著者
橋冨 彰吾 河田 惠昭
出版者
日本災害情報学会
雑誌
災害情報 (ISSN:13483609)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.154-163, 2016 (Released:2021-04-01)
参考文献数
15

東日本大震災では、製油所が津波や火災によって大きな被害を受けた。その結果、最大451万6,424B/Dあった国内原油処理能力が、被災直後には300万3,924B/Dまで落ち込んだ。南海トラフ巨大地震で被災する地域は東日本大震災で被災した地域よりもさらに多くの製油所があり、その影響が懸念される。本研究では、南海トラフ巨大地震発災後の地域毎の原油処理能力の推移を東日本大震災の被害実績をもとに推定を行った。その結果、南海トラフ巨大地震が発生した場合、最悪のケースでは我が国の原油処理能力が被災前の16.8%(65万7,500B/D)まで低下することが明らかとなった。人的被害が最大となるケースと原油処理能力の観点からの最悪のケースは異なることが明らかとなった。地方別に見ると、関東地方は比較的早期に原油処理能力が回復する。近畿地方や中国地方はケースによって原油処理能力の推移に差があった。一方で、中部、四国、九州の各地方のすべてのケースで原油処理能力が同じ推移を辿ることが明らかとなった。
著者
照本 清峰 鈴木 進吾 須原 寛 田畑 博史 中嶋 宏行 紅谷 昇平 吉川 忠寛 稲垣 景子 牧 紀男 林 能成 木村 玲欧 大野 淳 林 春男 河田 惠昭
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 = Journal of social safety science (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.137-146, 2007-11-01
被引用文献数
4

This paper discusses problem structures related to the time lag in the case that there is the interval between the Tokai-Tonankai earthquake and Nankai earthquake. First, the image of potential time lag problems in terms of the time flow after Tokai-Tonankai earthquake is shown. Second, the relationships between predicted earthquake intensities and population distribution are represented. Then the problems are arranged and examined for each separated area. Based on these discussions, problem structures due to the time lag are identified. Finally, through the individual specific problem examples associated with the time lag and hypothetical responses of local government officials, it is indicated that the time lag leads to various alternative problems.
著者
平山 修久 河田 惠昭
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G (ISSN:18806082)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.112-119, 2007 (Released:2007-05-18)
参考文献数
32
被引用文献数
2 3 2

平常時の一般廃棄物排出量からみた災害廃棄物発生量である災害廃棄物量相対値を用いて,東海地震,東南海・南海地震,首都直下地震に係る災害廃棄物に対する我が国の災害対応力を明らかにした.また,行政の災害対応力を考慮した災害廃棄物処理期間推定モデルを構築した. 災害廃棄物の広域連携シミュレーションモデルを構築し,首都直下地震における災害廃棄物処理に関する数値シミュレーションを行った.その結果,サテライト方式あるいはバックヤード方式での全国連携による災害廃棄物処理に必要な処理期間は,それぞれ1.95年,1.80年と推定された.また,広域災害時における災害廃棄物対策では,都道府県間を越えた広域的な連携が重要となることを示しえた.
著者
舩木 伸江 河田 惠昭 矢守 克也 川方 裕則 三柳 健一
出版者
自然災害科学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.447-471, 2006
参考文献数
58

In Japan, there is concern that great earthquake disasters, in Tokai, Tonankai, Nankai and the Tokyo Metropolitan area, could occur within the next few decades. Once one of these disasters happens, a larger number of deaths than in the 1995 Great Hanshin-Awaji Earthquake Disaster, which killed more than 6,000 people, could possibly occur. Therefore, it is necessary to find an early solution to the problem of mortuary care and cremation of deceased people after large-scale disasters. However, there has not yet been enough discussion about how to deal with, bury, and cremate dead bodies. This study first sorts out several problems related to mortuary care and cremation by examining 34 documents of the Great Hanshin-Awaji Earthquake Disaster. Next, it identifies remaining problems after the Great Hanshin-Awaji Earthquake Disaster. Third, it analyzes new issues related to the mortuary care and cremation when largescale disasters occur. Finally, several important findings are provided for improving present problems in the Japanese system of mortuary care and cremation.
著者
河田 惠昭
出版者
土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:18848222)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.931-935, 1991
著者
河田 惠昭 柄谷 友香
出版者
京都大学防災研究所
雑誌
京都大学防災研究所年報 (ISSN:0386412X)
巻号頁・発行日
no.43, pp.1-12, 1999

