著者
冨田 晃
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.103, pp.73-77, 2010-03-31

グラスハープとは、ワイングラスなどの椀形のガラスを水で濡れた指で擦って音を出す楽器である。グラスハーモニカ GlassHarmonica(アルモニカ Armonica)は、グラスハープから派生した楽器であり、ベンジャミン・フランクリが1761年に発明したものである。これらの楽器は、18世紀後半のヨーロッパにおいて盛んになるが、19世紀には衰退した。そして近年、欧米諸国や日本においてこれらの楽器の復興現象がみられる。
著者
篠塚 明彦
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.110, pp.9-16, 2013-10

高等学校における「世界史未履修問題」を契機として、世界史教育に対して、歴史学の立場から様々な新しい世界史の理論が提起されている。しかし、これらの提起は学校現場での実践が難しく世界史教育の再生という問題への回答としては十分なものとはなっていない。そこで、地域からの世界史の視点をもとに、新しい世界史理論の提起も踏まえながら、現場での実践を意識した世界史学習のあり方を提起する。具体的には、津軽安藤氏の活躍に着目しながら、南の海域世界と北の海域世界との接点を探る世界史授業を提案し、併せて世界史教育再生の方向性を探っていく。

2 0 0 0 OA 彫刻の原理

著者
岡田 敬司
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.66, pp.55-68, 1991-10-31

無限定の三次元空間に彫刻が存在する在り方の検討を通し,彫刻表現の原理的特性について論じた試論である。その内容は主として,彫刻存在の;I.状態に関わるものⅠⅠ.場所性に関わるものⅠⅠⅠ.時間性に関わるものⅠⅤ.空間性に関わるものV.物質性に関わるものⅤⅠ.その他である。就中,「没形象性」への注目と,同時にこれに捉われることによって生ずる「表現の不自由性」について論じられる。この小論の中で,彫刻表現における真の「自由」を獲得する為に,あらゆる主義や思潮を超えた地点に制作主体たる自己は立脚せねばならないと結論する。
著者
松本 敏治 崎原 秀樹 菊地 一文
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.109, pp.49-55, 2013-03

本論文では、松本・崎原(2011) によって報告された「ASD は方言を話さない」という調査結果について理論的検討を行った。彼らの特別支援教育関係者を対象としたアンケート調査は、ASD は定型発達児およびID に比べ、方言の音声的特徴のみならず、語彙の使用も少ないとする結果を示した。この結果について次の5つの解釈の説明可能性を検討した。1)音韻・プロソディ障害説(表出性障害、受容性障害)、2)終助詞意味理解不全説、3)パラ言語理解不全説、4)メディア媒体学習説、5)方言の社会的機能説。1~4の解釈は、ASD でみられた方言の音声的特徴および方言語彙の不使用を十分に説明することができなかった。一方、方言の社会的機能説は、方言の社会的意味として他者との連携意識・集団への帰属意識などに着目したもので、ASD のもつ対人的・社会的障害の側面から方言の不使用を説明できるものであった。この説は、結果を適切に説明できるもので、かつASD の中核症状との関連が推察された。また、この説と関連して、ことばの社会的機能への気づきとASD への言語的はたらきかけについて考察した。
著者
吉中 淳 工藤 七央
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.113, pp.129-138, 2015-03-27

これまでの不登校・登校拒否研究を振り返り、1990年代初期に社会学の影響により大きなパラダイム転換が起こったこととそれが心理学に与えた影響を確認しつつ、現時点で未解決の問題を特定し、心理学は再登校支援のためにどのような貢献が可能かについて考察する。
著者
矢島 忠夫
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.105, pp.47-63, 2011-03

本考は、『正法眼蔵』を精読する。とりわけ、論理語に留意し、道元がどのように思考していたのか、その流れが理解できるように表現することを目指す。修正可能な素案を提示することが課題である。
著者
今井 民子
出版者
弘前大学
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.77, pp.57-61, 1997-03

C.Burney(1726-1814)の生涯最大の業績は,いうまでもなく『音楽通史』の執筆であろう。しかし,彼は18世紀の啓蒙知識人にふさわしく,音楽史家としてだけではなく作曲,演奏,教育など音楽の多方面で活躍した。本稿では,彼の音楽教育者としての活動を検証する。まず,18世紀イギリスの音楽教育の現状を,宗教改革,産業革命という二大社会現象との関連から概観し,当時の音楽教育への需要の高まりを明らかにする。次に,C.バーニーが生涯続けた音楽の個人教授の実際に目を向け,最後に,彼が提案した,イギリス初の公立音楽学校設立の計画についてふれる。彼の長年にわたる音楽の個人教授と,音楽の専門教育機関設立の運動は,イギリス国民の教化とその音楽文化の振興を目ざしたものであり,音楽教育者として果した彼の功績は大いに評価しなければならない。
著者
立田 健太 佐藤 紘昭 大谷 良光
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.102, pp.105-114, 2009-10

