著者
大久保 努 原田 秀樹 小野寺 崇 上村 繁樹 山口 隆司 大橋 晶良
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G (ISSN:18806082)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.187-195, 2008 (Released:2008-06-20)
参考文献数
43

インド・カルナール市において,下水を処理するUASB法の後段処理法として,我々が開発した下向流懸垂型スポンジ(Downflow Hanging Sponge: DHS)法の実規模リアクター(処理水量500m3/day,スポンジ容量に対するHRT: 1.5時間)を導入し,有機物処理特性評価を行った.DHS処理水の有機物濃度はインドの排出基準を満たし,全期間(900日間)を通じた平均全BODが6(標準偏差±4)mg/L,平均SSが8(±4)mg/Lであった.また,DHSからの余剰汚泥発生量は0.05kgSS/kgCOD-removedであり,現在までにUASBの後段処理として報告がある好気性処理法と比較して格段に少なかった.DHSは,メンテナンスフリーにも関わらず非常に安定した運転を長期間維持し,活性汚泥法に取って代わる開発途上国向けの新規下水処理技術としての波及が期待できた.
著者
平山 修久 河田 惠昭
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G (ISSN:18806082)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.112-119, 2007 (Released:2007-05-18)
参考文献数
32
被引用文献数
2 3 2

平常時の一般廃棄物排出量からみた災害廃棄物発生量である災害廃棄物量相対値を用いて,東海地震,東南海・南海地震,首都直下地震に係る災害廃棄物に対する我が国の災害対応力を明らかにした.また,行政の災害対応力を考慮した災害廃棄物処理期間推定モデルを構築した. 災害廃棄物の広域連携シミュレーションモデルを構築し,首都直下地震における災害廃棄物処理に関する数値シミュレーションを行った.その結果,サテライト方式あるいはバックヤード方式での全国連携による災害廃棄物処理に必要な処理期間は,それぞれ1.95年,1.80年と推定された.また,広域災害時における災害廃棄物対策では,都道府県間を越えた広域的な連携が重要となることを示しえた.
著者
渡辺 幸三 大村 達夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G (ISSN:18806082)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.94-104, 2006 (Released:2006-02-21)
参考文献数
41

ダム湖は河川水生昆虫の幼虫と成虫の移動を阻害し,ダム上下流間の遺伝的分化やそれに伴う遺伝的多様性の低下を引き起こす恐れがある.本研究は湛水面積が異なる複数のダム湖周辺でヒゲナガカワトビケラ,ウルマーシマトビケラ,クロマダラカゲロウの3種の水生昆虫地域集団のRAPD解析を行った.解析の結果,ヒゲナガカワトビケラの遺伝的分化は6つのダム湖のうち湛水面積が 3.27 km2 以上の2つの大きなダム湖で遺伝的に分化していたが,ウルマーシマトビケラは湛水面積が小さい場合でも分化することがあった.また,ウルマーシマトビケラの遺伝的多様性の低下要因として,集団サイズの低下とダムによる生息地分断化の2因子が働くが,残り2種は集団サイズの低下のみが主に働いていることが明らかになった.
著者
宮下 衛
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G (ISSN:18806082)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-7, 2009 (Released:2009-02-20)
参考文献数
30

LED照明のゲンジボタルおよびヘイケボタルの幼虫の行動に対する光源の色と明るさの影響を調べた.試験は,プラスチック製の容器を光源のある側とない側の2つに区切り,幼虫を光源のある側に入れ,その後の幼虫の移動について調べた.その結果,白・青・緑色のLED照明については,両種の幼虫は,0.1lxの明るさの光を忌避することが認められた.黄色のLEDについてはヘイケボタル幼虫は5lx以上,ゲンジボタル幼虫は30∼40lx以上,また,赤色のLEDについては,ヘイケボタル幼虫は40lx以上,ゲンジボタル幼虫は60lx以上の照明を忌避することが認められた.以上の結果から,街灯や民家,車などの照明は,ホタルの幼虫の行動に影響を与えることが明らかにされた.
著者
白鳥 実 上月 康則 島田 佳和 橘田 竜一 佐藤 塁 村上 仁士
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G (ISSN:18806082)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.262-275, 2008 (Released:2008-09-22)
参考文献数
33
被引用文献数
2 2

