著者
大坂 武男
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.84-87, 1998-02-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
7
被引用文献数
1

地球上の生態系は, 小分子の同素体である酸素とオゾンの自然のバランスの上に成り立つ。成層圏のオゾンは有害な紫外線から生物を守る"善玉"であるが, 対流圏では"悪玉"である。人工物質フロンに含まれる塩素によって善玉オゾンが分解され, オゾン層が破壊されつつある。と同時に, 人為起源による窒素酸化物, 一酸化炭素, 炭化水素などの大量放出によって悪玉オゾンの濃度が増加しつつある。
著者
則元 京
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.170-174, 1991
被引用文献数
1

木材は, 軽くて強いけれども, 比較的脆い材料であるとの印象をもつ者は, カットに示すような曲げ木を見ると, 驚くかもしれない。また同時に, どのようにすればこのように木材を曲げられるのか, 木材の微細構造はどのようになっていて, 曲げるとどのような構造の変化が起こるのか, この変形は永久的なものなのか, など多くの疑問がわいてくるかもしれない。本稿では, 細胞壁の微細構造と関連づけて, 木材の軟化, 曲げ変形とその固定, 変形の回復の仕組みを説明し, 曲げやすい木材と曲げにくい木材の構造上の違いに触れ, 最後に, 家庭用電子レンジを使って木材を曲げる方法について紹介する。
著者
谷 俊雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.43, no.12, pp.764-765, 1995-12-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
3
被引用文献数
1

[工夫した点]高校の化学では, 化学反応にエネルギー, プロトン, 電子という抽象的概念が導入される。中学を卒業して間もない生徒にとっては大きなギャップである。本授業では, 様々な現象の観察から電子のやりとりを観測させ, 実証した後, 酸化還元の定義を構築させた。

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著者
吉見 啓 宮澤 拳 阿部 敬悦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.232-235, 2017-05-20 (Released:2017-11-01)
参考文献数
8

一般的には嫌われ者とされがちなカビ。実は我々の生活への貢献度が大きいことをご存じだろうか。本稿では,産業利用の観点から代表的なカビの有効活用と応用展開例について最新の研究成果を踏まえて解説する。
著者
梶山 正明
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.44, no.12, pp.756-757, 1996-12-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
1
被引用文献数
1

[工夫した点] 学習指導要領で重視されている「探究活動」を, 酸・塩基・塩の識別実験として取り入れた。限られた器具・試薬による識別実験は, 探究活動としては自由度がやや小さいが, 通常の授業時間内に十分実施でき, 生徒の手応えも大きいのが特徴である。
著者
中村 卓
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.36-37, 2019

<p>食品に必要とされる要素として「安全」・「健康」・「おいしさ」・「価格」がある。私たちの研究室では「おいしさ」を食品構造から追究し,食品構造の制御によりおいしい食品をデザインする『食品構造工学』の確立を目指している。特に,食品のおいしさは咀嚼による「変化」であるという立場から,望むおいしさの実現と効率的なものづくりに貢献したいと考えている。ここでは特にオノマトペ(擬音語・擬態語)として表現されるおいしい食感(とろ~り)とスイーツ(プリン)の破壊構造との関係について述べる。</p>
著者
守本 昭彦 臼井 豊和
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.43, no.12, pp.762-763, 1995-12-20 (Released:2017-07-11)
被引用文献数
1

[工夫した点]電気分解によって鉛(II)化合物から酸化鉛(IV)が合成でき, 鉛蓄電池が作れる。また, 鉛(II)化合物に塩基性で過酸化水素水を作用させると酸化鉛(IV)が生じる。鉛化合物に関する一連の実験から, 酸化還元反応を電子の授受によって統一的にとらえさせた。
著者
芝田 学
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.376-379, 2014-08-20 (Released:2017-06-16)