青森ねぶた祭への「ハネト若者離れ問題」を焦点とし、若者に当たる高校2年生1140人を対象として祭の観覧・参加状況と祭への意識(思い)を調査した。大型ねぶたの観覧・参加率は2008年59.3%・36.7% で、「ハネト」での参加率は2007年72.8%、2008年64.6% で8.2% 減じており「ハネト若者離れ」の一端が立証された。また、「ねぶた祭は世界に誇れる」や「伝統の継承」には高い意識(約8割)をしめしたが、この数値は参加率とかけ離れており、それを裏付ける「参加しなかった理由」として「特に興味がなく、参加する意義や必要性は感じない」が約4割で、その格差の克服が新たな課題として明確になった。それに対して我々は、学校教育との関わり、社会教育の充実、伝統文化の継承と観光化のバランスの3視点を提起した。
著者
神馬 志保子 秋葉 まり子
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.104, pp.21-44, 2010-10-20

本稿は、産業連関表を用いて青森県の「公共事業」と「医療・保健」「介護」の経済波及効果と雇用創出効果をそれぞれ計測し比較することで、前者と比べて後者の方が両効果とも高いことを明らかにした。これにより、労働集約的で、かつ粗付加価値の高い産業である「医療・保健」「介護」が、これまで代表的な短期の景気浮揚策として考えられてきた「公共事業」に代わりうること、それが急激な高齢化、高い失業率、重い社会保障負担という深刻な経済問題に直面している青森県にとっては、好転の方向性、将来の期待を見い出せる可能性を持つものであるという結論を得た。
著者
安野 眞幸
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.91, pp.39-43, 2004-03-31

安土楽市令の第四条「伝馬免許事」は第三条の「普請免除」と並び、伝馬役の免除を命じたものと理解するのが通説である。本稿はこの通説に異論を唱え、むしろ信長が安土の町に伝馬制度の創設を許可したものであると論じた。中世近江の「保内商人」の座特権が解体し、信長による新体制がここで目指されたのである。
著者
吉中 淳 工藤 七央
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.113, pp.129-138, 2015-03-27

これまでの不登校・登校拒否研究を振り返り、1990年代初期に社会学の影響により大きなパラダイム転換が起こったこととそれが心理学に与えた影響を確認しつつ、現時点で未解決の問題を特定し、心理学は再登校支援のためにどのような貢献が可能かについて考察する。
著者
小野 郁 今 清佳 森 菜穂子 太田 誠耕
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.92, pp.133-145, 2004-10-15

大学生410名を対象とし,500mlのペットボトル飲料の利用状況について調査を行った。また,開栓後の500mlのペットボトル飲料の細菌の繁殖状況を一般生菌法で測定した。その結果,ほとんどの大学生がペットボトル飲料を利用しており,保存によって細菌が大量に繁殖することが明らかになった。特に直接口をつけて飲んだ場合には,長期間の保存が可能とは苦いがたく,開栓後は冷蔵庫内で保存し,開栓当日遅くても1日後に飲みきることが必要である。また,飲用後のペットボトル容器に別の飲料を移し香え水筒として再利用することは衛生上安全であるとは言いがたい。
著者
桐村 豪文
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.127, pp.177-187, 2022-03-29

90年代以降、とりわけ21世紀を迎えてから EBP を推進する勢いが世界的に増している。EBP の推進をめぐっては、とりわけ教育の世界では賛成と反対の立場の隔たりは著しく、その中間点を求める議論が求められる。そこで本稿では、「連続体の真ん中」に位置するというポスト実証主義という立場に着目した。まず第1節では、ポスト実証主義の立場に立った議論が米国における公的な議論に登場するに至った経緯について述べた。そして第2節では、権勢をふるっていた実証主義がポスト実証主義にとって代わるに至った背景を踏まえた上で、新たな立場であるポスト実証主義の思想的特徴について論じた。
著者
冨田 晃
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.115, no.1, pp.79-81, 2016-03-01

人が人を食べる習俗をカニバリズムという。「獰猛野蛮の極み」といったイメージをもつこの言葉は、コロンブスによってスペインに報告され、その後、人肉を食らう裸族の想像画をともないながらヨーロッパ世界に広がっていった。「新世界」を「発見」したコロンブスは、まだ見ぬ異民族に対し、マルコ・ポーロによるアジアの話や、ギリシャ神話といった自分がもっている知識を総動員して「人食い人種カニバル」を想像した。それは、コロンブスが、自らの業績を輝かせ、野蛮な人々にキリスト教を伝える義務感を、キリスト教世界の人々に与えるためのレトリックだった。
著者
伊藤 聖子 葛西 麻紀子 加藤 陽治
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.110, pp.93-100, 2013-10

