャが極めて低い値(それぞれ47.1%,65.3%)を示した(それぞれ,p<0.0001,&chi;<sup>2</sup>=332.2,248.9)。低値の2品種はこれまでの研究でもFCoVおよび猫伝染性腹膜炎に低感受性であることが報告されており,本研究でも同様な傾向が認められた。
著者
水谷 尚
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.48-53, 2014-06-20 (Released:2016-02-06)
参考文献数
16

高脂血症の治療の第一歩は,高脂血症の摘発である。そのためには,日常の診療の中で,疑わしい症例に対して,可能な限りスクリーニング検査を実施することである。高中性脂肪血症は血清の目視によって肉眼的に診断が可能であるが,高コレステロール血症は生化学的測定を行わない限り摘発が難しい。また,高脂血症を摘発した場合は,その原因が原発性であるか二次性であるかを鑑別し,適切な治療を行う必要がある。二次性の高脂血症はもとになる疾病のコントロールが最も重要なポイントとなる。高脂血症の治療には非薬物療法と薬物療法が有り,食事療法などの非薬物療法を先行して行った上で,それでもコントロール出来ない場合は,適切な薬剤による薬物療法を実施する。
著者
斉藤 久美子
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.1-6, 2000 (Released:2006-07-21)
参考文献数
7
被引用文献数
2
著者
水谷 雄一郎 髙島 一昭 山根 剛 山根 義久
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.165-171, 2015-12-25 (Released:2016-12-25)
参考文献数
38

鳥取県中部に位置する倉吉動物医療センター・山根動物病院に来院した猫のFeLV抗原陽性率,FIV抗体陽性率などを過去10年分,カルテの記録をもとに回顧的に調査した。FeLV抗原陽性率は10年間の平均で15.1%であり,年ごとの陽性率を見る限りはFeLV陽性率は横ばい傾向と思われた。FIV抗体陽性率は10年間の平均で17.5%であり,年ごとのFIV陽性率は上昇傾向にあるように思われた。口内炎の罹患率は FIV / FeLV陰性群11.4%,FeLV単独陽性群20.8%,FIV単独陽性群27.6%,FIV / FeLV陽性群37.5%であった。リンパ腫の発症率はFIV / FeLV陰性群0.6%,FeLV単独陽性群16.4%,FIV単独陽性群2.6%,FIV / FeLV陽性群2.1%であった。死亡年齢はFIV / FeLV陰性群9.2歳,FeLV単独陽性群4.2歳,FIV単独陽性群9.6歳,FIV / FeLV陽性群7.0歳であった。
著者
浜川 弘茂 柴田 早苗 井上 育生 深田 恒夫
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.12-16, 2013-03-20 (Released:2014-05-14)
参考文献数
7

多くのアスリートがアクアチタン含有首輪(アクア首輪)を付けて競技を行っている。その効果は多く謳われているが,その効果のメカニズムに関して,近年,実験動物を用いて行われたものが報告されてきた。しかしながら,このアクア首輪を装着した犬に関する報告はない。今回,アクア首輪を2頭の犬に装着し,その行動の変化を調べた。それらの犬においては,装着後行動が活発になった。アクア首輪の効果を解明するために,5頭のビーグルにアクア首輪を装着し,対照群として装着していない犬5頭共に自動車による3時間の移動ストレスを与えた。そして,ストレスマーカーである白血球数,リンパ球数,血清コルチゾールおよび唾液中クロモグラニンAを調べた。その結果,すべての項目において,ストレスパターンを示したが,両群間に差がみられなかった。しかしながら,血清コルチゾール値の相対値が,ストレス負荷時においてアクア首輪群が対照群と比べて有意に低かった。したがって,犬においてアクア首輪はコルチゾール抑制効果を示す可能性を示された。
著者
中村 勇太 安川 邦美 小路 祐樹 長屋 有祐 片山 龍三 西森 大洋 下田 哲也
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.162-165, 2014-12-25 (Released:2016-02-06)
参考文献数
9

3カ月前からの頻回の粘血便および嘔吐を主訴に来院した9歳の犬において,腹部触診にて腫瘤を触知した。超音波検査およびCT検査を行ったところ,下行結腸において腫瘤病変が認められ,外科的切除を行った。病理組織検査において低分化型リンパ腫と診断されたため,UW25プロトコールに沿った多剤併用化学療法を開始した。第210病日に化学療法を終了とし,第449病日にCT検査を実施したところ,明らかな再発は確認できず経過は良好である。結腸および直腸のリンパ腫の予後はその他消化管に発生するものと比べて非常に良いと報告されており,本症例においても過去の報告と同様に長期の生存期間が得られている。
著者
三村 可菜 淺川 裕美 橋本 正勝 早川 典之 石岡 克己
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.139-143, 2013-12-25 (Released:2016-01-26)
参考文献数
6

