著者
槌間 聡
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.598-601, 2014-12-20 (Released:2017-06-16)

人類が単体として手に入れた金属の中でも特に古くから発見されている金属の一つである「金」。古代文明に始まり現在でも高貴な金属として宝飾品に用いられている。また,貨幣経済を支える重要な金属でもあった。かつて日本は黄金の国「ジパング」と呼ばれ,金は国名ともかかわる金属でもある。金閣寺などの歴史的建造物から大判小判といった金貨にも用いられていた。これらは金のもつ特別な性質によるものである。金の物理的・化学的な性質を他の金属と比較しながら,「金」がなぜこのように広く使われているかをその性質をもとに述べる。
著者
鶴田 治樹
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.21-25, 1991-02-20 (Released:2017-07-13)

嗅覚の科学は五感の中でも視覚や聴覚と比べると研究が遅れている領域といわれる。嗅覚が視覚や聴覚と決定的に異なる点は, 嗅覚の刺激は"化学物質"によっておこるという事実である。そのために研究が遅れたとも言えよう。人体の健康維持(ホメオスタシス)のための情報伝達のほとんどが, 化学物質によって行われることが明らかになりつつある現在, におい物質も生活面ではもちろん, 生理面, 心理面でも重要な情報伝達物質と考えることができる。この中で光学異性体のにおいの違いという現象も, 今後重要な研究話題を提供するものと十分考えられる。
著者
松本 和子 酒井 健
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.420-423, 1987-10-20 (Released:2017-07-13)

モリブデン・ブルー法は, 古くから用いられているリンの高感度吸光光度分析法である。この方法の基礎をなす発色物質, リンモリブデン・ブルーの化学的性質, Keggin構造と呼ばれる特異な構造を解説し, リン酸イオンの定量分析実験への応用例を示した。
著者
宮村 一夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.584-587, 2015-12-20 (Released:2017-06-16)
参考文献数
2

有機化合物の分析法を分析手順に沿って概説した。各分析手順における留意点を中心に記してある。多くの方にとってわかりきったことであろうが,基本的な考え方から記すよう心がけた。
著者
山崎 英恵
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.90-91, 2015-02-20 (Released:2017-06-16)
被引用文献数
1

出汁(だし)は日本食の土台となる風味である。その芳醇な香りや豊かなうま味は,我々の食欲をそそる好ましい味わいである。一方で,欧米などでは昆布特有のオーシャン臭や鰹の魚臭さが敬遠されることも少なくない。おいしさの感覚は食に対する嗜好であり,食経験や生理的状態などが個々のおいしさを相対的に形づくっているが,絶対的なおいしさも存在する。本稿では,出汁のなかでも代表的な鰹だしを取り上げ,そのおいしさの構造について解説する。
著者
吉野 彰
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.296-299, 2018

<p>リチウムイオン電池は小型・軽量化を実現した二次電池であり,現在のモバイルIT社会の実現に大きな貢献をしてきた。現在ではほぼすべてのモバイルIT機器の電源として世界中で用いられている。このリチウムイオン電池の市場状況,電池の仕組み,特徴,構成材料,電池構造,電極構造を解説する。こうしたモバイルIT用途分野(小型民生用途)においての25年以上の市場実績により,電池性能の向上,信頼性の向上,コストダウンの実現がなされてきた。こうした市場実績によりリチウムイオン電池は車載用(電気自動車用)という次の転換期を迎えている。</p>
著者
西 敏夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.468-471, 2013-10-20 (Released:2017-06-30)

天然ゴムをめぐる話題として,価格の高騰,天然ゴム園の開発競争,地球環境問題,各種天然ゴム資源のほか,基礎的には天然ゴム樹の全DNA解析,人工衛星を使ったゴム園の診断などに触れる。また,応用面では天然ゴム主体の免震ゴムが,東日本大震災に対して極めて有効だったことなどを紹介する。天然ゴムは,本当の意味で古くて新しい材料であることを示す。
著者
北島 信正
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.478-482, 1994-07-20 (Released:2017-07-11)

金属タンパク質は電子伝達体, 酸素運搬体, 酵素, 遺伝子発現の調節因子などとして生体にとって必要不可欠な働きを行っている。合成金属錯体では得られないこれら精緻な機能を実現している最大の秘密はその金属サイトの特異な構造にある。最近になりX線解析をはじめ種々のアプローチによってその構造が原子レベルで解明されつつある。ここでは代表的な例としてヘモシアニン, メタンモノオキシゲナーゼ, ニトロゲナーゼを取り上げ, これらの研究の現状と今後の展望を簡単に述べる。
著者
上田 邦介
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.408-409, 2013-08-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
4
被引用文献数
1

岩絵具とは,有色鉱物を粉砕し,その粉末を水簸(すいひ)精製して作られた鉱物性顔料である。その主たる特徴は,1種類の有色鉱物を水簸分級することによって何種類かの粗さの粉体を造り,それにより色のバリエーションを構成する粒状顔料である。近年は日本画の画風が大きく変化をしたため,金属酸化物を焼成溶融し塊を作り,天然岩絵具と同様に粉砕し水簸精製した新岩絵具も登場。その色数は1,500色をはるかに超える。本稿は近代日本画を支えた岩絵具の本質と美の進化に迫る。
著者
上山 憲一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.346-349, 1998-06-20 (Released:2017-07-11)

アミノ酸や核酸の原料となるアンモニアは, 窒素固定菌による窒素分子の還元反応によってつくられる。ニトロゲナーゼと呼ばれる酵素が, 電子, プロトンとATPなどの還元剤を使って, この反応の触媒として働く。ニトロゲナーゼの反応中心はMoとFe原子を含む蛋白質で, それぞれの金属イオンは無機硫黄でつながったクラスターを形成している。このクラスターは空気に極めて不安定であり, この性質が, 遺伝子操作で効率の良い作物をつくるという重要課題を解決するときの障壁になっている。