これまで, 著者らは大規模な人的被害に基づく間接被害額を平均寿命とGRPの関係を用いて評価し, その手法を1995年の阪神・淡路大震災などの災害事例に適用してきた。この手法を世界各国に適用しようとすれば, 各国の統計デ」タが必ずしも公安されていないなど問題がある。そこで本研究では, 普通死亡率と平均寿命の関係に着目することによって, 従来の手法を簡便に用いることができるようにした。その手法を1999年のトルコおよび台湾の地震に適用した結果, 人的被害による社会的価値の損失は33.3億ドルおよび30.9億ドルと推定された。This Paper proposes a method to estimate indirect losses due to large scale natural disastersbased on the GDP (Gross Domestic Product) and the average life span. We already applied to estimate indirect losses due to the 1995 Great Hanshin-Awaji Earthquake Disaster. This approach requires death data in the damaged areas for calculation of average life span, which is not always available in many countries in the world. Therefore, we tried our conventional model to apply other countries using a correlation between the crude death rate and the average life span. In this paper, we put the method to the quakes in Turkey and in Taiwan in 1999. It was found that indirect losses in the first year were roughly estimated to be $3.33 billion in Turkey and $3.09 billion in Taiwan respectively.
著者
城下 英行 河田 惠昭
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.67-80, 2009-05-31

Disaster education is one of the most important components for building a resilient society. School disaster education especially has an effect on spreading awareness and knowledge of disasters widely. In the past decade, the world has faced many natural and human made disasters. People's awareness of disaster impacts is becoming one of the driving forces for disaster education. However, disaster education should not be based only on disaster impacts. This is because the earth repeats a cycle of active and inactive periods. Hence, consensus between students, teachers and parents is necessary to realize sustainable disaster education in schools regardless of the occurrence of disasters. A questionnaire survey for junior and senior high school students in Wakayama prefecture, Japan was conducted on the first and second of November, 2006. The purpose of this survey was to inquire into students' attitude toward disaster learning in schools in the context of the educational curriculum. In order to keep reliability of this paper, 204 answers from junior high school students in Hirogawa town were selected for this paper from all answers. The result of analysing statistical data revealed several facts. Firstly, all of students have experiences of disaster education in schools and these are thought of as useful for their future life. Secondly, more than 90% of students learn about disasters in the integrated study time slots. Finally, through the comparison between the students who evaluate previous disaster education positively and the students who do not evaluate previous disaster education positively, the former students evaluate future disaster education in schools more positively than the latter students. Improving disaster education based on the people's attitude is one of the most important factors needed to build sustainable school disaster education in Japan.
著者
河田 惠昭 河田 英子
出版者
京都大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

子供たちに研究成果を絵本の形で出版し、教育効果を挙げるためには、いろいろな工夫が必要である。本研究では、漫画によるマニュアル、伝承の漫画化およびマニュアルのイラスト化によって実現した。まず、漫画によるマニュアルは、平成17年に高知県で発行された「南海地震に備え」(家庭保存版、カラー)では、漫画家のやなせたかし氏の協力を得て、次の登場人物、すなわち「じしんまん」「つなみまん」「たいさくくん」「ヘルパちゃん」ら6人のキャラクターを登場させ、挿絵漫画の形式で全28ページの南海地震・津波防災マニュアルが完成し全戸配布された。大変評判がよく増刷を実施した。伝承の漫画化では、「歴史漫画:浜口梧陵伝」として、『津波から人びとを救った稲むらの火』を出版した。これは1854年の安静南海地震津波で起こったことを素材としたフィクションを漫画化したものであって、劇画のストーリーからなる本文と本研究者らによる架空防災対談『津波から身を守る』が巻末に掲載された形になっている。漫画によるマニュアルは『こども地震サバイバルマニュアル』が刊行された。キャッチフレーズは小学生から読める、親子ですぐとりくめるであって、必要な情報がもれなくイラストと文章で提示されている。
著者
河田 惠昭 林 春男 柄谷 友香 寶 馨 中川 一 越村 俊一 佐藤 寛 渡辺 正幸 角田 宇子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