本研究では,付着藻類群集に着目して,ダム下流減水区間の自濁作用の実態把握とメカニズムについての考察を行なった.ダム上流と減水区間で付着藻類群集を比較したところ,夏季において違いが顕著であった.ダム上流では,出水の有無によらず藍藻優占の現存量の少ない群集が形成されていたのに対し,減水区間では,珪藻優占の群集が形成され,現存量もダム上流より有意に多かった.さらに,減水区間では,付着藻類群集の一部が剥離する現象が見られ,付着藻類の生産した有機物が河床に蓄積されるだけでなく,流水中にも負荷されていることが明らかとなった.このような自濁作用は,出水頻度の低下のみならず,平常時におけるアユ等の摂餌圧の低下によって生じているものと推測された.
著者
山崎 元也 宮脇 年彦 佐藤 喜久 坂田 廣介 高橋 克則
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.196-206, 2008

地球温暖化やヒートアイランド現象が世界的な環境問題となっている.旧日本道路公団においてもサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)において,利用者が感じる熱負担を緩和し,環境にやさしい休憩施設を目指し,種々の検討を行ってきた.東北自動車道蓮田SAにおいて,全国では初めての高炉スラグ微粉末を用いた給水装置を有する保水性舗装の施工を行い,当該舗装の温度低減効果を検討した.給水型保水性舗装は,通常舗装に比べて10°C以上の温度低下が安定して持続できた.給水方法によって,温度低減効果が異なることを明らかにした.また,理論式による計算値と実測値の整合性についても検討した.
著者
今西 正義 山本 祐吾 東海 明宏 盛岡 通
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集G (ISSN:18806082)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.65-74, 2010

本研究では,代表的な都市活動である建設,電力消費,交通,食糧・水資源消費に伴うエネルギー・物質代謝と,それに随伴する直接・間接的な環境負荷量を算定し,3つの指標(CO<sub>2</sub>排出量,総物質需要量(TMR),エコロジカル・フットプリント (EF))から都市の持続可能性を評価するためのモデルを構築した.その上で,巨大な物質的ストックとフローが形成される中国上海市に分析モデルを適用し,社会経済構造の将来変化による都市代謝と持続可能性を推計・評価した.その結果,TMRは経済成長とともに増加し,2020年では2004年に比べて最大で80.4%増加すること,EFは建設需要の伸びによって2004年で高負荷となり,特に都市の急成長期には,建設資材由来の間接負荷が大きくなること,などが定量的に明らかになった.
著者
太田 裕之 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G (ISSN:18806082)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.159-167, 2007 (Released:2007-06-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

現代社会において,CO2排出削減のための環境配慮行動は多様に存在し,そのような中で人々は優先的にいくつかの行動を選択し取り組んでいると考えられる.その行動の選択の際に影響する要因の一つとして考えられる「有効性知覚」は,様々な認知的バイアスの影響により,実際の有効性と必ずしも一致していない可能性があると考えられる.そこで本研究では,CO2排出削減量効果の情報を提供することで,人々の有効性知覚と客観的有効性との間の乖離が減少し,それに伴い行動の効率化がなされるとの仮説を措定し,アンケート調査形式の実験を行った.データ分析を行った結果,事実情報の提供により認知的ひずみは軽減し得るものの,行動意図は十分には効率化されない可能性があるとの結果が示唆された.
著者
鈴木 素之 長谷川 秀人 六信 久美子 山本 哲朗
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G (ISSN:18806082)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.445-451, 2006 (Released:2006-12-20)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

管理されずに自然放置された竹林の拡大による周辺環境や生態系への影響が顕在化している.森林の再生ならびに保全を検討する上で,地盤環境工学の見地から規模を拡大する竹林の諸性質を把握することは重要である.本文では,山口県下の竹林の分布状況をもとに,隣接した竹林の拡大による自然結合や他の植生または植物群落への竹の侵入の事例を報告するとともに,県内2地域を対象とした航空写真解析および現地調査により竹林の拡大速度を算出した.その結果,竹林の最前線は年間当り全体的に0.7m,局所的には2.5mで拡大していることを明らかにした.
著者
久保田 健吾 林 幹大 松永 健吾 大橋 晶良 李 玉友 山口 隆司 原田 秀樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G (ISSN:18806082)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.56-64, 2010 (Released:2010-03-19)
参考文献数
36
被引用文献数
1 1

都市下水を処理しているUASB-DHSシステムのG3型DHSリアクターの微生物群集構造をrRNAアプローチを用いて解析した.クローン解析による結果はリアクター上・中・下部において微生物群集構造が異なっていることを示しており,微生物多様性はリアクター上部において最も低かった.定量Real-time PCR法による各種微生物のrRNA遺伝子の定量結果は,アンモニアおよび亜硝酸酸化細菌の存在率がリアクター中・下部に行くにつれて増加することを示していた.リアクター上部からのアンモニア除去は,活性汚泥と同程度以上のアンモニア酸化細菌群の存在率に加え,DHSリアクターの高い汚泥保持能力および酸素供給能力に由来する可能性が示唆されるなど,除去メカニズムに関する知見を得ることが出来た.