著者
竹田 康子 タケダ ヤスコ Takeda Yasuko
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科教育学系
雑誌
大阪大学教育学年報 (ISSN:13419595)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.31-48, 2014-03-31

これまでのモンテッソーリ研究では、モンテッソーリ教具をその教育独自の方法論として査定してきた。しかし、新教育運動の新しい知識観から、教育を成立させるメディアとして教具を検討する必要性も指摘されている。本研究の目的は、モンテッソーリ教具が、知的障害児教育に先鞭をつけたセガンと、その教育を再評価したブルヌヴィルを経由して、どのようなメディアとして成立したのかを明らかにすることにある。セガン教具とモンテッソーリ教具の写真を基に教具とその使用法を比較検討し、そうした個々の教具の改善を包括する教具思想上の発展について各々の著作を通して考察した。その結果、セガンとブルヌヴィルの知的障害児教育における教具は、既存社会への適応を志向するものであったが、モンテッソーリの普通児教育における教具は、社会への適応に加え子どもの自己教育をも促すものであり、その自己教育に導かれて子どもの知的なプロセスが創造されることが明らかになった。
著者
上田 勝江 ウエダ カツエ Ueda Katsue
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科教育学系
雑誌
大阪大学教育学年報 (ISSN:13419595)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.63-79, 2013-03-31

本稿では、専門学校生の入学、学び、進路決定の3 時点に注目し、彼らのキャリア意識の分析を通して、専門学校の社会的機能の検討を行った。インタビュー調査結果からは、次のようなことがわかった。まず、入学動機としては、自己表出型、止まり木型、職業資格活用型、教育資格活用型の4 種類に分類できた。専門学校経由の大学編入に魅せられて入学する者もいた。次に専門学校生の学びプロセスは、もがき型、知識吸収型、全人発達型、異邦人型に分類できるが、全人発達型が多数であった。専門学校生は、知識習得を行って職業資格を獲得することのみに邁進するのではなく、学校生活の中で、他の学生との交流、実習、教員との交流の中で、自己覚醒していくパターンが多かった。専門学校経由の大学編入生は、メリトクラティックな学歴競争に煽られていた。進学者の実学志向と高学歴志向を反映して、専門学校は、職業資格取得と教育資格取得の機能を強化していた。多くの専門学校生は、資格と学歴を取得することにより、よりよい就職先やより威信のある大学に進学することを目標としていた。それは、勉強への挫折感や嫌悪観を克服し、再チャレンジを果たす意味合いを持っていた。