フィリピン産の高地栽培種(スウィーティオバナナ)および従来の低地栽培バナナ(レギュラーバナナ)を用い追熟過程および加熱(焼く、蒸す)調理過程それぞれでの糖度および糖組成の変化を調べた。高地栽培種、低地栽培種の可溶性糖質含有量は高地栽培種の方が多いことが確認された。また、両者ともその主成分はスクロース、グルコース、フルクトースであるが、追熟とともにスクロースが減少し、グルコースとフルクトースが増加することがわかった。また、微量に含まれるソルビトールは減少し、オリゴ糖は増加する傾向にあった。加熱調理(焼く:180℃のオーブンで20分、30分、40分処理、および蒸す:蒸し器で10分、20分、30分処理)では、いずれも、焼き調理より蒸し調理後の糖度が高くなる傾向がみられた。焼きは30分で最も高く40分では減少していた。また、蒸し調理では10~20分で最も高く、それ以上になると、かなり減少することがわかった。
著者
大谷 良光 本間 史祥 加川 志保
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.103, pp.95-104, 2010-03

生徒がケータイ被害から身を守るため、フィルタリング設定やメール受信拒否設定をどの程度利用し、認識しているか、また、中学時まで携帯電話所持率が低い青森県において高1までのいつ購入しているかを明らかにする目的で、高1に限定し、県内1割のサンプルを目標に調査した。その結果、高校合格から入学までの1ヶ月間に約4割の生徒が新規に携帯電話を購入していた。また、青少年インターネット環境整備法が2009. 4より施行されているにも関わらず、フィルタリングの利用率は41.7%、メール受信拒否の設定率は21.3%と低かった。7割の生徒は有害情報に危機意識を持っているが、フィルタリングの不便さを理由に利用しないものが多く、「ケータイ高1プロブレム」状況が予想される。フィルタリングの設定には、販売時の丁寧な説明と保護者の役割が大きいことも明らかになり、関係者による緊急な諸取り組みが求められるため、本調査に基づき県民への緊急アピールを発表した。
著者
石山 志央子 小林 央美 新谷 ますみ
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.116, no.2, pp.31-36, 2016-10-14

学校において学級担任をはじめとする教職員により行われる健康観察は,日常的に子どもの健康状態を観察し,心身の健康問題を早期に発見して適切な対応を図り,学校における教育活動を円滑に進めるための重要な活動である。そこで,特に児童生徒と日常的に関わり教育活動を進める学級担任の行う健康観察に着目しその実態について質問紙調査を行った。結果,朝の健康観察は,小学校では98.8%,中学校では100.0%,高校では73.5% の割合で実施していた。校種別にみた朝の健康観察の主要な方法は,小学校では「健康状態申告方式」,中学校では「自己申告方式」,高校では「観察方式」であった。朝の健康観察は「体調不良を訴えた児童生徒の経過観察」に最も活かされていた。健康観察の機会の内,「朝の会」を小学校では特に大切にしていた。高校では,「清掃時」や「放課後」等も大切にしていた。朝の健康観察の方法は発達段階に応じて選択されており,その日一日の教育活動で行う健康観察に連動されるように活かされており,特に重点的に行う必要があることが示唆された。
著者
加藤 陽治 伊藤 聖子 渡辺 敏幸
出版者
弘前大学
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.91-96, 2001-10
被引用文献数
3

果実類11品種(キウイ,イチゴ,モモ,カキ,アボカド,プルーン,リンゴ,イチジク,バナナ,パイナップルおよびミカン)の水不溶性食物繊維の多糖組成比較を行った。各果実の可食部から水不溶性細胞壁画分を調製,これを乾燥させ,糖組成分析と糖結合様式分析に供した。さらに,水不溶性細胞壁画分はペクチン様物質,-ミセルロース画分およびセルロース画分に分画し,それぞれの画分の糖組成分析を行った。水不溶性細胞壁多糖はいずれの果実も,ペクチン様物質画分はおもに中性糖を含むラムノガラクツロナン,-ミセルロース(ⅠおよびⅡ)画分はおもにキシラン系多糖,ガラクタン系多糖およびキシログルカン,そしてセルロース画分はセルロースから構成されており,これらの比率はキウイで28:19:53,イチゴで38:15:47,モモで25:22:53,カキで16:14:70,アボカドで28:35:37,プルーンで26:32:42,リンゴで30:20:50,イチジクで38:15:47,バナナで24:31:45,パイナップルで19:44:37,ミカンで26:15:59であった。
著者
郡 千寿子
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.90, pp.1-8, 2003-10

青森県弘前市においては,「わ」という-人称代名詞が「私」に代替する表現形として使用されている現状がある。日本語の場合、-人称代名詞は、使用場面や相手によって意識的にせよ無意識的にせよ選択されて使用されている。言語習得時期を過ぎ、言語使用を自己判断によっているといえる成人男女において、とくに方言形である「わ」という一人称代名詞が,どのように弘前において使用されているのかについて,その実態調査をもとに考察検討したものである。近年,方言は言語の文化的側面を示したものとして,重要視され注目されているが,実際の使用者の意識はどのようなものであろうか。方言主流社会1・といわれている弘前で,年代による,また男女による,使用実態の差や使用意識の差がどのように分布しているのかを検討し,今後の言語使用の在り方について,その方向性を探ってみたい。