著者
益田 時光
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.232-239, 2022-05-01 (Released:2023-05-01)
参考文献数
25

細菌感染に苦しめられてきた人類の救世主として抗生物質が発見され,その黄金時代が幕を開けたその瞬間から,細菌たちはその効果を打ち消す術をすでに見つけていた.病原菌たちが耐性遺伝子の獲得,突然変異によって抗生物質を克服し,人類はまた新たな抗生物質を発見,開発して対抗する,というイタチごっこを続けてきたが,新たな抗生物質の発見,開発が追いついておらず,人類は今,劣勢に立たされている.この薬剤耐性菌問題はよく知られていることであるが,遺伝子変異による耐性菌とは似て非なる“もう一つの耐性菌”,“Persister”についてはあまり知られていない.本解説では,このPersisterについて薬剤耐性菌と比較しながら紹介したい.
著者
黒木 勝久 橋口 拓勇 榊原 陽一
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.511-519, 2020-09-01 (Released:2021-09-01)
参考文献数
49

生体内に存在する遊離の硫酸イオン(SO42−)は生体外異物や内在性ホルモン,タンパク質などさまざまな生理活性物質の機能制御に役立っている.硫酸基を生理活性物質に付加する役割をもつ硫酸転移酵素は大腸菌などの細菌から,真菌類,植物,魚類,哺乳動物など生物界に広く存在している.特に,植物モデルであるシロイヌナズナや魚モデルであるゼブラフィッシュ,哺乳動物モデルであるマウスおよびヒトでの研究が精力的に行われてきている.本稿では硫酸転移酵素の種特異的な機能や普遍的な機能に関して概説するとともに,植物,魚類,哺乳類における硫酸転移酵素の最近の知見を紹介する.また,最近発見されたα,β-不飽和カルボニルを標的とする第3の硫酸化反応に関しても紹介する.
著者
善本 裕之 吉田 聡 金井 圭子 小林 統
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.605-612, 2018-08-20 (Released:2019-08-20)
参考文献数
42
被引用文献数
1

ビール酵母には,エールやヴァイツェンなどの製造に用いる上面発酵酵母とラガー製造に用いる下面発酵酵母の2種類が存在する.下面発酵酵母は,上面発酵酵母と比較して,低温での増殖・発酵性に優れ,高いエステル生成能,発酵終了後の凝集などの特性をもち, 2種類の酵母(Saccharomyces cerevisiaeとSaccharomyces eubayanus)に由来するサブゲノムをもつ異質倍数体,Saccharomyces pastorianusに属する.一つの細胞に2つのサブゲノムがどのように構成され,遺伝子発現を調節し,代謝物を制御して,表現型を現し,醸造特性を発揮しているか,下面発酵酵母の特性を把握するための解析技術を開発・活用しながら,その特性の理解を試みるとともに,得られた知見を解説する.
著者
白山 昌樹
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.534-540, 2013-08-01 (Released:2014-08-01)
参考文献数
21

小分子 RNA (small RNA) と呼ばれる非コードRNAは,標的RNAを検索することでRNA干渉 (RNAi) において中心的な役割を担う.しかしながら,これまでの研究から,小分子RNAのもつ役割はRNA干渉にとどまらず,ヒトを含む多くの生物で, 個体の発生や分化,がん化などの多彩な生命現象 に密接に関与していることが明らかとなってきた.ここでは,小分子RNAが「非自己」RNAを認識する仕組みについて最新の知見を交えながら解説する.
著者
國武 絵美 小林 哲夫
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.532-540, 2019-09-01 (Released:2020-09-01)
参考文献数
45

糸状菌(いわゆるカビ)は生育環境中に存在するさまざまな多糖を分解してエネルギー源として利用する.近年,それぞれの多糖の分解酵素遺伝子に特異的な転写活性化因子が次々と同定され,その転写誘導メカニズムの全容も明らかになりつつある.一方でグルコースのような資化しやすい糖存在下で起こるカタボライト抑制では従来の転写抑制因子がかかわる経路とは別の新奇経路が見いだされ,この経路の関与の程度が多糖分解酵素の種類によって異なることが判明した.本稿ではこれらの転写制御機構を介して糸状菌がどのように利用する糖質の優先順位を決定づけているのかについて考察する.

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出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.9, pp.602-606, 1983-09-25 (Released:2009-05-25)
被引用文献数
1