α1-酸性糖蛋白 (α1-AG)は急性相反応蛋白の一種であり,猫において炎症や腫瘍を検出するスクリーニング項目として注目を集めつつある。今回新たに開発した測定試薬を用い免疫比濁(TIA)法による猫血中α1-AGを測定した結果,同時再現性と希釈直線性はともに良好で,その測定値は一元放射免疫拡散法による測定値と高い相関を示した。この試薬を用いたTIA法で日本獣医生命科学大学付属動物医療センターに来院した238頭の猫の血中α1-AG濃度を測定したところ,α1-AGが上昇していた125頭のうち血清アミロイドA(SAA)の上昇を伴っていたものは62頭で,乖離が見られることからα1-AGとSAAの同時評価が病期判定や鑑別診断に結びつく可能性が示唆された。また,TIA法による猫α1-AGの測定は大規模な検体処理に適し,検査項目としてのα1-AG測定の普及に寄与することが期待される。
著者
吉本 憲史 吉本 留美子
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.141-147, 2001 (Released:2007-05-29)
参考文献数
1

ウサギの切歯不正咬合12例に対して矯正処置を行った。その結果 A)完全に正常に復したものが4例、B)月1回程度のわずかな矯正でほぼ正常に維持出来たものが4例、C)3カ月以上処置しても不良なものが4例であった。常生歯である兎の歯を矯正するためには、可能な限り頻回に処置を行う必要があると思われたので、無麻酔かつ短時間に処置出来るように、マイクロエンジン用の自作のバーカバーを考案し、保定法を工夫した。経過が不良な例 C)に対しては、指骨ネジや骨プレートによる外科処置や義歯の接着による抑制矯正などを行った。その後は経過観察中である。
著者
矢吹 淳 小出 和欣 小出 由紀子 浅枝 英希
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.135-140, 2010-12-31 (Released:2012-02-07)
参考文献数
27

10歳8カ月,雌の柴犬が他院にて赤血球増加症と肝臓内腫瘤を指摘され,精査と治療のため紹介来院した。血液検査,超音波検査,X線CT検査より赤血球増加症と肝臓外側右葉に限局した腫瘤を確認し,手術にて外側右葉の完全肝葉切除を実施した。病理組織学的検査において腫瘤は血管肉腫であり,術後10日からドキソルビシン(30 mg/m2 IV)を3週間毎に計6回投与した。なお術前に認められていた赤血球増加症は術後速やかに改善した。現在術後4年経過するが良好に推移している。
著者
上林 譲 寺村 浩一 下城 真佐子 吉田 紘子 深田 恒夫
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.67-70, 2004 (Released:2007-11-02)
参考文献数
10

犬におけるワクチネーションプロトコールを検討するにあたり、その基礎的資料を提供するために、臨床上健康な犬でコアワクチンである犬パルボワクチン(CPV)および犬ジステンパーワクチン(CDV)を毎年接種している犬(毎年接種群)と3年前に接種し、それ以降接種していない犬(3年毎接種群)の抗体価を比較検討した。CPV Hemoagglutianting inhibition(HI)抗体では毎年接種群と3年毎接種群の間に有意差(p<0.05)が認められた。感染防御ありとした64倍以上抗体価を示した犬は毎年接種では17頭中全頭であり、3年毎接種では18頭14頭(78%)であった。CDV中和抗体では毎年接種群と3年毎接種群の間に有意差は認められなかった。64倍以上の抗体価を示した犬は毎年接種では17頭中16頭(94%)であり、3年毎接種では18頭中11頭(61%)であった。したがって、臨床獣医師にとっては犬の疾病予防の責任を果たす必要からこれらの混合ワクチンは毎年接種が必要と思われる。
著者
小笠原 淳子 高島 一昭 山根 義久
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.133-137, 2005 (Released:2007-11-13)
参考文献数
18

5歳齢のマルチーズが元気消失,嘔吐を主訴に来院した。低蛋白血症を認め,蛋白喪失性腸症を疑った。試験開腹では腸間膜に脂肪肉芽腫が認められ,空腸の全層生検により腸リンパ管拡張症と診断した。プレドニゾロンと一時的にシクロスポリンの投与を行い,食餌を低脂肪食に変更した。その結果,臨床症状と血漿蛋白の改善が認められ,約4年間寛解が得られた。
著者
森岡 真也 鈴木 敏和 吉田 均 上野 博史 宇塚 雄次
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.95-101, 2018-09-25 (Released:2019-09-25)
参考文献数
25

人の医療ではCT室内の散乱線量や散乱線分布に関する報告は数多くあるが,動物医療におけるCT撮影時の具体的な散乱線量の調査は見当たらない。そこで今回,動物病院におけるCT検査時のCT室内の散乱線量を測定した。実際の臨床現場で使用する撮影条件を用いてCT室内の散乱線空間マッピングを,頭部・胸部・腹部・骨盤撮影ごとに作成した。マッピングの測定は,床からの高さは50,100,150,200 cmの4平面で行い,全260箇所で行なった。その結果,骨盤撮影時のガントリー中心から尾側50 cm離れた寝台上で最大の133 μSvの散乱線量が記録された。また,床からの高さ100 cmが最も散乱線が大きく,次いで150,50,200 cmの順に小さくなった。ガントリー脇は最も散乱線量が小さいエリアとなった。ガントリーの100 cm四方は散乱線量が大きく,寝台から離れるに従って小さくなった。