- 著者
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今井 民子
- 出版者
- 弘前大学
- 雑誌
- 弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
- 巻号頁・発行日
- vol.78, pp.65-71, 1997-10
イギリスの音楽史家,Cノヤーニーの『ヨーロッパ音楽紀行』は,主著である『音楽通史』執筆の資料収集を目的に企てた大陸旅行の見聞録である。本稿では,この旅行記に基づき,彼が見聞した教会,劇場,私的コンサートにおける音楽活動の実態と,その他,大道の音楽,楽器,楽譜について,主にイタリアを中心に検討する。まず,イタリアの教会音楽では,世俗化の著しい祝日の音楽と,平日の素朴で古風な聖歌との対照が指摘される。オペラ劇場では,貴族と一般市民からなる聴衆,音楽家の生活支援のための劇場コンサートが,また,私的コンサートでは,教養豊かなディレッタントによる良質のコンサート(アッカデーミア)の様子が言及される。バロックの教会,劇場,室内という音楽様式の3つの区分はあいまい化し,相互の融合,類似化が窺える。その他,野趣に富む大道の民謡,後年,『音楽通史』に結実する楽器や楽譜の資料収集に関する記述がある。