水のイオン積を実験的に決定する方法は,主に3つある。それは,1)電位差を測定する方法,2)電気伝導率を測定する方法,3)熱量を測定する方法である。電位差測定により決定された値が最も広く用いられている。定数の値は馴染み深いが,その値がどのように決定されたのかはあまり知られていない。本稿では,それぞれの決定方法とデータの取扱いに関する注意点を解説する。
著者
竹中 繁織
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.84-87, 2018-02-20 (Released:2019-02-01)
参考文献数
3

遺伝子の本質を司るデオキシリボ核酸(DNA)は,核酸塩基,デオキシリボース,リン酸エステルの繰り返しによって構成されている高分子である。DNAは,核酸塩基の並びによって書き込まれたタンパク質のアミノ酸配列をコードするだけでなく,塩基配列によって形成する独自の構造とそれに結合するタンパク質によって特定のタンパク質をいつどれぐらい作るかを制御している。生命の理解のためには,DNA分子構造の理解と物理化学的な定量的解析が必要である。
著者
大山 秀子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.630-633, 2008-12-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
4

「反応速度論」とは,化学反応の速度に関する法則を論じると共に,実験結果を基に異なる反応条件での反応速度の予測,任意の時刻における反応系に存在する各化学物質の濃度の予測,さらにはその反応機構の決定まで可能とする分野である。ここでは,単純な反応系だけでなく,いくつかの反応段階を経る複雑な反応系においても,どのように取り扱うべきかについて,事例を挙げて説明することとする。
著者
越野 省三
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.26-29, 2014-01-20 (Released:2017-06-16)

硫黄は天然には原油中の硫化水素や二酸化硫黄および各種金属の硫化物,硫酸塩などに存在し,生体内にもタンパク質成分として含まれる。火山国である日本では硫黄泉は人気があり,また「続日本紀」には奈良時代には信濃国からの硫黄の献上が記されているなど,昔からとても身近な存在である。もちろん他国においても錬金術の話にも登場する。そんな硫黄の性質や同素体であるゴム状硫黄の色や様子について,また軟らかいLewis塩基である硫黄と効率のよい資源回収法や生体との関わりなども述べた。
著者
河野 俊哉
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.60-63, 2015-02-20 (Released:2017-06-16)

ファラデーは,一般には「科学者」だと考えられているが,彼自身は,「科学者(scientist)」という呼び名を好まなかった。さらに,サンデマン派と呼ばれる信徒が極めて少数の宗派に属していた。これらのことは,彼の自然研究とも密接な関係があるが,一般には知られていない。本稿においては,近年の研究成果をもとに,当時のイギリスの大学における化学教育制度にも言及しながら,彼の自然研究はもとより,彼の経歴にとって不可欠な師デーヴィとの関係をも再考していきたい。
著者
Naoki SUGIMOTO Shu-ichi Nakano
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.398-401, 2003-07-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
4
被引用文献数
1

人から人が産まれたり,子供が親に似るのは,形質が遺伝するためである。この遺伝という現象を化学の視点から捉えられるようになったのは,ここ50年のことである。この遺伝の本質を化学的に理解することは,病気の発症や予防などとの関連で注目を集めており,様々な生物に対して遺伝子の解明が進められている。ここでは,遺伝子の本体であるDNAの化学的な性質について説明し,DNAが遺伝物質である理由とその役割について解説する。
著者
桂田 和子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.392-393, 2018-08-20 (Released:2019-08-01)
参考文献数
3
著者
山岡 亮平
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.458-462, 1999-07-20 (Released:2017-07-11)

カイコの摂食に関する諸問題を追求した。今回提示する研究成果は以下の通りである。(1)桑の香気に対して一齢のカイコ幼虫が一斉に頭をもたげ, 香気の発生源を探るような行動があらたに見出された。これがあたかも香気を楽しむような様子に見えるので, 「興奮因子」と名付け, 桑葉より抽出同定しエチルメチルケトンであることを明らかにした。(2)誘引を引き起こす物質について検討を加えた。その結果, 極めて微量で強力な誘引および定着活性を有する数種の物質を桑葉から見出し, 単離, 同定を行い, シス-ジャスモン, 2-フェニールエタノールであることがわかった。