フィリッピンのイロコス・ノルテ州を流れるラオアグ川を対象として,発展途上国の開発と防災戦略の事例研究を実施した.この州とラオアグ市にとってはコンクリート製の連続堤防はいくつかの点で歓迎すべき構造物である.それは,台風のたびに発生していた洪水や浸水から開放されること,第二に旧河道や氾濫原において氾濫を」前提としない開発が可能になること,第三に頻繁な維持管理を必要としない構造物は,行政の維持管理能力の低さを補うことができることである.しかし,異常な想定外の外力が働いた場合,氾濫を前提としない開発や生活が被災し,未曾有になる恐れがある.援助側の技術者は,非構造物対策,すなわち,1)構造物を長期にわたって維持管理するための対策,2)住民の防災意識を高めるための対策,3)気象情報の収集と伝達,危険地域の把握,避難勧告など被害抑止のための対策,4)救援活動など被害軽減のための対策が含まれることを知らなければならない.すべての対策において,援助が何らかの役割を果たすためには,まず行政や住民の災害への対応の現状と過去を知る必要がある.調査期間中,台風が来襲し,堤防が決壊し被害が発生した.その原因としては,堤防建設技術の未熟さが指摘でき,防災構造物建設のための必要な知識や技術の取得と移転,実際の建設時における遵守など,構造物を根付かせるための対策も援助側は考えなければならないことがわかった.援助側の技術者は,非構造物対策を考慮に入れた上で,どのような構造物が地域に根付くかを計画する必要がある.そのためには社会を研究している専門家の参加を得て,地域の履歴を知ることは開発援助ではとくに重要である.それは,1)記憶の蓄積と共有化,2)被災者像,3)防災意識の向上の過程,4)防災対策の有無,5)被災者の生活・生計を誰が助けたのか,6)復旧における住民の労働力提供の有無を調べることは価値がある.
著者
河田 惠昭 田中 聡 林 春男 亀田 弘行
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

まず、時間帯ごとの総数死者数および負傷者数の時間変化については、NHKの生活活動調査結果による在宅率などを用い、かつ阪神・淡路大震災のデータを適用して、6つの原因によるものを推定した。その結果、各原因別に時間帯ごとのピークが見出せたほか、被害者総数としては、午前8時前後に最大のピークがあるほか、昼食時や夕方のラッシュアワー時にも大きくなることが見出され、また、兵庫県南部地震が起こった午前5時46分は決して幸運な時間帯でないことが明らかとなった。ついで、被害極限の方法については、間接被害に大きく分けて経済被害と人的被害があり、後者は人命の社会的価値の喪失として位置付けられることを示し、総被害学の評価方法を提案することができた。まず、経済被害としては、阪神・淡路大震災による兵庫県の電力使用料とGRPとの関係から、およそ2兆円と推定され、現象的には復興がすでに終わっていることを示した。また、人的被害の定量化では、平均寿命とGRPとの相関と交通事故による死者、重傷者、軽傷者への保険金支払いなどのコストの比較を用いて、阪神・淡路大震災を解析したところ、およそ2兆円になり、かつこの瞬間的な影響が18年間継続し、その間の総被害額がおよそ10兆円に達することを見出した。したがって、人的被害を軽減することが総被害額を大きく減らすことにつながるという論理が証明され、被害極限には自主防災組織による人命救助の役割が大きいことを見出した。これらのデータをGISに載せ解析することを可能としたが、これまでの町丁目単位ではなく各家屋単位での計算が可能なように次世代GISを開発することを試み、その構築に成功した。これによって、被害者数などを推定しようとすれば、現状の地震動による地盤のゆれの特性(加速度や速度)の評価がまだまだ改良の余地があることを見出した。
著者
河田 惠昭 田中 聡 林 春男
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

プレート境界型巨大地震として南海地震を取り上げ,これによる地震・津波災害の被害軽減策を危機管理の立場から考究した.まず,南海地震津波が広域に西日本太平洋沿岸を襲い,臨海大都市で大きな被害を起こす恐れがあることから,最終年度に大阪市を取り上げ,そこでの氾濫シミュレーションを実施し,氾濫水の特徴を見いだした.すなわち,大阪市北区梅田地区を対象に,M8.4の南海地震を想定し,地震動によって堤防が沈下し,その部分から津波が市街地に流入したという条件の下でシミュレーションを行った.その結果,氾濫水の市街地氾濫は面的に広がるために浸水深の距離的減少が大きいために,津波の場合が破堤点と地下空間の距離が短く,地下空間への浸水量は洪水の氾濫の場合よりも大きくなることがわかった.そこで,津波や高潮氾濫の被害軽減を図る危機管理上の項目を,2000年東海豪雨災害を参照して整理した.その結果,高潮氾濫の場合には路上浸水が始まり,床下浸水,床上浸水,地下空間浸水というような時系列によって被害が段階的に進行し,それぞれに対して防災対策が存在することを明らかにした.一方,津波氾濫を想定した場合,まず地震が起こることが先行するから,二次災害対策として津波防災が存在することがわかった.したがって,地震とのセットで防災対策を立てる必要があり,しかも高潮に比べて時間的余裕があまりないので,選択的に対策を進めざるを得ないことを指摘した.さらに,津波,高潮災害の危機管理上,最大の問題は超過外力に対してどのような考え方を採用するかということである.そこで,受容リスクと受忍リスを新しく定義して対処する方法を提案した.これらを参照して,浸水ハザードマップを防災地理情報システム上で展開する場合に情報を集約するプログラムを開発し,その有用性を明らかにした.