- 著者
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池田 正人
- 出版者
- 安全工学会
- 雑誌
- 安全工学 (ISSN:05704480)
- 巻号頁・発行日
- vol.48, no.5, pp.313-319, 2009-10-15 (Released:2016-09-30)
- 参考文献数
- 5
航空機事故においては,数年事故がない状態が続き,一度事故が発生するとしばらくの間,事故が頻発傾向になり,この傾向に周期性があることが知られている1).化学工業の工場の労働災害においても同様の傾向が見られる.長期間無災害が続いた後に,一度労働災害が発生するとしばらくの間,労働災害が頻発傾向となり,この傾向を繰り返す. 長期間の無災害継続日数を記録した後に労働災害が頻発する傾向があるのは,長期の無災害継続期における「安全意識の緩み」などがおもな原因と思われる.また,われわれ日本人の一般的な気質として,「危険に対する感性が低い」,「当事者意識が希薄」なども作用していると思われる. 日本曹達(株)高岡工場の労働災害の周期性について分析した.労働災害が発生,頻発している間は安全意識の活性化策としての安全活動などが緊張感を持って行われるが,やがて無災害継続日数が1 年以上になるとあたかも安全な工場になってしまったかのような錯覚に陥り,緊張感が途切れ,安全活動は行ってはいるが全員の意識に届いていない.つまり,本来,無災害継続日数が多くなるにつれて安全意識の活性化活動を強化しなければならないが,現実には無災害継続日数が多くなると安全意識の活性化活動は低調になっていく傾向にあることがわかった. 本稿では労働災害の周期性とその原因,そして,無災害継続日数をより延ばすにはどうすべきかについて報告する.